間違った思いやり

米スタンフォード大学などの研究チームは、人生には分子レベルの老化が、44歳と60歳の頃に急激に進むと発表しました。人の老化は漸次進むのではなく、RNA、たんぱく質、マイクロバイオームの加齢変化が、44歳と60歳前後の2つの時期に集中すると言います。44歳では脂質の代謝、アルコールの代謝、カフェインの代謝能力が目に見えて低下します。一方、60歳前後では炭水化物の代謝に変化が生じ、活性酸素の発生と酸化ストレスによる免疫低下が起こり、感染症リスクが高まるそうです。44歳では脂質代謝の関係で筋肉を傷める人や、脂肪を蓄積する人が増えるという指摘は実感とも符合します。60代になると筋肉量の減少によるサルコペニアのリスクが高まり、本格的に筋トレに励む必要がありそうです。日本では敬老精神が災いして、お年寄りを運動から遠ざけようとしますが、その間違った思いやりが寝たきり大国の主因なのかもしれません。

高齢アスリートの活躍

世界最高齢の現役トライアスロン選手の稲田弘氏は、91歳ながらスイム3.8km・バイク180km・ラン42.195kmを16時間以内に走破するギネス世界記録を持ちます。70歳から始めたトライアスロンを経て、79歳から9年連続でアイアンマンレース世界選手権に出場し、90代の今も週6日のトレーニングを欠かさず、ベスト体重を維持して血圧は正常、老眼鏡不要の裸眼で新聞を読みます。妻を亡くして以降一人暮らしを続け、日々が充実しているのはトレーニングに打ち込む生活だからでしょう。抗酸化作用のある緑黄色野菜を中心に、代謝アップや血行促進などの効用のある鍋を自炊し、朝食には蜂蜜とブルーベリージャムをたっぷり塗ったライ麦パンを、夕食は玄米ご飯を茶碗2杯にキムチ納豆、生卵、DHAが豊富なめざしなど、若者のような食事量です。昨年には海外遠征のためパスポートを更新したとされ、高齢アスリートの活躍ほど勇気づけられるものはありません。

努力を伴う娯楽

連休の長野県は天気が悪く、家にはWi-Fiがなくドコモの電波すら怪しいため、できることはKindleで本を読むか、仕事をするぐらいです。家で仕事をすることはこの四半世紀普通で、半ば引退状態の今も何が仕事でどこからが趣味なのかは判然としません。趣味は山登りや旅行ですが、山を歩いているときも非連続の着想を得ますし、大半の旅行が視察であることを考えると、研究開発や自己研鑽を含めるならどの趣味も仕事ですし、他方でどの仕事も純粋な仕事という気がしません。遊びに行くのもそれなりに大変ですし、一方で仕事はそれなりに楽しいので両者の境界は存在しないのかもしれません。仕事は金を稼ぐ生産活動であり自ずと義務が生じますが、忙しくない人生が寿命を縮めるので、その義務さえも有難く感じます。楠木建氏の言う「努力の娯楽化」、言い換えると「努力を伴う娯楽」が人生を豊かにしてくれる気がします。

同時代性の罠

金曜日は南会津でテントサウナをしました。雨で水かさが増した湯ノ岐川の水温は温く、体感16℃程と適温です。川辺にはカワセミをはじめ大型の鳥もやって来てバードウォッチングもでき、ピクニックスタイルの北欧式サウナは自然のなかでこそ味わい深さがあります。ハンバーガーやソーセージ、野菜を焼くサウナストーンクッキングは、今やサウナに不可欠の楽しみです。60℃前後でも十分に汗をかけますので、100℃オーバーの我慢比べをする必要もなく、スペックを競いたがるのは、同質社会故の日本人の悪い癖かもしれません。サウナブームを終焉させたのは、同時代性の罠だと思います。かつてウォーレン・バフェットは、「潮が引いた時、はじめて誰が裸で泳いでいたかがわかる」と言いました。一時的に皆が熱狂するホットなトピックスを過信することは危険で、ブームが終わったときに一貫して変わらない本質が見えるものでしょう。

ボーイズレーサー

昨日はN-VANで白河と南会津に行きました。10年の時を経ているのでフィアットパンダより近代的な装備は商用車とは思えないほど充実します。燃費の悪さと非力さ、燃料タンクの小ささを除いてN-VANに不満はありませんが、非力さは悪いことばかりではありません。運転の楽しさにとって絶対的な馬力などどうでもよくて、マニュアルトランスミッションを操って車の性能を限界まで引き出すだけで楽しく、かつてボーイズレーサーと呼ばれた非力なホットハッチ全盛時代を思い出します。幸福感は人間の側の問題であって車の良し悪しには関係なく、オートマのGT-Rやポルシェより楽しいと断言できます。重心が高いN-VANは峠道を攻めるような車ではありませんがすぐに鳴くタイヤも、今よりはるかに性能が低いのに、車が楽しかった80年代を彷彿とさせます。車が高性能な現代において、ボルトオンターボを載せたいと思うところも昔を思い出します。

AI時代に何を教えるべきか

昨日から大月短期大学で授業を持つことになりました。1955年に設置された全国でも珍しい市立の短期大学です。教えるのは2003年の立教大学以来20年を超え、コンサルティング会社に在籍した16年を上回る最長のキャリアと言えます。春までお世話になった日本工学院は、本業に専念するため離れることにしましたが、古民家サウナの工事が遅れ気味で時間があり、補講期間の集中講義が可能とのことで受けさせていただくことになりました。大月という微妙なロケーションは健全な学生生活が送れそうで、東京への鉄道アクセスも良く、全国から学生を集めています。他大学への編入目的で入り結果的に就職したり、その逆もあり一種のモラトリアムが実現できる特別な市場を形成しているのかもしれません。教えることのメリットは自身の学びになることですが、AIの時代に人間が何を教えるべきかは最大の関心事です。

ストレス知らずの心の若返り

気温が下がる季節に入ると、日の出前のラブラドールとの散歩の距離が伸びます。夏の間は行かなかった神社まで足を延ばし、虫の音だけが響く境内に入ると気温が下がり厳粛な気持ちになります。住宅街とは思えないほど高い木々に囲まれた境内で、一日の最初に静かな時間を過ごすことは、忙しい都会人に必要だと思います。神社は願い事をしに行く場所ではなく、感謝を伝える場のような気がします。一日一度でも合掌して感謝する気持ちを持つなら、そのエネルギーは欲望のエスカレートを止めるはずです。現代人が味わうことなく必要以上に食べるのは、食事の前に感謝を捧げる習慣が薄れたからだと思います。感謝の感情により脳内にエンドルフィンが分泌され痛みを和らげ、若返りホルモンであるドーパミンが分泌されると言います。毎日感謝をして生きることが、ストレス知らずで心を若返らせる方法かもしれません。

自ら高齢者になる

2023年の65歳以上の就業者数は、22年に比べて2万人増の914万人だったと総務省が公表しました。20年連続で増加して、過去最多を更新したそうです。高齢者全体の就業率は25.2%で、65~69歳に限れば52%となります。人生100年時代とされ、いわゆる老後が長くなると体力の個人差が際立ちます。妻の父を見ているので、90歳を超えても元気なのは普通だと思っていますが、世間の認識とはだいぶ異なります。前期高齢者などと、国が余計なことを言うので年齢呪縛にとらわれて自分が年寄りだと思い込み、自ら体を衰弱させると思います。精神科医の和田秀樹氏は、人口の上位1割を高齢者とすべきと主張しますが、この考え方なら80歳を超えたあたりが高齢者となり、リーズナブルな基準かもしれません。しがらみが減り人生で最も自由な時間を、「もう年だから」と諦めることほどもったいないことはないのでしょう。

人を傷つける娯楽

休日の娯楽の定番はNetflixやYouTubeです。刃物が人間の生活に豊かさをもたらすと同時に、凶器として人を傷つけるように、これらの動画は非常に役立つものもあれば思考を停止させて、偏った意見やフェイクニュースを信じ込ませることもあります。純粋な娯楽としてドラマを見ることもあれば、知識を得る目的で有識者の対談を聞くこともあれば、海外発の建築専門チャンネルを見ることもあります。学びたいことが明確であれば良いのですが、中毒症状で見続けても時間つぶしにしかなりません。最も危険なのはNetflixの海外ドラマで、耳が英語に慣れるというメリットはあるものの、没頭して一気に数シーズン分を見てしまうこともあり最もリターンが低そうです。食事が現代病の原因であるように、楽しみと実益が渾然一体とした動画視聴も、一見楽しそうで豊かに見える娯楽こそ、人を傷つけるものかもしれません。

マニュアル車に乗るべき

近所の魔の交差点で昨日も事故がありました。近隣住民なら何度も怖い目に合っていますので徐行しますが、壊れ方からしてその形跡は見られません。一時停止義務があるのはタクシーですが、運転が慎重なことで知られる個人タクシー神話は過去のものかもしれません。京王線の踏切から400mほど一時停止のない道なので事故が多いのですが、複数の標識やミラー、ロードペイントで警告された真昼の交差点で起こる事故の原因は、不注意しかありません。オートマ車の事故率はマニュアル車の2倍ですが、理由はぼんやりと運転ができることだと思います。MT車で踏み間違いをすれば車は動きませんので、暴走事故を起こす可能性も低いはずです。苦手な人が多い坂道発進にはアシスト機能がつき、ギアも昔と違い簡単に入りますし、何より運転を楽しめるマニュアル車に乗るべきだと思います。

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