食欲を補正する擬似的飢餓

昨日のように日本工学院に行く日を含め、週に1、2度は一日一食で済ませます。24時間断食による擬似的な飢餓状態は食べ続けることで狂った食欲を補正する効果が期待できます。多くの健康関連書籍は、朝食をきちんと食べなさい、三食規則正しく食べなさい、と脅しますがこうした主張は過食による健康被害を過小評価しています。重要なことは人体が飢餓対応できるように進化してきたことです。数百万年におよぶ暮らしの大半が、毎朝決まった時間に朝食を食べ、6時間後に昼食、その6時間後に夕食という暮らしでなかったことは明らかです。数百万年前のわれわれの祖先は朝起きたときには糖質エネルギーを基礎代謝で使い果たし、狩りに行くときは体内脂肪から合成されたケトン体を使っていたはずです。毎日規則正しく食べることより重要なことは、設計が想定していない間違った体の使い方を定期的に補正することだと思います。

天国のような埋もれる暮らし

以前から長寿村に興味があります。世界の長寿地域であるブルーゾーンに共通することは急傾斜の地形です。急傾斜地は稲作等に適さずGI値の低い雑穀類が主食なこと、傾斜地の移動で足腰を鍛えられることが指摘されます。東京近郊では上野原市棡原(ゆずりはら)集落が有名で幾度となく足を運びました。俗世と隔絶された深山幽谷の古い民家を訪ねると、退廃的な贅沢とは無縁の穏やかな暮らしがこの上なく満たされた時間に思えます。アメリカの研究によると、もっとも健康に適する食事は江戸時代、とくに松尾芭蕉が奥の細道の旅に出かけ、赤穂浪士の討ち入りがあった元禄時代の和食とされます。動物性タンパク質より野菜や魚を中心とした質素な食事が似合う暮らしです。この世に天国があるなら、それはハワイやシンガポールの高級コンドミニアムではなく、人知れぬ山中での埋もれるような暮らしだと思います。

増税で執着を減らす

幸福を人から買うことが虚しいのはその価値が移ろいやすいからです。高級な車や美味しい食事で人々が幸せになるのは思い過ごしです。経済活動は計画的廃品化により浪費を促し、貧しい時代に適応した脳は自尊心を欲しがり永久に買い続けます。「経済は無駄な活動により水増しされた数字だ」と誰かが言ったように、不要なものを供給する経済システムにとって、大量消費を通じてしか自己を満たせない人が増えることは福音です。企業が商品を作り出すのは必要があるからではなく、そこに欲望があるからです。そしてすべての商品は消費者に恩恵を与えるためではなく会社の利益のために作られ、無用な価値は高い価格として消費者に還元されます。このペテンがバレないのは、いらないものを買うためにしたくもない仕事をする消費者と労働者が同一だからです。消費増税がそれほど嫌ではないのは、これを機会に執着を減らすことに一縷の光明を見いだせるからです。

治らないと信じ込ませる医者

週末は9ヶ月振りにトレイルレース復帰の予定でしたが、年初来の腰痛で棄権しました。40kmのレースならおそらく完走は可能ですが、不調を抱えながらでは楽しめません。腰はその字が示すように全身と関係しますがこれまで腰痛とは無縁でした。世田谷区の図書館には600冊近い腰痛関係の書籍があり、なかには奇想天外な原因を主張する本もあり楽しめます。引っ越しによる環境の変化、生活習慣(食事、運動、睡眠)の変化のいずれかが原因と考えられます。疑わしいのは、ベッドが変わり疲れが抜けず体に歪が生じたこと、靴が変わり走り方が変わったこと、運動不足による血行不良や筋力低下です。試しに何度かトレイルランニングに行き、血行不良説は原因から外れました。大半の人が自分の体を専門家に委ねるから病院経営が成り立つのですが、癌であろうと腰痛であろうと専門家に丸投げせず、自分が治療の主役になることが健康を取り戻す鍵だと思います。二流の医者なら加齢を原因に仕立てあげ、治らないと信じ込ませて生涯顧客にするでしょう。

信念の誤り

科学技術を信仰する現代人は今を生きる自分たちこそもっとも優れた人類だと考えます。人類最古の化石は370万年前と推定されますが、体の構造は現代人とたいして変わりません。脳の体積は現代に近づくほどむしろ小さくなっています。人間の生き方に関する知見で現代に至る2000年の間に科学が解き明かせたことは、プラトン、アリストテレス、セネカといった紀元前の賢人が知っていたことの追認かほとんど無価値の発見に過ぎません。現代の医学は生活習慣病のメカニズムを解き明かしつつありますが、そもそも生活習慣病を生み出したのは現代人の愚かさです。21世紀の医療技術は慢性疾患について不定愁訴、加齢による自然現象といった曖昧な説明を繰り返してきました。いまだに現代医学が人体をホリスティックに捉えることができないのは、その基盤にある要素還元的な信念に誤りがあるからだと思います。

9時に寝るのは普通

早起きになったのはずいぶん昔です。30代の頃は短眠ブームで3時間睡眠の時期があり、就寝から3時間が経過していれば起き出して活動をするうちに日の出前に起きる習慣がつきました。今の東京の日の出時刻は4時25分で一年のうち最も日の出の早い時期です。今朝は3時半に目を覚ましましたが、体内時計は正確でもう何年も目覚まし時計を使っていません。末期がんを自然治癒したことで世界的に知られる寺山心一翁氏は日の出42分前に鳥が鳴き始めることに気づき、自宅の三羽のインコに酸素を吸わせる実験で、木々が光合成を始め放出する酸素に反応していることを突き止めます。これを読んだ当初は半信半疑でしたが、阿武隈源流の森に住んでいたとき、その時刻に鳥が鳴き始めることを知りました。目覚める前の森の空気は神聖でさえあります。一日が24時間11分とされるサーカディアン・リズムを朝の太陽光が補正します。光の刺激を受けてから14~16時間が経過するとメラトニンの分泌が始まり夜8時頃には眠くなります。夜9時に寝ると言うと以前なら驚かれましたが、朝活ブームの昨今は一般的な認識になりました。

歪んだ味覚

食べることは好きですが、関心があるのは美味しく食べることであって美味しいものではありません。生命維持活動であるはずの食事を、食糧生産と都市が娯楽に変え、やがてハレの食事は日常食となり、際限ない欲望が現代人の味覚を麻痺させます。体の内なる声を聞かず、味覚のヒエラルキーを信じ有名店に行列を作ります。しかし本来の味覚は生きるための能力であり、飢餓状態で磨かれ戻ってきます。意図せず5日間何も食べなかったことがあります。旅館経営を始めた頃、仕事の悩みで何も喉を通らなくなりました。5日目になって切実に食べたいと思ったのは、たくわんと味噌汁とご飯で、決して高級店の食事や体に悪そうなラーメン、ジャンクフードではありません。飢餓を経験することなく、いつでも食欲を満たせる現代人は食事を局所的に捉え、正常な味覚を失い、ステレオタイプのグルメ情報に固執します。脳に操られるまま野放図に食べていれば不健康が蔓延するのは不思議ではありません。本当の味覚は自分の体に必要なものを見極める能力だと思います。

スィーツは合法麻薬

糖質を憎む過激な原理主義者だと誤解されますが実態は違います。糖質制限を信仰してはいますが同時に合法麻薬としてスィーツを使用しています。憎んでいるのは動脈硬化から起こる心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、がん、認知症、自律神経の乱れによる心の病などあらゆる病気の元凶となる血糖値スパイク(グルコーススパイク)です。血糖値スパイクによって血管のあらゆる所で活性酸素が大量発生し血管が傷つき修復しようと集まる免疫細胞が血管細胞の内壁に入り込み動脈硬化を引き起こします。健康には気を使いますが、一方で食べたいものを我慢するほどストイックではありません。重要なのは適切な食べ方を知ることだと思います。食べる時刻や順序、十分な咀嚼と食事直後の運動などにより高GI食品を摂取しても血糖値スパイクを抑え込み健康を維持することは可能です。麻薬の合法化が進む理由は麻薬中毒を国が管理するためですが、違法性のないスィーツの場合、シュガーハイの中毒患者に管理を任せていることが生活習慣病を蔓延させる理由だと思います。

減らす幸せ

過剰なしには今の経済は成り立ちません。行き過ぎた物質中心主義はより広い家、より豪華な車、より美味しい食事、より新しい流行、より高い地位や名誉といったmore & moreの無分別な情欲を必要とします。足るを知らずさらに富むことを求める誘惑は経済の原動力ですが、一方で人の心を貶めると思います。会社を辞めてから通勤用のスーツも鞄も靴も不要になり減らす幸せを感じます。収入は減りましたが時間は増えました。340馬力の車を75馬力に換えてから車を操る喜びが増しました。70㎡の家から転居した34㎡の仮住まいは便利な上に掃除も楽です。340Lの冷蔵庫は170Lになり腐るものがなくなり過剰に買うこともありません。数万円したダイニングの椅子は2,000円のバランスボールに代わり体幹が強化され、3食から2食に減った食事で体重は78kgから58kgに減り、腰と膝から痛みは消え食事が美味しくなりました。医療費、燃料費、電気代、交通費、食費、交際費、税金とあらゆる経費が減り実質可処分所得と自由時間は増え、一方で失ったものは持つことによる厄介事とお腹の贅肉ぐらいです。

3、4割過食のトリック

農業革命以降の人類は麻薬的高揚感を伴うドーパミン型の食欲に欺かれてきたと思います。「人は小麦によって家畜化された」という表現はあながち外れていません。行列のできる飲食店もデパ地下の惣菜売り場もスーパーやコンビニのお菓子売り場にも血糖値スパイクの元凶となる高GI値食品が並び、インスリン過剰分泌による低血糖が中毒症状を引き起こします。必要を超えて継続的かつ余計に食べてくれることがフードビジネス成長の原動力です。糖質制限に対する批判の半分は無知によるものであり、残りは商売を守るためだと思います。古代より人類は糖質を摂っており、糖質ゼロの極論を主張したいのではありません。問題は現代栄養学が現状追認の誤りを今も教え、手の届くところにいつでも糖質がある飽食社会です。空腹による美味しさを知らず、低血糖と記号的なグルメ情報に操られていることを見過ごします。飢えと無縁の現代人が3、4割過食とする説は、このトリックにより説明がつくと思います。

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