N-VANの真価

N-VANの初仕事はサウナ用の薪を運ぶことです。体積的にはこの倍は積めますが、専用設計のリアサスペンションが沈むので、とりあえず様子を見ます。N-VANのウリは乗用車に近いことですが、業界には乗用車ベースの商用車は成功しないというジンクスがあります。乗用車ベースのフロントエンジン車では、荷室の全長が取れないデメリットがあり、N-VANでは運転席以外の座席をフロアの高さにたたむことで荷室長2,635mmの大空間を生み出しました。N-VANを評して昨今の自動車雑誌の編集者は、やれ乗り心地が固いだの、30分以上座れるのは運転席だけとか、4人家族には無理筋とか、ロードノイズがうるさいなどと宣いますが、どこをどう切っても普通の乗用車だろう、と昭和の自動車好きは思うのです。4WDのビスカスカップリングのトルク容量を増やし、デファレンシャルギアも重い荷物を載せるプロユースを想定した専用設計の、N-VANの真価が問われるのはこれからでしょう。

身体を使って心を修める

昨日は白州町の石尊神社から水晶ナギ経由で雨乞岳に登り、ヴィレッジ白州側に下山して神社に戻る20kmをラウンドしました。アクセスのよいルートが作られてからはスパルタンな石尊神社から登る人はわずかで、行楽シーズンの週末でもすれ違う人もなく静かな山歩きを楽しめます。アロマの香りで満たされた森を独り占めしながら体を動かす以上に、贅沢なレジャーは思い付きません。山頂付近で行われた雨乞儀式を想像しながら歩くのも楽しく、遠い昔に思いを馳せるのが古道の魅力でしょう。儀式は、ホクギノ平を過ぎた付近で行われていたのではないかと想像します。いかにも神が降りたちそうな鋸岳を正面にする、台地状のカラマツ林こそがふさわしい場所に思え、そこから先の登山道は歴史を積み重ねてきた古道の風情が感じられません。歴史に埋もれた古道を歩き、先人のように身体を使って心を修めたいものです。

平等主義の弊害

山梨県の白砂山、羅漢寺山、弥三郎岳から金櫻神社に下り、昇仙峡の奇石をめぐる20kmほどのルートをラウンドしました。このルートは、修験道の聖地とされ、山頂に五丈岩を抱く金峰山へと続く御嶽古道とも重なり、歌川広重が訪れ風景を描いたことでも知られます。しかし、山がレジャーとしての側面を強め、便利さやアクセスの容易さばかりが求められた結果、ロープウェイまでかけられました。地元有志や企業による、金峰山古道復活プロジェクトが始まりましたが、古から続く古道を使うことが本質的な山の楽しみだと感じます。神道であれ、仏教であれ、修験道であれ、聖地に至る古道を歩むことは一種の修行でもあり、日本人の精神世界を構成している気がします。山へのアクセス制限は、マイカー乗り入れ規制など自然環境の側面から語られますが、誰もが行ける平等主義がもたらした最大の弊害は、伝統や歴史と現代を断絶したことかもしれません。

孤高の軽バン

仕事で使うN-VANが納車され、静岡から長野まで200kmほど走りました。10年ぶりに買った(ほぼ)新車に気分が上がります。旅館で使っていた軽トラックは、軽自動車らしい非力さを感じましたが、現行型N-BOX用に開発されたロングストロークの高効率エンジンは、最高出力53ps/6800rpm、最大トルク64Nm/4800rpmを発生し、一人で乗る限りパワー不足を感じることはありません。それは高回転まで回るエンジンと、ミッドシップスポーツS660のトランスミッションを改良した軽バン初の6速MTによるところが大きいと思います。軽商用車を扱う国内大手8社のうち、4社を擁するスズキ、日産、三菱、マツダ連合と、ダイハツ、トヨタ、スバル連合の3社に対して、ホンダが自社のみで事業化できるのはN-BOXの派生車種だからです。この成り立ちによって商用軽バンのイメージを覆すほど文化度が上がりかつ洗練され、欠点が見当たらず、4人家族ならこれ一台であらゆる場面に使えそうです。

首都の自己否定

広島県安芸高田市の石丸伸二市長が、7月の東京都知事選への立候補を表明しました。人口2万5千人の小さな自治体を舞台に、政治をエンタメ化することで市民の参画を促すネットの人気者の去就が注目されましたが、大方の予想通りの発表となりました。安芸高田市の公式ユーチューブチャンネルの登録者数は東京都を抜き、地方自治体としては異例の26.3万人となり、ツイッター政治で旋風を巻き起こしたトランプ前大統領を思わせます。「東京の解体」を再三唱えており、どのような政策を主張するのかに関心が集まりそうです。都知事候補者が東京解体を訴えるのは一見矛盾しているように見えて、日本を次のステージに進化させるためには首都の自己否定から始める必要があると思います。銀行員時代夜のニュースで故郷の市長選を聞き、翌朝会社に退職届を出し、わずか1か月の選挙戦で大勝した強運の持ち主の参戦により、都知事選から目が離せません。

車の運転はスポーツやマインドフルネス

昨日は車で福島市に行きました。自宅からは300km弱ですが、渋滞を避けられる早朝なら国道4号線を使っても5時間半ほどです。都内さえ抜けてしまえば高規格の国道は意外に便利で、あとはGoogleが案内する裏街道を通ると渋滞につかまることも最小限です。昔は疑いもなく高速料金を払いましたが、短縮される時間は2時間ほどで、世界一高いとされる高速料金は7,300円です。移動コストを見積もるとき、人は自分の稼ぐ時給換算と比較することがありますが、お金より時間の方が貴重だと主張する人ほど、付加価値への精査が甘くなると思います。300km程度であれば一般道での移動が苦にならないのは、早起きが得意で長距離運転をスポーツのように楽しむことができるからでしょう。長距離であるほど心地よい疲労と達成感が得られるのは、車の運転を一種のスポーツやマインドフルネスとみなしているからかもしれません。

サウナのダークサイド

サウナと飲食店から構成される複合型施設「SALON 91°(サロン・ナインティワン)」が銀座に開業します。この施設も含め会員募集やクラウドファンディングは順調なようですが、世間はサウナを買い被り過ぎだと思います。昨日泊った池袋のかるまるも相変わらず混んでいますし、今のところオーバーサプライの顕著な兆候は見られません。一方、自分も含めて水面下でサウナ開業を目論む人は多く、供給過剰になることは時間が証明するはずです。客に夢を見させるのが商売ですから、市場が熱狂しているときにはネガティブな側面は見えにくいものです。ブームが終わったとは言いませんが、これまで目につかなかったサウナのダークサイドが浮き彫りになる第二幕に備える必要があると思います。サウナの健康効果ばかりが注目されますが、大量の汗をかくサウナが体に悪影響を及ぼしている可能性が知られたとき、風向きは一気に変わる気がします。

主戦場はソフトに

昨日はウィスキングを受けるために、池袋のサウナ施設かるまるに行きました。白樺と柏のヴィヒタを使用して全身をたたくなどする一種のマッサージですが、アロマ効果によるリラックスに加えて、葉が持つ殺菌効果により肌をきれいにすることが期待されます。施術時間は15分ほどですが、薪ストーブが燃えるサウナ室の室温は低く、過度に汗をかくこともありません。その後14度の水風呂につかり、40度の露天風呂で背中を支えてもらい浮遊感を味わい、最後は屋外のインフィニティチェアで外気浴をします。昨日は雨が降っていたのですが、雨音を聞きながらの外気浴がまた心地よく、リッツカールトンやフォーシーズンズで受けるのと同等のスパの値段は5分の1程度とバリューに感じます。サウナの数が増えるに従いハード面での差異化は限界を迎えており、今後の主戦場はアウフグースを含むソフトに入っていくのかもしれません。

豪華サウナはあだ花

この季節になると自宅のドライエリアのインフィニティチェアが活躍します。外気温が20度を切るぐらいで適度に風のある日は最高です。サウナの外気浴なら氷点下でも良いのですが、そこまで汗をかかない家の風呂の場合、適度に風のある早朝が最高です。サウナブームの異様な盛り上がりにより、風変りなサウナ室や特長的な水風呂が話題になる反面、都会のサウナにおいては外気浴が語られることはありません。しかし、トトノイを感じる場所は外気浴であり、サウナ室と水風呂はツボさえ外さなければ、そこから先の差別化は過剰な投資になると思います。自宅のドライエリアでさえ整うのは、空に浮かぶ星を眺めながら、日の出前に鳴き始める鳥の声が心地よく響くからです。サウナのヘビーユーザーほどテントサウナ支持者が多いことも外気浴の重要性を物語っています。外気浴に期待できない都会の豪華サウナはあだ花になるのかもしれません。

慣れとは恐ろしい

昨日は屋根に積もったカラマツの葉を落としてもらいました。30年ほど放置していた屋根にはタンポポが咲き、小さな木が成長して、葉は良質の土に代わり、屋根の上には虫も住む生態系が出来上がっていました。草屋根は風情があり、断熱効果も期待できるのですが、防根のシートが入っているわけではないので、根が入り込み雨漏りの原因になります。より悲惨なのは薪ストーブの煙突で、こちらも30年放置した結果、水分の多い木を絞った空気で燃やすときに出やすいタールがこびりつき、引火すれば火災になりかねません。ストーブは過不足なく燃えていたので、あまり深刻に考えていませんでしたが、知らないところでリスクが忍び寄っていたことになります。試しにストーブを点けてみると、室内に煙が一切戻ることなく強力に吸い込まれます。慣れとは恐ろしいもので、きっと30年前はこんなに快調だったのでしょう。

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