最新情報

Information

理想を失うとき人は老いる

OECDが世界81カ国・地域の15歳69万人を対象に実施した学習到達度調査によると、日本は読解力で3位、数学的応用力は5位、科学的応用力は2位と、いずれも前年より大きく回復したと言います。経済面でも明るいニュースが続き、岸田首相と面会した米半導体大手エヌビディアのCEOが、日本にAIの研究開発拠点を設ける考えを明らかにしたことも、国産の生成AI開発の後押しにつながり、日本社会には明るい兆しが見え始めたように映ります。1980年代のバブル時代をもう一度と淡い期待を抱いた人たちが労働市場から退出を始める今になって、希望の持てる大波がやって来たのかもしれません。希望は人生にとって欠かせない永遠の真理であり、仮に今時間やお金がなかったとしても、希望があれば理想を失わずに済みます。年を重ねただけでは人は老いず、理想を失うとき初めて人は老いる、という詩人の言葉を思い出します。

バブルか実需か

国際的なスノーリゾートとして知られるニセコ地域は、相変わらず活況を呈しているようです。有効求人倍率は10倍に近づき、ホテルやコンドミニアムの清掃アルバイトの時給は1,800円から2,200円と昨年に比べ1割ほど引き上げられたと言います。俱知安町などの基準地価も、海外から投資マネーが流入したことで、バブル期を大幅に超えています。バブル崩壊を経験した日本人は、膨らんだものはどこかで萎むと冷ややかに考え、一方で喉元過ぎれば熱さを忘れるで、浮き立つ人も少なくありません。戦後の日本では米国的な高額消費を礼賛する風潮が広がり、それが世界第二位の経済大国に押し上げた原動力でしたが、他方で消費至上主義の蔓延は嫉妬、執着、復讐心といったある種の心の毒を産み付けたと思います。消費という外部の力を借りて幸せを実現しようとする考えは、やがて人々から主体性を奪い、自分とは何者かを考える余裕さえ失った気がします。

無知を知らない

週末に南会津で樹高7、8メートルの枯れ木を切ろうとチェーンソーを入れたところ、もう少しという所で止まり抜けなくなりました。地元の人に聞くと、くさびを打ち込みながらチェーンソーを使うようですが、野良仕事に不慣れな都会人は無知です。思えば山の事故の大半も無知により起こるもので、2019年に、雪に覆われた富士山の山頂からの滑落に至る一部始終を生配信した男性が履いていた靴はスニーカーとされます。山に登る人であれば10月末の富士山がどれほど危険な場所かを知っていますが、この世界に突然紛れ込んでしまった人は信じ難い行動をとります。自然の脅威に触れる機会の少ない都会人は、無知がリスク感度を下げ、ときには命を失います。勉強をするほど、新しい世界に関心を持つほど、知らないことが山ほどあることに気づき、無知になっていきますが、最大のリスクは自分の無知を知らないことかもしれません。

贅沢すべき必需品

週末はスタッドレスタイヤの交換で栃木県に行きました。ブリジストンの主力工場が近くにあるためか、馴染みの店はスタッドレスタイヤの値段が東京より2万円は安く、毎年ウィンターシーズン直前に交換します。スタッドレスタイヤがドライ路面をまともに走れない時代はサマータイヤを併用しましたが、昨今のスタッドレスタイヤはオールシーズンをうたってなくても問題なく通年使えます。厳密に言えば問題でしょうが、高速で飛ばすこともありませんし、むしろ乗り心地は良く、燃費も変わりません。年間2.5万kmから3万km走りますので、サマータイヤと併用して何シーズンも使いゴムが劣化するよりは毎年交換した方が性能を維持できます。深い雪に埋もれて動けなくなることや、カーブ直後の橋の上でスリップして怖い思いをしたこともありますが、冬の豪雪地帯の移動を可能にするスタッドレスタイヤは、贅沢すべき必需品だと思います。

庶民のアフォーダブル・ラグジュアリー

昨夜は秘境として知られる檜枝岐温泉に泊まりました。日本秘湯を守る会の施設ですが、比較的新しい5階建てのビルに秘湯の風情はありません。しかし大手のコンビニまで車で1時間かかり、唯一の商店であるJAは15時に閉まります。雪の降る南会津で藪払いをして冷えた体を、露天風呂は芯から温め、心身を癒してくれます。スタッドレスタイヤを交換するついでに温泉に来たのですが、東京の量販店よりも栃木県の行きつけの店は2万円ほど安く、宿泊代と燃料費を入れてもおつりが来ます。週末に安い温泉宿に1人で行くようなささやかな贅沢が好きなのは、それが肩ひじ張らず持続可能な庶民のためのアフォーダブル・ラグジュアリーだからだと思います。言い訳になる用事がないとどこかに行く気が起きないのは、行楽目的だけでは本当に楽しいと思えないからかもしれません。

迷惑客の宿泊拒否

カスタマーハラスメントを繰り返す迷惑客の宿泊拒否を可能にする、改正旅館業法が今月から施行されます。料金の不当な割引や慰謝料の要求、過剰なサービス、社会的相当性を欠く謝罪の要求、宿泊直前のキャンセルなどの行為を繰り返した場合が対象となります。1948年に施行された旅館業法は、戦後の混乱期に宿泊を拒否された人の行き倒れを防ぐ目的から、原則宿泊を拒めないとされてきましたが、年々悪化する理不尽な要求に対応した形です。背景にあるのはストレス発散やゆがんだ正義感、思い込み・勘違いなどの強い執着を持つ客が増えたことだと思います。正当なクレームとカスタマーハラスメントの間に一定の線引きをしたことは評価できますが、根本的な解決にはならない気がします。顧客との良好な関係を築くためには、リスクの高い客を受け入れなくても済む事業者側の商品計画が必要かもしれません。

正常な食欲を維持する方法

日本工学院に出講する木曜日は、自分本来の食欲と向き合うことができます。食べ物が手の届く場所にある普段の生活は食欲センサーを狂わせ、体が欲していないのに大脳は食欲という幻想を生み出します。この季節に届いてしまう株主優待のお菓子類は不幸のギフトで、目の前にある食料を無視できないのは、長年飢餓に苦しめられてきた人類の性があるからでしょう。少食が健康長寿につながることは知られますが、正常な食欲を維持することが難しいのは、DNAに刷り込まれたプログラムが心を動かしてしまうからです。食欲の大半は間違った欲求であり、体を維持するためではなく感情を紛らわすために食事をします。食欲に振りまわされない方法は、煩悩を刺激して欲望をかきたてる情報を遮断することで、食品に近づかないことでしか正常な食欲を維持することができない気がします。

社会資本の共有こそが宿の卓越性

昨日は宿泊ビジネスに関するブレストに参加し、宿のあるべき姿を確認する機会になりました。多くの商品計画において、ホスピタリティやアメニティといった高付加価値化を崇めるあまり、コストとのトレードオフをどのようにして解決するかという実践に踏み込むことは二の次にされます。現在のようにインバウンド需要が戻り始め、市場が活況を呈し始めるときこそ要注意で、ホテルとはかくあるべきといった非効率な精神論が無批判に語られがちです。その根底にある原因は、宿が一種のステイタスシンボルとして、または成功の象徴であるトロフィーとして作られることが多いからのような気がします。宿泊業の醍醐味は面白い人が集まり、居ながらにしてそこから何かが始まる現場を目撃できることにあると思います。新しいビジネスの孵化器となる、社会資本の共有こそが宿の卓越性なのかもしれません。

筋肉を貯める楽しみ

初冬とは思えない暖かい日が続きますが、明日からは日没時間が一年で一番早くなります。クリスマス商戦も始まりますが、年々地味になる印象を受けます。派手にお金を使う予定もないので、むしろ好ましい傾向ですが、皆がモノを買わないと景気の回復を実感できず、元気が出ません。その一方、お金で実現するこだわりなど所詮、はかないものだと思うのは、幸福を求めるほどに不感症になり、より強い刺激が必要になるからです。料理にしても、選択できるのであれば美味しい方を選びますが、それにこだわり執着となっては息苦しさを感じます。与えられた商品に散財して人生を謳歌する気になれないのは、身近な山に登り、素朴ないで湯と質素な宿の料理に満足する消費の方が本音に近い気がするからです。きれいな空気を吸い、運動で血流を良くし、同時に筋肉を貯めるお金のかからない楽しみが性に合うのでしょう。

冬の食料保存庫

週末はオフグリッド・自給自足生活で暮らす友人宅に伺い、里芋や菊芋を分けていただきました。里芋が種芋の上に親芋ができ、子芋、孫芋と連なることを知りましたが、畑から遠ざかる都会生活がいかに無知かを感じます。天然のインスリンとも呼ばれる菊芋は次々と掘り出され、収穫の喜びをもたらします。自らの畑で汗を流し、畑が冬の間の食料保存庫になる素敵な暮らしは、精神的な自由と健康的な体を得られます。山々に囲まれた静かな畑に立つと、豊かさの本質が何かを教えてくれ、出世やセレブな生活を望むことは、自らをメタ認知で客観的にとらえることができない人なのかもしれないと思います。普段は目にすることの少ない親芋はしっかりとした食感で煮崩れせず、カレーに入れるのは初めてですが具材として最適です。せめて収穫が最盛期を迎える季節ぐらい、食料を手にできることへの感謝の気持ちを持ちたいものです。

Translate »