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DNAに書き込まれた記憶

ラブラドールと出場した、白馬岩岳TrailRaceAutumn2023の写真を主催者側からいただきました。日本を代表する山岳リゾートで開催され、犬と出られるだけでも魅力的ですが、プロのカメラマンが撮った写真が無料で提供されることは、愛犬家にとって最大の喜びでしょう。トレラン大会の写真は業者が入り、値段の割には素人写真が多いのですが、この大会の写真はクオリティが高く、プロの技術と絶妙なシャッターチャンスをとらえています。同好者が集うトレラン大会は親近感がわきますが、そこに犬好きが加わるとアットホームな雰囲気になります。犬と出場できる希少な大会に、ゴンドラリフトの乗車券がついて11,000円という参加費はバーゲンプライスと言うしかありません。狩猟犬として、最も古くから人類とつきあってきた犬と野山を走る行為は、DNAに書き込まれた記憶であり、この大会を通じて犬と山を楽しむことへの理解が深まることを期待したいものです。

リスクを高める人たち

警察庁によると、昨年の山岳遭難は3,015件(対前年比13%増)、遭難者3,506人(同12%人増)となり、1961年の統計開始以降最多となりました。年を追うごとに単独登山者の割合が増加傾向にあると言います。那須朝日岳で4人が死亡した先月の山岳遭難にしても、8名が死亡したトムラウシの事故も、21名もの死者を出した一昨年の中国でのトレイルランニング大会での事故も、天候の急変や判断ミスが原因とされることには、どこか違和感を覚えます。そんななかで、東洋経済オンラインに「平気で無謀な登山に挑む人たちが溺れる”快楽”」という記事が掲載されました。一般に登山はレジャーにカテゴライズされ、危険なスポーツであることがあまり認識されていません。大半の人々がリスクを最小限にとどめようとする一方、エクストリームスポーツではリスクを積極的に高めることによる興奮が、強い覚醒を促すとの指摘は示唆的です。

コミュニケーション能力が勝敗を分ける

頻繁に白河に来ながら白河ラーメンを食べたことがなく、その名が全国に知られる、とら食堂に行きました。50台ほどが停められる駐車場は平日の13時でもほぼ満車で、店の外にも多くの人が待っています。市内に100店を超える白河ラーメン店の元祖とされ、観光資源の1つになっているだけのことはあります。しかし、元々並んでまで何かを食べたいという発想がなく、ましてや糖質過多で塩分量の多いラーメンならなおのことで、あきらめることにしました。ラーメン屋に行列ができるのは化学調味料の依存性とされますが、1969年創業のとら食堂では化学調味料を使わず、鶏ガラ、豚ガラなどのスープを使うとされます。20~60歳の男女の6割が週に一度はラーメンを食べるとの調査もありますが、日本人がラーメン好きな理由は不可解です。メディアやヘビーユーザーとのコミュニケーション能力が勝敗を分けるような気がします。

moreはその意味を失った

フィアットのデイタイム・ランニングライトが切れました。9年と19.3万kmの間常時点灯している300円の電球が切れるのも無理ありません。新車で購入して以来のトラブルは、これ以外にはヘッドライトの玉切れだけです。自分史上最も長い距離を走りながら、2回の玉切れ以外のトラブルがないことは今の車なら当然としても、過去に乗った車でこれほど信頼性の高い車はありません。最も大量に作られる、最も安い大衆車が最も信頼性が高いという皮肉は、際限のない過剰消費社会のなかでmoreはその意味を失ったことを印象づけます。ヘンリー・フォードは「自動車を民主化すること」を自分の使命と考え、フォードシステムによって生産量を増やし、単位コストを下げ、消費の拡大を招く上昇スパイラルが大量消費社会を生み出しました。製品固有の特性よりも意味を付与された記号が評価される消費社会は、結局振り出しに戻る気がします。

運動をしないことには始まらない

「若返る高齢者、男性5歳・女性10歳以上?」と日経新聞が伝えます。国民生活基礎調査によると、腰痛や物忘れを訴える高齢者の割合が年々低下し、歩く速度も速くなっているそうです。今年の春には世界唯一の80歳以上の公式サッカーリーグが誕生し、最年長は94歳とされ、80代、90代のアスリートは今や珍しいものではありません。80歳の選手は「まだまだ若手」と話しますが、70歳以上のリーグが発足したのは2012年です。高齢者が体力的に若返っている理由はいくつか考えられますが、運動やストレス管理の重要性と、過食のリスクといったヘルスリテラシーが、エビデンスベースで浸透したことが大きいと思います。65歳以上を高齢者と呼ぶ定義を再考し、科学的な見地から年齢の引き上げが提言されます。健康に良い生涯スポーツを楽しむことの難しさは、それが運動をしないことには始まらないという矛盾にあるのでしょう。

犬は最も人に近い動物

白馬岩岳Trail Raceにラブラドールと出場しました。人間なら後期高齢者のはずのラブのデビュー戦としては、50頭中11位は順当でしょう。周囲の犬に興奮してスタートダッシュが鋭かった前半は犬が人を引っ張り、途中から疲れた犬を人が引っ張るチーム戦らしい展開です。犬好き×トレイルランナーのアットホームな大会は、犬と一緒にゴールできることが魅力で、わずか10kmでも共に苦労を乗り越えてこそ絆が深まる気がします。世界中の文化圏で、副葬品とともに丁寧に埋葬されてきた動物は犬だけでしょう。人間を恐れない狼を選別的に交配した結果生まれた犬は、人間同様のオキシトシン・システムを持つとされます。毎日160kmを5日連続で走るアラスカの犬ぞりレースでは、犬に低糖質食を食べさせても筋肉のグリコーゲンが減らないことも人と同じです。犬は最も人に近い動物であり、いずれ犬と走る100マイルレースが実現するかもしれません。

できは人間次第

今朝はラブラドールとトレラン大会に出るために白馬に来ました。下り基調の10kmですから練習の必要もありませんが、昨日は足慣らしのために西岳に登りました。都会で生活をしていると足の関節の可動域が狭まり、不整地を走ると捻挫をするリスクがあり、文字通り足慣らしが必要です。西岳は登山口から標高差1,000mほどですが、充実した朝の散歩になります。いずれ体力の低下を感じる日が来るとすれば、西岳が散歩と思えなくなる時でしょう。トレランとランニングの最大の違いは、下りの着地に集中する必要があることだと思います。雑念が入った瞬間に躓いたり足をひねったりしますので、集中力も養うことができます。人間の歳なら後期高齢者のはずのラブラドールは元気で、人を追い越しこそしないものの、ぴったりと影のように寄り添い、こちらが走ってもたいては早歩きでついてきます。レースのできは人間次第でしょう。

大衆消費社会の本質

立冬を過ぎても妙に暖かい長野県に来ました。過ごしやすい気温で文句を言う筋合いもありませんが、寒さを期待していたので拍子抜けします。人は祖先を苦しめて来た寒さと飢餓、疫病を嫌い恐れますが、避けようのないことには楽しみを見出すべきだと思います。寒ければ火の暖かさに癒されますし、空腹なら何を食べても美味しく、コロナ禍によって感染症対策と免疫力を高める生活を心がけ、むしろ健康は増進されます。人生において重要なのは、今をありがたいと思う気持ちであって、これは自分の意思によって今すぐに実現できます。一方でお金という社会の評価によって人生を満たそうとすると、地位財の収集という罠にはまり、生涯ヘドニックトレッドミルを走り続けることになります。大衆消費社会の本質は他人軸の生き方を強要されることであり、結果として人に依存し自由を奪われていく気がします。

人の行く裏

沖縄県の宮古島で地価が急上昇し、今年の基準地価は前年比16.6%上がり、都道府県別で全国一位の上昇率だった沖縄県全体の4.9%を上回ります。新空港の開業や相次ぐリゾートホテル建設による宮古島バブルは、住宅価格や賃貸相場にも及びます。いずれブームが去ると分かっていても、需給ひっ迫によるビジネスチャンスが目の前にあると、人は冷静さを失い、それはニセコも同じでしょう。バブル当時の海外投資であれほど失敗しても懲りないのは、それが人間の性分だからかもしれません。バブル崩壊でもっとも成功したのは、資産のすべてを預金していた金融リテラシーの低い人と、安値で日本人から不動産を買い戻したアメリカ人です。バブル経済が人生にそう何度も起こらないビジネスチャンスであるなら、立派な施設が二束三文で手に入るバブル崩壊も、株式相場の格言にある「人の行く裏に道あり花の山」なのかもしれません。

都市よりも自然

存続の危機にあった米シェアオフィス大手WeWorkが、自力再建を断念し経営破綻しました。コロナ禍以降のオフィス需要低迷に加え、足元の金利高で資金繰りが悪化したと言います。負債総額は最大で7.5兆円に達し、5割弱の株式を持つソフトバンク・ビジョン・ファンドへの影響は避けられないでしょう。IT活用により、オフィス空間のあり方を変えると期待された不動産テックの旗手でさえ、会員の解約が増えるほどの市場環境の変化が進行しているのかもしれません。月曜日と金曜日には在宅で働く人が増え、オフィス街から人影が消えたロンドンのような都市もある一方で、対面勤務の方が生産性は高まるとして、オフィスに回帰する動きもあります。コロナ禍が変えてしまった働く習慣は、人々の関心を都市よりもむしろ自然に向けるほどドラスティックなもののような気がします。

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