人になったAI


先週行ったウェルネスツーリズムEXPOのような展示会に行くと、業界の今のトレンドが分かります。観光展示会の常連は自治体ですが、民間企業の顔ぶれは頻繁に入れ替わります。今回で言えば外国人労働者を派遣する企業の出展が目を引き、前回で言えばAIチャットボット関連のサービスです。料金体系はかなり高いと感じましたが、AIコンシェルジュなどと称するこれらのサービスが有効だと思ったことはありません。生成AIの完成度が急速に進むなか、こうしたサービスが生き残りの難しさは素人考えにも感じましたが、今年は全く見かけませんでした。生成AIは半年前より一段完成度が上がり、このまま進歩を続けるなら、AIどころか本物のコンシェルジュでさえ追いやりかねません。人を介した対人サービスがホスピタリティビジネスの根幹ですが、AIはもはや人になってしまった感があります。

ナルシズムの正体


自分のビジネスパーソンとしてのキャリアが頂点にあったのは、外資系コンサルで過ごした30代半ばのような気がします。出張が多く、空港のラウンジや機内のアップグレード席で仕事をする時の高揚感と言い換えることができるかもしれません。ビジネスパーソンが浸りがちなナルシズムが、今は子供っぽく見えるのは、現役時代のそれが、ステレオタイプの成功の象徴によって満たされる充実感だからだと思います。かつては貴重で、今手にするのはスケジュールに縛られない自由な時間の豊かさです。天気が良ければ山に行き、視察したいサウナがあれば遠征します。第二の人生に近づく今感じるナルシズムは、山を歩いているときにオフィスで忙しく働く人と電話をするときかもしれません。いずれにしてもナルシズムの正体は、常に他者との比較を求める心の未熟さでしょう。

都市と市民を健康に変える


気温が上がり日中に出歩けなくなると、風を切る自転車が活躍します。都内なら大半の場所へ自動車より早いか変わらない時間で到達でき、エネルギーコストはゼロどころか無駄な脂肪を燃やしてくれて、スポーツクラブと同等の健康効果が得られるありがたい乗り物です。今年まで乗っていた自転車は36年にわたり働き続け、タイヤを交換した以外は全くのメンテナンスフリーで、ベルトドライブのため一滴の油も差していません。最近でこそ多くの道で自転車レーンが半ば強引に引かれていますが、コロンビアの首都ボゴタのシクロビア(Ciclovía)のように、市内の主要な幹線道路120km以上を自転車や歩行者、スケーターなどに開放するオープンストリート政策は、日曜日と祝日に、巨大な公共空間を創出するイベントとなり、都市のあり方と市民を健康に変える画期的な取り組みだと思います。

時代の寵児は時代とともに消える


かつてはもてはやされたプロ経営者のメッキが剥げたように、自らをプロとセルフプロデュースする人たちは、長続きしないと感じます。今月ジャングリアを開業するマーケティング集団の㈱刀は、その精緻な需要予測からマーケティングの神と崇められ、多数の信者を抱えます。USJ、西武園ゆうえんち、丸亀製麺などの成功で知られますが、100億を投じた西武園ゆうえんちは、今ではリニューアル前の来場者数と変わらないとされ、24年3月期は28億の営業赤字、2023と2024年には73億の減損処理をしています。丸亀製麺を持つ㈱トリドールホールディングスは過去最高の売上ながら増収減益で、一過性の外部委託費用の15.5億は刀に払われた可能性があります。刀自体の直近の決算も24億の最終赤字で、自らが出資したイマーシブ・フォート東京の減損損失とも囁かれます。時代の寵児は、時代とともに消える運命なのかもしれません。

今必要なのは政府効率化省


公示日が迫る参議院選挙の焦点は減税です。減税は常に財源とセットで語られてきましたが、政治家は無駄な支出の議論は避けます。減税問題を言い換えるなら、国にお金を預けるか、民間に預けるかの違いです。シンガポールなどの政府系ファンドのように、国が運用してお金を増やしてくれるならともかく、あればきれいに使い切り、足りなくなれば増税を行い、増えたお金は誰かの利権として還流されます。おかみを疑わないお人よしの日本人も、ここにきて長年のペテンから覚醒を始め、前哨戦となる都議会議員選挙では、一人区の千代田区で、減税を掲げる新人が並み居る有力候補を破ったことは、驚きをもって受け止められました。今必要なのは政治的なパフォーマンスとしての事業仕分けではなく、ゼロベースで無駄を排除する米国のような政府効率化省でしょう。

美を追求することは強さの源


予定のない週末は、日が昇りきらないうちに近所の公園でラブラドルと遊び、築地本願寺和田堀廟所に墓参をします。毎朝7時から始まるおつとめに出て読経を聞き、自分でも声を出すことは健康的な朝の習慣に思えます。敷地を歩くとひときわ目立つのが、大正時代の歌人で大正三美人と称された九条武子の墓です。自然石の墓石は、ロンドン在住の夫と十数年別離し、42歳で没した風流人にふさわしく感じます。季節とともに移ろう自然こそが、自身の心の内を映し出す鏡であり、美意識の源泉だったのかもしれません。美意識とは物事の本質的な美しさを見出す感性であり、世俗的な価値観や俗世間から超越した精神的な豊かさに根付くものでしょう。美を追求することは、生きることそのものであり、風流とは、決して現実からの逃避ではなく、世俗的な苦しみと向き合うための強さの源のような気がします。

本当の歴史


近衛文麿の邸宅であった荻外荘(てきがいそう)に行きました。自転車なら家から20分ほどと気軽に行ける距離です。1927年(昭和2年)に建てられた邸宅は、終戦の年に、巣鴨拘置所に出頭を命じられた近衛が、最終期限日の12月16日未明に青酸カリを服毒して自殺した場所として知られます。家具や備品類を含め可能な限り往時を再現され、応接間の床タイルの多くはオリジナル(左側)を似せレプリカです。元々は目白の別邸として使われる予定だった荻外荘ですが、近衛はここに住み始めると本邸へは戻らなかったとされます。その死には諸説囁かれますが、亡くなった書斎を見られることには価値があります。近衛ほどその評価に幅のあるミステリアスな政治家も珍しく、歴史で習ってきた平和主義者というイメージは作られたものとする説が主流になりつつあります。戦後80年を経て、初めて本当の歴史に近づくことができるのかもしれません。

サウナの効用


ウェルネスツーリズムEXPOに行きました。自治体と外国人の人材派遣企業の出展が目立ち、往復2時間をかけて行く内容とは言えませんでした。東京ビッグサイトを使った商談自体が双方にとってコストに見合わないものになっているのか、業界企業が営業費を削減しているのか分かりませんが、華もなければ見どころもない印象です。多少の収穫はあったものの、期待していたサウナ関連の展示は1社のみで、以前のホテル・レストラン・ショーなどと比べてもサウナブームの終焉を印象づけるものでした。サウナのコアな愛好者は今でもいますし、メディアなどへの露出も相変わらずですが、事業者側から見たときには、一時のサウナへの熱狂に踊らされた不採算事業だけが残された気がします。サウナと健康に関する研究は発展の途上にあり、深部体温を効率的に上げることができるサウナの効用は、ブームに関係なく続くと思います。

眠いときに眠る


今は一年で一番日没時刻が遅く、数日前の東京は日中時間が最も長い日でした。最近よく眠れる気がするのは、起きた時間が完全な暗闇ではないからのような気がします。睡眠時間を気にしないのは、寝つきが良く、体調も良好だからです。一部の学者が、〇時間眠れといった強迫観念を植え付けようとするのはビジネスのためでしょう。眠りは個人的かつ体調や気候、疲労度によって変動するものだと思います。頭も体もくたくたになるまで使った日は良く眠れ、他方で食事を減らした日は消化に要する時間が短いためか短眠傾向です。布団から出たくない冬場なら一瞬で寝落ちしてよく眠れます。不眠の問題は受け止め方次第であり、眠る必要がないことによる必然だと思います。日野原重明氏など、元気な百寿者は概してショートスリーパーが多く、世間の健康ブームなど気にせず、体の声を信じ、眠いときに眠ることが自然であり、健康の秘訣でしょう。

幸せの礎


ウェルネスに特化した観光展示会の国際ウェルネスツーリズムEXPOが、昨日から始まりました。予定もあり行くのは難しそうですが、セミナーや株主総会もリアルとオンラインの併用が一般的ですから、オンラインエキスポがあればより多くの人にリーチできます。VRやチャット機能などを使えば展示場に足を運ばなくても、ホテル・レストラン・ショーのような試食は無理にしても、商品説明は事足りると感じます。独立した展示会を開くほどにウェルネス市場が巨大化するのは当然に思えます。ウェルネスとは広義の健康であり、その派生語であり持続的な幸せを示すウェルビーイングとほぼ同じ意味と考えて良いでしょう。ウェルビーイングがハッピーと違うのは持続性があることで、人の幸福にとって金や名誉が持続しないのに対して、健康であることの価値は消えることも執着することもなく、幸せの礎だと思います。

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