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行くべき場所と会うべき人

昨日は「スタンフォード式人生を変える運動の科学」を読みました。権威に弱い日本人に売るにはスタンフォード式やハーバード流は今でも有効で、運動と脳科学の研究ではアメリカに一日の長があります。人体には運動をさせるための精巧な仕組みが備わり、脳の最大の目的は体を動かしあらゆる生理機能の働きによって生きるためのエネルギーと目的意識がもたらされると言います。ロンドンを拠点にするボランティア団体のグッドジムではジムのトレッドミルを走る代わりにそのエネルギーを使って社会的に孤立した高齢者の元へランナーを派遣し、訪問を受ける高齢者たちはコーチと呼ばれます。何度も訪問するうちに本物の友情が育まれ、行くべき場所と会うべき人を設定することでランナーのモチベーションが維持されます。ランナーズハイと協力や親しみを促す脳の働きが密接に関わっているという仮説は刺激的です。運動に夢中になるメカニズムは人類進化の観点から説明されますが、古より自然と親しみ、早くから森林浴にも注目してきた日本がこの領域の研究で存在感を示せないのは残念です。既特権益しか眼中になく、学問の自由や言論弾圧だと騒ぎたてる知識人もその原因でしょう。

正しさの賞味期限

人生が変わる経験など頻繁にありませんが、信じていたことに裏切られると人は信念体系を変えます。発想法の基本は逆の視点から考えることですが、自分の願望と対極にある世界を見逃します。卑近なところでは、食べるほどお腹が空くことや、山に入るとエネルギー補給をしない方がエネルギー不足に陥らないこと、あるいは病院が無い方が住民が健康になることを発見します。食べることを無条件に善と考えれば、断食や絶食は我慢を強いる禁欲に見えますが、人間の報酬回路は未だにブラックボックス化されていて、人体には食べない幸せも存在します。あらゆる分野における正しさには賞味期限があり、人間の思考は支配的な規範に拘束されます。失われた30年から日本が抜け出せないのは組織のリーダーが外界を見ている古いパラダイムに束縛されるからだと思います。天動説が長年人々を欺いてきたのは、それでも天体の運行を説明できたからで、肝心なことは真実ではなく、皆が信じているメンタルモデルです。国際政治が大きく動き、日本がやっとDXに向かう今、われわれに必要なのは真逆の可能性を考える思考回路だと思います。

デジタルシフトの三重苦

5月に引っ越した際の断捨離で、紙焼きの写真は自分でスキャナーにかけ、大量のネガはフイルムスキャンサービスに出しました。数日前に納品されたデータはベトナムで処理をするにしても今どき珍しく5ヶ月もかかります。画質や納期、分量によって価格は異なりますが、黄ばんだ写真の色補正をして一枚あたり17円ほどと妥当ですが、1.5倍の値段の国内処理でも納期は1.5ヶ月と長く、改善の余地があると思います。フイルムのスキャン需要は減っても、アナログ資料のデジタル化ニーズは巨大マーケットを形成し、規制改革、コロナ対策とともにスガノミクスの三本の矢となるデジタル庁に期待が集まります。仮想空間と現実空間を高度に融合させるソサエティ 5.0を阻むのは大企業病、縦割り行政、ムラ社会の三重苦が生み出すマインドだと思います。ビル・ゲイツは20年以上前に出版した「思考スピードの経営」のなかで、デジタルシフトに踏み出し最大限に活用する鍵は、個人に権限を付与する信念を持つことである、と述べています。彼に先見の明があったのか日本が遅れ過ぎなのかは議論の分かれるところでしょう。

生物学の皮肉

票が読める自民党の総裁選とは違い、混迷する米国大統領選さなかのトランプ大統領の新型コロナウィルス感染で不確定要素が加わりました。大統領ともなれば最先端の手厚い治療を受けられ、命もお金次第ということになります。顕示的消費が嫌われる日本では富裕層ほど慎ましく清い生活をすることが良しとされますが、お金を使わない富裕層が唯一贅沢をするのは医療費でしょう。健康、医療、介護、旅行、スポーツ、宗教関連の消費額は年齢を重ねるほど伸びます。人々がお金を使う究極的な理由は死という宿命を避けようとする行動であり、そこに巨大なビジネスが生まれます。他方で、90歳を越える元気な長寿者が圧倒的に多い世界のブルーゾーンに共通するのは、都会から離れた足腰を使う傾斜地で、貧しく生涯働く必要があり、地元の質素な食材と薄くてきれいな空気で、地域のコミュニティが濃密な場所です。経済大国になった日本は世界が羨む長寿国ですが、これらの長寿地域とは逆の生活であり、長生きしても晩年は苦痛に満ちたものになります。身体に一定のストレスをかける生活が健康長寿の秘訣なのに、人は安楽と快楽を求め、その代償として晩年にお金を使うのは生物学の皮肉に見えます。

エネルギーを高める森

昨日は八ヶ岳の唐沢鉱泉を起点に北八ヶ岳の苔の森を歩きながら縞枯山(2,403m)、茶臼山(2,384m)に登りました。ひんやりした空気が漂う森に入ると、自然のもたらすゆらぎ、森林揮発性物質やマイナスイオンのためか爽快な気分になります。中東和平や米ソ軍縮合意など米国が歴史的合意を取り付けたのもキャンプデービッドでの森の散歩中でした。森林を散策しながらのカウンセリングなども昨今注目されます。心に静寂をもたらし霊的エネルギーを高める場所は森をおいて他にはないと思います。人類が霊長類として森に住み始めたのは6,000万年前とされ、人類史の99%の時間を森林環境下にいた痕跡は現代人の体質にも深く刻み込まれているはずです。世界最大の都市圏を持ち人口密度も高い日本が、総面積の69%を占める25万平方kmの森林を持ち世界三位の森林化率を誇るのは、古来より森を聖なる土地として崇め大切に扱ってきたからでしょう。鬱蒼とした苔むした森、見上げる大木や巨岩、山の奥から湧き出る泉を抜ける森林散策をすると、人生に必要なものは驚くほど少ないと思えます。

四分の一しか食べない世界

秋がいつの間にか進み八ヶ岳の稜線では霜が降りるようになりました。収穫の秋、食欲の秋というのは自然の摂理で、北米大陸からアフリカ大陸までノンストップで飛ぶ渡り鳥は秋の1週間で脂肪を2倍にすると言われます。多くの動物も冬を越すために秋になると自然が用意した果実などで体に脂肪を蓄えて越冬を可能にしました。人類が糖新生によりブドウ糖を体内で作り出すのもおそらく同じ理由で、血糖値を上げるホルモンを数種類持つことも飢餓の歴史が長かった証拠でしょう。先日読んだ「老いなき世界」の著者で老化研究の第一人者であるデビッド・シンクレアが25年にわたる老化研究の末にたどり着いた結論は、寿命を最大限に延ばす確実な方法は、食事の量と回数を減らせです。最先端の生命科学が断食や絶食といったニューエイジやカウンターカルチャーのキワモノとみなされがちだった健康法をメインストリームに押し上げ、不老不死にまで言及したことは衝撃です。エジプトの遺跡で見つかった「人は食べる量の4分の1で生き、残りの4分の3 は医者が食べる」という古代人の警句は正しかったのでしょう。

人間と行動するDNA

今朝はラブラドールと編笠山(2,524m)、権現岳(2,715m)、三ツ頭(2,580)に登りました。権現岳といえばそれなり敷居の高い山ですが、荷物がなければ観音平から4時間強でラウンドできるお手軽な山です。山登りは赤筋と白筋をバランスよく使う長時間の有酸素運動で、標高800メートル以上では運動時に発生する活性酸素の酸化ストレスが低減されるという研究があります。白筋の筋肉損傷により成長ホルモンが分泌される下山道が健康には重要です。漫然と山に登っていた頃は意味を持たなかった下山道ですが、意識するだけで筋肉の付き方も違います。下り道でペースを上げるとラブラドールは影のようにぴったりと寄り添い人間と一緒に行動することがDNAにプログラムされているとしか思えません。人類史上生産性を高めた最初の道具は、おそらく犬だったと思います。他の家畜よりはるかに古い3万2千年前から生きた道具として犬を活用したことで狩猟法に大躍進が起き、猟犬を従えた狩猟の生産性は56%向上することが研究から明かされています。そんな太古の昔に思いを馳せながら重力に身をまかせてリズミカルに下るトレイルは今では楽しみの一つです。

忖度脳とゴマすり脳

イギリスにいる娘からLINEがあり、為替相場の仕組みについて聞いてきました。友人と経済政策について議論をしていて意見を求められていると言います。正式な授業も始まっていないのに学びたいと自然に思える環境は日本の大学が失った美点でしょう。教育の現場で最も重要なことは学びに対する主体性ですが、議論をするためには知識が必要になり、生きた知識を学ぶ上で経済や歴史が大きく変わろうとしている今の時代は最適です。点を取るための知識と違い、自分の頭で再構成された知識はその後も生き続けます。日本の教育は伝統的に立身出世の手段と看做され、偏差値偏重社会を生んだと思います。丸暗記だとしてもテストの点が高いに越したことはないと昔は考えましたが、それは間違いでした。学校の試験で好成績を取るコツは出題者の意図を読むことと、その意図に沿った答案を書くことです。つまり偏差値時代の申し子の思考回路は忖度脳とゴマすり脳になります。そんな机上教育の秀才にまともな判断ができるはずがなく、大東亜戦争では無謀な作戦を繰り返しました。現代のあらゆる組織にもその暗い影を落としているはずです。

人生は一度限りではない?

話題の書、「LIFESPAN老いなき世界」を読みました。衝撃作とされる理由は、老化は病気であり治療できる、死が必然であることを示す証拠は何もなく生命は永遠に存続する可能性がある、と結論づけたことです。著者がハーバード大学医学部教授で老化生物学センターのディレクターでなければベストセラーにはならなかったでしょう。しかし老いないために導かれた結論は、食べる量と回数を減らす、間欠的絶食を行う、運動をする、動物性タンパク質を避けるなど目新しさはありません。食べることでわれわれは本能的な欲求を解放してきたので、無理と感じる人が多いでしょう。これまでのアンチエイジングは老化スピードを遅らせる目的でしたが、生命に終わりが訪れないなら話は違ってきます。1カ月生きるごとに寿命が1週間伸びると言われるのは、長く生きるほどまだ予見できない画期的な医学進歩の恩恵を受ける確率が上がるからです。人生は一度限りだから楽しまなくてはと考える人も、生命が終わらない方法を手にする可能性があるのなら生活習慣を見直すかもしれません。

健診義務化は利権?

今年9月までの健康診断の受診者と予約者は昨年の2,100万人から1,400万人に減少したとNHKが報じます。日本人は検診を有難がりますが、一部を除いてその有効性は証明されていないばかりか、英国の調査では定期的に健康診断を受けた人の総死亡は8.6%増えるとされます。有効性が証明されておらず、過剰医療につながる定期的な健康診断を欧米では奨励せず、カナダと米国の専門家委員会は定期健診をやめるべきと勧告しています。医者や医療費が増えてもそれ以上のスピードでがんなどの病気が増加する状況は人為的な要因が生み出したと考えるのが自然です。検診で見つかるがんの大半は治療の必要がないものとする主張は根強くあります。1972年に労働者の健康診断義務化が始まり1975年以降日本では男性の肺がん、肝臓がん、すい臓がんが急上昇していることは健康診断が病人を作り出していることを疑わせ、検査精度や基準を変えればいくらでも病人を量産出きます。健康診断義務化の当事者であり、25年間に渡って日本医師会会長を務め権力を振るった武見太郎自身が薬を飲まず、健康診断を受けなかったのはその危険性を知っていたからでしょう。

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