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30年というモラトリアム

海外では鉄壁と評されているらしい菅首相の内閣人事は、無難というより強い意思を感じます。免許証のデジタル化が早速報じられますが重要政策であるDXの推進に期待したいものです。名寄せできないマイナンバーが改善されれば、コロナ禍で不評だった給付金のもたつきもなくなり行政手続きの効率化とスピードアップが一気に進むでしょう。その影響は医療、教育、納税などあらゆる領域と民間セクターに及び、電子政府で周回遅れの日本にとっては先進国最低の生産性の汚名を削ぐ契機になるかもしれません。その前にすべきことは平成の失われた30年の総括だと思います。この間に米国がICTのソフト分野で、中国がICTのハード分野でそれぞれ躍進したように、日本の生存領域を明らかにすることが重要です。7月には東京圏の人口が、統計を取り始めて以来初の転出超過になったように、デジタル化の推進は地方への人の流れにはずみをつけることになります。大量消費を信奉する巨大都市が、幻想と虚構を産み出す神話の語り部であることに気づくのに、30年というモラトリアムが必要だったのかもしれません。

最良の治療は最小の治療

自粛の同調圧力が薄れた先月あたりから山に行く機会が増えました。一見体に良さそうな山での運動は不調と隣合わせです。膝、腰、胃腸を壊す人が多く、以前は常に膝の痛みに悩まされました。これは過体重が原因で今より20kg以上重ければ、体重の数倍の衝撃を受け止める膝が壊れるのは必然で、減量後は膝に不安はありません。昨年までは腰痛がひどく去年の上州武尊山スカイビュートレイルを50kmほどで棄権したのも腰の痛みが原因です。施術も受けましたが、これもごく簡単な方法で治癒しました。背中にテニスボールを当てながら骨盤を立てるコンディショニングを1分程度、運動後にするだけで完治しました。運動以外でも、花粉症は鼻うがいで、胃痛は冷たい飲み水をお湯に変えるだけで簡単に治り、大半の不調は誤った体の使い方が原因です。最も深刻な不調は食べ過ぎによる自傷行為で、生活習慣病の多くは自らが生み出しています。取り扱い説明書がない人体は、正しい使い方を学ぶ必要がありますが、一見豊かな生活は内なる声を聞けなくなり、手厚い医療体制が治療を人任せにしました。最良の治療とは最小の治療による自発的治癒に尽きると思います。

ハングリーがデフォルト

派閥に恵まれず不運なめぐり合わせに翻弄された新総裁の政治家生活は転落と復活の人生ゲームさながらのシーソーゲームでした。新人ながら有力者野中広務を敵に回し再起不能と思われたときも、やられればやられるだけ燃える、と流行りのテレビドラマさながらの不屈さです。非世襲、無派閥の苦労人に世論は概ね好意的です。安倍下ろしだけが存在価値で最も深刻な安倍ロスを被った大手メディアにとってはやりにくい相手です。生まれながらのエリートには華がありますが、雑草には生命力があります。日本に欠けるのはハングリー精神で、飢えこそが生命力をかきたてます。食事を減らして飢餓に近づくと体が必死になって養分を吸収しようとするのが分かります。飽食社会は詰め込むばかりに執着し栄養を消化吸収できません。世間が豊かな人生だと思い込んでいる幻想とは裏腹に、飢えを感じることこそが生命力を高める因子だと思います。厳しい環境を生き抜いた人体は、生命の危機を感じると脳幹が活性化され、逆に満たされた状態では生命力は徐々に蝕まれていきます。多くの宗教が禁欲を説くのは、それが抑制ではなく生命力の高揚に他ならないことを経験的に知っているからだと思います。

海の家のラーメン

大半の国民の知らない密室の数の力で決まった自民党新総裁には二候補も含めて国のリーダーらしいオーラを感じません。平日は5時に起きて赤坂の議員宿舎から40分ほど散歩をするのが日課とのことで、サラリーマン時代に六本木のスウェーデン大使館付近で二人のSPを伴い歩くスーツ姿の菅さんに何度か会ったことがありますが華やかな印象はありません。米露との太いパイプを持つ外交における安倍ロスは誰がやっても埋まらないので、安倍政権の経済政策が継続されるのであれば順当な選択でしょう。今でもインバウンド6,000万人を掲げIRなど素直に同意できない政策もありますが、民泊推進やラブホテルの一般ホテルへの改装支援、国立公園内の高級ホテルにも前向きな令和おじさんは観光、宿泊業界にとっては救世主かもしれません。平成おじさんから首相になった小渕首相をビートたけしが、まずいと思って食べたら意外と美味かった「海の家のラーメン」と評したように、安全保障、景気回復、成長戦略で望外の実績を上げてもらいたいと思います。

究極のグルメ

人は食べることに興味を持ちますが、最近の関心は食べないことです。体重は高校以降で最も軽い57kgになりましたが、今のところ健康状態は良好で登山のコースタイムに低下は見られません。人類誕生以来、食べることは最も大切な欲求であり疑念を挟む余地はありませんでした。体内合成という人体の不思議なメカニズムが次第に明かされ、エネルギー産生システムが3系統あることが広く知られるようになったのは比較的最近です。固形物を摂らずに生きる不食者は世界に数万から十万人に及びNASAの研究対象になっています。人間は経験から学ぶ存在であり、それが荒唐無稽な仮説だとしても自分の経験に根ざしたものであれば強い信念を形成します。ライトイーターと呼ばれる基礎代謝の半分程度のエネルギー摂取で生活することは経験的に可能だと思います。現代の栄養学と常識では説明できませんが、不足するエネルギーは食事以外の何らかの方法で体内合成している可能性があり、究明が進むと不食のメカニズムが解き明かされます。もし不食が可能になれば食べることは純粋な楽しみとなり、そのとき人は究極のグルメに到達するのでしょう。

登山は合理的な運動

昨日は300km超を始め海外の主要レースに出るトレランの友人と八ヶ岳に行きました。権現岳は雲のなかで眺望はありませんでしたが、雨まじりの天気でコケの美しさが際立ちます。今朝は編笠山、西岳に一人で登りそれぞれに楽しみがあります。ハイキングは遅い人に合わせますがトレイルランナーは速い人に合わせますので人と登ると練習になります。一人の登山は自分と向き合うために有効で、山は体を鍛えるジムであり、心を整える僧院にもなります。連日山に入るとかつての記憶を筋肉が取り戻すのか、体が自由自在に動くようになり、下り道が楽しくなります。登りは持久力のある赤筋を使うのに対して、下りでは体重の何倍もの負荷を受け止めるために瞬発力を発揮する白筋が使われます。引き延ばされながら何度も衝撃を受け止めることで筋肉繊維が破壊され、筋肉が回復する段階で大量の成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは血管の強化や肌のハリも良くするなど若返りホルモンとして注目され、さらに白筋は回復すると太く強化されエネルギー源である糖質を吸収し糖尿病改善効果も指摘されます。バランスよく全身の筋肉を鍛えられる登山は合理的な運動だと思います。

フォロワーシップなき日本

昨日は長野市に行きました。中心街の日中の体感温度は33、4℃ですが、人通りのある長野駅周辺を15分ほど歩いてもマスクをしていない人は2人だけです。真夏日の炎天下に強制されたわけでも、効果があるわけでもないマスクを徹底できる国は強権的な独裁国家を除いて日本しかありません。一方で冬になると毎年やって来てより多くの人が死ぬインフルエンザは野放しでした。マスメディアと同調圧力でここまで統制できる国を誇らしく思うよりも薄気味悪く感じます。地球上の文明の中で有史以来一国家一文明を維持してきた国は日本しかないとサミュエル・ハンティントンは言います。GHQ以外に占領されたことのない島国日本は長期的視点に立ち一枚岩になれる側面があり、それが製造業の現場力として世界を席巻したと思います。日本ではリーダーシップの問題が取り上げられますが、本来のリーダーシップには自律的な判断力を伴うフォロワーの存在が不可欠です。皆がマスク警察に加担する日本には、見識が問われるフォロワーシップが欠如していると感じます。一部の業界においてもムラ社会の横並び意識が環境適応を遅らせていると思います。

昨晩のことは記憶に無いのに

歳がバレるのですが、三島由紀夫が数奇な運命の末に市ヶ谷駐屯地で自決したときも、そして19年前の今日、米国で同時多発テロが起きたときもどこで何をしていたのかはっきりと覚えています。記憶には意味記憶とエピソード記憶があり、出来事に関連づけて覚えるエピソード記憶は時の流れとは無関係に鮮明に残ります。昨晩の夕食の記憶は怪しいのに、19年前の今日、どこで誰と会い、食事は何を食べ、誰と電話で話し、その内容まで記憶しているのはわれながら驚きです。19年前の今日は関西にいて午後はホテルの客室で仕事をしていました。日中は暑く、空気が澄んだ日で、印象に残っているのが客室から見た瀬戸内海に沈む夕日の美しさです。凪いだ瀬戸内海に面する山々がはっきりと見渡せ、その上空の雲に太陽の光が黄色く反射する美しい光景に見とれました。感動を生むビジネスをやらなくてはならないとそのとき感じたのですが、この19年にどれほど進歩したのかは考えざるを得ません。人生には啓示を受ける瞬間があり、テロ攻撃が起きる4時間ほど前がまさにその時でした。

途中で止めるフルコース

最も人気のない家事は炊事でしょう。それは食事を堅苦しいものにして自分でハードルを上げているからだと思います。育ち盛りの子供がいるお母さんは大変ですが、自分のための自炊なら気楽です。最も効果的な手抜きは食事の回数を減らすことで、一日三食の思い込みを捨てお腹が空いたら食べるようにするだけです。歴史的には二食時代が長く、さらに遡れば数日に一度食べられるかという時代もあったはずです。空腹を待って食べると一日1.5食程度に落ち着き、食事を作る手間は半減し肥満とも無縁で健康になります。一日30品目食べようなどと考えず一汁一菜なら味噌汁を作り置きして漬物でもあればあとはご飯を炊くだけです。一人のときは、まず一品作って食べてお腹が空けばさらに一品作る受注生産方式、つまり途中で止めるフルコースみたいなもので、2、3品食べると「もういいか」という気になり食べ過ぎを防げます。料理が最初から並ぶと食べてしまうのが人情です。料理の基準は冷蔵庫を開けてから3分位内の手間で作れること、美味しくかつ飽きないこと、運動をするために必要な栄養を摂れることで、視点を変えると料理は五感を磨き、感性を研ぎ澄ます創造的な活動になります。

バカバカしくて笑うしかない?

2013年に放送された前作が平成のドラマで一位の42.2%という驚異的な視聴率を出した「半沢直樹」は、今作でも令和最高の数値を出し今年最大のヒット作となりそうです。新人類と言われたバブル入行組の作家が描くアナザー・ワールドの偏狭な組織は、「沈まぬ太陽」などの企業批判とは異なり、もはやバカバカしくて笑うしかないというレベルで、それが悪を懲らしめる水戸黄門的な痛快さに現れていると思います。7月末にルノーが発表した半期の純損失は過去最高の巨額赤字で、その3分の2がかつては金のなる木だった日産の赤字によるものです。日産の中国企業への売却を避けたい経産省はありえないホンダとの経営統合を画策したとされます。日本企業の再編加速を予測する外資ファンドは対日投資に意欲的です。一方で日本の大企業は、未だに「半沢直樹」が描いた垂直統合時代の自己完結的な閉鎖構造と古い価値観に浸り、外部のアイデアを組み合わせるオープンイノベーションの時代になると、ムラ社会の弊害による意思決定の遅さや低い生産性が深刻な問題となりそうです。

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