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タレントを探し成長させる

「50歳を超えたら、自分が本当に欲しいもの、必要なもの、諦めないといけないものを明確にしないといけない。私はキャリアのために生まれてきたのではなく、さまざまなことを経験し、挑戦するために生まれてきた」。先月引退を宣言したアリババ創業者のジャック・マーの言葉です。世界最大級の企業を生み出した能力は、最初のキャリアである教師時代に修得したと言います。「タレントを探し、トレーニングして、成長させる」「第5世代まで、リーダー候補者がいる」ほどの人材の層の厚みは、後継者不足による廃業ラッシュが続く日本とは別世界です。「教えることは、自らの人生を振り返ることになる。誰かを真似するのではなく自分らしくいること、それが大事なことなのだ」。自分と同世代の言葉は心に響きます。

労働から時間概念を消す

昨日は千葉県の企業に伺いました。どこでも人材確保の難しさを聞きます。日本の生産性が先進7カ国最低で、欧米の6割程度にしか達しない理由は無駄な仕事と集中力の欠如が主因だと思います。無駄な仕事を疑いもなくするか、仕事をするふりで一日を過ごしているケースが大半です。1990年代初頭をピークに多くの産業では市場規模が縮小していて、その主たる理由は単価の低下です。生産性の問題に限らず、経済成長期の方法で仕事をしていることがずさんな管理会計をはじめとした企業の諸問題を生み出しています。生産性を高める方法は時間労働という概念をなくすことだと思います。「成果」を管理せず、賃金の基準が工場労働と同じ「時間」という矛盾こそが日本の生産性を最低にしていると思います。製造業の生産性は今でも低くありませんが、工場管理の方法で他の産業を管理することに無理があり、解決策は労働から時間概念を消すことだと思います。時短も悪くないのですが、本質を理解せず時短をすれば生産性はさらに低下します。コンセプトとしての成果主義は成果を管理しませんので、働く人は労働を主体化することがありません。

好きな未来

昨日は「関東三大祭」の一つであり国の重要無形民俗文化財、ユネスコの無形文化遺産に登録される「川越氷川祭」に呼んでいただきました。松平信綱の祭礼用具寄進から今年で370年の節目を迎える祭事には2日間で80万人の人出を数えると言います。こうした機会がないと出不精で祭りに出かけるモチベーションはわきません。集まったのは会社を辞めて事業を始めた人です。共通するのは答えを求めず嗅覚で判断して素早く行動すること、生涯現役を目指していてモナコに家を買うといった手の届きそうな夢を持っていることです。事業を起こせば未来が不確定なかわりに、未来の目標を好きなように設定できます。

未来こそ生きる原動力

経営する㈱甲子高原フジヤホテルの決算期は9月です。前期決算は黒字ながら営業を休止している旅館単体のプロジェクト収支は赤字です。苦労の絶えない旅館を買ったことに後悔がゼロではありませんが、得たものはそれを埋め合わせるのに十分です。旅館を直接営業することで初めて分かることも多く、様々な人たちとの出会いが新しい世界を見せてくれました。そして東京以外の場所に住むことの素晴らしさを知りました。実利的なメリットもあります。50年営業してきた旅館の知名度は、ぼくのように組織的な背景を持たない人間には一定の信用につながります。斜陽産業の代表格である旅館を買ったことに興味を示してもらえることも重要なメリットです。何より最大の魅力は未来を買ったことです。人生の重大決断をさせたのはブナ原生林に囲まれた阿武隈源流の美しさであり、ここで実現したいまだ見ぬ未来こそが今を生きる原動力です。

仮想空間に生きる

米国系コンサルティングファームに転職した20年ほど前、「命がけで働く」と周りが言っていて、最初はドン引きしたものの、ハードワークを厭わない同僚と働くうちに自分でもそんな気になり始めます。サラリーマン時代はどこか仮想空間にいたと思います。長年組織固有の建前で生きていると自分が誰なのか分からなくなります。どこか身構えて、不条理に耐え、誰かの顔色をうかがい、ときに心にもないことを言い、損得を計り、相手を値踏みし、美辞麗句を並べ、お互いの嘘に目をつぶり、本音を隠し、敵を作らず、いつもダブルスタンダードで、思い込みと本心の違いが分からなくなり、こんな姿は自分ではないと思いながら残りの人生がすり減っていく恐怖を避けられない運命とあきらめていました。偽りの自分を演じて生きる辛さは組織を離れて初めて分かります。人生の判断には失うものがあります。第二の人生を始めて失ったものは要らなかったものだと気づきました。

自己超越的な成長

トレイルランニングのレースにデビューしたのは50歳の誕生日を迎えた5年前の夏です。長年運動もせず放置された肥満体は走ることができず、当時小学生だった娘と励ましあいながら15kmのショートコースを一緒にゴールしました。それから5年で多少なりとも走れるようになり、レースでも半分より前に着けるようになりました。エントリーする50kmや60kmのレースなどかわいいもので、友人の多くはマイラーと呼ばれ160km超のレースを不眠不休で走破します。人はなぜ苦しい道を自ら求めるのか考えます。それは苦難の先に自己超越的な成長があるからだと思います。2016年末に旅館を買ったあと営業許可が取れなくて4、5日食事が摂れないほどのストレスに陥りました。恥も外聞もなく人に助けを求め生き残るためにがむしゃらに前に進む場面でこそ人は成長し生きた知識を身につけると思います。自分の判断が正しかったのか今もって分かりません。ただ人生で遣り残したものへの未練が減ったことは確かです。

論理・左脳教育の限界

マーケティングが焦点をあてるべきはベネフィットにあり、顧客理解に長けることだと授業で話します。そして自分の授業のベネフィットは何かをいつも考えます。高等教育が直面する問題は画一的な講義で学生の学習意欲や興味を引き出せないことだと思います。これから社会に出て行く学生に働くこと、学ぶことの魅力を伝え行動変容を起こすことが対面授業の価値です。熱意だけでは十分な効果を生むことができません。自分の授業も含めて論理や左脳偏重の教育が授業を苦役にしていると思います。まず体で感じて、理論はその後です。自分が甲子高原で毎朝やっていたように、早朝の稜線で日の出を拝み、トレイルを駆け下りながら野生の感覚を取り戻し、そこから集中して頭脳労働をする、そんな全身を駆使する画期的な授業体験を実現できないものかと妄想します。

必要なのは政治より理性

昨日は大手町、日本橋に行きました。行く頻度が減ったせいか景色が新鮮です。再開発の進む街並みを見ていると景気低迷の実感はありません。他方で、消費増税に歓迎を表明する経済界、野党をはじめ誰も異議申し立てをしないことは不気味です。再々延期の可能性を残すものの、増税を促す国や学者、マスコミの権威などあてになりません。票や利権、大企業のエゴが見え隠れし、国の行く末を左右する重要政策のビジョンが示されることはありません。10%では足りないことは誰もが知っています。年々縮む世帯消費支出に見られるように国民は一層の生活防衛に入ります。問題を先送りし国が傾いてもなお目先の利益を漁るこの国に必要なのは政治ではなく、欲をコントロールする理性だと思います。

安住の地を捨てる

留学場所を移動する娘から週末に荷物と手紙が届きました。ニュージーランドの素晴らしさは宅配便の箱に至るまであらゆるデザインのモチーフが統一されるビジュアル・アイデンティティの一貫性です。国章から幻となった新国旗、オールブラックスのエンブレム、エアラインの機体からあらゆるものが大木に成長する木生シダのシルバー・ファーンやマオリ族伝統のデザインをモチーフにしています。五感の大半を支配する視覚情報として国のブランド価値を可視化するのは、小国ゆえの存在感を高める方法なのかもしれません。引越しのさなかに書かれた短い手紙からは日本を発つ前には想像ができないこの8ヶ月の成長が分かります。昨年暮から3ヶ月我が家にホームステイしていたオーストラリアからの留学生といい、多感な時期の10代半ばの成長には目を見張るものがあります。それに比べれば個人事業者になりこの2年で変わったと騒いでいる自分の成長など物の比ではありません。心地よい安住の地を捨て、厳しい環境で未来を切り開こうと必死にあがくことで、人は初めて成長できると思います。幸か不幸か今の日本社会はその逆を目指しているように見えます。

美しく衰退する桃源郷

昨日は甲子高原にいました。自然の懐に戻るとこの場所こそが自分の定位置だと思います。公害をはじめ多くの社会問題に直面しながら、社会人になる頃までは日本に生まれた幸福に感謝をしました。世界第三位の経済大国である今の日本を誇らしく思う機会は少なくなりました。少なからぬ国民が自信を失いときに自虐的になる理由は、国の将来への不透明感だと思います。ジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われた日本は、課題先進国のトップランナーです。ペリー来航以来165年、常に誰かの背中を追って経済成長の先にあるユートピアを目指してきた日本にとって、理想郷はもはや幻想であり、その地を目指す気概も能力も失いました。開催まで2年を切ったオリンピックに一縷の望みを託す向きもありますが、多くはその後に訪れるであろう不況を怖れます。不足のなかに心の充足を見出す「わび」の美意識を持つ日本が世界に問うべきは、美しく衰退する桃源郷だと思います。

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