サツマイモの値段がこなれてくると、本格的な焼き芋の季節になります。これからの時期の焼き芋と、熟してオリゴ糖が増えたバナナは最高の甘味だと思います。最も簡単に幸せになる方法が甘いものを食べることなのは、われわれの遠い祖先が、生き延びる上で不可欠な糖質を、果実が実る季節に得たときの衝撃的な幸福感から続く記憶だからだと思います。さらに幸せなのは焼き芋やバナナが、日常的に買える食べ物としては最も安く手にできることです。人が身近にある幸せにそれほど感動しないのは、自ら幸福のハードルを上げているからかもしれません。希少なもの、得難いもの、豪華なもの、非日常的なもの、高額なもの、すなわち贅沢に幸せを見出そうとします。むしろ逆で、贅沢が不幸を呼び込むのは、やがて自制が利かなくなるからだと思います。今を幸福と感じることができるなら、金銭的野心は影を潜め平穏な生活を送れる気がします。
お知らせ
歴史と文化の継承

古民家を改修していると、NIPPONIAの施設はベンチマークの対象です。宿泊施設としてのNIPPONIAには、集落などの住民が運営の中心となるものと、プロがホテルサービスを提供するものがあり多くは前者です。オーセンティックな日本の暮らしを残すためのエリアマネジメントに特化するため、投資回収に走るファンド的ないやらしさがない反面、あまりにゆるく経営をすると持続可能性が失われるリスクもありそうです。地域資源の尊重と活用を通じて、伝統的な暮らしや文化を現代にふさわしい形で再創造することと、地域産業を創出し続けることの両立こそ最大のチャレンジと言えます。自然から遠ざかり、豊かさの羅針盤を失った現代人にとっても、より深く日本的なものを求めるインバウンドにとっても、日本社会が捨て去ってきた持続可能な暮らしは魅力的です。歴史と文化を未来に継承することが、自分自身のアイデンティティを保つ気がします。
経済力より健康力

クリスマスと言えば、2011年に営業を終えた赤坂プリンスホテルの部屋が5、6万円で若者に飛ぶように売れたのがバブルの時代ですが、今やホテルははるかに豪華になり縁遠いものになりました。高くなり過ぎたラグジュアリホテルに泊まることはできませんし、泊まる気も起きません。常に他人との比較で幸せを推し量ろうとすることに疲れてしまった昭和生まれにとって、幸せの象徴のように演出されるクリスマスには、むしろ虚しさを感じます。母がお世話になる高齢者施設に行くと、クリスマスのために用意された食事は豪華ですが、重要なのは経済力より健康だと思わざるを得ません。地位財に依存する生き方は、ときに健康や人間関係を犠牲にしがちですが、体の自由が利き、普通に食べられることの方が、表層的な幸せよりはるかに重要であり有難いと感じます。
キャンプにサウナは必須
サウナの経営者のなかには、全国のサウナ施設を回って最高のサウナを作ったと豪語する人が少なくありません。しかし、すでにレッドオーシャン化した業界の施設を見ることは、むしろ弊害の方が大きな気がします。他方でロイヤリティの高い顧客に支えられる施設もあり、週末に行った福島県郡山市逢瀬町にあるOUSE SAUNA TUULIはその一つだと思います。看板もなく、ビニールハウスを抜けた先にあるキャンプ場なのですが、美しい渓流に面するそのギャップにインパクトを受けます。自社が代理店をする北欧のバレルサウナ2台のほかに、北欧もきっとこうなのだろうと思わせる自作のサウナ小屋の居心地の良さは格別です。幅700mmの座面は天井高1,100mmと寝るのに適し、薪ストーブははるか足元にある理想のスペックです。TUULIはフィンランド語の風を意味するように、強風が吹き川の水量も危険なほどですが、冬のキャンプにサウナは必須と思わせます。
都心で野生動物の大群と遭遇

週末の朝ラブラドールと公園に行くと、上空を2、300羽の渡り鳥の大群が通過していきます。シベリアから越冬のために鹿児島県の出水あたりに向かうツルなのか、青い空を背景に大型の鳥が南西の方向に遠ざかって行きます。都心で野生動物の大群と遭遇することなど、この季節だけの貴重な光景と言えるでしょう。ヒマラヤの8,000m峰をも超え、現代の超長距離旅客機並みの13,000kmを体内に蓄えたエネルギーだけで飛び、GPSなしに正確に目的地を目指す野生のメカニズムと群れの集団知能は驚異的です。人類もある時期までは強靭な生命力と賢明な身体能力を持っていたはずですが、脳が作り出した欲望によって自らを甘やかし、ほしいままに振る舞う傲慢さで野生は失われたと思います。様々な発明によって肉体を拡張し生き残る戦略を採用した時から、人類は野生に戻ることを許されない宿命なのかもしれません。
インバウンドで盛り上がる?
ホテル価格が高騰して都内ではビジネス客が泊まれないと言われますが、年の瀬のこの時期と正月明けは旅行客が動かず、温泉地などの宿は安いシーズンです。昨日泊まった磐梯熱海温泉のゆとりろ磐梯熱海は、以前はゼビオの経営だったと思いますが、施設はきれいで、pH9.1のアルカリ性単純温泉の源泉温度は50.4℃あり、朝5時半からサウナが動き、ドリップコーヒーも飲めて4,600円はバーゲン価格に思えます。よく行く白河はビジネス需要中心で、比較的宿の値段が高く、1時間とガソリン代をかけてでも来ていいと思わせます。事前にバーコードが送られますが、フロントに人はいますので、完成度の低い省人化チェックインのようなストレスもありません。再生案件でも追加投資は必要であり、いつ来るか分からない客を相手に価格を下げざるを得ない業界の現状を見ると、インバウンドで盛り上がる業界の姿とは程遠いものを感じます。
普通に美味しい

カツ丼が好きですが、ほとんど外食をしなくなり食べる機会が減りました。例外は会津に来た時で、会津と言えばソースカツ丼という刷り込みがあるためか、昨日も食べました。ソースカツ丼の起源については様々な発祥地説がありますが、確かなのは大正から昭和初期にかけて全国で同時多発的に広がったことです。新宿区の早稲田鶴巻町で大正年間に創業した洋食店のヨーロッパ軒は有力な発祥説の一つですが、昨日行った昭和23年創業の、元祖煮込みソースカツ丼の店なかじま(会津若松)は、当時は洋食屋だった中島食堂の先代が発案したソース味で卵とじにした煮込みソースカツ丼で知られます。明治30年代の甲府のそば店とされるカツ丼の起源と、B級グルメの代表格とみなされるソースカツ丼はほぼ同時期に始まったことになります。元祖や老舗が喧伝されますが、結局は何を食べても普通に美味しいという以上のものではありません。
卓越した立地?
昨日は大月に出講する今年最後の日で、帰路奥多摩のNIPPONIA小菅源流の村と、JR東日本が出資する沿線まるごと㈱が展開するさとローグ青梅(Satologue Ome)鳩ノ巣棟を見ました。NIPPONIAは全国31地域に167棟を展開しますが、JRの事業も地域の魅力を再発見し、住民とともに運営を行います。さとローグは現在レストランとサウナのみの営業ですが、来年春には宿泊棟が加わります。地方創生モデルとしてJRが全国に展開する最初の施設として、様々なメディアで紹介され視察にも料金を徴収しますが、施設へのアクセスは問題になりそうです。崖に張り付く狭い土地に下る道は軽自動車でないと通行が困難です。60年ほど前まで養魚場が営まれた敷地全体に水路が巡り、ワサビ田のほか、サウナの水風呂には川の天然水が引かれます。正直なところ、取り立ててよいロケーションとも思えないのですが、養魚場跡で水が豊富なことを卓越した立地として評価したのでしょう。
サウナ界のイノベーション
日立市の「3UN 茨城一番の極熱サウナ」でウィスキングを受けました。北欧仕込みのウィスキングと、インド政府公認セラピストによるアーユルヴェーダを組み合わせたプログラムは4時間半に及びます。と言っても多くの時間は気持ち良さのあまりに寝落ちして意識を失いました。ホットヨガのような発汗による充足感と、氷点下に冷え込むこの時期、屋外のサウナ小屋で受けるウィスキングは、ラグジュアリーホテルのスパ以上の贅沢かもしれません。サウナとウィスキングとアーユルヴェーダの組み合わせには、サウナ界のイノベーションを感じます。1か月煮込んだアーユルヴェーダオイルは5分で骨髄に到達すると言い、翌日ストレッチに行くと、いつになく関節がよく動くとトレーナーに言われました。施設依存のサウナの時代は終わり、自然やセラピストによる施術を組み合わせることが、サウナが生き残る道だというのが最近の結論です。
手の届く幸せ
昨日はグランドエクシブ那須白河ザ・ロッジに宿泊しました。白河の宿泊施設としては最もグレードが高く、今後ともこのクラスの施設が作られる可能性は低いでしょう。日本離れした高い天井高を持つロビーは豪壮ですが、最も目立つ場所に造花を置く感覚は理解できません。ホテルが造花を使い始めるとつぶれるというジンクスが業界にはありますが、細かな不満など、和洋ともに品数豊富で魅力的な朝食ブッフェがついて8,000円少々で泊まれる今の時期なら、文句を言うのは野暮でしょう。普段は朝食を食べませんが、豊富な料理を前に避けているパンまで食べてしまい、同様に食欲をそそる和食には手がまわりません。同業者としては喜べませんが、手の届くアフォーダブルラグジュアリーをたまに手に入れるのは、庶民のささやかな幸せです。満点の星空を望む豪華な露天風呂につかっていると、平和な日本に生まれたことに感謝します。