昨日の那覇クルーズターミナルにはMSCポエジア9万3千トンが入港しました。乗客約3千人が上陸すると中心部が賑わい、シンガポールからウェステルダム8万3千トンが着いた先週は、国際通りに欧米人があふれます。一方で、那覇新都心のDFSギャラリア沖縄に人影はまばらで、ラグジュアリーコングロマリットLVMHグループにお金が落ちるアジア発の訪日客の回復には時間がかかるのかもしれません。この場所は沖縄戦の激戦地として知られ、米軍からシュガーローフヒルと呼ばれた安里五二高地はDFSの目の前です。安里配水池公園として整備された丘が、沖縄戦最多の米軍戦死傷者を出した激戦地とは想像できません。日米双方に数千人の戦死傷者を出したと思えないほど小さな丘に、凄惨な歴史を示すものは控えめに設置された碑文だけです。戦後77年を経た日本で、戦争と平和が隣合わせの場所は沖縄を置いて他にはないのでしょう。
お知らせ
ラストリゾート沖縄
昨年、一昨年とは違い那覇の中心部には観光客が戻り、民泊市場もコロナ禍以前の8割程度まで回復していると聞きます。冬でも10℃を切ることがなく薄着で過ごせる沖縄は、少ない荷物で気分も軽くなります。那覇では不動産収益物件を探しますが、小高い丘の上にある眺めの良い物件を見に行ったとき、立ち話をした隣家のご主人にコーヒーをごちそうになりました。モノレールの安里駅から徒歩10分とは思えない、熱帯植物が生い茂る庭は都会のオアシスで、ゆったりとした時間が流れます。居心地の良さについ1時間ほど話し込んでしまいましたが、沖縄に来ると、何も持たず最小限で暮らすことの潔さを感じます。仮に自己破産でもしたら、沖縄以上にふさわしいラストリゾートはないと思います。人生の最後は全てを置いていくのですから、物欲に任せて頂点を目指す生き方の先には失望しかないのでしょう。
住めば都
那覇での滞在先を代わりました。ベランダ付きの30㎡にキッチンや洗濯機のある無人ホテルから、朝食と清掃など人的サービスを受けられる13㎡に移り、値段は一緒です。一長一短ですが、狭さは気にならず住めば都です。5千円を切る値段とあっては文句などあるはずもなく、熱い風呂と水シャワーで汗をかき、タオル地のパジャマをバスローブ代りに使えば機能的には高級ホテルと遜色ありません。すぐに寝てしまうので、シルクのようなシーツも天国のようなベッドもいらず、雨露をしのげる清潔な寝床が重要です。一方で贅沢を求め始めると微細な違いが気になり始め、人はポジティブな変化に慣れる快楽順応があるために、絶え間なく幸せが起こらないと不満を蓄積していきます。慣れ親しんだホテルに泊まり、普段に近い食事をする日常の延長であれば自律神経バランスは崩れず、旅先での環境変化によるストレスも軽減されると思います。
高収入貧乏の罠
香港・那覇を経て釜山に向かう4万3千トンのクルーズ船が、那覇クルーズターミナルから昨夜出航しました。夜風にあたりながら眺めていると、こういう生活も悪くないと思えます。「端的に言って、幸せすぎる。」という国際政治学者のツイッター炎上の理由は、虚飾のセレブ生活への反発です。同時にそれは誰もが持つ憧れであり、優越感と屈辱感は表裏一体に見えます。負荷をかけることが挑戦するモチベーターになるのであれば、身の丈を超える生活は悪くありません。一方で、見せつけるための生活が、取引先を信用させる詐欺に利用されたのであれば問題でしょう。いずれにしても消費の本質とは、見栄と競争心から来る顕示的欲求の現れであり、そこには幸せが継続しない高収入貧乏の罠があります。本当の問題は、平凡な日常に感謝し、そこに幸せを感じる生活だとしても、維持することが年々難しくなっていることかもしれません。
免罪符を求める消費者
アマゾンプライムで「スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン!」を見ました。1か月間、全ての食事をマクドナルドのメニューで摂ると、体と心はどうなるのか?自らの体でその疑問に応えた異色ドキュメンタリーの監督であるモーガン・スパーロックが、今度はフライドチキンのファーストフード店を経営するという意欲作です。前作では、体重や肝臓などのあらゆる数値が悪化し、心が蝕まれ、やがて麻薬のようにマック食を欲する中毒性について、消費者目線から警鐘を鳴らしたのに対して、この作品では健康に悪いファーストフードを魔法の言葉で売りつける側に回ります。米国農務省のガイドラインに沿ったオーガニックな農場で鶏を育て、ヘルシー、ナチュラルなどの言葉を駆使して、免罪符を求める消費者を洗脳します。この店舗は人気となり資金提供者も現れますが、ファーストフードの恐ろしさを知る彼が3日で閉店したのは当然でしょう。
身近なもので暮らす豊かさ
食べる誘惑の多い自宅と違い、旅先では一日一食です。那覇と言えば沖縄そばやアメリカナイズされたステーキを思い出しますが、主戦場は大衆食堂だと思います。よく行くのは1966年から続く三笠松山店で、松山店といいながら現在は一店舗しかなく、看板の似た三笠久米店とは無関係です。手頃な値段と間違いのない味、大衆食堂としてはきれいな店内など総合点が高く、外すことがありません。平均年齢が70歳を超えると思しき女性6人から9人が店を切り盛りし、いつ行っても活気があります。ゴーヤチャンプルーから沖縄オリジナルメニューのちゃんぽんやスキヤキなど、豊富なメニューで毎日通えます。安くて普段使いの家庭料理になぜか贅沢を感じるのは、沖縄独特の庶民的な料理が、この土地にいるリアリティを感じさせるからだと思います。感情的な欲求のわずらわしさに束縛されず、身近なもので暮らすことに豊かさを感じます。
最善の旅はラン旅
東京大空襲の3月10日、東日本大震災の3月11日と、風化させてはならない日が続きます。徒歩で帰宅した12年前の記憶は鮮明で、以来出かけるときは帰る方法を考えるようになりました。それは旅行でも同じで、三週間滞在する那覇での荷物はいつでも走れる16リットルのトレランザックのため、半径10km程度の移動は自分の足です。ハプニングがつきものの旅において、荷物が少ないメリットは臨機応変な対応ができることです。2019年に家族とマカオから中国に移動した際、乗り合いバスを間違え4、5km離れた波止場に降ろされましたが、自分の足で移動し予定していたフェリーに間に合いました。風光明媚な自然や都市の刺激を享受する最善の方法は旅先で走るラン旅だと思います。新幹線や飛行機の高速移動は脳を疲れさせ、ナチュラルキラー細胞の活性を低下させますが、それは人類史における移動も労働も身体を動かすことが中心だったからでしょう。
最も人気のない場所に最も価値がある
那覇は天候が安定し、日差しは強いものの汗ばむほどでもなく、ベストシーズンだと思います。一方で花粉症の出る東京は悪夢の季節です。この時期こそマスクが手放せず外出を控えますが、那覇に来ると歩数が増えます。那覇で見るべき場所を上げるなら、首里城でも国際通りでもなく、那覇のヤンバルと言われる末吉宮跡のジャングルのような丘と、路地が迷路のように入り組み昭和の風情を残すアーケード街でしょう。末吉宮のある丘は、激戦地安里52高地や沖縄第32軍司令部のあった首里城北方にあり、米軍の攻撃により、おそらくはげ山にされたと思います。しかし亜熱帯の気候が育む森は生命力にあふれ、原始の昔からあるかのように見えます。至るところに拝所が置かれ自然と信仰が融合する場所はひっそりと静まりかえり、訪れる人もありません。最も人気のない場所に最も価値があるように思えます。
常人には見えないものを見る
昨今のYouTubeキラーコンテンツと言えば楽天でしょう。EC、フィンテックが好調ながら、楽天モバイルによる史上最悪の3,800億の赤字、同社幹部による300億の水増し請求、ガーシーによる暴露やNHK党から起こされた訴訟など話題に事欠きません。格付けが下がり、ドル建て実質12%の二年債で700億を調達しましたが、モバイル事業の未来は絶望的に見えます。一方で三木谷氏を希代の経営者にしているのは、不可能を可能にしてきた経営手腕です。楽天経済圏というビジョンと強気の姿勢を支えるパッションは、昨今はやりのパーパス経営などとは一線を画します。常人には見えないものを見るのが真のリーダーであり、投資家の圧力や巷の批判を跳ね返して難局を乗り越えてほしいものです。日本の閉そく感を打ち破れる数少ない企業が楽天だと思います。
レッドオーシャン化の進むサウナ
滞在する那覇のホテルから数分のビーチでテントサウナを見かけました。海開きは目前ですので水温は物足りませんが、海まで数歩のロケーションです。テントサウナの投資額はほぼ無視できる範囲ですから、90分3,000円は高いと思いますが、誰もがこうした立地を活用できるなら、サウナ事業のレッドオーシャン化は一気に進みます。生き残る方法はサウナの構成要素を作り込むことだと思います。サウナ室に求めるのは十分に汗をかけ、薄暗く、息苦しくなく、景色が見えることです。旧呉服屋の袖蔵のサウナ室に、パワーがあり過ぎて今は販売をしていない薪ストーブを置いた結城市のKURA SAUNAが気に入っています。水風呂なら豪快に山の水を引き込んだ野尻湖のThe Saunaや、目の前が清流の高萩市のコアミガメです。外気浴スペースは地平線まで見渡すような開放感が理想で、富士山の存在感に圧倒される富士山靜養園は最右翼でしょう。