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通勤はリトリート

日本工学院に出講する水曜日は車を使います。交通量の少ない早い時間に、都心とは反対側に向かうドライブはポジティブな感情を生み出します。ストレスの少ない道を選んで、真夏に向かう今の季節なら山下達郎をかけながら走ると、自律神経バランスが整い、通勤はリトリートになります。気分を高揚させるのは青春時代に連れ戻してくれる曲で、ユーミンやサザンオールスターズなどもその代表です。ユーミンのアルバムは時代を反映し、その曲を最初に聞いた時代や当時の情景が蘇ります。対して山下達郎の曲は時の流れを止める一貫性を感じます。不調和を伝えるサザンオールスターズを聞きたくなるのは、未熟な高校時代を懐かしむときです。いかなる仕事もベストの状態で職場に行くべきですが、教員のような対人サービス業では、高いテンションのやる気モードで臨む必要があり、通勤時間の過ごし方が大切だと思います。

老いを喜び、謳歌する

以前はFIRE的リタイアに憧れ、新興国のコンドミニアムでも買って、その家賃で働かずに暮らすステレオタイプの生活に憧れました。しかし海外投資で躓き、そうならなかった今の境遇の方が幸せだと思います。早い時期に不労所得を得てしまえば、勤労意欲を失い、一方でやりたいことも見つからず、退屈な消費の末に生命力まで弱ってしまいそうな気がします。大半の人は、体がいずれ動かなくなることを前提に人生設計をしますが、死ぬまで身体は動くと思うなら、あせって人生に期限を決める必要もなくなります。定年後に30年の活動的な自由時間がある人は、現在では極めて稀で幸運なケースではありません。90歳まで働くことを前提に人生を計画するなら、いつまでも前向きに過ごすことができそうです。そして90歳になる頃には今より執着も薄らぎ、老いを喜び、謳歌する老年的超越の境地に入っていることでしょう。

最も自由を実感できる暮らし方

昨日は自宅の付近でも36度の猛暑になりました。もはや気持ち良いほどの暑さですが、エアコンを使いたくないので、この時期の睡眠は不足しがちです。何かと便利な東京は嫌いではありませんが、不満があるとすればこの暑さと、自然へのアクセスの悪さでしょう。数年前には現実的とは思われなかった、アドレスホッパーのためのインフラやリモートワークが普及し、好きな季節に好きな場所で暮らすライフスタイルが可能になりました。複数拠点の居住は、様々な刺激を受けることができ、一方で人々が移動することにより地域に消費がもたらされます。海外にまで範囲を広げるなら、人生におけるカントリーリスクの分散や、節税の効用も期待できます。良くも悪くも国や地域に拘束されない生き方こそ、最も自由を実感できるような気がします。

自分の人生を生きる分岐点

昨日は、下北沢で「ライフ・イズ・クライミング!」を見ました。視力を失ったクライマーの小林幸一郎氏が、パラクライミング世界選手権4連覇を果たしたあと、長年のパートナーであるサイトガイドと、アメリカ・ユタ州のクライマーの聖地にある、フィッシャー・タワーズを登るドキュメンタリー映画です。地表から150mの砂岩の最突端にあり、見ているだけで恐ろしい尖塔のコルクスクリュータワーの上に氏が立ち上がる瞬間の360度映像の神々しさは、映画館で見る価値があります。視覚のない氏が風によって高さを感じ、クライミングパートナーの地声によってルートを見つけるように、波動によって見えない世界を見ているのだと思います。全盲のクライマーとして初めて世界7大陸の最高峰を制した、エリック・ヴァイエンマイヤーとの出会いにより生きる意味を見つけたように、挑むか挑まないかが自分の人生を生きる分岐点なのでしょう。

価値ある自然の恵み

なるべく菓子を食べずに、代わりに焼き芋を食べる機会が増えました。種子島産の安納芋とともにさつま芋御三家とされる、紅はるかやシルクスイートが手頃な値段で買えるときに、オーブンで焼いて熱を冷ますと抜群の糖度になります。甘すぎる菓子を食べると、不健康な砂糖の摂り過ぎに罪悪感を覚えますが、果物や野菜の甘さなら罪悪感は薄れ、むしろ健康効果を期待できます。さつま芋は食物繊維が豊富で、グリセミック指数が低いために血糖値はそれほど上昇せず、カルシウム、ビタミンC、E、カロテノイドが豊富な健康食です。洗って水分を拭き取り焼くだけの手軽さで、しっとりとした食感のデザートが仕上がります。スーパーなどで安く売られる黒バナナといい、価値ある自然の恵みが安く簡単に手に入ることを考えると、身体に悪いデザートにお金を払う意味を見出せなくなります。

執着が減り愛着が増える

以前はカフェイン中毒気味でしたが、睡眠を改善する目的でコーヒーや紅茶を止めてから、これらの嗜好品への興味が薄れました。代わりにレモングラスやカモマイルのお茶を飲みますが、以来コーヒーを飲みたいと思ったことはなく、これほど短期間に味覚や嗜好が変わることは意外です。それに伴い豆乳を買うことも無くなりましたが、減らすことは自分の本音に近づく道に見えます。揚げ物、肉、コーヒーや食パンを控えていますが、何かを捨てることは通常苦痛を伴います。しかし実態はその逆で、執着が減る反面、愛着が増えると思います。今のところコーヒーを飲みたいという感情を起きませんが、同様に控えている食パンが時々食べたくなる時には逆らいません。重要なのは無思考の習慣ではなく、自分の正直な気持ちであり、その結果ありふれた日常の食べ物は、特別のハレの食べ物に変わると思います。

全てを手に入れ全てを失う

影の総理と言われ、政権中枢へ順調に登って来た木原誠二官房副長官の妻が、前夫の不審死事件の重要参考人として聴取を受けていたと、昨日発売の週刊文春が伝えます。将来の総理候補の妻が殺人に関与するなら国家の一大事です。不自然な捜査の幕引きが有力政治家への忖度なのか、本人が影響力を使って妻をかばったのか、いずれにしても事実なら法治国家を揺るがす事態です。財務官僚出身の首相最側近という絵に描いたエリートの転落は、岸田政権最大の危機と言えます。異世界に住む二人が夜の銀座で出会い、17年前の不審死事件が暴かれる奇異さは、サスペンス劇場顔負けの展開です。反社との写真が流出する三木谷氏といい、功成り名を遂げる人は、危ない世界に吸い寄せられるものかもしれません。その楽天のモバイル事業は先行きが見えず、全てを手に入れ全てを失う定めから、人は逃れることができないのでしょう。

食を節するほど人生は富む

今日の日没時間は一年で一番遅く明日からは逆転し冬に向かいます。今年の前半を振り返ると、早くも感じ、他方で三大ニュースぐらいは選べる程度の変化のあった半年でした。人生は有限ですからもっと焦るべきでしょうが、先を急がず日々のことを粛々と進めて行けば良いと思います。人生で何かを成し遂げねばならないと以前は考えましたが、幸せは常に自分の内側にある問題で、人の成功をうらやむ必要もありません。最も確実に幸せを手に入れる方法は、自分の体を健康に保つことです。美食を追求すると、その先には肥満や生活習慣病が待ち受けており、食事に執着しない人生も同様に幸福だと思います。飢えこそが生命力をかきたてる最大の因子と考えるなら、食を節するほど人生は富みます。人生の後半は何かを手に入れるより、身の回りの雑音を消し、執着を手放すことの方が重要かもしれません。

未来の兆しを感じる都市空間

先週末は、12年の活動を終えた産官学民の共創による街づくりの実験場である、二子玉川のCatalyst BAのファイナルイベントに行きました。まだコワーキングという言葉が使われない2011年4月に始まった先進的な取り組みは、所期の目的を達成したと言えます。都心と郊外の中間に新しいスタイルのコミュニティが生まれ、それが次の都市のモデルに展開される実験場として、二子玉川以上にふさわしい場所はありません。新しい価値を生み出す化学反応のために、人々がリアルに出会う、外に開かれた場の価値は高まっていくはずです。都心と郊外の中間にあるエッジシティがエッジであり続けるためには、閉じられたオフィスとは異なる、個人が素の表情で振る舞える創発・共創スペースが必要です。エッジという感度を失った企業が衰退するように、予定調和の同質感を超えた辺境と異端から、未来の兆しを感じる都市空間が生まれるのでしょう。

語らぬ生き証人

日曜日に松姫峠付近の山中で見かけたボンネットトラックが気になって調べると、第二次世界大戦中のアメリカの軍用トラックのようでした。これほど身近な場所に戦跡とも呼べそうな車両の残骸があるのは驚きです。もちろん米軍の払い下げ品で、荷台には駿河製紙株式会社山梨出張所の文字が読めます。おそらく、アメリカ軍に1941年から配備されたGMC社のCCKW353(ロングホイールベース、ウィンチ装備型)で、重量4.8t、全長6.86m、全幅2.24m、最高速度72 km/h、480 kmの行動距離があったようです。積載量2.5tの6輪駆動軍用トラックは、M2重機関銃を装備可能とされます。第二次世界大戦中にアメリカが生産した2.5tトラック81万両のうち、56万両以上がこのGMC CCKWシリーズで、ジープとして知られるウィリスMBの36万台を超えます。この車がどのような歴史を経て、奥多摩の山中にたどり着いたのか分かりませんが、この語らぬ生き証人に近いうちに会いに行きたいと思います。

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