昭和のストロングサウナ


昨夜はサウナーの聖地として知られる大垣サウナに行きました。東のしきじ、西の大垣として、全国や地元から今も熱烈な支持を受ける理由は、天然地下水の水風呂とされます。年間を通して15℃前後の絶妙な冷たさは、120℃近くで湿度も保たれる、昭和のストロングサウナがあって、初めて体感する気持ち良さかもしれません。一見すると時代遅れの老朽化した施設ですが、1960年代開業の老舗には、サウナの本質を突き詰めた風格すら感じます。リネン類の補充も含めて、最高のコンディションを提供し続ける運営姿勢と、レベルの高い食堂はもう一方の主役です。カウンターに総菜が並ぶ13席の食堂の割には、メニューの品数が多く、常連に愛されていることを感じます。昨今の流行など気にせず、昭和のビジネス戦士を癒したサウナを守る姿勢は、高度成長期の自信を失った今の日本人にこそ必要な気がします。

N-VAN嫌いは食わず嫌い


用事があり今朝京都に来ました。自動車が公共交通より優れるのは、好きな時間に移動できることです。運転席以外がフルフラットになるN-VANは、車内で十分な睡眠がとれ、道が空く深夜の長距離移動に最適です。短眠は健康上の悩みですが、2時間も仮眠を取れば普通に生活できる体質は、自動車旅行においては美点に変わります。N-VANがここまで好きなのは、自動車界のヒエラルキー構造から完全に離脱した乗り物であり、他の車の存在が気にならなくなるからです。坂道で遅いとか、燃費が悪いとか、助手席でさえ30分以上座るのは無理という自動車評論家も、N-VANの本質が分かっていないと思います。先日長野県から4人乗車で東京に戻る時、妻と娘は直角のリアシートでほとんど寝ていて、クレームは出ませんでした。人間は他に選択肢があると贅沢を言い始めますが、それしかなければ不満もなく、多くの人は食わず嫌いなだけのような気がします。

消費を増やすオークション


昨日はヤクオフで落札した有田焼の火鉢を引き取りに行きました。白河の古民家サウナで使う備品で、インテリアを兼ねた暖房器具として機能しながら、一種のアクティビティとしても魅力があります。古民家に似合う、風情のある年代物を探すのに、シェアリングエコノミーは最適ですが、入札者は3人だけで言うのが憚られる値段で落札したのが申し訳なく感じます。ある人にとっては不要でも、他の誰かが必要とする取引は、利益を出す前提の市場では成立しません。加えてネットオークションやフリマサイトには、蚤の市で掘り出し物を見つける楽しさと、オークションならではのスリリングさがあります。眺めているだけで、ここで売られている古材をベースにインテリアを構想するのも楽しくなります。モノ余りが深刻な日本ほどシェアエコが必要で、こうした中古品市場がある安心感により、消費も増えるのかもしれません。

オフビート・ラグジュアリ


昨日は久しぶりに赤岳(2,899m)に登りました。真教寺尾根から上がり、県界尾根を下る最短ルートは、赤岳=遠い山というイメージを覆し、美しの森を日の出前に出れば、まだ朝のうちに戻れる気軽さです。それでいて標高2,300mを超えたあたりから山頂までの600mの標高差を、一気に登るスパルタンな岩壁は山登りの醍醐味を味わえます。鎖場が多いことで敬遠されるのか、ハイカーが少ないこともこのルートが好きな理由です。日本の大半の山は信仰の対象であり、八ヶ岳もその色彩を強く帯びます。自然と文化という二大観光コンテンツに冒険が融合する登山こそ、インバウンドを呼ぶ最強のコンテンツになるはずで、星野リゾートが山小屋を新たな商品ラインに加えるのは必然だと思います。日本の山岳地域こそ、オフビート・ラグジュアリのメッカとして、世界に売り出せるポテンシャルを秘めているのかもしれません。

人になったAI


先週行ったウェルネスツーリズムEXPOのような展示会に行くと、業界の今のトレンドが分かります。観光展示会の常連は自治体ですが、民間企業の顔ぶれは頻繁に入れ替わります。今回で言えば外国人労働者を派遣する企業の出展が目を引き、前回で言えばAIチャットボット関連のサービスです。料金体系はかなり高いと感じましたが、AIコンシェルジュなどと称するこれらのサービスが有効だと思ったことはありません。生成AIの完成度が急速に進むなか、こうしたサービスが生き残りの難しさは素人考えにも感じましたが、今年は全く見かけませんでした。生成AIは半年前より一段完成度が上がり、このまま進歩を続けるなら、AIどころか本物のコンシェルジュでさえ追いやりかねません。人を介した対人サービスがホスピタリティビジネスの根幹ですが、AIはもはや人になってしまった感があります。

ナルシズムの正体


自分のビジネスパーソンとしてのキャリアが頂点にあったのは、外資系コンサルで過ごした30代半ばのような気がします。出張が多く、空港のラウンジや機内のアップグレード席で仕事をする時の高揚感と言い換えることができるかもしれません。ビジネスパーソンが浸りがちなナルシズムが、今は子供っぽく見えるのは、現役時代のそれが、ステレオタイプの成功の象徴によって満たされる充実感だからだと思います。かつては貴重で、今手にするのはスケジュールに縛られない自由な時間の豊かさです。天気が良ければ山に行き、視察したいサウナがあれば遠征します。第二の人生に近づく今感じるナルシズムは、山を歩いているときにオフィスで忙しく働く人と電話をするときかもしれません。いずれにしてもナルシズムの正体は、常に他者との比較を求める心の未熟さでしょう。

都市と市民を健康に変える


気温が上がり日中に出歩けなくなると、風を切る自転車が活躍します。都内なら大半の場所へ自動車より早いか変わらない時間で到達でき、エネルギーコストはゼロどころか無駄な脂肪を燃やしてくれて、スポーツクラブと同等の健康効果が得られるありがたい乗り物です。今年まで乗っていた自転車は36年にわたり働き続け、タイヤを交換した以外は全くのメンテナンスフリーで、ベルトドライブのため一滴の油も差していません。最近でこそ多くの道で自転車レーンが半ば強引に引かれていますが、コロンビアの首都ボゴタのシクロビア(Ciclovía)のように、市内の主要な幹線道路120km以上を自転車や歩行者、スケーターなどに開放するオープンストリート政策は、日曜日と祝日に、巨大な公共空間を創出するイベントとなり、都市のあり方と市民を健康に変える画期的な取り組みだと思います。

時代の寵児は時代とともに消える


かつてはもてはやされたプロ経営者のメッキが剥げたように、自らをプロとセルフプロデュースする人たちは、長続きしないと感じます。今月ジャングリアを開業するマーケティング集団の㈱刀は、その精緻な需要予測からマーケティングの神と崇められ、多数の信者を抱えます。USJ、西武園ゆうえんち、丸亀製麺などの成功で知られますが、100億を投じた西武園ゆうえんちは、今ではリニューアル前の来場者数と変わらないとされ、24年3月期は28億の営業赤字、2023と2024年には73億の減損処理をしています。丸亀製麺を持つ㈱トリドールホールディングスは過去最高の売上ながら増収減益で、一過性の外部委託費用の15.5億は刀に払われた可能性があります。刀自体の直近の決算も24億の最終赤字で、自らが出資したイマーシブ・フォート東京の減損損失とも囁かれます。時代の寵児は、時代とともに消える運命なのかもしれません。

今必要なのは政府効率化省


公示日が迫る参議院選挙の焦点は減税です。減税は常に財源とセットで語られてきましたが、政治家は無駄な支出の議論は避けます。減税問題を言い換えるなら、国にお金を預けるか、民間に預けるかの違いです。シンガポールなどの政府系ファンドのように、国が運用してお金を増やしてくれるならともかく、あればきれいに使い切り、足りなくなれば増税を行い、増えたお金は誰かの利権として還流されます。おかみを疑わないお人よしの日本人も、ここにきて長年のペテンから覚醒を始め、前哨戦となる都議会議員選挙では、一人区の千代田区で、減税を掲げる新人が並み居る有力候補を破ったことは、驚きをもって受け止められました。今必要なのは政治的なパフォーマンスとしての事業仕分けではなく、ゼロベースで無駄を排除する米国のような政府効率化省でしょう。

美を追求することは強さの源


予定のない週末は、日が昇りきらないうちに近所の公園でラブラドルと遊び、築地本願寺和田堀廟所に墓参をします。毎朝7時から始まるおつとめに出て読経を聞き、自分でも声を出すことは健康的な朝の習慣に思えます。敷地を歩くとひときわ目立つのが、大正時代の歌人で大正三美人と称された九条武子の墓です。自然石の墓石は、ロンドン在住の夫と十数年別離し、42歳で没した風流人にふさわしく感じます。季節とともに移ろう自然こそが、自身の心の内を映し出す鏡であり、美意識の源泉だったのかもしれません。美意識とは物事の本質的な美しさを見出す感性であり、世俗的な価値観や俗世間から超越した精神的な豊かさに根付くものでしょう。美を追求することは、生きることそのものであり、風流とは、決して現実からの逃避ではなく、世俗的な苦しみと向き合うための強さの源のような気がします。

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