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肉体の限界に挑む旅行

週末は善光寺の宿坊に泊まる予定でしたが、父の容体が安定しないためにキャンセルをさせて頂きました。外泊をするときは、大半が必然を伴う宿泊なので料金が安く、地元の生活を垣間見ることができる民宿を選びます。レジャーとして泊まるのであれば、静けさのなかで滞在できる冬の宿坊は選択肢の最右翼です。一方で高級と呼ばれる宿泊施設は、他人のこだわりやその能書きを強要されるような気がして、本心では楽しめません。日々の食生活も宿坊などの精進料理を目指しており、本場に触れる機会は魅力的です。庶民の暮らしに余裕ができる江戸中期になると、修験者ではない民衆が霊山などで修行を行うようになり、善光寺詣などが大衆化し、各地の大寺社には宿坊が整備されました。やがてそれは観光事業を形成しますが、当時の徒歩旅行は現代の安楽な旅とは異なり、肉体の限界に挑むような冒険だったのかもしれません。

終の棲家

先日迎えた誕生日が嬉しくないのは、強制的に年齢を思い出させられるからです。まわりの同年代からは、終の棲家や終のクルマといった物騒な話も聞こえてきますが、元気な80代、90代の人から見れば、自分の年齢などは子供でしょう。仮に終の棲家や終のクルマを考えるとすると、弱気にならないように自分に渇(活)を入れるような苦労が絶えない選択でありたいものです。そう考えるなら、10年20万kmをともにしてきた今のフィアットと、このまま寄り添うことが最良の選択肢になります。その点で、今の自宅が終の棲家にならないのは、飽くなき快適さを求める都市にあるからです。南会津町に買った古民家の以前の持ち主から昨夜電話をいただき、雪下ろしをしてあげるとの有難い話でした。終の棲家とは、日々の当たり前がどれほど有難いかが身にしみるような、自然とともに暮らす住まいのような気がします。

どんなものであれ美味しい

誕生日の祝いに妻が気楽なイタリアンレストランでご馳走してくれました。外食には気が進まないのですが、人が負担をしてくれる場合は話が別です。わざわざ行きたいとは思いませんが、普通に美味しい店で満足をしました。世間の店の大半は普通に美味しい店であって、仮にそうであるなら家で食べた方が気楽で出かける手間もありません。過去に行った凄く美味しいと思った店も、期待値が高まり過ぎて再訪したときには裏切られることが少なくありません。行ってみたい店はありますが、料理が食べたいわけではなく、その独特な雰囲気のなかで食事をしてみたいという施設見学が主目的です。断食の健康効果を知ってしまうと、食べることにモチベーションを持ちにくくなります。皮肉なことに、断食明けの食事はどんなものであれ美味しく食べられるので尚更のことです。

幸せな仕事人生

昨日は7年ほどお世話になった日本工学院での最後の授業で、今後はゴールデンウイークに開業予定のサウナ事業に専念したいと思います。いくつかの会社や大学で最終出勤日を迎えましたが、どの日も少しだけ景色が鮮明に映ります。ご多分に漏れず人前で話すことが苦手でしたが、ある日を境に苦手意識が消えた気がします。外資系企業に在職中、社内トレーニングを受けたとき、業界では名の知れたマッキンゼー出身の講師に、「君、話すのがうまいね」と言われた何気ない一言で、単純な性格ゆえ、以来人前で話すのが苦手ではなくなりました。立教大学で講師を始めた2003年以来、20年以上続けたティーチングジョブは、第二のキャリアとも言え、名残惜しくもありますが、前に進むためには今あるものを手放すことが必要かもしれません。幸せな仕事人生とは、好きと得意とお金になる(人の役に立つ)、の交点にあるものでしょう。

唯一の免罪符は断食

昨年末に9日ほどわが家に滞在した、かつてのオーストラリアの留学生が、旅先の台湾から地元のお菓子を送ってくれました。先月の日本を皮切りに、韓国、台湾を回るグランドツアーに出られるのは学生の特権です。気持ちはとても嬉しい反面、今年は健康リスクのあるお菓子を排除すると決めた直後だけに少し複雑な気持ちです。しかし、甘いもの好きの彼女が選んだだけにどれも美味しく、ついつい食べてしまいます。美味しさとは何かを考えると、それはβエンドルフィンに代表される脳内麻薬様物質による陶酔状態です。われわれは高級店の高尚なる食べ物が美味しく、低俗なジャンクフードは美味しくないと考えますが、おそらく脳はその違いを認識しないと思います。健康リスクの高い食品でも、その禁断の味は高級品と同様に満足できるはずです。いずれにしても唯一の免罪符は断食であり、体内のプラークさえも燃焼させてくれる気がします。

自然に眠る

一年を通じてほぼエアコンを使わない生活をしているので、この季節はよく眠れます。とは言えよく眠った日でもせいぜい6時間で、3時間で目覚め、そのまま起き出すこともあります。数十万人レベルの疫学的な調査によると、死亡率が最も低いのは7時間程度眠る人とされ、調査結果を元にした情報が世間に広がります。しかし、健康常識を疑う必要があると思うのは、元気な百寿者や健康長寿の人のなかには、こうした常識とは逸脱した生活をしている人が目立つからです。真面目な日本人は権威付けされた情報を真に受け、自分を不眠症だと思い込み、無理に眠ろうとするので本当の不眠症になります。医学論文のスポンサーが製薬企業であるように、日々目にする健康常識の多くは何らかの意図によって操作されている可能性があります。重要なのは自然に眠り自然に目覚めることであり、外部の雑音ではなく体の声に耳を傾けることだと思います。

冬こそ薄着

週後半にかけて寒波がやってくるようです。朝夕にラブラドールと散歩に行くときや外出時は、なるべく薄着にします。氷点下まで下がる東京の気温も寒いのですが、山の稜線で風に吹かれることを考えれば暖かく感じます。薄着生活の利点は内臓脂肪が燃焼しやすくなることです。日本人は内臓脂肪がつきやすい体質とされ、内臓脂肪が増えると代謝が乱れ、全身性炎症が慢性化すると言います。抗酸化作用により血管を修復するアディポネクチンが減り、高血糖、高血圧、血清脂質異常が起き、生活習慣病や老化を引き起こします。さらに食欲を抑える作用があるインスリンの効きが悪くなることから、食欲に歯止めがかからない悪循環に陥ります。恐ろしい内臓脂肪を減らす自然の機会を、使わない手はありません。人類を苦しめてきた寒さと空腹が、生命力を高め、健康を維持する秘訣であることは、体を鍛え続けよという天の啓示に聞こえます。

何を食べても至って普通

週末に近所のフルーツパーラーに行きました。目当てはホットケーキで、忌むべき小麦粉をわざわざ食べに行ったのは、1846年に神田で創業した万惣を発祥として、2012年に閉店した万惣フルーツパーラーの流れをくむ店だからです。食通として知られた作家の池波正太郎氏も、このホットケーキをこよなく愛したと言われます。こうした背景を知ればいやが上にも期待は高まります。ホットケーキの最適な厚さ2.3cmとされますが、想像より小さく、子供の頃に喫茶店で食べたホットケーキが運ばれてきた時の喜びはありません。1,000円未満の食べ物に期待をすべきではありませんが、食べてもごく普通で、シドニー発のbillsのリコッタパンケーキのような感動も、ホットケーキが持つオーソドックスな懐かしさも感じません。外食に気が進まないのは、何を食べても至って普通に感じるからですが、それは悪いことではない気がします。

当人たちには分からない

鍋料理の季節ですが、最近は酒粕を使います。日本酒の製造過程で得られる酒粕には米麹、酵母が混ざり高い栄養価を持ち、血液の流れを良くして血圧を下げ、体を芯から温めます。ビタミンB1、B2、B6を豊富に含み、これらのビタミンB群は、疲労回復や美肌効果をもたらし、生活習慣病の予防などに効果があるとされます。食物繊維、カリウム、カルシウム、ペプチドなどの栄養素がバランスよく含まれ、腸内環境を整えるなど数えきれない働きを担います。濃厚な味わいはチーズともあいコクが増します。酒粕も、納豆も、味噌も、漬物も、伝統的な日本食には発酵食品が多いために、防腐剤を使わない理想的な長寿食と言えます。健康のために積極的に摂取すべき食品が、手近な場所で手頃な価格で手に入る日本の素晴らしさは、日本に暮らす当人たちには分からないのかもしれません。

都市に適した交通手段は自分の足

昨夜は父が急に入院をすることになり、中野に行きました。処置が終わり家までは電車を使って帰っても小一時間かかるために、走って帰ることにしました。住んでいるエリアは東西方向に鉄道が走るために、中野の病院から新宿経由で乗り継ぐよりも、南北方向に自分の足で走れば電車より早く帰宅できます。Googleマップさえあればちょっとした移動の全てはエクササイズに変わります。急いで家を出たのですが、普段からトレランシューズとトレランザックを使っているので常に走る態勢と言え、10km程度なら走ろうという気になります。一方で、普段はわざわざ走ろうというモチベーションが起きないので、こうした必然は走るための絶好の機会になります。走る爽快感に加えて、見慣れぬ街の風景からも新鮮な刺激を受けます。電動モビリティの普及により人々は益々運動不足になりますが、都市に最も適した交通手段は自分の足だと思います。

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