より純粋な自然を感じたい

iPhoneで撮影した写真で一年を振り返ると、楽しい場面や美しいと感じる写真しか残っていないので、一年が良い思い出ばかりに美化されます。山で撮影した写真が5割ほど、それ以外の旅行が2割、宿泊施設と料理が1割、その他2割といった比率で、自分が何に幸せを感じるのかを知る手がかりになります。落ち葉の積もった森を歩くだけで幸せを感じるのは、そこにある自然が人類の歴史において、長年馴染んだ環境だからでしょう。週末になると人々が都市を脱出しようとするのはその現れだと思います。同様に人体も、本来あるべきデフォルトに近づくほど幸せを感じるはずです。生き残った生命体は環境変化に適応できた種であり、狩猟採集時代を通じた飢餓や氷河期の寒さに対して適応する術を身につけています。この季節になると雪の山に分け入りたくなるのは、より純粋な自然を感じ、同時に深部体温を上げたいからかもしれません。

旅と居住の境界

娘の高校にオーストラリアから留学をしていたかつてのクラスメイトが、東京滞在の9日間をわが家で過ごし、昨夜京都に向かいました。「暮らすように旅をする」のが昨今の旅行トレンドですが、学生の特権である自由時間を使い、異国の生活に溶け込む旅行はうらやましく見えます。昔からあるバックパッカーがコミュニティを形成し、外国人として振る舞うのに対して、スマホを駆使する今どきの旅行者は、現地の人と同じように暮らし、もはや旅というより居住に近い感覚です。地方創生が叫ばれて久しい日本ですが、どの自治体も移住をあきらめて関係人口、交流人口の獲得に軸足を移しています。日本のインバウンド政策も、訪日旅行客ではなく、定期的にやって来る異国からの交流人口ととらえたインフラ構築をすべきかもしれません。非日常に目が行きがちな宿泊施設こそ、普通に暮らす日本の生活を再現すべき場所かもしれません。

戦争は景気浮揚策?

戦後の世界において、2023年ほど平和の尊さを考えさせられる年はなかった気がします。アメリカからの軍事支援が底をつき始め、膠着状態の続くウクライナ戦争では、一枚岩だったウクライナの政治にほころびが見られ始めたと伝えられます。皮肉なことに一方のロシア経済は好調で、戦時下のバラマキ財政がGDPを押し上げ、動員により失業率はソ連建国以来最低水準まで下がります。スイフト決済から追い出され、半導体が止まれば行き詰るはずだった経済は、今年の実質GDPでアメリカを超える成長率が予想されます。第三国経由で西側製品が入り、抜け道を使ったエネルギーの輸出は続き、むしろヨーロッパ諸国を逆制裁する形になっています。戦争を景気浮揚策と考える悪夢は、朝目覚めたとき、無事に平和な一日を迎えられる幸せに、感謝する謙虚さを忘れたときから始まるのかもしれません。

食べ尽くした後

隣駅の桜上水の近くにあるラーメン店は昼食時、常に20人ほどが歩道で列を作ります。ときには訪日旅行客を含めて50人が待つ日もあり、カウンター8席の店ですから1時間待ちを覚悟する必要がありそうです。某ラーメン大賞を受賞した店ですが、仮にすぐに入れるとしても、特段の理由でもない限り入ることはないと思います。身も蓋もない話ですが、お金を払ってまで健康リスクの高い食事をする気にはなりません。健康的な食材を使ったとしても、外食店では殺菌消毒のリスクが残ります。食べたいものを作れ、健康リスクを最小化でき、調理そのものが認知機能の向上に役立ち、お金の節約になり、落ち着いた環境で好きなように食べられる自炊以上の価値を外食に見出すことができません。GoogleやAmazonなどの先端企業は、不老不死研究に投資をします。美味しいものを食べ尽くした後にやってくるのは、長寿遺伝子の活性化を促す少食なのかもしれません。

免疫力を高めるスノートレッキング

今年も残すところ2週間を切り、今週は日中の時間が一年で最も短かい時期です。この季節の関東地方は晴天の日が多いのが救いですが、日照時間の少ない高緯度地域や晴天率の低い場所では、ビタミンDやセロトニンの合成が不十分なために、ウィンター・ブルーと呼ばれるウツが増加するとされます。また、この時期に眠気に襲われるのは、日照時間の変化による体内時計の乱れが原因と考えられ、免疫力の低下も懸念されます。ビタミンDはガンをはじめ、風邪やインフルエンザの予防に欠かせませんので、日照時間の減る冬場こそ日光浴が必要になります。これからの季節における絶好の日光浴スポットはスキー場ですが、ほとんどスキーをしなくなったわが家では、セロトニンが分泌され免疫力を高めてくれるスノートレッキングに行く時間を、健康維持のために増やしたいと考えています。

必然を想像できない

先日近所の交差点で交通事故があり、大型のベンツがカーブミラーをなぎ倒し民家の花壇に突っ込みました。車の少ない住宅街で制限速度は30km以下ですが、廃車になるほどのダメージです。一時停止を止まらない自転車や車による事故は近所でも頻繁に見かけます。見通しのきかない角を、減速せずに曲がる自転車に怖い思いをすることもあり、運転者の大半はいい歳をした大人です。自分の行動の先に起こる必然を想像できない人間が増えているとすれば、その原因は思考能力や判断力の劣化だと思います。人が自然から遠ざかるほど、注意欠陥や否定的なストレスや気分の落ち込みを生むことを、昨今の研究は示しています。加えて、拍車をかけるのがスマホやAIへの依存でしょう。世界一安全とされる日本の街ですが、安心して歩ける時代は過去のものかもしれません。

最安にして最強の暖房

本格的な寒さはこれからですが、今シーズンはエアコンの暖房を使っていません。夏涼しく冬暖かい地下住戸の特長もあって、消費電力の少ないホットカーペットにYogiboを乗せて布団を掛ける即席のこたつは、最安にして最強の暖房だと思います。日本の住宅から和室がなくなり、こたつはもはや非日常の暖房器具ですが、頭寒足熱の懐かしい暖かさについウトウトします。夏は扇風機で過ごし、冬もエアコンを使わず、便利だけど過剰な生活を見直すと、むしろ寒暖を楽しむ気持ちになります。便利さのためにエネルギーが浪費され、一時的な欲望を満たす人工環境は、生きる力を弱めると思います。便利さは暮らしから伝統文化を奪うばかりでなく、かつては存在しなかった新たな危険を生み出すのかもしれません。最大の脅威だった寒さに対抗するために人体が手に入れた、深部体温を上げるために内蔵脂肪を燃やすメカニズムを活性化すべきでしょう。

日常に溶け込む旅行者

わが家に滞在する、娘と同い年の留学生を見ていると、スマホを駆使するZ世代が旅のエキスパートであることが分かります。「東京駅に着いた」とLINEが入った後、重いスーツケースを持っているのに最短時間で最寄り駅までやって来ます。大半の日本人が知らない瀬戸内の島の旅館に泊まり、下北沢の地理は地元住民並に把握しています。かつて主流だった、有名観光地を団体で移動する旅行など、この世代には無縁でしょう。6年前に3ヶ月下宿をしていた気安さもありますが、オーストラリアという異なる文化圏から来たのに、受け入れる側としては何の違和感もストレスもなく、日本人の日常に溶け込みます。初めて訪れる場所でもストレスを感じないZ世代が、世界の旅行市場をけん引する時代が始まると、贅沢で充実した旅行の意味は変わり、世界を自由に旅するライフスタイルに合わせた新しい提案が必要になるのでしょう。

時間の密度を上げる方法

年末が近づくと、一年が去るという一抹の寂しさを感じます。年を重ねるほどに経験量が増え、これまでに生きた時間の分母と比べて、一年の分子が小さくなるために、時間の流れを早く感じると言われます。しかし寂しさの原因は、時間の流れの早さではなく、時間密度の希薄化だと思います。今という時間を精一杯生きず、無為に時間が過ぎるほどに残りが気になります。環境を変えて新しいことに取組むとき、時間はあっという間に過ぎても、充実した時になります。旅館を買った後の記憶が妙に美化されるのは、必死だったからのような気がします。歳を重ねるほどに新しい挑戦を避け、同じ環境で似通った経験を繰り返すから時間の記憶が希薄化するのかもしれません。時間の密度を上げる方法は、人生のイベントにおけるオーナーシップであり、誰かに時間を支配されることなく、自分がすべきことに集中できる環境を自ら作ることだと思います。

ピュアな自分と出会う旅

かつてホームステイをしていたオーストラリアの留学生が、昨夜から滞在しています。日本、韓国、台湾を旅して、東京で9日間を過ごします。娘の高校に留学していた6年前から、わが家は東京の定宿です。土地の日常に触れることが旅の価値であるなら、滞在場所は商業的な宿泊施設からAirbnbなどを介したバケーションレンタルが主流になります。街に入り込み、飲食店やスーパーを旅行者の目で観察し、路地裏の生活に触れる刺激を得るには家庭への滞在が最適でしょう。バーチャル空間で何事も済ませる時代になっても旅の魅力が色あせないのは、異国の生活がインスピレーションを得て、クリエイティブなネタを仕入れる最良のプロセスだからかもしれません。自分が持てる範囲で生活をする旅は、背負い込んだものを人生から削ぎ落とす視点をもたらします。旅の最大の効用は、自分の内側を深く旅して、ピュアな自分と出会うことだと思います。

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