
この季節になるとサラリーマンを辞めた9年前を思い出します。お世話になった4社には感謝しかなく、他方で、勤め続けることの先にある言い知れぬ恐怖や、他の可能性を見たいという好奇心が勝ったと言えます。それまで勤めていた会社の良さは、辞めた後に初めて分かります。同様に給与所得者を離れてみないと、誰にも守られない不安を想像することは難しいのかもしれません。この9年間は一進一退でしたが、求めていたのは人生の主体性を取り戻すことだったような気がします。人付き合いが苦手で、組織内を立ち回る器用さに欠ける自分にとって、今日に至る道筋は当然の帰結だったのかもしれません。若いとは言えないが、かといって隠居するほどの歳でもない今頃になって、人生で何をなすべきかが分かり始めた気がします。本当に恐れていたものは、何もなさずに死ぬことだったのでしょう。
お知らせ
一石三鳥のスピードハイク

先週に続いて、編笠山、権現岳、西岳に登りました。八ヶ岳の山はどこも登山口からの標高差が1,000m以上あり、山頂の気温は6度ほど低く、今の季節に行くのは快適です。厳選された最小限の装備で遠くまで行くスピードハイクが好きですが、腰痛で運動を控えていたことから筋肉が落ち、20km超の距離をこなすには筋肉量が足りません。マゾヒスト系アスリートのスパルタンさとは無縁の軟弱さで、他方で一般ハイカーの倍程度の距離を移動する、いいとこ取りを狙います。20km程度の山での移動であれば食料補給はしませんので、ミトコンドリアを活性化でき、糖質を使わず自身の体がため込んだ脂肪を燃やすので、健康的な体形に近づき、お金もかからず一石三鳥です。山ではセルフレスキューが原則ですから、想定外の事態に備えた帰路であるエスケープルートの確保は最重要で、準備の段階から小旅行の楽しみは始まります。
自然を扱う商業施設の矛盾


昨日は武田勝頼終焉の地として知られる天目山景徳院と、近くにある竜門峡のトレイルを歩きました。渓流沿いの散歩道は素晴らしく、遺構が語りかけてくるような炭焼窯跡や、見る者を圧倒する巨石の数々など、大自然の神秘に触れる興奮の連続なのに、会ったのは渓流釣りの男性一人だけです。一方で25日に開業したジャングリアは盛況のようで、沖縄の北部振興策としては賞賛したいのですが、自然を分かりやすく商業化することには抵抗感もあります。大自然におけるレジャーの醍醐味は、人間が本来の野生を取り戻すことですが、登山道で会うハイカーでさえ周囲を無警戒で歩いているように、感度を失った都会人にはよりリアルな自然が必要だと思います。人工的な付加価値を付けない限りお金がとれない宿命のため、自然を無粋に加工せざるを得ないことは、自然を扱うテーマパークの矛盾でしょう。
冴えないのに特別

為替などの影響とは言え、三菱自動車の4~6月期の純利益が97%減と伝えられます。初めて乗った車が叔父からもらった初代コルトギャランで、今とは違い車がシンプルで楽しかった思い出があります。以来ラリーシーンでの活躍もあり、三菱自動車は冴えないのにいつも特別の存在でした。昨年買ったN-VANで自動車への欲求はほぼ満たされ、以前のように車にときめくこともなくなりましたが、あえて国産車で欲しい車を探すと三菱のデリカD5は最右翼です。ミニバンの快適な空間とSUVの高い悪路走破性を融合する、唯一無二のコンセプトで、世界的に見ても稀有な存在だと思います。どこか冴えないイメージがつきまといながら、4WDのMPVというマニアックな車を出せる熱い思いが企業体質なのか、たまたま居合わせた個人によるものか分かりませんが、このような車を生み出せる企業には生き残ってもらいたいものです。
結局近所の庶民的サウナ

昨日は大月で前期最後の授業があり、前日は雲取山に登り都留市のホテルスターらんどに泊まりました。昭和の健康センター然とした温浴施設は、自家栽培の薬草風呂が名物です。サウナはどうせおまけだろうとたかをくくっていたら、95℃の昭和のドライサウナは、湿度が高く数分とかからず汗が吹き出す本格派です。ロウリュもできない昔ながらのサウナかと思いきや、地元の人は水筒にロウリュ用のアロマ水を持参していて、それもブラックフォレストと呼ばれる高級品です。昼頃にはボランティアのアウフグーサーまで来る隠れた名店は、朝風呂は500円、昼でも600円と値段も良心的で、近所にあれば通うことは必至です。結局、サウナブームの最後に生き残るのは、何の変哲もない近所の庶民的サウナのような気がします。一過性の非日常は感動が続くことはなく、日常的な小さな幸せこそが合理的なのでしょう。
コスパ最強のレジャー

昨日は雲取山に登りました。トレイルランナーやスピードハイカーにとっては走りやすい気軽に行ける山ですが、七ツ石山、雲取山、雲取山荘経由で丹波山村村営駐車場から往復22kmあり、それなりの達成感も得られます。気温は比較的低いのですが、それでも大量の汗をかき、その後は都留市の健康センターで、サウナ6セットと薬草風呂に入り、さらに汗をかきます。山に面した外気浴で、天然のレインシャワーを浴びていると、低く立ち込めた雲のなかで雷鳴がとどろき、頭上をジェット戦闘機が過ぎたような迫力です。雷が止むと、今度は森のなかから蝉時雨が始まり、得も言われぬリラックスと陶酔感がやってきます。目を閉じて、ここがバリ島のウブドの森だと脳に暗示をかければ、おそらく同様の神経伝達物質が作用するはずです。銭湯並みの入浴料と多少のガソリン代だけのレジャーは、健康まで手に入りコスパが最強だと思います。
パタゴニア信者になるための洗礼

ワークマンのソフトシェルトレックライトパンツを山用に買いました。軽さ、伸縮性、耐久性、撥水機能など、機能面では見劣りせず、競合を寄せ付けない1,900円です。細見のシルエットがスタイリッシュで、一見してワークマンと分かるロゴが見えないこともポイントです。類似するパタゴニアのテルボンヌ・ジョガーズは14,300円しますが、ロゴを見なければ両者の判別は困難です。パタゴニアの優位性は145gの軽さで、ワークマンに40gの差をつけます。撥水材にフッ素が入らないリサイクルポリエステルや、UPF40の紫外線カットなどの違いはありますが、両者は生地感も似ています。おそらく最大の違いは、縫製工場にそれなりのお金を払うフェアトレードでしょう。他方ワークマンはポケットが多く、裾部分にファスナーが付くなど機能的です。8倍のプレミアムを払うことは、パタゴニア信者になるための洗礼なのでしょう。
山はマインドフルネスの手段

四季を感じるのに、山ほどふさわしい場所はないと思います。梅雨が明け天候が安定する今は、山が一年で最も輝く時期で、三連休ともなれば人が殺到しちょっとしたオーバーツーリズムが起きます。日の出前に富士見高原登山口から登り始めると、権現岳には6:30頃に着き、編笠山の山小屋を出発したハイカーで山頂付近は渋滞します。山に行く目的は人それぞれですが、自分との対話の時間を重視するなら、人気のある名山ではなく知る人の少ない静かな低山がふさわしいでしょう。その点で日本百名山の踏破に関心はなく、勝手を知る山に異なる季節に登ることが好きです。同じ山に行くメリットは、負荷が一定なのでその日の体調を知ることができる点です。山を目的地ではなく、マインドフルネスの手段ととらえるなら、最も輝く季節は山が雪に覆われ、美しい白一色の世界に変わり始める初冬だと思います。
気配を感じる力

長野県にいた初日は西岳に日の出の頃と午前中に2回登り、2日目は編笠山、権現岳、三ツ頭から観音平に下山し再び西岳に登り返しました。2日間の累積標高は4,700mほどになり、酷使された体にはメンテナンスが必要です。多少ハードな山行が現代人に必要なのは、普段からストレス、食べ過ぎ、運動不足の病的生活習慣にさらされているかです。もう一つ現代人が失ったものは、気配を感じ取る力だと思います。半袖シャツから入れ墨をした腕を出している若者が山で前を歩いていて、からまれたくないので、しばらく音をたてて数メートル後を歩くのですが、全く気づく様子がなく、恐る恐る「こんにちは」と声をかけると飛び上がるほど驚きます。この若者に限らず老若男女を問わず、同行者との話に夢中になっているわけでもないのに、背後の人に全く気付かない人の多さは驚きです。天敵を失った人類は気配を感じる力も奪われたのでしょう。
永遠の30代

今朝は富士見高原登山口から、編笠山、権現岳、三ツ頭を経て観音平に下り、青年小屋経由で西岳を8の字に回る八ヶ岳4ピークスに行きました。トレイルランニングをする人にとっては朝飯前のルートですが、コースタイムは15:10あり肥満していた30代の頃なら日帰りで行こうなどとは考えなかった行程です。いつの日か体が衰えるとしても、30代当時の体力を下回る日が来るのは人生の最晩年だと思います。つまり自分の体は30代当時より若いと当分の間は強弁することができ、その点でアンチエイジングは実際に起こりえます。これは人生に起こるあらゆることに関してもあてはまり、若い頃に人生の頂点を極めてしまえば、後は坂道をころがり落ちるしかなく、人生の前半において、人に誇れるような実績もなく、平凡に生きてきた人の方が、第二の人生を前向きに楽しめる気がします。