会食を非難される年の瀬は、静かなと言うよりは無表情で不気味ささえ漂います。米国や日本では経済が6倍に増えても人々の感じるハピネスレベルは全く上昇しないことが知られます。6倍に積み増された経済が一体何をもたらしたのか振り返るのに、この年の瀬は適当かもしれません。幸福度の代わりに急上昇したのが、癌をはじめとした生活習慣病です。選択肢が乏しければ自分自身を見失わないで済んだのかもしれません。都市は選択し切れないほどの誘惑に溢れ、美味しいものを食べる機会が増え、限界効用逓減的にそこから得られる満足度は目減りして行きます。経験値が上がりさらなる贅沢を求めて消費を繰り返せば人体の持つ生体恒常性が限界を迎えるのは必然です。即物的なものほど受け入れられやすく経済を底上げする原動力になります。人は満たされることで満たされなくなるパラドックスに気づかないか、意図して無知を装います。関心は常に自身の外側に向けられ、世間の評価に人生を委ねます。いつでもアクセスできる幸せが日常のなかにあるなら失う不安を覚えることもなく、どこにいても寺院にいるような心の平穏を保てるのでしょう。
飢えに飢えている
最近の悩みは眠りが浅いことで3時間ほどすると目が覚めてしまい満足な睡眠が得られませんでした。年を重ねると睡眠深度が浅くなるとされ、人は加齢が原因だと思い込みます。そこでメラトニンなどの睡眠導入剤を服用すると体がメラトニン分泌を減らし本当の不眠症になり乱用にもつながります。加齢が原因だと思っている不眠症の多くの原因は眠り過ぎだと思います。人体は満たされることを決して望まず睡眠負債がある状態がデフォルトだったのでしょう。人体のデフォルトとは常に飢え、常に一定のストレスにさらされ、常に寝不足だったと考えられ、それを基準に生体恒常性が設計されています。一方で現代の生活はすべてを満たすことを理想に据え、寝過ぎの人が高価な寝具で更に寝ようとします。食べ過ぎがさらなる空腹を呼び、リラックスのし過ぎが副交感神経を優位にしてアレルギー疾患の一因になります。腹八分目のように適度な飢えを維持することが健康の秘訣であり、現代人の体は飢えに飢えていると言えるでしょう。体が飢える程度の少食で、いつも眠いぐらいに睡眠を減らし、体が疲労する程度の運動を続けることが理想だと思います。
クリスマスも帰省もない年の瀬
今日ほど重苦しいクリスマスイブも記憶にありません。感染力が1.75倍になった新型コロナウィルスの変異種がイギリスを中心にヨーロッパから世界に広がり始めているとされます。帰省も初詣も禁じられ、正月のイメージが沸かない年の瀬に思うのは自分が今生かされている奇跡です。100年前は先祖を4代遡ることができます。ミトコンドリアの母系遺伝子を遡ると古代のアフリカ大陸にいた17万年前の女性にたどり着き、人類がアフリカに誕生したのは300万年前ですから12万世代になります。この天文学的な時間でさえ生命誕生の30億年史から見れば1,000分の1の時間でしかなく、その間途切れるこがなく祖先の遺伝子を受け継いで生命をつなぐ奇跡が起きた理由は環境適応です。生命体は個体のエゴが満たされることなど望まず、その本質は環境変化を生き抜く種の保存にあります。豊かな時代に生きる現代人は1万年前の生存本能のまま飽食に明け暮れ個人主義、享楽主義を戒めません。今の状況にあえて好ましい面を見つけるなら、誰もが健康に気を使い、自分を見失うほどの我欲の暴走に少し歯止めをかけることでしょうか。
実は合理的な旅館の朝食
長野県にいるときは一人でラブラドールと過ごすことが多く自炊をします。ほとんど料理をしなかったのに旅館を買い70人分の料理を作るようになって多くの時間を料理研究に費やしました。旅館経営の肝は料理と調理工程だと思います。参考にしたのはTOC理論で調理工程上のボトルネックを潰し最短で作れるレシピ、厨房動線、調理器具により冬は氷点下10度ぐらいまで気温が下がる厨房での調理時間を最小化しました。以来10分以内の調理作業で作ることを念頭にすると、味噌汁と納豆、干物、サラダと玄米という感じのメニューが多く、旅館の朝食というのは実は合理的に考え尽くされたものなのだと納得します。ご飯は炊飯器で炊きますが、味噌汁も干物も今の季節ならストーブの上に放置するだけですので光熱費も最低限です。時々チーズオムレツやリゾットが食べたくなることもありますが、多くの場合日本の伝統的な朝食に近いものに落ち着きます。重要なことは何を食べるかではなく、いかに料理と向き合い慈しむように丁寧に食べるかだと思います。
虚構の贅沢
突然打ち切られたGoToでは高級施設が活況と聞きます。しかし、らしからぬ失態で不快な思いをすることもあり、安い宿なら裏切られる心配がありません。消費者は記号を消費します。マグロなら大間、果物なら千疋屋、フレンチならミシュランのように記号を通じて高価格は正当化されます。メロンを有難がるのは千疋屋が数万円で売るからであって、滋養豊富なバナナの200倍の値段に納得するのはそのためです。手打ちそばが高級だと思うのは現代人だけで、文明開化の頃なら機械で正確に切られたそばに価値があったはずです。そう考えると非の打ち所がない高級旅館より民宿の方に現代の消費は軍配を上げると思います。Wi-Fiが使えず、隣室の音が漏れ、布団も自分で敷きますが、見せびらかし消費を卒業したフラッシュパッカーにとっては飾らない接客で嘘が少なく、リアルな日常に近い民宿を評価するでしょう。今どき高級旅館でさえセントラルキッチンや半製品を使う時代ですから、手作り料理を出す料理自慢の民宿は貴重です。われわれが演出された虚構の贅沢を好むのは審美眼が未熟で権威に弱くお金を払うことに意義を感じるからでしょう。
味わうことなく飲み込んでいる
糖質制限をしますが、一方で血糖値スパイクの元凶のようなチョコレートが好きです。運動をして過食を慎めば美味しく感じるものは何を食べても消化できると思います。122歳まで生きたジャンヌ・カルマンは1週間に1kgのチョコレートを食べていたとされ、チョコレートの適量は一日50gですからいかにも食べ過ぎですが長寿を全うしました。ビタミンとミネラル類が豊富な完全栄養食に近いチョコレートにはコレステロールの排出、整腸作用、ピロリ菌殺菌、糖尿病と癌の予防、アレルギーの原因物質であるヒスタミンの抑制、悪玉コレステロールの酸化防止などの効果が期待できます。空前のマインドフルネスブームは多くの人にたいした効果をもたらさなかったようですが、食べる瞑想は誰でも使えて健康に有効な方法だと思います。通常はレーズンを用いますが、より効果的なのはチョコレートだと思います。舌の上でチョコレートが溶けるにまかせ複雑なフレーバーを舌で感じるのですが、慣れないと噛み砕き飲み込みたい衝動に駆られます。普段から味わうことなく食べ物を乱暴に飲み込んでいることがよく分かります。
冬こそ運動
今週は一年で最も昼間の短い時期です。冬には暗いイメージがつきまとい、北欧など日照時間の短い高緯度地域ではセロトニン分泌が減りウィンターブルーと呼ばれる冬鬱が人口の1割に達します。冬眠する動物は冬眠しない同種の動物より長生きとされ、人間も最低限の栄養を点滴摂取して体を冬眠状態にすれば150歳から200歳まで生きられると主張する研究者もいます。発熱物質である内蔵脂肪は冬眠中の動物を飢えや寒さから守るために発達したものですが、消費エネルギーを節約するライフスタイルと無縁で、冬も食べ続ける現代人は内蔵脂肪の蓄積が多くの病気を引き起こします。おせち料理の売れ行きが好調なようですが、運動不足の寝正月を脳が冬だと判断して体の代謝を低下させ肥満を加速化します。屋外に出たくない冬こそ、静まり返った森と降雪により走りやすくなったトレイルは運動に最適な環境です。体を冬眠させず日々動かせば脳が代謝を活発にさせ細胞の修復が進みます。最適なウィンターブルー対策は日光浴とリズミカルな運動集中によって幸福感をもたらすセロトニンの分泌を増やすことでしょう。
価値基準を変える別の生き方
粗大ゴミと言えば定年退職後の男性と相場が決まっています。コミュニティに溶け込み居場所のある女性と違い組織を去った男に安住の地はありません。パートナーが昭和の価値観に染まった良妻賢母でもない限り待つのは無為で寂しい老後です。長過ぎるリタイア後に適応する方法は第二の人生と言う別の人生をやり直すことでしょう。第一の人生で成功した人ほど価値基準を変えることに苦労します。第一の人生の価値基準は金を稼ぐことであり、人より優位に立ち、贅沢な暮らしをすることですが、第二の人生は逆に、金より社会貢献、人に教えを請い、質素に暮らすことだと思います。その理由は更年期を境に生物としての体が変わり、瞬発型の解糖系エネルギー産生から持久型のミトコンドリア系になるからで、50歳前後で体調を崩す人が多いことも同じ理由です。見苦しいのは天下りのモラトリアムを繰り返し第一の人生を強引に続けようとする態度で、池袋で車を暴走させ悲惨な死亡事故を起こしながら、自分は目視の上ブレーキを踏んだとメーカーに責任を押し付けた上級国民の老人などはこのタイプでしょう。
人生は二つある
国の将来に暗い影を落とすのは高齢者問題です。一方で明るい話題は、昨今の脳科学やエネルギー産生に関する研究が老化という思い込みの嘘を除々に明らかにしていることです。第二の人生という言葉を聞きますが、生物学的にもこの呼び名は正しいと思います。生物は生殖を終えると死にますが現代の人間は例外的に長生きしそれを老後と呼びます。細胞分裂により成長し二十歳前後を頂点に後は一方的に衰えていくという従来常識が見落としているのは、更年期を境に体のメカニズムが変わることです。人生の前半と後半は生物学的には別物と考えるべきで、体が一方的に衰えるという老化思想こそが高齢問題の元凶です。100m走のタイムが落ちても、50歳を過ぎて始めたトレイルランニングなら体力低下を感じずに済み、100マイルレースのUTMBで59歳のマルコ・オムロが二年連続優勝したことはその左証でしょう。体脂肪の燃焼サイクルを極限まで研ぎすますなら体は老いず、心の老いも止めることができるのでしょう。間違ってもシルバーシートなどに座らず、日を空けず運動を続け筋肉とミトコンドリアを活性化することでQOLは飛躍的に改善するはずです。
現代の幸せ基準
娘が先日ラブラドールとカフェに行き犬用のランチを食べさせたところひどい下痢が数日続き動物病院で診察を受けました。何が悪かったのか分かりませんが、写真を見ると人間の食べ物に似せた餌でした。1.6兆円とされるペット関連市場を潤わすのは飼い主の愛情ですが、それらは歪んでいるのかもしれません。以前の飼い犬はそれほど長生きではありませんでした。今や20歳前後まで普通に生きられるのは最適化されたドッグフードの貢献だと思います。人間と同じ食べ物を与えることが犬の幸せだと考える気持ちは分かりますが、人間同様に生活習慣病を患うケースも増えています。動物を生きた道具として家畜化する歴史は9,000年前に始まりますが、犬だけは別格で3万6,000年前の埋葬された化石が発見されています。先史時代の狩猟集団は猟犬を従えていたと考えられ狩猟に大躍進が起き生産性は飛躍的に向上したとされます。犬は、もはやわれわれの体の一部のような存在ですが、人の幸せと犬の幸せは異なり、同様に先史時代から引き継ぐわれわれの肉体も、物欲まみれの現代の幸せ基準とは相容れないと思います。