森林浴に代表される自然との関わりが、身体的、心理的な癒しをもたらすことは広く知られます。木々の緑が見える病室と無機的な景色の部屋では、前者が病後の回復が有意に早いことも指摘されます。自然の力をさらに高める方法は、庭仕事などの身体活動や食事療法を加えることだと思います。金曜日に行った南会津の土地は農地ですが、森には栗の巨木や柿の木、ミョウガやタラ、山椒の木々が自生し、さながら食べられる庭(Edible garden)です。園芸は、紀元前2000年のメソポタミアにおいて人間の五感を癒し、園芸療法が注目されるはるか昔から休息、回復、療養の場として人々の健康を守ってきたと考えられます。様々な現代病が急激に増加した原因は、自然の恩恵から遠ざかる都市生活に起因していると思います。リモートワークが生産性を劇的に高めるとすれば、それは自然の元で過ごす時間を増やすことで健康状態が回復するからでしょう。
お知らせ
最も美しい庭
草刈りが趣味になったのは、エンジン式から電動草刈り機に変えてからです。排ガス臭が無くなり、騒音も無視できる程度に低減されると、草刈り本来の楽しさを享受できます。草刈り機は特殊な環境を除き電動化すべきだと思います。草刈りはガーデニングの一種で、日光を浴び、多くの場所で森林浴を楽しめ、先日行った南会津のような傾斜地では草刈り機を持ち上げる必要があり全身運動になります。草刈りが心身の健康に良い影響を与える素晴らしい趣味と言えるのは、ジャングル状態だった敷地が徐々に整い庭に変わっていく、一種の達成感があるからでしょう。最も美しい庭とは、植物が人間の干渉を受けずに、その土地にふさわしい種が繁殖し生き続ける、自生による自然環境だと思います。人為的に何も加えず、人間が最小限の介入により日当たりや風通しを改善するだけで、周囲の環境に溶け込む美しい庭になる気がします。
そのうち行けばいいか
尾瀬御池ロッジに泊まりました。尾瀬への関東側からの玄関口は群馬県片品村で、そこが唯一のルートと誤解している人もいますが、福島県檜枝岐村からのアクセスはハイカーが少なく快適です。尾瀬の福島側の入り口に位置する尾瀬御池ロッジは、軽い朝食がついて一人の宿泊で7,500円とリーズナブルな価格設定です。湿原とブナ林に囲まれたこの施設は、山小屋と呼ぶ水準をはるかに超え、オペレーターを変えれば上高地帝国ホテルと並ぶ屈指の山岳リゾートにできそうです。東北地方以北で最高峰の燧ヶ岳(ひうちがたけ2,356m)の登山口まで車で直接行ける唯一のルートであることも魅力で、草刈り作業が残っていたので登りませんでしたが、3、4時間で往復できる近さです。福島県に行く頻度が増え、いつでも行けると思うと不思議なもので、そのうち行けばいいかと欲望が小さくなります。
究極の機能性
昨日は南会津で草刈りをして、その合間に先日買ったサヴォッタ(Finn-Savotta)社のテントサウナを試してみました。YouTube動画が買ってはいけないテントサウナの上位に入れるブランドだけに、一人で組み立てるのは骨が折れます。付属のビニールロープはほぼ応急用で、倒れる危険性があるので火をつけるのは止めました。いかにも軍用といった趣の無骨なテントは森のなかの風景に溶け込みます。一人で簡単に組み立てられる一般のテントとは異なり、ひとつひとつの作業を確実にやり、まともなテントロープと自在金具などのアジャスターがないときれいに立てることができません。サヴォッタを買ってはいけない理由は、テント生地に断熱材が入らず、設置が面倒だからですが、これらの欠点が放置されるのは、軍用品メーカーが考える究極の機能性が、戦場で直せるシンプルな構造だからだと思います。
世界のN-VAN
N-VANは趣味性の強い車で、商用軽バンでありながら愛好者によるFacebookグループが存在します。国内で最大のものは参加者が1,000人ほどですが、輸出や海外生産をしていないにもかかわらず、シンガポールのグループは5,000人です。投稿の複数は日本語の警告表示の意味を聞く質問ですから、日本仕様を並行輸出したものと思われ、今や世界的な知名度があるようです。日本ではごく普通に見かける商用車の軽は、ガラパゴス規格でありながら、実は世界を目指せるポテンシャルを秘めているのかもしれません。核家族化が進むと大型のSUVより、アウトドアギアを大量に運べ、かつ維持費の安い軽商用車こそが多用途に使える選択だと思います。大量の荷物とともに移動する便利な道具であるN-VANによって広がるカーライフを、世界が受け入れるのかもしれません。
デザインの判断基準
フィンランドの軍用品メーカー、サヴォッタ(Finn-Savotta)社のテントサウナを買いました。誰もが知るブランドはロシア製のMORZHで、簡単に設営でき、3層構造のテントは150℃にも達する驚異的な性能です。一方サヴォッタは、YouTube動画の買ってはいけないテントサウナブランドの常連で、一人での設営は困難です。50年以上にわたりフィンランドやエストニアの軍隊で使われるメーカーだけに、断熱性より耐久性が重視され、サウナ室内は75度以下の温度を推奨します。それでもサヴォッタを買ったのは、ミリタリーオタクだからではなく、質実剛健なサウナストーブのデザインが、大自然のなかで使うのにふさわしいと感じたからです。大半がステンレス製に対して鉄製のため、錆びると良い風合いになりそうです。デザインの良し悪しは人によって判断基準が異なりますが、最高のトトノイをもたらすテントサウナに求められるのは、自然との調和だと思います。
暇つぶしの代償
卒業式を控えた娘が、バルセロナ、ニース、モナコを旅行しています。陽光の降り注ぐ美しい風景を見ていると羨ましくもあります。他方で行きたいという気が起きないのは、セミリタイアに片足を突っ込んでいるからかもしれません。リタイア後の趣味として旅行は人気ですが、仕事の忙しい社会人や学生なら現実逃避をしたくなる気持ちも分かります。しかし移動のわずらわしさや健康リスク、治安や旅費を考えると、暇つぶしの代償としては見合わない気がします。ガウディ建築のファンとしては、バルセロナは外せない訪問地だと思っていましたが、現地で撮られた写真を見ていると、行ったところで人生が変わることもなさそうです。無理して海外に行くとすれば、刹那的に消えていく一時の感情ではなく、人生を変えてくれるぐらいのインパクトが必要です。そう考えると消去法で残るのはヒマラヤトレッキングぐらいかなと感じます。
安さと選択肢の豊富さ
近所の食品スーパーが撤退した後に、しまむらが出店しました。値下げされた商品のハンガーには、質感もデザインも悪くない390円のシャツが並び、スポーツブランドのロゴ入りのものでも790円と格安です。消耗品の靴下は2足で190円の値札を下げ、賢い消費者をアピールしたいケチ自慢の本能を刺激しそうです。問題は消費者がその価格に慣れてしまうことで、商店街で衣類を扱う店を一掃してしまう危険性があります。しかし、安さと選択肢の豊富さは、流通業の普遍的な正義であり、ファストファッションなどへの批判と同時に、その貢献を評価する必要があると思います。ユニクロの柳井氏は「同じ目線でつるんでいるから世界を目指せない」と言い、夜の会食や会合を避けますが、気分によって消費行動を変えるきまぐれな市場の空気を読むには、雑音を消して自らの感覚を研ぎ澄ます必要があるのでしょう。
口コミが命を守る
昨日は上野原市の坪山(1,102.7m)に登りました。20km超の縦走をする予定でしたが、日差しが強くラブラドールの熱中症リスクがあり、ヒカゲツツジやミツバツツジの群生地として知られる坪山だけで下山しました。イワカガミなども見られる花の山として観光看板もあり、気楽なハイキングを想像させますが、登山道は急傾斜や絶壁のやせ尾根が続くスパルタンな山です。高尾山の登山道は、サンダルでも歩けそうな遊歩道にさえ、登山の装備が必要と書かれますが、ここはむしろ逆で頻繁に滑落事故が起こるようです。何事も最終的には自己責任ですが、ほとんど効果のないダイエットサプリや健康器具が放置されるように、期待と実態には大きな乖離があります。健康食品の広告には「個人の感想」という不十分な打消し表示による体験談が用いられますが、登山の場合はSNSアプリによる口コミを事前に読み込む必要があるのでしょう。
エキセントリックな本質
N-VANには、初めて原付に乗った日の爽快感と、どこにでも行けるという自由を得た喜びに似た感覚があります。しかしそれは、若者特有の解放感とは違い、ノマドランド的な世俗のくびきから解き放たれる清々しさです。ノマドランドは何事も起こらず、派手な展開もない、荒涼としたアメリカの大地を舞台にした映像が印象的な映画で、寂し気な音楽が悲しみや喪失感を抱えた心の内を伝えます。屋根の下での幸せな暮らしを捨て、アマゾンの配送センターに象徴される、過酷なヴァン・ライフを主人公が選ぶのは、大半の米国人が65歳以降も働く必要があるからです。そんなエキセントリックな行動が本質に見えるのは、人類史の大半が流浪の民だったからでしょう。この映画に惹かれるのは、自然とのつながりを感じながら自分をそぎ落としていく生き方こそが、本当の自分を取り戻す唯一の方法だからかもしれません。