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鍛えると傷めるの境界


左の肩こりが治らず整体に行きました。そこで言われたのが「むち打ち」症状です。思い当たる原因は、山道の下りで起こる転倒です。新しい靴でも、スピードが上がるほどグリップを失いやすく、ときには1メートル以上の高さから固い地面に自由落下するその衝撃は大きいはずです。衝撃を何度も受けているとの診断で、鍛えるつもりが、知らないうちに体を傷めつけダメージを蓄積させていたことになります。足に生傷は絶えませんが、目立った痛みのないダメージには気づきにくいものです。人間はわかりやすい痛みや疲労には注意を向けますが、繰り返す衝撃の影響は、自覚しにくいのかもしれません。長く山を楽しむためには、鍛える以上に、壊さない技術、回復させる技術が問われると思います。アスリートは体を壊す限界まで追い込みますが、素人に必要なのは限界に挑むことではなく、ダメージを蓄積させない技術でしょう。

年齢とは別の時間


この夏は例年になく山に登り、運動をしていた学生時代の体形を取り戻しつつあります。学生時代に聞いた音楽、学生時代のような深夜のドライブなど、昔の感覚を呼び覚ますことは、カウンタークロックワイズ研究が示すように、心を高揚させ心身を若返らせると思います。しかし、過去を懐かしむより重要なことは年齢に関係なく未来を持つことだと感じます。いくつになっても、未来に明確な目標やビジョンを持つ人に憧れます。自分にも将来の目標はありますが、切迫感がなく、安楽な生活に流されがちなのは贅沢な悩みです。現役時代は楽をすることが目標でした。しかし、それに近い環境になり始めると安楽はすぐに飽きてしまい、むしろ未来を奪われる恐怖に変わります。日々適当に予定を入れて惰性で過ごすなど自滅行為に思えます。自分を高揚させる明確な未来を持つなら、人は年齢とは別の時間を生きられる気がします。

山が持つ豊かさの全て


今朝は中央アルプスの北端にある二百名山の経ヶ岳に登りました。中央アルプスの主稜線の華やかな高峰群とは異なり、伊那谷から独立峰のように見える里山です。10月の三連休は、標高の高い山では紅葉が見頃を迎え、絶好の秋晴れとなれば有名な山はどこも混雑をします。尾根をたどって登り、途中から山頂へ続く稜線を歩く、権兵衛峠からのルートは、色あせた草木、澄んだ空気、遠くの山並みを楽しむ晩秋の景色を独占できます。予想通りマイナーな山に前泊する人などなく、登山口では南アルプスの日暮れを一人静かに望めます。N-VANのリアクォーターウインドウから入る山の冷気が心地よく、夜空を埋め尽くす無数の星は圧巻です。絶景を求めて人が集まる日こそ、あえて無名の山を選ぶことは、山が本来持つ豊かさの全てを味わうことができると思います。

眠るために山に登る


この夏の登山事情に劇的な変化をもたらしたのは、今や移動する寝室と化したN-VANをベースキャンプにしたことです。山と宿泊をセットで考えるために、登る山と同様に重要なのが登山口の駐車環境です。テントを張るときと同様に、前後方向の傾斜はまだ良いのですが、左右の傾きの少ないパーキングロットの確保が睡眠に影響します。トイレや洗面、飲料水、果ては雨飾山のようにWi-Fi環境まで整う登山口が多いのは有難いです。一番好きな駐車場は眺望のよい塩見岳ですが、フラットな駐車スペースのある、中房温泉、御嶽山、白山、乗鞍もよく寝られます。歩き始める10分前まで寝ていられることは、山登りのパフォーマンスに良い影響を及ぼしているような気がします。それに加えて自分の場合は、人工の光を使わないためか、家よりよく眠れて、眠るために山に登るという逆転現象まで起きています。

原点の山


夏山の華は何と言っても北アルプスです。しかし、東京からのアクセスが遠いことから、これまでは登る機会が限られてきました。今年はN-VANをベースキャンプにした結果、常念岳、蝶ヶ岳、針ノ木岳、北ノ俣岳、餓鬼岳、大天井岳、燕岳と7座を踏破しました。最も思い出深い山は燕岳です。半世紀も前ですが、通っていた中学校は2年生の夏に大半の学生が槍ヶ岳に登る学校行事を行っていました。中房温泉から初日に登った燕岳は、自分の登山の原点と言えます。大半の生徒にとって初の本格登山なのに、いきなり最高峰の槍ヶ岳を目指すあたりに、この学校の良さがあったと思います。今でこそプロのガイドがサポートをしますが、私の時代は大学生がアルバイトで来るような状態で、2人の生徒が滑落しました。70年以上続くこの伝統行事がなければ、スピードハイクに傾斜する今の自分はなかったと思います。

気分まで爽快にする食事


八ヶ岳に来るとキノコ料理が増えます。長野県はキノコ生産が盛んで、買える種類も豊富です。よく作るのはキノコ鍋とキノコ入りカレーで、簡単に作れて作り置きができ、一人の食事に適します。キノコ鍋は最強のデトックス料理だと思っていて、翌日には身体の中の未消化物が一掃されるようなすっきり感があります。医学的な意味で身体に溜まった毒素をキノコが排出するわけではないと思いますが、キノコには食物繊維が多く含まれ、腸内環境を整え、複数のキノコを摂ることで私の場合はその変化が短期的、劇的に現れます。調理が簡単で、翌日には身体の状態が分かりやすく変わるキノコ鍋は、最も身近なデトックスと言えます。手間をかけずに気分まで爽快にする食事は、単なる食の好みを超え、栄養・調理・身体を一度に整えられる合理的な生活習慣だと思います。

贅沢の本質


冬が好きなのは雪景色の美しさと新雪トレイルの気持ちよさもありますが、一番の理由は薪ストーブかもしれません。つい先日まで暑かったのに、山では氷が張る季節を迎えストーブがほしくなる夜もあります。八ヶ岳の家で30年以上使ったフェデラルの薪ストーブを日本製のアグニに交換してもらいました。このストーブを作る株式会社岡本は、創業が1560年の岐阜県最古の企業で、鋳物師の一族は平安時代から続くとされます。フェデラルの3倍の最大出力を誇るだけに、豪快に燃やすというよりは熾火でチョロチョロと炎が漏れる状態で燃やします。炎を見ていると落ち着き、やがて眠くなります。自分を幸せにしてくれるモノを考えたとき、持ち物はN-VANとサウナ、薪ストーブぐらいでいいと感じます。贅沢とは、持っているものの多さを競いがちですが、その本質とは必要なものが少ない状態だと思います。

相手が神様だったから


173億の赤字を出し、もはや再生案件となったジャングリアについて、ひとつ解せないことがあります。1990年代に雨後の筍のごとく現れ、大半が消え、もはやオワコンなのは周知の事実だったはずのテーマパークを、なぜ今になってやりたかったのかです。テーマパーク界の例外的生き残りの片割れであるUSJ出身者という経歴が禍したと思います。例外であったはずのディズニーとUSJの成功を一般化し、しかも人口の少ない地域で二匹目のどじょうを狙ったことが致命傷であり、需要予測を派手に外したことなど、それに比べれば些細なミスです。自然豊かな沖縄まで行って、なぜゴルフ場跡地なのか、なぜ沖縄で恐竜なのか、そんな素朴な質問を誰もできなかったのは、相手が神様だったからでしょう。資金の尽きる時間が迫り、ハウステンボスでは20億円の出資で12年後に666億円を手にしたHISに期待が集まりそうです。

公共交通で行ける3,000m峰


今シーズン登った木曾駒ケ岳と乗鞍岳は山頂の近くまで公共交通でアクセスできます。乗鞍では、バスでアクセスできる最高地点の大雪渓・肩の小屋口が見えてくると、恐れていた最初のバスに抜かれます。2時間かけて登って来たので、山頂には最初に着きたくなります。相手は観光客ですから先行する人々を抜くのは容易く、誰もいない剣ヶ峰に到達します。木曾駒ケ岳ではロープウェイが早く動いてしまうために、山頂はすでに大挙押し寄せた観光客が埋め尽くし少々興ざめです。もちろん、誰もが3,000m峰に立てることは悪い話ではありません。一方で山頂の価値は、人々が目を奪われるほどには高くないと思います。ショートカットした人々は、トレイルの途中に出現する巨石とブナの幽玄な森、清らかな流れと大小の滝を見ることができません。そして、自分の脚力で高度を上げて行く達成感があってこそ、山頂の価値は高まる気がします。

山もビジネスも撤退ライン厳守


土曜日は北アルプスの餓鬼岳に登りました。メインルートの燕岳のさらに北にあるためにあまり注目されず、週末でも静かな山歩きが楽しめます。標高は2,647mですが、白沢登山口は996mしかないので、13.8km、累積標高1,800m、消費カロリー2,531kcalとそれなりの運動になります。標高差と急登、テクニカルなコースのため、多くのハイカーは小屋泊まりですが、日帰りでその先の唐沢岳まで行く猛者もいます。言うまでもなく、山ではセルフレスキューが大原則ですから、一人のときは撤退時刻厳守を決めています。このルートの前半は沢登りのように渡渉を繰り返しながら谷筋を登るのですが、切り立った谷底までの高さが目もくらむほどで、帰路はこのセクションのために集中力と筋力を残しておく必要があります。山岳事故の多くは撤退時刻を守らないことで起きますが、これは山に限らず、ビジネスでも株取引でも撤退ライン厳守こそが身を守ると思います。

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