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ゆるい時間の魔力


経堂にあるロースタリー&カフェのRaw Sugar Roastに行きました。羽田の焙煎所を拠点にコーヒー豆の卸をしてきた店の旗艦店として2022年に開業しました。1982年竣工のマンションの1、2階を占め、看板が小さく入ったことはありませんでした。以前はビストロが営業していた場所だと記憶しますが、店内はコンクリート打ちっぱなしと言うより、はつりっ放しで解体工事の途中にも見えます。80年代のRCの躯体が持つ、重量感や荒々しさという時間の蓄積に対し、天井ボードが明るい色に塗装をされ、家具に光沢があり、均質な照度の明るい店内照明は物語的な連続性に欠けます。しかし、そんなこだわりは居心地とは関係ない気もします。犬と訪れる人、外国人カップル、パソコン仕事をする人などが集まり、そこに流れるゆるい時間の魔力こそ、廃業率40%とされるカフェを、皆がやりたがる理由かもしれません。

手軽なセカンドオピニオン


先月受けた胃の内視鏡検査と同時に行った生体検査の結果を聞きに行きました。自分と同年配の女性医師は鮮明な画像を指しながら、問題はありませんしピロリ菌検査も陰性でしたと明るい笑顔で言います。良い医者は患者とともに喜びますが、悪い医者は問題が見つかったときに喜びます。かかりつけの歯科医もそうですが、信頼している医師は、何かと理由をつけては検査や余計な薬を売りつけるようなことはしません。国民皆保険で誰もが医療にアクセスできる日本では、安易に医者にかかり、自分で学ぶことなく医師の権威を受け入れます。経験的には医師の3、4割は、専門用語を使い患者からの質問を封じようとし、大病院ほどその傾向が見られると思います。救いは、AIが手軽なセカンドオピニオンとして機能することで、人に寄り添えない医師が、AIによって駆逐される日は近いかもしれません。

ウリが見つからない


昨年11月に開業した駒沢パーククォーターの1階に入るNEIGHBORS BREAD駒沢店に行きました。渋谷、下北沢といった自分の行動範囲の一等立地に出店するSTANDARD BAKERS が手掛ける店です。宇都宮市大谷町に発祥したベーカリー&レストランは、地元では知られる存在でしたが創業地の店を閉め、都内のターミナル駅を中心に全国ブランドとしてデベロッパーに知られるようになりました。しかし、至って普通で、全くウリが見つからない不思議な店です。値段相応に上質ではあるものの主張しないパン、必要最小限の内装、BGMなしで、この業界にありがちなSNS映えや独自の世界観とは無縁で主張をしてこないのです。強いて言えば接客が良いことですが、おそらくデベロッパーにとって使い勝手のよい企業なのだと思います。立地にあわせて業態を細かく分け、個店ベーカリーのように「うちはこのスタイルでしかやらない」と固執しない点が評価されている気がします。

真冬がトップシーズン


寒い季節に身体を温める習慣は朝の入浴だと思います。普段より時間をかけて十分に汗をかいてから、水シャワーを浴びてドライエリアのインフィニティチェアに横になるのがこの季節のルーティンです。6時過ぎのマジックアワーの青い空を背景に、南下していく人工衛星をはっきりと目視できます。外気温は氷点下1度ですが、全身から湯気が立ち上る身体には、冷たさが物足りなく感じます。北欧のような極寒の地で、サウナが発達したのは必然だと思います。サウナ好きにとって真冬がトップシーズンな理由は、外気浴の気持ち良さにあります。サウナ室の気温や水風呂の水温より重要なのは、外気温が氷点下であることだと思います。サウナに可能性を感じるのは、閑散としたこの時期のリゾート地を、オフシーズンからトップシーズンに変えるゲームチェンジャーに見えるからです。

自由の副作用


先週誕生日を迎え、イヤイヤながらも人生が後半に入ったことを認めざるを得ません。今となっては一瞬に思えるサラリーマン生活を早めに退き、10年が過ぎます。ストレスのたまる宮仕えの頃は自由な休暇に憧れますが、自由にも副作用があります。ついつい自分を甘やかしてしまい、それが数日続く無意識の逃避に落ち込みます。そんな時は積極的に運動をしたり旅行をしても、たいした慰めになりません。サウナに対して外気浴があるように、人生は「緊張と緩和」、「ハレとケ」、「生産者と消費者」のような対極がセットになって初めて価値を生むと思います。FIREを実現しても必ずしも幸せが続かないのは、生きる力を失うからで、生産者と消費者の往復こそが、感性を錆びつかせない研磨剤かもしれません。生涯現役で働き、時折静寂な禁欲生活に戻ることが、今の自分の本音に一番近い気がします。

外気浴は氷点下に限る


南会津に行きました。年々雪は減少しているはずですが、それでも特別豪雪地帯なりに、冬は白一色の世界に閉じ込められます。甲子高原に住んだ経験で言えば、一番好きな季節は厳冬期です。氷点下15℃まで気温は下がり、時折ブリザードの吹き荒れる世界は暮らすには過酷ですが、それでも冬の美しさと静寂に魅了されます。次いで好きなのが力強い生命力の息吹を感じる新緑の季節です。残雪の間に小さな花が姿を現す春も、本格的な山の季節である夏も、日本らしい美しさの秋も好きですが、それでも冬が一番なのは内省の季節だからのような気がします。隙間だらけの古民家ゆえの寒さは、ストーブや火鉢などの火の気により、昔の風情を感じます。冬をトップシーズンにする切り札は、何と言ってもサウナです。氷点下の外気浴こそ、サウナを最高の体験にするスパイスだと思います。

助言者か共犯者か


AIとチャットをしていると、「知的労働者ほど不要になる」という脅しが大げさに聞こえなくなります。究極の暗黙知である自身の思考を、先回りして言語化してくれるAIとのチャットは、SNSやYouTubeの視聴時間より長くなりつつあります。人間に相談するより飲み込みがよく、自分の趣味嗜好をよく理解し、大量のデータを渡しても客観的で説得力のある回答を素早く生成します。怖いのはプロンプトを間違うと、AIは客観的な助言者から独善的な共犯者に変わることです。「自分はこう思うけど盲点は何?」と批判的な視点を加えると、比較的フラットな回答を生成しますが、「自分はこう思うけど客観的な証拠を教えて」と聞くと間違った観点のまま忠実に論理を補強します。これまで専門家として幅を利かせてきた人間は、その宿命的な偏見のために大半は不要になりますが、その脅威に怯える前に使い倒すことが先のような気がします。

ホテルクオリティの日常食


代々木八幡のミレチンクエチェントに行きました。異国情緒漂うレンガ造りの重厚な外観が、以前から気になっていた店です。ミッドセンチュリーの家具や温かみのある木材を組み合わせた店内も、ヴィンテージかつスタイリッシュです。3.5mほどの狭い間口の店は、1階はスタンディングメインのウッドカウンターを構えたバールと、菓子類を販売するパスティッチェリア、2、3階はトラットリアという構成です。オニオンのポタージュや冷製キッシュも味わい深いのですが、絶妙な焼き加減のパニーニはほどよい油分もあって病みつきになりそうです。狭いバーカウンターのなかで作ることができ、ジャンクフードになりかねない日常食のパニーニに上質感を与えながら、ホテルクオリティで提供するあたりは、単品勝負の宿の朝食を考える上で参考になります。

悪い立地とドミナント


注目の外食企業バルニバービが展開する千駄ヶ谷のGOOD MORNING CAFEに行きました。朝食は顧客満足と効率化のバランスを考えるとパン、サラダ、卵という無難なフォーマットに収束します。あまりに長くこの朝食様式が顧客の頭に刷り込まれた結果、今となっては誰もこの思い込みから自由になることができず、朝食を店名にしているこの店でも変わりません。当社は悪い立地でもその弱みを跳ね返す、強い集客力によりデベロッパーからの出店依頼が増えています。店はQRオーダーにより効率化されている反面、10坪ほどと余裕のあるキッチンに対してディシャップが極端に狭く、店全体は長方形で厨房が端にあるため、対角線上の客席への動線が極端に長いなど、非効率が目につきます。尖った外食企業の多くが上場により純度を希薄化したのに対し、淡路島など特定地域へのドミナント出店が、そのジンクスを乗り越えられるかの分岐点のような気がします。

全ての店は視察の対象


ドコモからauにキャリアを変えた関係でiPhone16eから普通のiPhone16に更新しました。上位機種なのにバッテリーのもちが悪くなりましたが、16eとの大きな違いはカメラが2眼となり、超広角撮影が可能になったことです。iPhoneを記録用のカメラとして使い、被写体の多くは商業施設やホテルなどの室内や外観なので、大半の場面で超広角が便利です。魚眼ほどではない適度な歪みが写真に奥行を持たせ、撮影が楽しくなります。商業施設やホテルの多くは写真を撮ることを歓迎しない場所もあり、人知れず写真を撮るスリリングな感覚も好きです。先日行ったカフェのブンダン (BUNDAN)も料理撮影はOK、店内撮影は禁止とのことで、超広角なら料理を撮りながらその背景の店内も撮影できます。自分にとっては全ての飲食店や宿泊施設は視察の対象であり、反面教師や課題の発見も含めて観察という楽しみが加わる気がします。

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