最も自然の恩恵を享受する世代

各地が熱波に襲われる時期ですが、連休初日に行った雨の甲子高原では、車載の気温計が14.5度を指す天然のクーラーによる別天地です。氷点下15度の厳冬期の寒さは身に染みていますが、体温を超える灼熱の東京と違い、自然の美しさに救われます。初めて甲子高原に来た7年前以来、心の健康を保ってくれるのは、阿武隈源流のブナ原生林の癒しだと思います。源流地域は雨が多く、那須おろしと呼ばれる突風は鉄筋コンクリートの建物を揺らし、雪の日なら1m先も見えない過酷な自然環境だとしても、無機質な都会と違い、生命の営みを感じることができます。祖先の苦労のおかげで、現代人は自然の脅威から身を守ることができるようになり、人類史上最も自然の恩恵を享受できる世代だと思います。しかし、自然と隔絶した生活を続けるうちに、その恩恵を過小評価し、感受性を失い、我欲に翻弄されているのかもしれません。

仕事は人生の目的

日曜日は八ヶ岳の麓大泉町にあるワーキング・プレイス8MATO(やまと)を見せていただきました。八雲神社に隣接する約2,700 坪の土地を利用した施設は、森を含む施設全体にWIFI6による高速ネットワークが完備されます。赤松を伐採した明るい広葉樹の林でも200Mbps以上で接続できると言い、アウトドアで働くワークスタイルを提案します。建物に使用されている木材は、敷地で伐採された赤松などが使われる究極の地産地消です。礎石にした自然石の形状に合わせて、床を支える柱の底を刻んで乗せる伝統構法「石場建て」が採用され、柱や梁にも釘やボルトは極力使わず木組みされる日本古来の構法と技が生かされます。デンマーク発のテントブランドROBENS(ローベンス)の二張りのテントも常設され、さらに森に溶け込むこともできます。過酷な通勤電車と殺風景なオフィスから解放され、自然の元で働くなら、仕事は人生の目的になるのかもしれません。

トレランは脳疲労を癒す

週末は連日八ヶ岳の編笠山(2,524m)、西岳(2,398m)に登りました。冨士見登山口から3時間でラウンドできるこのルートは、大きな岩塊や八ヶ岳らしい樹林帯を抜ける変化に富んだトレイルです。昨日のように暑い日には、その冷たさが際立つ乙女の水も大きな楽しみです。日の出前に登り始めると7時には戻れる手軽さがゆるトレランの魅力ですが、最大のメリットは脳疲労に効くことだと思います。スピードが増す下山道は着地に集中をするので、サウナや瞑想により脳疲労が緩和するように、デフォルトモードネットワークによる脳のエネルギー消費を抑えてくれます。転倒の原因になる、滑る、転がる、躓く障害を素早く見つけて着地場所を探すと同時に、なるべく腰への衝撃とソールの減りの最小化を瞬時に判断します。一方で登りは規則正しいリズム運動によりアイデアを思いつくことが多く、脳を健康に保つことに役立つ気がします。

美しく成長する住宅

土曜日は秘境桧枝岐に近い南会津の古民家を見に行きました。屋内に入ると堅牢なつくりであることが分かり、2メートルの降雪がある豪雪地帯ながら、あと100年ぐらいは使えそうです。新潟との県境が冬季閉鎖になり、東京からアクセスが悪い陸の孤島のような山中に、140年も前に立派な家を建てたことが不思議に思えます。今より雪が深かった時代の先人の苦労は、想像を超えるものでしょう。古民家は人間の寿命より長く使え、代々受け継がれてきました。代替わりする度に改造され、近代になるほど自然と調和しない美的感覚に欠ける造形になっていきます。生理的な快適さや利便性を追い求めた結果、民家のプロポーションは変化し、日本人の審美眼は損なわれてきたと思います。家も車も壊れる前に買い替える風潮の日本で、代々直しながら使い続け、美しく成長していくような住宅が作られる日は来るのでしょうか。

人生を豊かにする家族経営

昨日は浦佐駅前のファミリーダイニング小玉屋に行きました。かつては全日本スキー連盟SAJバッジテスト1級が最難関という伝説の地ですが、今はそのスキー場もありません。昭和2年創業で4代96年続く食堂のメニューは、和洋中が揃うファミリーレストランそのものです。メキシコ風スパイシーチキンライスは、創業から続くメニューで、味は普通に美味しいのですがピラフの食感が絶妙で、ファミレスというよりはホテルのコーヒーハウスのクオリティです。チョコレートパフェも自家製のソフトクリームの舌解けが秀逸です。全メニューが手作り、無添加、地産地消で、ハンバーグは注文を受けてから整形します。料理提供は早く、3代目の社長が仕切る厨房の体制はおそらくホテル並みでしょう。家族経営なのに週末には4、500人をさばくのは驚異的で、このような人生を豊かにする家族経営の店が増えて欲しいものです。

自然と一体になり生きた記憶

昨日はサウナ建設予定地の古民家を見に行きました。屋根裏に登ると、建物の強度を増すため弓なりに曲がった梁が、建物を安定させているのが分かります。マシンカットされていない江戸時代の構造材を見ていると、手間暇をかけた当時の住宅へのこだわりを感じます。この家が建ってから160年以上が過ぎ、現代の住宅は快適至極なものとなりましたが、戊辰戦争以降の戦乱や東日本大震災に耐えてきたこの家屋ほどには長く使われることはありません。土地の風土に合わせて建てられ、木の感触や、風通しの良さなど、自然との調和を感じる点も魅力です。産業革命以降の物質的な豊かさは、自然界の秩序と調和し、その循環のなかで生きる叡知を感受する力を弱めたと思います。自然と一体になり生きた記憶は消され、利己的な欲求ばかりを優先した結果、節度を知る高い精神性も失い、身体のバランスさえも崩したのかもしれません。

健康優先の省エネ生活

昨日は自宅の玄関ドアに網戸を付けてもらいました。居室の多くが地下にあるため、今の季節でも比較的涼しいのですが、数度気温の高い1階にある自分の部屋が、外気を取り入れることができるのは玄関ドアだけで、風が抜ければ暑さも和らぎます。体調を崩すクーラーよりは扇風機の風が心地よく、エアコンをほとんど使わないために、以前の家より面積は広いにも関わらず、電気代は半減しました。世間にはひと手間をはぶくための便利さがはびこり、生活に工夫をしなくなったと思います。水風呂の気持ち良さなどこの季節ならではの楽しみです。エアコンの過剰使用はヒートアイランド現象の一因ともなり、多少暑くても汗をかくぐらいが健康だと思えば、エアコンなしの生活も苦ではありません。食べないことが健康につながるように、健康優先のライフスタイルを心がけるなら、自ずと環境負荷を下げる省エネ生活になると思います。

通勤はリトリート

日本工学院に出講する水曜日は車を使います。交通量の少ない早い時間に、都心とは反対側に向かうドライブはポジティブな感情を生み出します。ストレスの少ない道を選んで、真夏に向かう今の季節なら山下達郎をかけながら走ると、自律神経バランスが整い、通勤はリトリートになります。気分を高揚させるのは青春時代に連れ戻してくれる曲で、ユーミンやサザンオールスターズなどもその代表です。ユーミンのアルバムは時代を反映し、その曲を最初に聞いた時代や当時の情景が蘇ります。対して山下達郎の曲は時の流れを止める一貫性を感じます。不調和を伝えるサザンオールスターズを聞きたくなるのは、未熟な高校時代を懐かしむときです。いかなる仕事もベストの状態で職場に行くべきですが、教員のような対人サービス業では、高いテンションのやる気モードで臨む必要があり、通勤時間の過ごし方が大切だと思います。

老いを喜び、謳歌する

以前はFIRE的リタイアに憧れ、新興国のコンドミニアムでも買って、その家賃で働かずに暮らすステレオタイプの生活に憧れました。しかし海外投資で躓き、そうならなかった今の境遇の方が幸せだと思います。早い時期に不労所得を得てしまえば、勤労意欲を失い、一方でやりたいことも見つからず、退屈な消費の末に生命力まで弱ってしまいそうな気がします。大半の人は、体がいずれ動かなくなることを前提に人生設計をしますが、死ぬまで身体は動くと思うなら、あせって人生に期限を決める必要もなくなります。定年後に30年の活動的な自由時間がある人は、現在では極めて稀で幸運なケースではありません。90歳まで働くことを前提に人生を計画するなら、いつまでも前向きに過ごすことができそうです。そして90歳になる頃には今より執着も薄らぎ、老いを喜び、謳歌する老年的超越の境地に入っていることでしょう。

最も自由を実感できる暮らし方

昨日は自宅の付近でも36度の猛暑になりました。もはや気持ち良いほどの暑さですが、エアコンを使いたくないので、この時期の睡眠は不足しがちです。何かと便利な東京は嫌いではありませんが、不満があるとすればこの暑さと、自然へのアクセスの悪さでしょう。数年前には現実的とは思われなかった、アドレスホッパーのためのインフラやリモートワークが普及し、好きな季節に好きな場所で暮らすライフスタイルが可能になりました。複数拠点の居住は、様々な刺激を受けることができ、一方で人々が移動することにより地域に消費がもたらされます。海外にまで範囲を広げるなら、人生におけるカントリーリスクの分散や、節税の効用も期待できます。良くも悪くも国や地域に拘束されない生き方こそ、最も自由を実感できるような気がします。

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