未知なる生命体

自宅をパワースポットにする、最も安上がりなアイテムは草花だと思います。われわれは、植物の生態をよく理解していませんが、ペットをなでると分泌されるオキシトシンが、植物の世話でも人体に影響を及ぼすことが知られます。樹齢数千年に及ぶ大木などは、ほぼ不死と言える生命体ですし、草花が感情を持つとする研究もあります。作業机の上のポピーが成長して刻々と姿を変え、つぼみの外皮が音を立てて机に落ちると、彼らは確かに生きていると思わせます。食物連鎖の底辺に位置する植物は、最も身近にありながら、ミステリアスな存在です。動物に食べられる運命にある植物が、動物の腸に作用してその機能を阻害する毒を作り出す反面、カフェインやニコチンといった嗜好品、漢方薬、活性酸素による酸化ストレスを無害化するフィトケミカルとして役立ちます。この未知なる生命体が持つポテンシャルが明らかになるのは、これからかもしれません。

最も割の良い長寿法

近所の豪徳寺にまでインバウンド客が押し寄せるように、信仰にかかわらず宗教施設は観光のハイライトです。何らかのエネルギーを感じ、力を与えてくれる心地よい場所に人々は集まります。週末になると人々が都会を離れ、清涼な空気と水と緑のある自然を目指すのも、同じ理由でしょう。世界の長寿郷が、人体に対して特別なエネルギーを与え、脳や内蔵の活性度を高めることを、現代科学が解き明かし始めています。自分が心地よいと感じる場所がパワースポットであるなら、自宅をパワースポットにすることがもっとも効率的です。パワースポットの条件はエネルギー循環が起きやすいこと、気を乱さないこと、生命力を感じることだと思います。家にはモノを置かず清掃し、テレビや蛍光灯など静寂を破り自律神経を乱すモノを捨て、草花を置くだけで、普段の生活空間が自分だけのパワースポットになるなら、最も割の良い長寿法かもしれません。

都市でも山道具

モノを増やさない生活を心がけていますが、山で使う道具は例外です。昨日も2011年に設立された日本発のアウトドアブランド、パーゴワークスの22Lザックを買ってしまいました。長距離山岳レースのエキスパートが愛用するプロ仕様ながら値段は妥当です。3年前に購入した16Lは、日本人体形にフィットして、走っても荷物が揺れないところが気に入っていましたが、パソコンを収納するポケットがなく、普段の買い物にも容量が不足するのが悩みでした。22Lは見た目の大きさはほとんど変わらないのですが、14インチのパソコンがギリギリ納まるポケットを持ち、普段の買い物や1、2泊の旅行には過不足ない収容力を持ちます。2つは色違いに見えますが、3年間ほぼ毎日使い、よく洗濯もするので、自然に溶け込む材質感へと変化しています。都市に暮らしていても、移動はエクササイズだと思っているので、背負いやすい山道具を使うことは合理的だと思います。

生活習慣という全身性の問題

長年の持病は逆流性食道炎と腰痛です。腰痛は激しい運動をしなければ普段は忘れているのですが、逆流性食道炎は常に気になります。10年前は1、2割だった患者は、今では3、4割ともいわれ、国民病の一つです。増加の背景には、胃に負担をかける食生活などがあるとされます。検査をしても異常が見つからず、生活に支障をきたすほどでもないために長年放置してきたのですが、糖質制限を再開したついでに、取り組むことにしました。逆流性食道炎がタイトルにつく書籍は膨大な数にのぼり、悩む人が多いことが分かります。治療法は大半の生活習慣病と同じで、小食にして、胃に長く留まり消化機能に負担を強いる高脂肪食やカフェインなどの刺激物を避け、姿勢を良くして、腹式呼吸で横隔膜を鍛え、寝るときに枕を高くする程度です。あらゆる現代の病気は、生活習慣という全身性の問題であり、対処法もほとんど同じなのでしょう。

幸せをお金で買う

生命力あふれる新緑の季節に入り、戸外を歩くだけで幸せな気持ちになります。感受性を高めると、そこかしこに幸せを見つけることができますが、人はお金を払って幸せを買おうとします。もしかしたら今の日本は、人類が到達しうる最も幸せな国と言えるのかもしれません。基本的人権や自由があり、いつでも飲み水を入手でき、店には新鮮な食材が並び、物価は安く、治安は守られ、医療にアクセスでき、偽金を心配する必要も、手抜き工事でビルが倒壊することもなく、列車の時刻は正確で、街のゴミは片付けられ、何より四季が美しく、年初の日航機事故のようにいざとなれば人々は整然と行動します。少なくない自殺者など負の側面もありますが、世界の標準と比べれば総じて幸せです。さらなる幸せをお金で買おうとする人は、生活のスピードを幾分落とし、心の中から思い込みや執着という貧しさを追い出すとより幸せになるのかもしれません。

水辺のサマーコテージ

先週末にかけて、東名阪+静岡のサウナ施設をまわり、改めてトトノウとは何かを考えました。自分にとってのトトノイの条件は、静寂な環境、冷たい外気と自然、薪ストーブとロウリュの3点にあると感じます。どれほど立派で豪華な施設であれ、人であふれ返るような場所は不適です。都心で急増中の貸切サウナにしても、大半が電気ストーブで自然の心地よさを望むことはできません。記憶をたどってみても、最も整ったのはテントサウナで、自律神経バランスとアドレナリン半減期という身体の条件に加えて、残りの要素はシンプルに大自然のなかで感じる解放感にあるのだと思います。そう考えると、北欧のサウナが水辺のサマーコテージにあることに納得がいきます。補助金の投入もあって、日本中でさらに豪華なサウナ建設が進みますが、本質を見失っているような気がします。

トレードオフのジレンマ

地域て一番安い八百屋を目指す「フルベジ」が近所に開店して行きました。世田谷区の一部にドミナント出店をする店ですが、コモディティで勝負することの難しさ考えさせられます。健康食品の製造販売に行き詰まり、人々が継続して購入し続ける野菜と果物を破格な値段で売るビジネスに転換したと言います。値段は高くはないものの、スーパーの目玉商品に慣れた消費者の心を動かすほどに安いとは言えず、ポーションも微妙に少なく、鮮度も高そうには見えません。安く売るためには大量仕入れが前提となりますが、現在の店舗規模も不十分です。高円寺の高野青果のように、駅前の一等地で回転率を上げるビジネスとも異なり、立地も微妙で営業時間も短く、冷蔵施設もなく、レジは手打ち、支払は現金という、コストダウンを積み上げる方式には限界があります。トレードオフのジレンマから抜け出すにはイノベーションが必要なのでしょう。

個人的三つ星

昨日は遠州の小京都、静岡県の森町にある「精進懐石無庵」に行きました。百年以上昔に建てられた古民家を使った完全予約制で、一日1組しか受けない店ながら、夜咄懐石は7,000円と妥当です。谷崎潤一郎の陰翳礼讃にあるような、まだ電灯がなかった時代、西洋文化との不調和をきたす以前の、生活と自然が一体化した、真に風雅な日本人の美意識に回帰する店です。料理は質素で素朴ながら、生活に根ざした芸術的な感性や美意識の心地よさを感じさせてくれます。夕方に到着すると、ご飯が炊かれる竈の見える囲炉裏で梅茶を出され、庭と周囲の山の見える客間で食事をして、茶室で主人の点てる薄茶をいただき、ほぼ3時間の古き良き生活を体感できます。和蠟燭だけが灯る空間は、夜のとばりが下りるとブランドテストのように舌の味覚と触感に集中できます。炊き立てのかまど飯が主役の、茶事懐石こそが究極の日本料理と思わせる個人的三つ星の店です。

サウナをより深く理解する

静岡のしきじから始まり、名古屋のウェルビー栄、大阪のアムザまで2日間に入ったサウナのセット数は数え切れず、体中の水分が全て入れ替わったと思えるほどです。サウナ旅というよりはもはやトライアスロンで、一種の中毒であることも含めてエクストリームスポーツのカテゴリーに入れても良いと思います。ウェルビー栄のアウフグースシアターで行われる12分ほどのショーを3回見ましたが、観客もバカにならない汗をかきます。ドイツ発祥のアウフグースは日本でもにわかに盛り上がりますが、アウフギーサーの華麗なパフォーマンス、ロウリュの香りと蒸発音、大音響の音楽と照明による演出に引き込まれます。最大の魅力は観客も同時に汗をかくショーの一体感でしょう。アウフグースやウィスキングはまだ一般的ではありませんが、サウナをより深く理解する手段になることは間違いないと感じます。

にわかサウナーへの敷居?

昨日はサウナーの聖地として知られるしきじと、ウェルビー栄の中京圏を代表するサウナに行きました。しきじの駐車場は県外ナンバーが目立ち、その威光は今も衰えません。午前9時までは1,000円、以降1,500円という庶民的な価格だけに、健康センターそのものですが、売りはカルシウムとマグネシウムを豊富に含む、弱酸性の飲める湧水の水風呂です。刺青やタトゥーには厳格で、隠すためのサポーター着用も禁じています。ついでにサウナハットも禁止で、公式の理由は浴槽やサウナ内にフェルト素材が落ちることですが、にわかサウナーへの敷居を上げる老舗の意地にも見えます。一方のウェルビーは、こちらもアウフグース世界大会AufgussWM 2023にて優勝した硬派で、60人ほど入れそうなアウフグース専用シアターまで作る過激さです。氷点下25度の冷凍庫にアヴァント風水風呂を作るこだわりは、この施設のためだけに名古屋に行く価値がありそうです。

Translate »