観光トレンドに逆行する富士

山梨県知事が公約に掲げた富士山登山鉄道構想が見直しを迫られています。観光公害対策のはずが、より多くの利用者を集めないと採算が取れず、リニア駅との接続など不要だと思います。誰もが登れるようにする商業主義は自然への冒涜であり、無謀な弾丸登山の温床にもなります。先祖たちは古来より富士山を霊山として畏怖し、富士山そのものを御神体ととらえる信仰は、日本人の自然観や文化に影響を与える精神的支柱です。2013年にユネスコ世界文化遺産に登録されたのは「信仰の対象や芸術の源泉」であり、富士山そのものへの信仰を起源 として、火山との共生を重視し、山麓の湧水に感謝する伝統こそインバウンドに紹介すべきです。今なお生きる山岳信仰や、多様な文化的資産に対する敬意なしに、山頂を狙うピークハンターへの利便性を高める、五合目までの交通機関整備は、世界の観光トレンドに逆行していると思います。

22人の刺客

全国的な関心を集めた兵庫県知事選は、石丸現象に始まる政治のエンタメ化の集大成だったと思います。全会一致の不信任からドラマが始まり、一人寂しく役所を去り、一人だけの辻立ちをはじめ、そこにぽつぽつと人が集まり、仲間を増やしながら、最後は衝撃的な大逆転で偏向メディアや政治利権という巨悪を倒すリアル半沢直樹です。ドラマのハイライトの一つは、140万回再生されたJCの公開討論会で、N党の立花党首が元県民局長の不正疑惑を暴露したことです。そしてドラマが最終回を迎える投開票3日前に、兵庫県の市長会有志22人が異例の特定候補者支持を表明したことです。この悪手は、最後に立ちはだかる悪役として視聴者をヒートアップさせ、兵庫の奇跡を起こすオウンゴールになりました。選挙制度のバグを活用してドラマを演出した立花氏は、選挙と政治の役割を分担する劇場政治により、22の市長選に刺客を送ると公言し続編は続きます。

文豪を唸らせたホテル

神田駿河台にある山の上ホテルを、隣接する明治大学が買収しました。明大の学生やOBにとって最も親しみのあるホテルであり、すでに別館の土地を購入した経緯からも自然な成り行きです。米国の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(William Merrell Vories)設計のアールデコ様式の洋館は、1937年に建てられGHQ接収を経て1954年にホテルとして開業しました。出版社が多い神田神保町に近いことから、作家の滞在やカンヅメに使われ、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎が滞在したことでも知られます。昭和を代表するクラッシックホテルが全国的に姿を消すなか、日本人の憧れであったホテルの雰囲気を残す本館が継承されることは朗報です。本館の客室は35と少なく、文豪を唸らせた8つの料飲施設を直営するホテルの経営は難しく、一定の宿泊や飲食需要があり、財務基盤の厚い大学こそがふさわしいのでしょう。

歴史的な選挙

事前の選挙情勢では不利とされていた前兵庫県知事の斎藤氏が、20時当確で再選されたことは、利権政治とオールドメディアに対する県民の強い怒りを印象づけました。浮動票とされる若年層の投票が、日曜日の午後になって一気に上がり、投票率さえ上がれば組織票に守られた利権構造を壊せることは大きな前進に見えます。当確が出た後、大手メディアは誹謗中傷や真偽不明の情報が飛び交ったとして、SNSを批判的に報じますが、マスメディアは最大の敗者とも言えるかもしれません。人気YouTuberのナオキマンが、5分で電話を切られてしまった石破首相より先にトランプ次期米大統領とフロリダのマー・ア・ラーゴで面会したことも、SNS時代の到来を感じさせます。誹謗中傷や真偽不明の情報を拡散していたのが、他ならぬマスメディア自身だったことを証明した兵庫県知事選は、歴史的な選挙として記憶されるのでしょう。

地方自治の構図を変える

初代が伊藤博文、四代目が陸奥宗光という由緒ある兵庫県知事の出直し選挙の投開票日を迎えました。真偽不明の噂を流したマスメディアによって全国の耳目を集めたわりに、前知事の演説に集まる異様な県民の数と熱気をマスメディアは伝えません。おねだりとパワハラ疑惑も、名指しされた企業が嘘だと証言し、第三者委員会がハラスメントはなかったことを認定しています。浮かび上がるのは、百条委員会、議会、マスメディア、県職員組合が結託した、既得権益層の組織票対草の根のSNS型選挙です。公益通報と誹謗中傷を混同させる誘導に疑問を持つ県民が、前知事の演説に集まるのは真相を知りたい切迫感を感じます。利権政治への怒りという地殻変動は、自浄作用が期待できない地方自治の構図を変える力を持ち、2024年は政治に関心がなかった国民が覚醒した年として記憶されるのかもしれません。

制限速度でも楽しい

知人が近所の30km制限の道で移動式オービスに撮影されました。その神出鬼没さからドライバーを恐怖に陥れる移動式オービスですが、警察も日本中のドライバーを敵に回さないように配慮はしているようです。世田谷区に限れば、設置場所に共通するのは一定の交通量がある30km/h制限の生活道路で、近くに学校や病院があり比較的歩行者が多いことのようです。肖像権などの問題から反則行為(青切符)には光らなかった固定式オービスに対して、2018年8月の閣僚会議で導入が決まった移動式オービスは、従来のネズミ捕りと同様に微罪?でも取り締まるようで、運転マナーが全般に改善するなか、予算達成のために速度が厳しくなる可能性もあります。過去にネズミ捕りと覆面パトカーにそれぞれ2回捕まりましたが、今乗るN-VANは制限速度でも運転が楽しめ安全な気がします。

失われた30年の元凶

第二次トランプ政権における最大の目玉とされる、新設の政府効率化省(DOGE)のトップに、イーロン・マスクと実業家のヴィヴェック・ラマスワミが就任しました。税金の使い方を効率化することで巨額の予算を生み出そうとする野心的な試みは、1980年代の初め、財政赤字の急拡大を改善するために設置された土光臨調を思い出させます。428の政府機関を99に統廃合し、官僚の数を75%カットするという野心的な計画は、政府機関の再構築と言えます。増税をしても、結局タックスイーターによって歳出が無限に拡大し、いつまで経っても財政状況が改善することはありません。防衛増税が議論され、官僚は国民へのサービスが低下すると脅しますが、減税により経済を活性化することでしか財政状況を改善することはできないと思います。成長期の利権政治の温存こそが、失われた30年から立ち直れない元凶だと思います。

錯覚させるための巧みな演出

母がお世話になる高齢者施設が徒歩圏にあるので、時間のあるときには立ち寄ります。働いている方には申し訳ないのですが、正直に言えば気の滅入る場所です。食事時に行くことが多いのですが、職員の気を引くために食器をたたく人、うめき声をあげる人、いつも同じ話や自慢をする人を見ると、そこには人間らしい営みを感じることができません。入居金3億超えの超高級老人ホームのルポが出版されましたが、読まなくてもおおよその内容は予想がつきます。お金を別とすれば、幸せの基盤は自由と健康と愛情だと思いますが、残念ながらそのいずれをも期待することはできません。「高級とは、客を錯覚させるための巧みな演出があるかどうかだ」という帯の文章に納得します。いくらお金を積もうとも、監獄というその本質からは離れることができないのかもしれません。

人間に残された最後の仕事

AIはパソコン同様に必携の仕事道具になりつつあります。論点の整理や仮説抽出などの使い方でも大幅に時間が効率化され、ホワイトカラーの9割が不要になるとの議論も、大げさには聞こえません。在宅ワークの普及が、ホワイトカラーの仕事の空虚な側面をクローズアップしたと思います。AI時代に生き残る人間の仕事は、アドバンスドエッセンシャルワーカーと呼ばれる高度現場人材とされますが、付加価値創造の現場に近い、根源的な仕事に回帰するのは好ましい傾向です。年初に亡くなった父は、パソコンを使わなかった最後の世代で、パソコンで仕事をしていると、よくそんなおもちゃで金を稼げるなと非難めいたことを言っていました。人は新しいテクノロジーにアレルギーを示し、それが自分の立場を危うくするものであればなおさらです。実体験に基づく付加価値創造こそが、人間に残された最後の仕事のような気がします。

政治は結果がすべて

国民民主党の玉木代表が不倫報道を認め、謝罪会見を開きました。首班指名の絶妙なタイミングを狙った露骨なスキャンダル報道は、玉木氏本人や党にとっても失点にはならなかったように見えます。SNSのコメントには擁護論が目立ち、むしろ批判の矛先は、党の躍進を一番苦々しく思っているはずの古巣である財務省や、マスメディアに向かっています。謝罪会見も模範的で、肝心なところで転んでしまう人間らしさを印象付けました。家族への思いを語った誠実さもプラス材料で、清々しささえ感じ、リスクマネジメントができることを印象づけました。首班指名当日の話題を、他人を散々批判しながら、自分は全く責任を取らずに居座る首相から奪った格好です。政治家は結果がすべてであり、決して聖人君子を求めていないのは、トランプ氏が熱狂的に支持されることからも証明されているのかもしれません。

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