円安を背景に追い風を受ける観光業ですが、急回復するインバウンド市場の復活は、喜んでばかりもいられません。長引いたデフレによる安売りの国のイメージが定着することや、将来性のある観光施設が外資に買われるリスクもあります。一方で、先月開業した豊洲市場の複合施設「千客万来」は、外国人観光客に人気ですが、施設内の飲食店のうに丼は1万8,000円と高額で、「インバウン丼」や「ボッタクリ丼」とも呼ばれ話題です。220グラムで9万6,800円の神戸牛ステーキにしても、消費者が納得すれば適正価格なのでしょうが、加熱するブームはバブル期を思い出します。宿泊や飲食サービス業の現場は相変わらず人手不足で、サービスレベルが維持できずに信用を失墜させる可能性があります。オーバーツーリズム問題も表面化し、日本をがっかりした旅行地にしないためには、目先の金に欲を出さずに価値の提供を見据える必要があると思います。
最も柔軟な役所は税務署
昨日は両親を含む3人分の確定申告を提出しました。どこの税務署も昭和の事務所然とした陰気な雰囲気が漂うのは、納税者に節約をアピールするためかもしれません。確定申告は慣れの問題で、たいした負担にはなりませんが、税金を納めるのに作業をさせられたと憤る人もいます。しかし実態は逆で、自己申告をさせてもらえる有難い制度だと思います。旅館をしていると、消防署や建築指導課などの役所との関係がありますが、どこもお役所仕事といった堅苦しさはなく、地域による違いはあるにせよ比較的柔軟な印象を持っています。しかし、最も柔軟な役所は現代の経済警察と恐れられる税務署かもしれません。国民全体を相手に納税をしてもらうためには、ファジーな部分を残しておかないと税の徴収コストがかさんでしまいます。今月末には会社の決算も控えていますが、1年に一度お金の使い方を振り返る良い機会だと感じます。
面従腹背的な器用さ
巷では老後2,000万円問題が再燃しているようです。この問題がしばしば浮上するのは、金融商品を売るためのキャンペーンだからでしょう。高齢社会における課題の多くは、老後という発想にあると思います。老後発想が出てくる理由は、定年退職による長い無収入期間が続くからです。定年退職を卒業などと美化したところで、実態は年齢を理由とした強制解雇です。収入ばかりではなく、仕事により曖昧にされてきた生きがいまで失うことで、描いていたような悠々自適の生活とは程遠い、社会からの疎外感を受ける人もいます。人生にはお金も時間も必要ですが、同様に生きがいが必須です。貯金より貯筋といったところで、いきなり運動を始めるハードルは高いですし、生きがいを探すことはさらに困難です。リンダ・グラットンのいうライフ・シフトを実現するには、組織を利用して自己実現をする、面従腹背的な器用さが求められるのかもしれません。
病も景気も気分次第
日経平均先物が4万円を超え、34年間に及ぶデフレ悲観論からの脱却が本格化したようです。民主党政権時代の7,000円台からは隔世の感があります。量的緩和による円安政策、コロナ禍や米国主導の輸出規制による半導体設備投資の国内回帰、EVへの熱狂の衰退に伴う日本のお家芸であるエンジンやハイブリッドによる自動車の復権、欧米客を中心としたインバウンドの回復など明るい兆しには事欠きません。景気が良いから気分が良くなるのか、その逆なのかは分かりませんが、病も景気も気分次第であることは確かでしょう。お金への執着が健康や幸福を妨げることは事実ですが、その反面、景気が良くなり消費への余力が生まれることが幸福感を高めることも確かでしょう。清貧の思想も、お金への執着も、中庸と言えるバランスを保つ限り、受け入れるべきものだと思います。
意思と体の主体性
母の入居する高齢者施設に行く頻度が増えました。いつも食事をしていた父がいなくなり、寂しさを埋める慰めになればと思います。偉そうなことは言えませんが、施設を訪れる他の家族を見たことがありません。なるべく他の入居者に目立たないように訪問しますが、尋ねて来る家族もいない人の気持ちを考えると複雑です。一方で、高齢者施設に行きたくない理由も分かります。構ってもらおうと食器をたたき続けたり、うめき声をあげたり、そこにいるだけでこちらの生気まで奪われる気がします。入居者の平均年齢が92歳ながら、介護度がそれほど高くない施設でもそう感じますから、社会から見放された場所に見えたとしても不思議ではありません。健康に注意をしていると言うと、そんなことをしてまで長生きをしたくない、と強弁する人もいますが、最後まで自分の意思と体の主体性を奪われたくないだけです。
戻るべき場所に人を戻す
4年に一度29日がやってくると暦について考えます。身近なところでは二十四節気があり、四季という地球のリズムを反映する時間の計測法と言えます。一方で人間のバイオリズムは、月の満ち欠けという自然のリズムに合わせることで、生物的な機能と有機的につながると思います。われわれは天気や気温、気圧には注意を払いますが、1年に13回巡ってくる満月など、月の運行に合わせた生活は一般には浸透していません。子供の頃はどの家庭でもお月見の習慣がありましたが、今は空を見上げる余裕すらありません。先祖から受け継がれた知恵や習慣は、時代に合わないしきたりとして寂れて行きましたが、それらは古めかしいどころか、最先端のさらに先を行く健康に生きるための知恵だと思います。世界では都心のオフィスから人々が去る傾向も見られますが、命を脅かす災難は、戻るべき場所に人を戻すのかもしれません。
花粉症も悪くない
花粉症の季節が到来しました。まだ一日に数度くしゃみが出る程度ですが、3月に入ると生活に支障をきたすようになります。一年で一番美しい春が最も憂鬱な季節になったのは、記憶にないぐらい昔です。特効薬を勧めてくれる人もいますが、薬の影響は全身に及びますので自然療法で対処します。花粉の季節の前に口呼吸をすることで免疫を抑制する免疫寛容や、屋外で日光を浴びることでビタミンDを合成する、日常的な鼻うがい、乳製品を控えるなどです。最も効果的なのは避粉地への転地療法で、旅行の口実ができることはむしろ好都合です。花粉症の有病率は2001年の12%から2010年には47%まで増加したとの研究もあり、同病相哀れむによる強い共感形成ができる人が増えることは、花粉症のメリットかもしれません。花粉症の対処法はコロナウィルスの重症化予防と同じともされ、花粉症も悪くない気がしてきました。
有史以来の健康革命
YouTubeの普及によって本を読む量は半減しましたが、それでも年間100冊程度の本を読みメモを取ります。自分の感性を刺激した本はメモの量によって把握することができます。この数年で言えば「SWITCH-オートファジーで手に入れる究極の健康長寿」はそんな一冊です。大隅教授のノーベル生理学・医学賞の受賞により日本国民の知るところとなったオートファジーは、シンプルで実行しやすく、コストもかからない最高のアンチエイジング法だと思います。健康的な脂質と食物繊維が豊富な野菜を多く摂り、16時間の間欠的断食を行うだけで、究極の解毒装置であるオートファジーが起動します。最近の研究では、遺伝子が長寿に影響する割合は7%で、生活習慣が影響する割合は90%以上とされ、自制心さえ保てば真に健康的な30代のまま、健康長寿を実現できると言います。お金もかからず不老長寿の薬が手に入るなら、有史以来の健康革命と言えるでしょう。
夏みかんは果物の王様
正月に妻の実家でもらってきた夏みかんがそろそろ底を尽きます。収穫から2か月が過ぎても鮮度を保ち、甘く、今が旬といった感じです。手入れ不要の夏みかんは収穫の手間だけで手に入る有難い果物です。むやみに糖度を競う昨今の果物とは違い、ほのかな甘みが懐かしくも新鮮です。夏みかんには、ビタミンC、E、B1、葉酸、パントテン酸、カリウム、銅、不溶性と水溶性の食物繊維などの栄養素が多く、免疫力を高め、感染症予防、貧血予防、血圧低下、疲労回復、アンチエイジング、骨や血管の強化などが期待できる果物の王様です。果物の美味しさを甘さで評価する現代社会では、果物に含まれる果糖が健康リスクを高めますが、その点でも消費者から敬遠される夏みかんは安心です。化学的に合成された純度の高いミネラルのサプリより、ビタミンCの吸収率が高く、甘いお菓子など麻薬系食べ物への欲求すら解決してくれます。
自炊グルメの時代
物価上昇がデフレ脱却のチャンスとして好感される日本経済ですが、好調なインバウンドの恩恵を受けるラグジュアリーホテルは高嶺の花になりつつあるようです。都心のホテルのアフタヌーンティーは、数年前なら3,000円前後でしたが、今や9,000円ほどに跳ね上がります。一方で物価の優等生もあり、近所のスーパーではイワシの開き5枚が300円で売られます。小麦粉をつけてフライパンで焼き、タレを絡めるだけで、ご飯にのせて山椒をかけるとうな丼とそん色ない美味しさです。加えてイワシにはDHAやEPAのオメガ3系の必須脂肪酸が豊富に含まれ、末梢血管の血流を良くし、体内の炎症を抑え、免疫力を高めるメリットがあります。成田山あたりのウナギの名店なら、開店時間に行っても2時間待ちという混雑ぶりですが、自炊グルメなら時間もお金もかけずにいくらでも美味しいものを食べられると思います。