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異世界への入り口


感動の正体とは実際に遭遇する体験と期待のギャップの大きさだと思います。その点で先日行った鹿沼市の岩戸神社は、最近最も感動した神社です。低山の登山口を探すなかで見つけた神社ですが、鳥居をくぐり拝殿の背後にそびえたつ大神宮岩戸と呼ばれる岩窟を見上げた時は、凄いという言葉しか出ません。年末に行った三重県の花の窟神社(はなのいわや)も巨大な磐座を御神体としますが、より荒々しく自然と一体となる古代祭祀の空気を追体験できます。早朝の参拝は強いエネルギーを感じ、精神が浄化され、直感力が研ぎ澄まされるような気がします。天和元年(1681年)の同じ日に、この里の二人の夢枕に神が現れ「岩戸に宮社を建立すべし」と告げたことが神社の始まりとされます。原初的な神社は聖なる自然と俗世界の結界であり、巨大な磐座の前に立つと人は畏怖するしかなく、異世界への入り口のように見えます。

冬はオフシーズンではない


週末は古民家のある南会津町と桧枝岐村に行きました。明治以来140年ほど風雪に耐えてきた古民家ですが、積もった雪の重みで屋根が湾曲して見えるのは目の錯覚ではなさそうです。一晩に1メートル積る日もあり、今週以降寒波が再び日本列島を覆うことも気になります。雪に閉ざされる生活は春の訪れが待ち遠しいのですが、他方で最も美しい季節は厳冬期だと思います。日本海に近い急峻な山岳地帯に貫かれる日本の地形は良質な雪を降らせ、海外のバックカントリースキーヤーから注目されます。加えて雪国の暮らしこそ、日本らしいエキゾティックな風景だと思います。それはインバウンドに限らず、普段都会に暮らす人々にとっても、日本の生活から失われたかつてのヴァナキュラーな魅力を伝えるはずです。観光は土地の文化、景観、風土の魅力を伝えるメディアであり、冬はオフシーズンではないと感じます。

日常に近い場所で感じる幸せ


パンとケーキを製造販売する茨城県の人気ローカルチェーン、粉とクリームに行きました。一部の識者がタバコ並みに有害と指摘する小麦粉ですが、糖質制限以降パンはなるべく避けるようにしてきました。それでも麻薬的な誘惑を絶てるはずもなく、業務スーパーの食パンをたまに買います。石窯夢工房小山Petit Village店に着いたのは開店時刻の7時半ですが、すでに買い物客が店から出てきます。総菜パンや菓子パンの種類が豊富で、大きく値段が手ごろなために大量買いをして、見ていると客単価は数千円になります。コーヒーが無料で飲めるイートインコーナーが併設され、焼き立てをその場で食べる人も少なくありません。パンの美味しさに、中世の南仏をテーマにした店舗が加わり、ダイレクトに感じる幸せを日常に近い場所で提供します。際立つのは接客の良さで、スタッフのモチベーションこそが企業の実力を示すと感じます。

かつての風呂の方が先進的


石風呂を調べ始めて、風呂(フロ)の原型が室(ムロ)であることを知りました。民俗学の父柳田國男は、「風呂の起源」という文献の中で、フロは多分室(ムロ)と同じ語で、岩屋(窖)のことであった、と述べています。現代人にとっての風呂は湯浴をイメージしますが、本来の風呂は蒸気、熱気浴を意味し、湯浴は湯として区別をしてきました。蒸気浴と湯浴を折衷した銭湯が町場で発達する江戸時代以降、両者は同義語化しますが、現代の風呂が必ずしも進化系とは思えないのは、発汗作用においては蒸気浴の方が有利だからです。軟質で掘削の容易な凝灰岩地帯の大分県では、山肌に直接穴をあける岩窟式石風呂が多く、いかにも原始的に見えますが、入浴後の発汗などを考えると、室を原型とするかつての風呂の方がむしろ先進的に思えます。われわれは手間がかかるという理由だけで貴重な知恵を封印してきたような気がします。

新しいライフスタイル


軽の商用車という世間の目など気にせず自分の感覚だけを信じるなら、自動車はN-VAN一択です。N-VAN以外の車への興味が消え、新型車が出ても目移りすることもありません。もはや車というカテゴリーを超えて、新しいライフスタイルを提示する存在です。小さな車体が大きな可能性を秘めるのは、自分の部屋ごと日本中どこへでも移動できる衝撃です。グーグルが時々案内する、農機しか通れないような小道に入り込むことができ、先日通った徳島県の神山町への近道も恐ろしく狭い林道でしたが、対向車の軽トラックと奇跡的にすれ違えました。眠くなれば十分な寝室でいつでも眠れ、旅先の買い物はすべて荷室が飲み込み、フェリーの乗船を待つ間もゆったりと足を延ばしてくつろげ、隣の列に並ぶポルシェのマカンよりはるかに快適です。優秀な運転席と良好なNVHによりどこまで走っても疲れない車の次が想像できません。

「調う」の次


山口・広島の18か所を振り出しに、大分13か所、愛媛・香川・徳島で5か所の石風呂を見ました。積雪や藪に阻まれ確認できなかった場所も数か所あり、番外編の指宿の砂蒸し風呂を含め徳島港まで3,761kmの長旅になりました。石風呂に入れ込む理由は、サウナに入り過ぎてアドレナリンが分泌されないのか、調わなくなってきたからです。かつてのサウナへの熱狂は冷め、「調う」の次に来るものを探すなかで到達したのが石風呂です。熱源を外して、石からの輻射でじっくり暖めるのは北欧伝統のスモークサウナと同じで、違いは熱源のまわりのサウナストーンを暖めるか、石室ごと暖めるかです。もともと汗をかく体質ですが、汗の出方が尋常ではなく、体が冷めにくく、汗がさっぱりしてシャワーを浴びる必要を感じません。石風呂が治療目的で使われていたことを示す文献が多く、埋もれつつある伝統や祖先の知恵には学ぶべきものが多いと感じます。

贅沢は工夫次第


昨日乗った東九フェリーは、10年前の2月に高知竜馬マラソンに出た時も乗りました。二段ベッドは個室化が進み、ラウンジはよりプライベート感のあるブース席になり、浴室にもバージョンアップが見られます。トラックの運転手不足からモーダルシフトが進むなか、フェリーの収益は物流が中心でしょうから、華やかさはありませんが旅に豪華さは不要だと思います。人は豪華さに魅かれ、豪華客船、豪華列車に憧れますが、それは商業主義に洗脳された証かもしれません。船内の展望浴室はいつも空いていて、大海原を眺めながらの入浴は贅沢ですし、東京湾に入り穏やかな鏡のような海面に反射した月の道を見ながら、窓際席でパソコン仕事をすることも贅沢です。豪華とは付加価値を生むための方便ですが、贅沢は必ずしもお金を必要としません。山頂で飲むインスタントコーヒーと同じで、豪華ではなくても時間を贅沢に使うのは工夫次第でしょう。

用事がなくても乗りたい


石風呂調査のために3,761kmを走り、帰路は徳島から東九フェリーに乗りました。御朱印巡りの次は御船印巡りがブームとかで、昨今は女性やインバウンドも注目していると言います。船内には若い女性のグループが目立ち噂は本当のようです。全長191m、総トン数12,636tの「どうご」は速力22.4ノット(時速41.5㎞)で東京まで18時間10分で運んでくれます。4m未満の車なら運転者込みで30,910円はバリューに感じます。自走すれば高速代と燃料費で2万円しますから、宿泊代を5千円と仮定してわずか6千円で、控えめに言ってコスパ世界最強のクルーズ船の旅をしながら車ごと運んでくれます。とくに浴場が素晴らしく、起きている間はほとんど湯舟につかっていたと言っても過言ではなく、絶妙な揺れのためか無性に眠いのも、普段は短眠の自分には好都合です。オーシャンフロント独占のブース席での食事も非日常感あふれ、用事がなくても乗りたいです。

日本には知らないことがあふれている


昨日は親戚が住職を務める寺がある瀬戸内海の小島に行きました。子供の頃は毎年夏に帰省ならぬ墓参に来ており、いわば心のふるさとです。故郷を持たない東京人にとっても、先祖が眠るこの土地は魂とつながる解放の場所です。凪いだ鏡のような瀬戸内海に、小島を背景に太陽が反射する美しさは、自分の帰るべき場所のように思えます。「旅とは新しい景色を探すことではなく、新しい目を持つことだ」というマルセル・プルーストの言葉が好きですが、故郷は、自分自身をより知ることができる場所かもしれません。世界の動きと離れることでしか、大切なものは見つからない気がします。寺から車で10分ほどの山の頂上には戦時の砲台跡があり、橋でつながる別の小島には今調べている石風呂の跡まであり、日本には知らないことがあふれていると感じます。人々が旅や移動を楽しむのは、帰り着く故郷があってこそでしょう。

自動車旅行のメリット


昨年まで1個20円ほどで売られていたみかんが、今年東京ではその5倍の価格に跳ね上がり今シーズンは買っていませんでした。昨日山口県の周防大島に来ると、直売店で25個ほど入ったネットが500円と手ごろな値段でしたので購入しました。リンゴなどもみかんほどの値上がりではありませんが、それでも手が出にくくなり、自動車で旅行することの醍醐味の一つは産直で買い物ができることです。3か所の直売店で買った2、30個入りのみかんが5ネット、鹿児島で買ったサツマイモや老舗で買った和菓子など、もろもろの買い物によりN-VANの就寝スペースが侵食されています。もう一つの楽しみはローカルスーパーをのぞくことで、必ず東京ではお目にかかれない食品や菓子類があり、持ち運ぶことを考えずに躊躇なく買えることは、自動車旅行最大のメリットかもしれません。

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