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嗜好品以前の世界

観賞用に買ったナスタチウムが枯れて、花壇の肥料にでもなればと捨てたつもりでした。昨日見るとすっかり根付き、葉は若々しく茂り、買ったときより多くの花をつけています。人が世話などしなくても、多くの植物は自然の環境に置かれると、本来の生命力を取り戻すのかもしれません。生物である人間にも同じことがあてはまるなら、人間の生命力を高めるのも自然でしょう。人体にとっての自然とは、嗜好品が生まれる以前の世界だと思います。嗜好品という用語を最初に使ったのは森鷗外とされますが、摂取時の高揚感を楽しむために飲食される食品や飲料、すなわち娯楽ではない、栄養・エネルギー源を期待した食事ということになります。嗜好品の大半は消費者を中毒症状に誘うことで販売効率を上げますが、健康になるには食生活を嗜好品以前の自然に近づけることが必要なのでしょう。

常に新しい朝

昨日はキャンプイベントに行きました。アニメやコロナの影響でキャンプブームが盛り上がった頃は真冬のキャンプ場でさえ満員でしたが、さすがに懲りた人も多いらしく、中古商品販売店にキャンプ道具が大量に持ち込まれたと聞きます。それでも都会を離れ、自然のなかで心ときめく発見をするキャンプの魅力は色あせません。日が沈む頃に大音響のライブ演奏が始まると、バーニングマン的な身体を高揚させる空気があたりに充満し、人々は開放的で自由な雰囲気に浸ります。キャンプ・デービッドで数々の難しい外交問題に合意を取り付けたように、キャンプが持つインフォーマルな雰囲気がビジネスにとっては不可分なものになると思います。そこがキャンプ場であれ、自然のなかで迎える朝には一つとして同じものはなく、特有の湿気と気温、日差しがあり、常に新しい朝を味わうことができるのはキャンプの醍醐味なのでしょう。

8分の1で幸せ

ドライブレコーダーの普及によって、滅多に遭遇することのない交通事故を目にする機会が増えました。最も悲惨な映像は2020年8月に首都高湾岸線で起きた事故で、268km/hを出していたとされるポルシェが、何の落ち度もない車に衝突して夫婦を死亡させた事件です。スピードを出す高揚感は神経を麻痺させて一種の心神耗弱状態に陥り、その点においてこの事件の被告は異常とも言い切れないのかもしれません。重要なことは自分を狂わせる誘惑には近づかないことだと思います。以前大排気量の車に乗っている頃はよくイライラしましたが、排気量が4分の1のフィアットに替えると、精神状態が安定し運転が楽しくなりました。そしてさらに排気量が半分のN-VANに乗ると、以前は低過ぎると思っていた制限速度さえ気にならなくなりストレスがさらに減ります。持ち物を身の丈にダウンサイジングすることで、麻痺していた感覚が正常に戻るのでしょう。

人との繋がりという豊かさ

雑司ヶ谷鬼子母神堂に行くと、境内には風情を感じる駄菓子屋の「上川口屋」があり、日本最古の店だと後で知りました。養子として10歳の頃から店に立ち始めた13代目の主人は、84歳の今も雨の日以外は無休で店に立つと言います。人情味溢れる昭和の象徴でもある駄菓子屋は近年注目されますが、飴屋として創業したのは1781年(天明元年)で、翌年には日本の近世最大の飢饉が起こります。建物は江戸期からあるものとされ、関東大震災や東京大空襲を生き残り、100種類ほどの駄菓子が並ぶ店頭の桐の箱は100年以上使っているそうです。ジブリ映画「おもひでぽろぽろ」のロケ地としても知られ、海外からも取材される駄菓子屋は、コンビニやスーパーの出現により、将来性のある商売ではありません。売っているものは、便利さや値段の安さを求めた生活が失った、お金では買えない人との繋がりという豊かさなのでしょう。

住まいが芸術的

古民家巡りが趣味ですが、100年を超える築年数の家に入り感じるのが、日本は貧しくなったのではないかという錯覚です。現代の住宅では見ることのない大黒柱や手彫りされた太い梁を見ても、立派な神棚に床の間や欄間、襖や引手に施された手の込んだ装飾にせよ、住まいが芸術的な要素で満たされます。残念ながらそれらは朽ち果ててしまい、かつての栄華を偲ばせる生き証人でしかありません。諸行無常は世の常とは言え、松尾芭蕉が奥州平泉を訪れ詠んだ「夏草や兵どもが夢の跡」に込めた人の世の儚さを感じます。同様に杜甫の「国破れて山河あり」も栄枯盛衰へ思いをはせたように、われわれは愚かな破壊を繰り返しているだけのような気がします。住宅に新建材を入れた時から、自然との関係性が絶たれ、自然が持つ一貫性という調和した世界からはじき出されたのかもしれません。古民家は行政の力ではなく、ビジネスによって守るべきだと思います。

いつでも好きな場所に

草津温泉で車中泊をした結果、旅や自動車への考え方が変わりました。究極のソロキャンプ・マシーンと言えるN-VANは百万円台で買えますが、どれほどの高級車でも公道を走る限り機能は、その価格差を正当化するほどの違いはありません。一方で家ごと旅行できるスペース・ユーティリティの高さは、それらの高額車は逆立ちしてもN-VANの真似ができません。運転席以外をたためる商用車ならではの低床設計は、2、3人用テントより一回り大きな空間を生み出し、よく言えば茶室のような落ち着きを与えます。とは言え結局はシェルターみたいなもので、居心地が良いと言えばやせ我慢になります。それゆえ、草津の共同浴場を巡り、地元のスーパーに食べ物を調達しに出かけることで、よりディープな草津体験ができます。自宅の寝具や食器で、自分の部屋の雰囲気のまま、いつでも好きな場所に移動できる旅の自由さを経験すると元の世界には戻れません。

宿泊事業者の最大の脅威

昨日は草津温泉に行き、以前からやってみたかった車中泊をしました。昨今車中泊を禁止する場所も多いのですが、24時間営業の湯畑観光駐車場は午後3時から翌日10時まで1,000円の料金を設定しています。3つある共同浴場にも徒歩3、4分と近く、ローソンも目の前にあります。N-VANは運転席以外を倒すと一人には十分過ぎるスペースが生まれ、IKEAで買った60cm×200cmのマットレスを敷くと快適な寝室になります。自宅の寝具をそのまま持参できるので、枕が変わり寝られなくなることもありません。向かいに駐車していたハイエースも車中泊らしく、家族3人が浴衣に着替えて夜の温泉街に出かけて行きました。3人で旅館に泊まる金額を考えると、1,000円の駐車料金で済むなら気軽に旅行に行けます。自動車も自宅の部屋と同じですので、旅館の部屋よりもむしろ居心地がよくくつろげます。宿泊事業者にとっては最大の脅威になるのかもしれません。

こだわらないというこだわり

新古車を買う最大のメリットは納期が早いことですが、一方のデメリットは車体色を選べないことでしょう。もしN-VANを新車で発注していたら、5色あるボディカラーのうちいかにも無難で商用車然としたプラチナホワイトは絶対に選ばない色で、どこかヨーロッパ車のような落ち着きを感じる他の色にしたはずです。今まではこだわることが無条件に良いことだと思っていましたが、こだわりが執着を生み、ときには好き嫌いという対立に発展することもあります。人生後半に向けた終活とはモノを捨てることではなく、モノへのこだわりを捨てることかもしれません。こだわりを持たなければ自分のアイデンティティを失うような恐怖感を覚えましたが、モノや消費で規定する自分など偽りの姿に過ぎません。ビジネスにおける妥協は禁物ですが、選択肢が増えるほど、人は何かにとらわれ、人生が窮屈になり、不幸になる気がします。

監視社会の恐怖?

ガソリンスタンドの給油機に残っていた3,000円を盗んだとして看護師が摘発されました。ガソリンスタンドには監視カメラが設置されていますので自動車のナンバーから個人を特定することは容易です。こちらは窃盗でも停職1か月で済みましたが、気の毒なのは、開店前の携帯ショップの前に置かれたラックから販促用洗剤を毎日持ち去り合計11個を窃盗したとして、銀行の副支店長だった女性は懲戒解雇されました。そもそも販促用でご自由にお持ちくださいと書いてあるものを、店の営業前であることなどを理由に窃盗とした判断は理解不能です。そのような行為の原因になるラックを放置しながら後になって窃盗だと騒ぐ携帯ショップの反応も異常です。もしこれが犯罪と言うなら、監視カメラの設置されている国道などに平気でゴミを捨てる連中や、飲食店でコーヒー用クリームや砂糖を大量に持ち帰る一部の年寄りも問題にすべきだと思います。

エクストリームスポーツの機会

2017年3月に起きた那須雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた引率の3人に、禁固2年の実刑判決が出ました。実刑は異例ですが、高校生7人、教員1人が死亡する、国内の雪崩事故としては最大の犠牲者を出しただけに、妥当な判決かもしれません。事故現場から直線距離なら10kmほどで、標高も変わらない旅館で迎えた事故当日の朝のことをよく覚えているのは、3月としては珍しい大雪で降り方が異様だったからです。事故の後、雪崩を研究する大学の研究者から事故前の状況を聞かれましたが、研究が山で活かされることを願うばかりです。かつて白河高校山岳部の6名が死亡する遭難事故が起きたのも近い山域であり、普段から突風が吹く自然環境の厳しいエリアです。判決は、良くも悪くも今後の山岳スポーツに影響を及ぼしますが、危険を伴う所に価値を求めるエクストリームスポーツの機会が奪われないか気になります。

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