安易に稼いで適当に使う

富士山の今年の7月1日~9月10日の開山期間の登山者数が、前年比約7.7%減の20.4万人になったと発表されました。山梨県側から登る人に対し1人2,000円の通行料の支払いを義務化した結果、山梨側が前年比16.3%減の11万4,857人、静岡側が6.4%増の8万9,459人と山梨ルートが敬遠され、コロナ禍を除きこの10年で最少となりました。オーバーツーリズム対策として、世界の観光地では有料化の風潮がありますが、強制的な入山料徴収は乱暴な方法だと思います。日本が失われた30年から脱却できないのは値上げが難しいからで、民間セクターは価値を生み出すことを常に考えます。一方で入山料として安易に稼いだお金は、適当に使われるリスクがありますが、登山客の期待は高まり、それに見合う環境整備が求められます。全国で進む宿泊税など、インバウンドブームに浮かれて、安易に稼ぐ発想が日本に蔓延することは避けたいものです。

巨匠か虚像か

世界的に名を知られる建築家の隈研吾氏の出世作、栃木県の馬頭広重美術館の改修が問題になっていると伝えられます。開業20年を過ぎた頃から木材の劣化が進み、改修費用の3億円を自治体は負担できないと言います。隈建築の特徴である木製ルーバーの造形については賛否がありますが、メジャーになり過ぎて見飽きてしまい、芸がない印象を受けます。アイデンティティを感じる反面オリジナリティがなく、AIや3Dプリンターの時代になるとその価値は低下するように思えます。地場産建材の使用が求められる公共施設とはいえ、長期修繕計画を十分に見込んでいないのであれば事態は深刻でしょう。安い予算でも仕事を受ける大量受注をこなす手法が、建物を木材で覆う「隈建築」ですが、世界的建築家・隈研吾の評価が定まるにはまだ時間がかかりそうです。

腰痛原因は腰にあらず

腰痛歴は7、8年になりますが、昨年まではそれほど深刻な痛みではなく積極的に治すモチベーションが起きませんでした。しかし、この半年は生活に支障をきたすようになり、様々な腰痛治療を試しました。即効性があるのは鍼灸でしたが効果は一過性の印象です。腰痛関連の書籍に目を通すと、非特異的腰痛の原因は硬くなった筋肉とする主張が目立ち、ストレッチが良いとされます。近所のドクターストレッチに4回ほど通いましたが、これまで受けた様々な治療とは異なり、改善度合いが小さい反面、そこから悪くなることがなく治癒に向かっている効果を感じます。伸ばしているのは臀部が中心ですが、筋肉が固まることで腰が引っ張られ神経を圧迫するようです。すぐにブロック注射を打とうとする医者ではなく、疾患の完全な治癒を目指す治療法にこそ保険を適用すべきだと思います。

生物学的な年齢を人生の中心に

日本老年学会が2017年に提言した、高齢者の定義を「75歳以上」にする案がにわかに注目を集めています。統計データの解析によると、高齢者の健康状態と身体機能は改善傾向にあり、若返りが著しい理由は栄養の改善や健康意識の高まり、医療の発達とされます。一方で、中年以降の肥満や3、40代女性の体力低下、若い女性の低体重、子どもの活動量減少などの懸念材料もあります。WHOをはじめ国際的な高齢者の定義は65歳以上が一般的ですが、サザエさんの波平が54歳の設定であるなら戦後より20歳は若返った印象です。一方で現在も60歳で還暦を祝い、定年時期も10年しか伸びていません。年齢の引き上げは、年齢呪縛にとらわれ自分から老いる人を減らす効果がありそうです。元気な高齢者に共通する考え方は自分の年齢を意識しないことで、暦年齢より生物学的な年齢を人生の中心に据えるべきかもしれません。

党内野党政権

自民党総裁選は僅差の逆転という予想外の展開となりました。党内野党として長年冷や飯を食べてきた石破氏への同情票なのか、戦後80年に政治の刷新を求める人々や市場関係者には警戒感が広がり、「石破ショック」がトレンド入りしました。金融所得課税など、次期首相の発言は国力を削ぐことばかりで、解体したはずの派閥がしばりをかけた永田町の投票行動は有権者への裏切りに見えます。懲りない自民党を延命させないことが次の政権の役割と期待するなら、良い兆しと言えるかもしれません。いずれにしても、政治家がわれわれの意識の投影である以上、受け入れざるを得ないのでしょう。増税派と目されていた岸田政権が、経済や外交安全保障で予想外に仕事をしたように、外圧を利用して良い方に予想が外れることを期待したいところです。

肥満のスパイラル

昨日は大月短期大学に出講する日で、早朝に出かけ大学近くのガストで準備をします。電源もWi-Fiも使えてドリンクバーだけでは申し訳ないと、先週ついつい朝食を食べてしまったのですが、普段は食べない朝食により体が異常な反応を示します。空腹時間が長いために、一気に上昇した血糖値スパイクと、インスリンの過剰分泌によるその後の低血糖で、冷や汗が止まらなくなり立つこともできず、授業や運転中なら支障が生じます。さらにたちが悪いのは、翌日になると朝食時間におなかがすくことです。これは脳が生み出す空腹感であって本来の空腹とは異なりますからそこで食べることはしませんが、食べるほどに食べたくなる肥満のスパイラルを実感しました。朝食を摂るべきか否かについては専門家の間でも意見が分かれますが、少なくとも炭水化物の代謝に変化が生じる60歳以降は、控えることが無難に思えます。

自分の本音と向き合える

長年緑色のフィアットパンダに乗ってきたので、商用車然とした白いN-VANを駐車場で見ても、自分の車という感覚は8,000kmを走った今も希薄です。細かな不満は許せても、痛いのは5割増しに近い燃料価格です。他方で維持費や高速料金は安く、フィアットより1段多い6速MTによる運転の楽しさは救いです。マニュアルの4WDにしか乗らないと決めているので、元々選択肢がなく目移りしなくて良いのですが、何日もカタログを見続けて、車に恋焦がれた80年代が懐かしく、糸井重里が西武百貨店のコピーに書いた「ほしいものが、ほしいわ。」という心境です。最低価格帯の車に乗るメリットは、比較による執着のトレッドミルから解放されることで、これより下がない潔さを感じます。人間の上昇志向がモノに向かうとき、肥大化した執着が自分を苦しめます。地位財をなるべく捨てた後に、自分の本音と向き合える気がします。

間違った思いやり

米スタンフォード大学などの研究チームは、人生には分子レベルの老化が、44歳と60歳の頃に急激に進むと発表しました。人の老化は漸次進むのではなく、RNA、たんぱく質、マイクロバイオームの加齢変化が、44歳と60歳前後の2つの時期に集中すると言います。44歳では脂質の代謝、アルコールの代謝、カフェインの代謝能力が目に見えて低下します。一方、60歳前後では炭水化物の代謝に変化が生じ、活性酸素の発生と酸化ストレスによる免疫低下が起こり、感染症リスクが高まるそうです。44歳では脂質代謝の関係で筋肉を傷める人や、脂肪を蓄積する人が増えるという指摘は実感とも符合します。60代になると筋肉量の減少によるサルコペニアのリスクが高まり、本格的に筋トレに励む必要がありそうです。日本では敬老精神が災いして、お年寄りを運動から遠ざけようとしますが、その間違った思いやりが寝たきり大国の主因なのかもしれません。

高齢アスリートの活躍

世界最高齢の現役トライアスロン選手の稲田弘氏は、91歳ながらスイム3.8km・バイク180km・ラン42.195kmを16時間以内に走破するギネス世界記録を持ちます。70歳から始めたトライアスロンを経て、79歳から9年連続でアイアンマンレース世界選手権に出場し、90代の今も週6日のトレーニングを欠かさず、ベスト体重を維持して血圧は正常、老眼鏡不要の裸眼で新聞を読みます。妻を亡くして以降一人暮らしを続け、日々が充実しているのはトレーニングに打ち込む生活だからでしょう。抗酸化作用のある緑黄色野菜を中心に、代謝アップや血行促進などの効用のある鍋を自炊し、朝食には蜂蜜とブルーベリージャムをたっぷり塗ったライ麦パンを、夕食は玄米ご飯を茶碗2杯にキムチ納豆、生卵、DHAが豊富なめざしなど、若者のような食事量です。昨年には海外遠征のためパスポートを更新したとされ、高齢アスリートの活躍ほど勇気づけられるものはありません。

努力を伴う娯楽

連休の長野県は天気が悪く、家にはWi-Fiがなくドコモの電波すら怪しいため、できることはKindleで本を読むか、仕事をするぐらいです。家で仕事をすることはこの四半世紀普通で、半ば引退状態の今も何が仕事でどこからが趣味なのかは判然としません。趣味は山登りや旅行ですが、山を歩いているときも非連続の着想を得ますし、大半の旅行が視察であることを考えると、研究開発や自己研鑽を含めるならどの趣味も仕事ですし、他方でどの仕事も純粋な仕事という気がしません。遊びに行くのもそれなりに大変ですし、一方で仕事はそれなりに楽しいので両者の境界は存在しないのかもしれません。仕事は金を稼ぐ生産活動であり自ずと義務が生じますが、忙しくない人生が寿命を縮めるので、その義務さえも有難く感じます。楠木建氏の言う「努力の娯楽化」、言い換えると「努力を伴う娯楽」が人生を豊かにしてくれる気がします。

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