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2,500円の気晴らし

昨日は小川町駅近くのMANGA ART HOTEL TOKYOに泊まり皇居でランニングをしました。紙のマンガを読むためだけに泊まることをコンセプトにした施設ですが、結局マンガは読まず、主たる目的は施設を見ることとランニングです。日本で最も有名なランニングスポットの皇居ですが、始発前の早朝の皇居には警官以外の人影はなく普段とは違う表情を見せます。昨今、近所を旅するマイクロツーリズムが提唱されますが、雑多でディープな神田界隈に泊まり、早朝の皇居を独占できる旅ならお金もかかりません。旅には日常と異なる環境に身を置く転地効果があり、ストレスマネジメントの一環ともされます。多くの人が時差ボケなど、健康リスクをおかしてまで旅に行く理由は、普段とは異なる特別な体験をするためですが、帰ってきた時には領収書しか残っていないはかない旅の目的が気分転換であるなら、2,500円でも実現できる気がします。

図面だけでは気づかない

昨日は2019年に神田錦町に開業したMANGA ART HOTEL,TOKYOに泊まりました。以前から気になっていたマンガをコンセプトにしたホステルですが、2,500円と安く、気晴らしにカフェに行く感覚です。170㎡に35ベッドで想定単価5,000円ですが、実売価格は半額、稼働は2割程度と気の毒な状況です。それなりに力を入れて作られマスコミ露出が多い割に評価がイマイチな理由を知りたかったことも泊まった動機ですが入るなり理由が分かりました。細かい問題はたくさんあるのですが、致命傷は居心地の悪さです。似たコンセプトで草分け的存在のBOOK AND BED TOKYO IKEBUKUROなどの先行事例を研究していればこうはならなかったと思うのですが、パブリックスペースが限られ居たたまれないのです。居心地は形式知化が難しく、図面を見ているだけでは気づかないのですが、施設に一定の余白とボリューム感がないと高付加価値の宿泊施設は成立しないのでしょう。

軍用車両こそが最高性能

ウクライナ戦争には第一次世界大戦の骨董品から、実戦配備前の最新式まであらゆる兵器が投入されていると言われます。武器輸出が本格的に議論され始めた日本ですが、以前から民生用車両は軍用車として世界中で使われ、チャド内戦では両軍により多用されたピックアップトラックのTOYOTAのロゴタイプが頻繁に放映されトヨタ戦争と呼ばれます。自国でエンジンを作れる国は少数ですが、灼熱の砂漠や極寒の地における信頼性でランドクルーザーの右に出る車はなく、ウクライナ国防省でもトヨタハイラックスを採用しています。走破性、耐久性、出力、燃料効率、積載能力、メンテナンスの信頼性はもはや神話のレベルで、究極の機能性を求める軍用車両こそが最高性能を保証してくれると思います。次に車を買うとしたらマニュアルのないランクルは候補外ですが、プロユースを想定して開発されたジムニーは最も魅力的に見えます。

欠乏こそ幸せの鍵

梅雨が明けると本格的な旅行シーズンが始まりますが、人が最も幸福感を感じるのは旅行中ではなく旅を準備している時だとされます。断食の魅力の一つが次の食事を想像して空腹を楽しめることであるように、欠乏とともに人は充足を覚える生き物かもしれません。休日が少なく貴重だからこそ休暇を楽しめるのであって、リタイアしていくらでも時間が使えるようになった時には思ったほど幸せではないのでしょう。欠乏時の期待こそが満足の鍵だと考えるなら、ディズニーランドのアトラクションや有名店に入るのに嬉々として行列に並ぶ理由にも納得できます。一方で人は分かりやすい幸せを実現しようとして条件付きの幸福に固執します。幸せの本質は今この瞬間を感じる感性であって、他人に与えられた贅沢を追求するなら幸せの感受性は衰え、幸福になる機会を手放すことになるのかもしれません。

すでに実現している2039年

「ヒトラーの終末予言-側近に語った2039年」を読みました。自分と同年代の人が「1999年7月世界滅亡」説を信じるきっかけともなり2020年に没した五島勉氏の2015年に出された著書です。ヒトラー予言者説は都市伝説界隈では知られますが、彼が40数度の暗殺を逃れた史実を考えると未来を見通す力を持っていたのかもしれません。印象的なのは五島氏にこの著作のアイデアを与えたのが三島由紀夫氏だったことです。悪夢の予言とも言える未来SF「1984年」がジョージ・オーウェルによって書かれたのが1949年であることを考えると不思議ではありませんが、本書が1988年の著作の復刊で当時と本文が変わっていないことを考えると、管理社会と思考停止が進む2022年の世界を語っていたことは多少不気味です。予言は期限をあらかじめ言明することに価値がありますが、2039年を待たなくてもすでに実現しているとも言えそうです。

手間を惜しまず丁寧に

新宿の住友ビルにある平和祈念展示資料館でシベリア強制抑留者や外地からの引揚者に関する展示を見ました。ウクライナ戦争を見るにつけ、平和を満喫しながら戦争の本質に目を向けることもなく、平和こそが最大の価値だと語るところには偽善と退廃がはびこると思います。部隊番号や氏名が丁寧に刻まれ個人の識別に使われた認識票や、シベリアの収容所で作られた抑留者による手製の食器の柄に彫られた文字の美しさが印象的です。戦争という非常時下にあっても、極寒の耐乏生活であっても平穏な心を保ったまま丁寧な仕事をし、わずかな隙間に美的な要素を取り入れてきた先人の勤勉さを感じます。何事も雑に扱わず、どんな簡単な仕事であっても手間を惜しまず丁寧に仕事をすることで心に余裕が生まれ、非情な環境に置かれても最後まで人間らしさを保てるのでしょう。

因果応報は人の定め

ウクライナ戦争は世界に影響を与え始めていますが、最も壊滅的なのはカルロス・ゴーンの逃亡先でもあるレバノンとされます。ヒズボラ支配により世界から愛想をつかされたレバノンは2019年から続く経済危機、90%以上下落したレバノン・ポンドとハイパーインフレに小麦の輸入が止まり、石油備蓄を使い果たし、電気や水、食糧、医療、教育が崩壊し国民の四分の三が2ドル以下で生活する貧困層に陥り、もはや中東のパリと呼ばれた面影はありません。富裕層の大半が国外脱出するなか、国際手配中のカルロス・ゴーンはレバノン当局による軟禁状態にあり、日本の拘置所暮らしの方がむしろ平穏だったのかもしれません。ベルサイユ宮殿の結婚式など、贅沢な暮らしを人生のゴールにするなら、その晩年は思ったほどには幸せではないのでしょう。因果応報は人の定めなのか、栄華を極めた独裁者の末路は落ち目のプーチンとも重なります。

食糧危機は怖くない?

冬に始まったウクライナ戦争が夏を迎え、ロシアとウクライナが小麦の29%、世界の総カロリーの12%を輸出する最大の穀倉地帯であることから食糧危機はもはや不可避とされます。国民に食糧備蓄を呼びかける国もあり、家畜の餌を人間にまわすといった方法も含め抜本的な解決策は見当たりません。ひとたび食糧危機が顕在化すれば棚から商品が消えることは必至ですが、食べることを最小化することが最大の対策かもしれません。不安を増大させる原因が食への欲望なら、食べることへの執着を手放すことが有効な対策でしょう。大半の人は賛同しないでしょうが、人間は通常考えられているよりはるかに少ないカロリーで生きることが可能です。ライトイーターと呼ばれる300kcal程度で生きる人は世界に数十万人いるとされ、食べる量を減らせば食べ物への集中度が増しむしろ満足度は高まります。食糧危機は、不健全な食べ過ぎ解消と人体の可能性追求の絶好の機会になるのかもしれません。

大衆車の方が幸せ

鹿児島県南部の知覧町まで車で往復し、初日は1,100kmほどを走りましたが、フィアット最小クラスの大衆車でも、以前乗っていた排気量が4倍の車でも遠乗りの快適さや楽しさには違いがないと思います。30年前に乗っていた初代のフィアットパンダは中央道の談合坂の登りでは80km/hを維持するのが精いっぱいでしたが、ほぼ同じ排気量ながらターボを備えた現行車は新東名の多くを占める120km/h区間の流れに乗るのに何のストレスもありません。GT-RやLX600といった国産車は今や2,000万円クラスですが、移動が車の本質であるなら、10倍の値段を払う価値を感じません。小さい車なら制限速度の範囲で走ってもストレスを溜めませんし、運転していることさえ忘れるような快適な車のように眠くなることもありません。高級品になるほどあらゆる商品の限界効用は急速に逓減して行き、変な執着がわかない分大衆車の方が幸せなのかもしれません。

塩と砂糖と脂肪だけ

普段は外食をほとんどしませんが、旅先での食事は大きな楽しみです。旅行中も一日一食ですが、他方でグルメ情報を血眼で調べることもありません。一番印象に残った食事は九州の帰り道に三原市で泊まった宿です。1泊2食4,900円という破格の値段は戦後まもなく建てられた施設が老朽化しているからですが、それを懐かしい昭和の風情と受け止めるのはこちらの勝手です。大金を払えば期待が先行する反面、この値段なら何を出されても平静でいられます。しかし予想を超える料理に手抜きはなく、朝夕に出された脂の乗った焼き魚の美味しさは格別でした。良い食材があればあとは基礎調味料の問題であり、ヒトの美食追求とは詰まるところ塩と砂糖と脂肪を求めているだけでしょう。前者は身体の維持に必要であり、後者はかつて貴重な食糧であった果物を見つけた時の麻薬的な歓喜の記憶だと思います。グルメ情報の氾濫は過剰な期待と執着を増やすだけのように見えます。

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