
夏休みを利用して宿の掃除を手伝ってくれた以前の会社の先輩が次の目的地に移動し、ラブラドールと二人だけの日常に戻りました。掃除をして買い物をして日が傾けば焚火をしながらパエリアを作る日々です。新甲子温泉は火が恋しい季節になりました。夕方パエリアを作りながら炎を眺めていると懐かしく暖かい気持ちになります。暑かった東京の夏が少し恋しくもあり、人間は贅沢なものです。
毎晩パエリアを作っているので、コツがつかめてきました。レシピ通りやってうまく行かない場合、ぼくはレシピにとらわれずに色々なパターンを試します。基本的には水分量、火加減、時間の三要素を入れ替えています。武道などで言う守破離です。ぼくはレシピのルールに縛られるのではなく、料理は独創的かつ自己表現の場であるべきだと思います。
人生も同じです。だれかが書いたシナリオの上をトレースするだけの予定調和の人生は幸せにはつながらないと思います。
今朝は宿の玄関に沢ガニが入り込んでいました。阿武隈源流からは標高差が80mほどありますので不思議です。

今日の新甲子温泉は一日冷たい雨が降り続きました。川の水量が増し、山に入ると至る所に沢ができています。暑さも峠を越えたのでしょうが、結局夏らしい暑さを経験することなく秋になりそうです。今思えば三本槍岳直下にある鏡ヶ沼をラブラドールと訪れた頃が盛夏だったようですが、都心の暑さとは比べようもなく、暑くない夏のまま秋になってしまうのは一抹の寂しさがあります。
今朝の新甲子温泉は夜明け前から快晴で美しい星空が広がりました。4時半に那須の峠の茶屋を出発して朝日岳、茶臼岳を2時間ほど歩きました。早朝の茶臼岳、朝日岳一帯ではかなりの確率で美しい雲海を見ることができ、雲海に浮かぶ日の出を望むことができます。
昨日は70人用とされる90cmのパエリアパンで初めてパエリアを作りました。市販されるパエリア鍋としては最大のもので、厨房で洗うこともできませんしフライパンを移動するのも容易ではありません。写真の左に写る17人用52cmの鍋が2,000トンクラスの駆逐艦なら、90cm鍋は64,000トンの戦艦大和といったスケール感です。わずか6人分を作ったために鍋の傾きが影響してご飯の炊きあがりに若干のムラがありますが一応及第点です。この2週間ほどは毎日パエリアを作っていて、この半世紀生きてきたなかで食べたパエリアの量を、超えたのではと思えるほどです。
昨夜は明るい月が昇っているのに、台風一過のためか満天の星空でした。外に椅子を持ち出し、さわやかな夜風に吹かれながら虫の音を聞いていると、夏が来ないままに秋の気配です。今朝の新甲子温泉は気温15度ほどと寒く、5時前に峠の茶屋から出発して茶臼岳を目指すと秋の空気です。今は廃村となった三斗小屋宿跡へのルート調査も兼ねてラブラドールと25kmほどを歩きました。累積標高は1,693m、消費カロリーは1,311Kcalですが、何も糖分を取らなくても水だけでエネルギーに不足はなくこの倍くらいの距離は歩けそうです。糖質依存の栄養学常識が塗り替えられる日は近いと思います。

明け方の激しい雨があがり、今朝の新甲子温泉は深い霧に包まれています。昨日は同い年の前職の同僚が日本一周の途中に宿泊してくれました。47都道府県に足跡を残す旅のために、宿には昨夜18時半に着き今朝は4時半に出発するあわただしさです。カメラ、スマートフォン、充電器と着替えだけの荷物は驚くほど少なく、長距離トレイルレース並みのストイックさです。旅の魅力はぼくがトレイルレースにはまる理由の一つだと思います。60kmを超えるような長距離レースになるとどこか長旅をする感覚があります。