
思い出の山はいくつもありますが、昨日登った北ノ俣岳は忘れえぬ山です。2022年8月8日の早朝5時過ぎ、この山頂はピオレドール賞4度受賞のアルピニスト、平出和也さんに会った場所です。TJARの選手の到着を待つ間に伺った話からも、K2への思いが伝わり、2年後に人生の集大成と言える山で消息を絶つなど想像もしませんでした。この後、先行する私と妻を、3倍ほどの荷物をかつぎながら軽々と追い抜いて行きました。平出さんとは南アルプスでも2度会ったことがあり、その体力、美しい肉体、沈着冷静で誠実な人柄に触れることができました。正規ルートでもエベレストのバリエーションルート並みの難易度とされるK2から、無事に戻って来てほしいと切実に願いました。登山家の野口健氏が、「先鋭的な登山を続けていれば、一部の例外を除いて時間の問題でいつかは死ぬ」と記した言葉がいつまでも頭を離れません。
自分が歩く道を支える



北ノ俣岳に通じる飛越新道の登山道修繕のための荷揚げボランティアに行きました。このルートは北アルプスの最深部である雲ノ平に最短でアクセスできるお気に入りのルートですが、問題はトレイルが悪名高き泥沼なことです。普段なら泥沼を避けて歩きますが、この道に限ってはその努力がほとんど無意味です。深刻な泥濘化が進むことで植生の踏み荒らしも助長されます。修繕用の木材を荷揚げしますが、泥沼に気を取られて修繕場所の1.5km先まで持って行ってしまい引き返しました。普段はほとんど荷物を持たないトレッキングスタイルなので、9kgほどの荷物でも十分な運動量です。当初北ノ俣岳の天気予報はてんくらのC評価でしたが、前日にはB、当日はAに予報が改善され、稜線に上がると台風一過のこの上な快晴でした。自分も使うトレイルが歩きやすくなるなら、地元食材を使った豚汁がなくてもボランティアをしたいと思います。
スパルタンで美味しい登山道



木曾駒ケ岳に登りました。台風接近により天気は悪いと皆が思っている時こそ静かな山歩きをするチャンスです。ChatGPTに「てんきとくらす」の3時から12時の予報がA評価の山をリストアップしてもらい、その中から行ったことのない中央アルプスを選びました。A評価は風雨が強くないという意味で晴天とは限りません。案の定七合目あたりから雨が降り始め、登頂をあきらめて下山する人もいます。このサイトの予報精度は概ね参考になると考えていて、結局雨が上がり良い天気になりました。木曾駒ケ岳はロープウェイでアクセスできる山ですが、415kmを踏破するTJARの選手が通った累積標高1,900m、2,500kcalのそれなりにスパルタンなルートをたどりました。切り立った危険箇所を夜中に通過する選手の体力と技術には改めて驚かされます。今の季節はクロマメノキ(ブルーベリー類)、コケモモ、シラタマノキなどの実が食べ頃なのもこのルートの魅力です。
完璧な晴天



連休初日はいつも登る編笠山に登りました。白馬まで北アルプス全山がはっきり見通せる晴天ですが、台風接近の予報のためか拍子抜けするほど登る人はいません。普段は西岳を回って下山するのですが、こんな日は権現岳まで足を延ばします。下山時、荷あげをする青年小屋のご主人夫妻に会いましたが、この連休もキャンセルが多いと話されていました。天気予報の精度が上がり、山別に3時間ごとに出される予報を活用すれば、キャンセルする必要のなかった人も結構な数が含まれると思います。本来なら十分楽しめる日に人が減り、山が静かになることは個人的には歓迎ですが、「台風接近で天気が悪い」という漠然としたイメージによる風評被害を受ける山小屋はたまったものではありません。天気予報の精度が上がるに従い、人々は不安定な山の天候に完璧な晴天を求めるようになった気がします。
自分だけの意味を持てる山



雨飾山に登りました。まだ二度目ですがホームマウンテンにしたい山です。好きな山の条件は眺望が良く、森が美しく山深いこと、トレイルが歩きやすく、ある程度の標高差があり達成感を得られることです。そして何より静かな山、すなわち人がいない山です。雨飾山は概ね条件を満たしますが、日本百名山だけに最後の条件には合いません。良く寝られるN-VANが快適で、起きた時には、すでにヘッドライトなしにトレイルが目視できる時刻でした。しかし、そこは荷物を最小限にするスピードハイクの強みで、先行する何組かを追い越し山頂では一人だけの静かな時間を持てます。日本海を望む山頂からの独特の眺望と、日本海に近く雪深い秘境感はこの山を特別な存在にします。北アルプスや八ヶ岳が雨のときでも、この山は天候に恵まれることも特徴です。そして自分の生まれた年と同じ標高1,963mは自分だけの意味を持てます。
到達する価値



白山に登りました。信仰の山としてある種の憧れる山でしたが、東京からのアクセスの難しさもあって登る機会がありませんでした。トレイルはよく整備され、別当出合駐車場からスピードハイクなら4時間台で戻ってこられる手頃な山です。しかし、これは現代人が深い山中まで自動車でアクセスできるからです。十分に山深い山麓の白峰温泉からは自動車道でも18km以上の険しい道のりがあり、古の人々はこの気の遠くなるような距離を徒歩で移動し登拝していました。これは、まさに命がけの神仏に近づく行為だったはずです。山頂直下の室堂にある巨大な宿泊施設群も信仰の強さを想像させます。日本のすべての山はラストワンマイルならぬ、最後の1,000m程度を登っているに過ぎず、現代のハイカーは苦行・疲労・危険なしに山頂に到達することができます。かつての宗教的な巡礼としての山と、便利な現代の山ではそこに到達する価値が異なると感じます。
車中泊は高級ホテル以上

最近のマイブームは車中泊です。車中泊は窮屈で我慢のイメージがありますが、N-VANの車内はほぼフルフラットになり、自宅の寝具がそのまま使えます。車中泊の定番は道の駅ですが、私の場合は山登り前泊の登山口なので、まず人が来ることはなく、騒音や明かりとも無縁です。翌朝4時前にはハイカーの車がやって来ることもありますが、前日は日没とともに就寝しているので問題ありません。もともと眠りは浅いので、車中泊の方がむしろ自宅よりよく眠れ、寝覚めも爽快です。人工の光にほとんど頼らず、自然のリズムで生活をするからだと思います。日没や日の出前後の時刻、刻々と山と空が表情を変えていくのを間近に見るのが好きです。とくに印象的なのは雨の日で、屋根をたたく雨音を聞きながら眠りに落ちる贅沢は格別です。自然の音だけの世界と、リアハッチ越しに寝ながら星空を眺めて眠る体験は、高級ホテルでも実現できません。
小さな顧客体験

昨日は住宅設備機器のショールームに行きました。最初に行ったのがミラタップで予約をして行きました。受付のスタッフは客と話し込んでおり、待ちそうなので中に入って見ていました。数分してやって来ると「お客様お名前は?」と言うので名前を告げると少し不機嫌そうに「下の名前は?」と言います。その時間帯に来る客はせいぜい2、3組なのにそのリストさえ把握していないような仕事に人を張り付ける必要はないと思います。次に行ったのはLIXILで、受付の端末に名前や属性、連絡先、何を見に来たかなどを入力します。問題は端末の感度が悪くスムーズに入力できないことです。そして目の前で入力したデータを見ながら、スタッフが「お名前は?」と改めて聞くのも間が抜けています。企業はこうした顧客接点での体験に対してあまりに無頓着だと思います。小さなことですが、細かな積み重ねが企業全体のイメージを形成するはずです。
一物一価時代の価格差

パンクしたN-VANのスタッドレスタイヤをホンダのディーラーで交換しました。ブリヂストンの商用車用スタッドレスW300は、乗用車用のBLIZZAKに比べて安価です。凍結路面性能に違いがありますが、東京を中心に生活していて、氷雪路を毎日走るわけではないので、以前使っていたBLIZZAKとの性能差を感じる機会はありません。10か月で2.4万km走りましたが、摩耗・耐久性は商用車用の方が高い気がします。他方で、安さが際立つというのは買う店次第です。ホンダのディーラーに支払ったスタッドレス4本で46,300円は、例年買っている栃木県の中古車ディーラーに昨年払った24,800円の1.9倍です。しかもホンダディーラーの価格は9月末までの限定価格(多分昨年モデル)です。ホンダの名誉のために書けばカー用品大手で買ってもこの値段です。一物一価の時代にこの価格差は不可解で、栃木県までの交通費と割り切るにも高い気がします。
登山のセーフティーネット


日曜日は西岳、編笠山に行きました。山に行くときに見る「てんきとくらす」は終日Aをつけていますが、下界では軽く雨が降ったためか登る人はわずかです。下山してきた人にテント場にはわずか4張しかなかったと聞き普段は混むので避けている権現岳にも寄ることにしました。曇天ですが時折青空も見える天気で登山には適します。途中で会った山岳医療パトロールの人に聞くと、昨夜の青年小屋は30人のキャンセルがあり、泊まっていたのはこの2名を含む3人だけだったと言います。せっかくの山行だから晴天で山頂からの眺望を楽しみたい気持ちもわかりますが、小屋が用意していた生鮮を含む食材のことを考えると心が痛みます。多くのハイカーは山頂からの眺望が期待できないからと、簡単にキャンセルをしますが、それは山小屋という登山のセーフティーネットを壊す行為だと思います。