週末に近所のフルーツパーラーに行きました。目当てはホットケーキで、忌むべき小麦粉をわざわざ食べに行ったのは、1846年に神田で創業した万惣を発祥として、2012年に閉店した万惣フルーツパーラーの流れをくむ店だからです。食通として知られた作家の池波正太郎氏も、このホットケーキをこよなく愛したと言われます。こうした背景を知ればいやが上にも期待は高まります。ホットケーキの最適な厚さ2.3cmとされますが、想像より小さく、子供の頃に喫茶店で食べたホットケーキが運ばれてきた時の喜びはありません。1,000円未満の食べ物に期待をすべきではありませんが、食べてもごく普通で、シドニー発のbillsのリコッタパンケーキのような感動も、ホットケーキが持つオーソドックスな懐かしさも感じません。外食に気が進まないのは、何を食べても至って普通に感じるからですが、それは悪いことではない気がします。
当人たちには分からない
鍋料理の季節ですが、最近は酒粕を使います。日本酒の製造過程で得られる酒粕には米麹、酵母が混ざり高い栄養価を持ち、血液の流れを良くして血圧を下げ、体を芯から温めます。ビタミンB1、B2、B6を豊富に含み、これらのビタミンB群は、疲労回復や美肌効果をもたらし、生活習慣病の予防などに効果があるとされます。食物繊維、カリウム、カルシウム、ペプチドなどの栄養素がバランスよく含まれ、腸内環境を整えるなど数えきれない働きを担います。濃厚な味わいはチーズともあいコクが増します。酒粕も、納豆も、味噌も、漬物も、伝統的な日本食には発酵食品が多いために、防腐剤を使わない理想的な長寿食と言えます。健康のために積極的に摂取すべき食品が、手近な場所で手頃な価格で手に入る日本の素晴らしさは、日本に暮らす当人たちには分からないのかもしれません。
都市に適した交通手段は自分の足
昨夜は父が急に入院をすることになり、中野に行きました。処置が終わり家までは電車を使って帰っても小一時間かかるために、走って帰ることにしました。住んでいるエリアは東西方向に鉄道が走るために、中野の病院から新宿経由で乗り継ぐよりも、南北方向に自分の足で走れば電車より早く帰宅できます。Googleマップさえあればちょっとした移動の全てはエクササイズに変わります。急いで家を出たのですが、普段からトレランシューズとトレランザックを使っているので常に走る態勢と言え、10km程度なら走ろうという気になります。一方で、普段はわざわざ走ろうというモチベーションが起きないので、こうした必然は走るための絶好の機会になります。走る爽快感に加えて、見慣れぬ街の風景からも新鮮な刺激を受けます。電動モビリティの普及により人々は益々運動不足になりますが、都市に最も適した交通手段は自分の足だと思います。
石橋を叩いて壊す社内貴族
年初の羽田の事故では奇跡の緊急脱出が世界から賞賛されたJALですが、2024年4月1日の社長交代により初のCA出身女性の就任が発表されました。稲盛氏による経営改革により生まれ変わったJALで、整備、パイロット、整備、客室乗務員と現場を知る経営者が継承されることは、JALの経営が健全な状態を保つことを示していると思います。保守的な会社では、財務、人事、企画といった、現場から遠い社内貴族の台頭によって土台から会社組織が崩れていく例を、多くの企業で見ることができます。一方で、営業が暴走した不祥事はいくらでもありますから、これらのエリートがブレーキを踏み、また会社が飛躍する場面で必要なことは当然としても、石橋を叩き過ぎて会社ごと破壊していくようなケースも多く知っています。会社経営とは、暴走と自己破壊的行動の間でバランスを取ることなのかもしれません。
加齢と老化を切り離す方法
皇帝と称されたフランツ・ベッケンバウアー氏の訃報が年初に伝えられました。今ほどサッカーがメジャーではない時代ですが、自分の年代で知らぬ者はいないスーパースターです。いついかなるときも威厳を保つ優雅なプレーに、人々はカリスマ性を見出しました。優雅なプレーで思い出すのは、大雨のためにレースの途中で中止になったトレラン大会です。泥沼に足を取られて誇張抜きに100回ほど転倒して全身泥だらけになっている素人選手を後目に、ワンツーフィニッシュを果たした陸上自衛隊第1空挺団の選手のウェアには、チリ一つついていなかったことに驚愕しました。国防の最前線で究極まで鍛え上げられた肉体と精神力がなせる驚異の技です。あきらめる前に、どうすればそのような世界に近づくことができるのか前進したいものです。加齢と老化を切り離す唯一の方法は、身体を鍛え続けることかもしれません。
歯の健康を維持する方法
歯の詰め物が外れて歯科医に行きました。1年に一度程度の割合でどこかが外れるので、健診と歯のクリーニングも行うのに好都合です。昔は頻繁に虫歯ができて歯が痛んだのに、もう10年以上虫歯ができることも治療の必要も生じません。その理由は朝食を食べなくなり、間食もしなくなったからだと思います。相変わらず甘いものは食べますが、食べる頻度が減ることが歯の健康を維持する上で効果的なのかもしれません。われわれが食べることが大好きなのは、人類史の大半が飢餓の歴史だったからだと思います。皮肉なことに、人体はその飢餓環境に適応した肉体を持ちますので、食べる行為は設計仕様に反して健康リスクを高めます。食べないことで、オートファジーにより細胞が浄化され、消化器が消費していた大量のエネルギーを代謝に回せるだけではなく、今では歯医者が癒しのひと時になります。
ロンドンの犬は幸せ
年初の羽田空港でのJAL機の事故でペット2匹が取り残されたことが影響したのか、昨日からスターフライヤーでは、国内線全路線で小型の犬や猫を客室に持ち込めるようになりました。片道5万円という値段はかなり微妙で、手荷物扱いのペットは緊急時の持ち出しが禁止されるなどの制約もあります。ロンドンに行ったとき驚いたのは、公園を散歩している犬がみなノーリードなことです。そして遠く離れても遠隔コマンドで飼い主の左に寄り添うヒールポジションを取ります。犬との関係が成熟しているヨーロッパでは、犬と公共交通機関に乗ることもできますし、料金も無料か少額だったと思います。日本ではそこまで成熟した関係がないためか、犬の糞や尿に関するトラブルも絶えません。全て欧米が良いとは思いませんが、ロンドンで見かけた犬との生活がとても幸せそうだったことは確かです。
人が殺到しないことが不思議
週末は山梨百名山の篠井山(1,394.4m)、大栃山(1,415m)に登りました。登山口から往復2時間ほどと、しっかり体を動かしたい人には物足りないのですが、どちらも富士山の美しい山頂です。今の季節は空気が澄みわたり、天気が良く、落葉樹の葉の落ちた森は明るく、人も少なく、雪のついたトレイルは歩きやすく、寒さがミトコンドリアを活性化してくれる最高の季節です。森林浴を兼ねた有酸素運動は身体にやさしく、登りと下りは異なる筋肉を鍛えられ、バランス感覚も養えます。朝一番なら、鹿や小動物に会えることも大きな魅力です。運動をすれば無駄のない筋肉質の身体になり、新陳代謝が改善され体重は増えにくく、精神衛生面での健康も期待できます。ランニングは苦手ですが、重力を借りた下山時のランニングは楽しく、時折ゾーンに入り自己肯定感まで得られ、しかもお金がかからないレジャーに人が殺到しないことが不思議な気がします。
海外に行かずとも
昨日は静岡県に住む古くからの友人宅に伺いました。住宅街にあるにも関わらず、のどかな田圃が正面に広がり、プライベートシェフをしている友人の作るメキシコ料理を食べていると場所の感覚が消えていきます。昨今人気のオフグリッドキャビンのような隔絶された自然環境に存在するプライベートヴィラの場合、それらしいスタッフがいればメキシコに行かなくてもメキシコそのままの世界観にトリップすることができそうです。柑橘類や葉物野菜、ハーブは自家農園で収穫する贅沢な自給自足と相まって、何とも豊かな時間が過ぎていきます。都市そのものを目的に行く観光は別として、ホテルツーリズムのように宿泊施設が旅の目的の場合、海外に行かずとも国内に同様の施設を作れば、移動時間を解消でき、時差ぼけや機内での感染症リスク、海外での治安リスクがなくなり一定の需要が見込める気がします。
永遠の旅行者
世界227カ国・地域のうち日本の旅券は194カ国・地域にビザなしで入国できる「世界最強」に復帰したと報道されます。国を転々としながらどの国の居住者にもならず、合法的に納税義務から解放される永遠の旅行者PT(Perpetual Traveler)というライフスタイルに昔は憧れました。そのためにリスキーな投資にも手を出し、いい思いもひどい目にも会いました。今振り返ると、学びの機会にこそなれども、欲に執着した未熟な行動だったと思います。輝きを放つように見えたのは、刷り込まれたステレオタイプの誘惑であり、それは自分の本音の喜びではなかったと思います。欲を満たすという進化とともに組み込まれた本能を利用して、お金で買える誘惑は脳のプログラムを書き換え、その行き着く先は自滅です。他方で、すべての誘惑を排除する禁欲生活も執着の一種であり、適度な禁欲生活における少量の快楽というバランスが、幸せな生き方のような気がします。