贅沢の本質


冬が好きなのは雪景色の美しさと新雪トレイルの気持ちよさもありますが、一番の理由は薪ストーブかもしれません。つい先日まで暑かったのに、山では氷が張る季節を迎えストーブがほしくなる夜もあります。八ヶ岳の家で30年以上使ったフェデラルの薪ストーブを日本製のアグニに交換してもらいました。このストーブを作る株式会社岡本は、創業が1560年の岐阜県最古の企業で、鋳物師の一族は平安時代から続くとされます。フェデラルの3倍の最大出力を誇るだけに、豪快に燃やすというよりは熾火でチョロチョロと炎が漏れる状態で燃やします。炎を見ていると落ち着き、やがて眠くなります。自分を幸せにしてくれるモノを考えたとき、持ち物はN-VANとサウナ、薪ストーブぐらいでいいと感じます。贅沢とは、持っているものの多さを競いがちですが、その本質とは必要なものが少ない状態だと思います。

相手が神様だったから


173億の赤字を出し、もはや再生案件となったジャングリアについて、ひとつ解せないことがあります。1990年代に雨後の筍のごとく現れ、大半が消え、もはやオワコンなのは周知の事実だったはずのテーマパークを、なぜ今になってやりたかったのかです。テーマパーク界の例外的生き残りの片割れであるUSJ出身者という経歴が禍したと思います。例外であったはずのディズニーとUSJの成功を一般化し、しかも人口の少ない地域で二匹目のどじょうを狙ったことが致命傷であり、需要予測を派手に外したことなど、それに比べれば些細なミスです。自然豊かな沖縄まで行って、なぜゴルフ場跡地なのか、なぜ沖縄で恐竜なのか、そんな素朴な質問を誰もできなかったのは、相手が神様だったからでしょう。資金の尽きる時間が迫り、ハウステンボスでは20億円の出資で12年後に666億円を手にしたHISに期待が集まりそうです。

公共交通で行ける3,000m峰


今シーズン登った木曾駒ケ岳と乗鞍岳は山頂の近くまで公共交通でアクセスできます。乗鞍では、バスでアクセスできる最高地点の大雪渓・肩の小屋口が見えてくると、恐れていた最初のバスに抜かれます。2時間かけて登って来たので、山頂には最初に着きたくなります。相手は観光客ですから先行する人々を抜くのは容易く、誰もいない剣ヶ峰に到達します。木曾駒ケ岳ではロープウェイが早く動いてしまうために、山頂はすでに大挙押し寄せた観光客が埋め尽くし少々興ざめです。もちろん、誰もが3,000m峰に立てることは悪い話ではありません。一方で山頂の価値は、人々が目を奪われるほどには高くないと思います。ショートカットした人々は、トレイルの途中に出現する巨石とブナの幽玄な森、清らかな流れと大小の滝を見ることができません。そして、自分の脚力で高度を上げて行く達成感があってこそ、山頂の価値は高まる気がします。

山もビジネスも撤退ライン厳守


土曜日は北アルプスの餓鬼岳に登りました。メインルートの燕岳のさらに北にあるためにあまり注目されず、週末でも静かな山歩きが楽しめます。標高は2,647mですが、白沢登山口は996mしかないので、13.8km、累積標高1,800m、消費カロリー2,531kcalとそれなりの運動になります。標高差と急登、テクニカルなコースのため、多くのハイカーは小屋泊まりですが、日帰りでその先の唐沢岳まで行く猛者もいます。言うまでもなく、山ではセルフレスキューが大原則ですから、一人のときは撤退時刻厳守を決めています。このルートの前半は沢登りのように渡渉を繰り返しながら谷筋を登るのですが、切り立った谷底までの高さが目もくらむほどで、帰路はこのセクションのために集中力と筋力を残しておく必要があります。山岳事故の多くは撤退時刻を守らないことで起きますが、これは山に限らず、ビジネスでも株取引でも撤退ライン厳守こそが身を守ると思います。

ロウリュをしたがる人々


八ヶ岳にいるときは松本の温浴施設、林檎の湯屋 おぶ~に行きます。往復100km走ってでも行く価値があると思います。一日滞在しても900円という良心的な価格により、サウナランキングにコスパ部門があるなら一位を狙える施設です。「サウナイキタイ」の長野県部門2位ですが、トップは伝説の施設「The Sauna」ですから実質トップと言えます。サウナは本格的で、多くの人は6分ともたずに出ていきます。二か所のサウナは温度も湿度も十分で、大半の人は下段に座ります。3分も入れば十分な汗をかけるのですが、困るのはロウリュをしたがる人が多いことです。すでに湿度も温度も十分なのに、よせばいいのに何杯もかけてしまい、あまりの熱さに耐えきれずロウリュをした本人が真っ先に出て行きます。自分の体に聞けばこれ以上のロウリュは不要と分かりますが、サウナと言えばロウリュという思い込みで形から入る人が多いのだと思います。

スペクタクルなキャビン


今シーズンは例年になく山に登りました。普段の八ヶ岳に加え、北・南・中央アルプス、乗鞍岳、御嶽山、白山、雨飾山と比較的広範囲なのは、ベースキャンプとしてN-VANが快適な寝室を提供したからです。車中泊なのに家よりよく眠れるという逆転現象が起き、山を楽しむハードルが下がりました。自然に囲まれる登山口は、暮れ行く時間の稜線や星空を眺めるスペクタクルなキャビンで、もはやホテルに泊まる価値さえ感じなくなりつつあります。地元の温浴施設やスーパーを利用しますので、地域の生活に触れることもできます。北ノ俣岳の登山道修繕ボランティアに行ったときは妻と2人の就寝で、さすがにこれは無理があるものの、緊急用としては使えます。初めて買った国産車で、自分史上最低価格の商用車にこれほど魅了されるのは、人生をシンプルにしたい今の自分に、顕示的消費とは無縁の機能特化の万能車が心地よいからでしょう。

山はすでに冬


山で聞かれて悩ましいのが「あと何分ですか?」という質問です。スピードハイクと標準タイムでは倍ほど違いますし、下ってきた時に上りの時間を聞かれても誤差は広がります。YAMAPのような登山アプリが普及したことで聞かれることはなくなりましたが、乗鞍岳に登ったとき、久しぶりに聞かれました。初老の夫婦が三本滝駐車場から登り始めて、帰りはバスで戻ることを想定しているようなので、次のバス停までのおおよその時間を伝えました。聞いてくるのは山に不慣れな人ですから長めに伝えますが、教えてからあの夫の疲労具合ならもっとかかるかもしれないと心配になりました。トレイルはよく整備され、まだ午前中だったのですが、バスの時間も調べていないようなので、万が一バスを逃すようなことがあれば途中で歩けなくならないとも限りません。都会は残暑でも、この時期の山はすでに氷が張る冬であり、季節の境目は遭難への警戒が必要です。

早期発見の嘘


多くの宣伝は恐怖と脅しを使いますが、頻繁に表示される「ガンの早期発見」広告は不快であり、有害だと思います。検査精度が上がるに従い、一生悪さをしない潜在ガンを見つけてしまい、米国などでは過剰医療が問題視されます。生前には発見されず、死因にもならなかった潜在的なガンは実際に一定数が見つかります。問題なのは「早期発見」が過度に単純化されることで、検査前だけ節制するような本末転倒も起きます。問題はいくら早期発見をしてもガン自体は減らないことです。ガン検診には科学的根拠のあるものが含まれ、全てを否定するものではありませんが、肥満や身体活動不足、飲酒、加工肉・赤肉の過剰摂取を避け、代謝状態を良好に保ち、病気を寄せ付けない身体を作ることが先決のはずです。二次予防にばかり注意が向く社会は不健全で、病気を未然に防ぐ一次予防は、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病も防ぎます。

不眠症はエジソンから


この夏の意外な発見は、車中泊の方が家よりよく眠れることです。これは自宅よりN-VANの方が寝室として優れているという話ではなく、日没後は最小限の光と人工音のしない生活により、人は本来の睡眠リズムを取り戻すのだと思います。寝室をなるべく暗くすることは家でも心掛けてきましたが、おそらくそれより重要なのは、日没以降は明りをほとんど使わない、昔ながらのリズムで生活をすることだと感じます。これを体感できたのは、人工の光と音をほとんど浴びない登山口の駐車場が実験環境になったからです。もともと睡眠が浅く、4時間程度で起きてしまう日が多いのですが、異例なことに登山口では8時間も寝てしまうことがあります。サンプルが少ないので確信めいたことは言えませんが、エジソンが電球を発明した時から人間の不眠症は始まった気がします。

スピードハイクはレジャーの王様


日曜日は扇沢から針ノ木岳に登り種池山荘まで縦走しました。19.7km、累積標高2,250m、3,000kcalある針ノ木サーキットと称されるラウンドコースです。稜線に立つと、これから歩く全コースの山を一望できます。痩せ尾根を走るのは危険ですが、スピードハイクなら扇沢まで7時間半で戻ってこられます。景色を見る余裕すらないトレランほどストイックではなく、他方で、全行程を最大心拍の8割程度を目安に歩き、休憩は写真撮影と水分補給、腰痛対策のストレッチだけです。最小限の荷物でなるべく遠くまで行くことに面白さを感じます。スピードハイクがレジャーの王様だと思うのは、移動・運動・自然・挑戦・精神的高揚を低コストで手に入れられるからです。山岳という最高のフィールドで、自分の身体そのものがアクティビティの主体となる点に自由を感じ、長時間の有酸素運動により脂肪を燃焼させ、筋力を高める健康効果まで期待できます。

Translate »