料理は自己表現

夏休みを利用して宿の掃除を手伝ってくれた以前の会社の先輩が次の目的地に移動し、ラブラドールと二人だけの日常に戻りました。掃除をして買い物をして日が傾けば焚火をしながらパエリアを作る日々です。新甲子温泉は火が恋しい季節になりました。夕方パエリアを作りながら炎を眺めていると懐かしく暖かい気持ちになります。暑かった東京の夏が少し恋しくもあり、人間は贅沢なものです。

毎晩パエリアを作っているので、コツがつかめてきました。レシピ通りやってうまく行かない場合、ぼくはレシピにとらわれずに色々なパターンを試します。基本的には水分量、火加減、時間の三要素を入れ替えています。武道などで言う守破離です。ぼくはレシピのルールに縛られるのではなく、料理は独創的かつ自己表現の場であるべきだと思います。

人生も同じです。だれかが書いたシナリオの上をトレースするだけの予定調和の人生は幸せにはつながらないと思います。

今朝は宿の玄関に沢ガニが入り込んでいました。阿武隈源流からは標高差が80mほどありますので不思議です。

夏の余韻に浸る

今日も新甲子温泉は冷たい霧雨が降り続いています。白河の街では雨は上がっていますが、標高差が500mあるために車で20分の距離なのに気候が違います。半袖、半ズボンで過ごせる季節は終わりを迎えています。雨が多いと倒木が日常的です。数日前も剣桂に続く宿の前の旧道で倒木が電線にあたりクレーン車が来て伐採をしましたし、宿から阿武隈源流に下る遊歩道も倒木が塞いでいます。

ラブラドールも所在なげに惰眠を貪っています。おそらく那須連山の稜線に上がれば雲を抜けて晴れるのでしょうが、仕事が多く無理をしてまで山に行くモチベーションはありません。まだ夏の余韻に浸れるうちに那須・会津のトレイルツアーに行きたいものです。

夏を惜しむ

今日の新甲子温泉は一日冷たい雨が降り続きました。川の水量が増し、山に入ると至る所に沢ができています。暑さも峠を越えたのでしょうが、結局夏らしい暑さを経験することなく秋になりそうです。今思えば三本槍岳直下にある鏡ヶ沼をラブラドールと訪れた頃が盛夏だったようですが、都心の暑さとは比べようもなく、暑くない夏のまま秋になってしまうのは一抹の寂しさがあります。

自分の足で行く最高の旅

70人用とされる直径90cmの大鍋を使い連日薪によるパエリアを作り、朝晩に大量の米とオリーブオイルを摂取しているにもかかわらず、体重が増えません。極論ですがぼくは適度な運動をしている限り何を食べてもよいと思っています。

例年この季節になると1週間程の休暇を取り旅に出ることが常でした。しかし新甲子温泉で暮らすようになり、切実に旅に出たいと思うことがなくなりました。もちろん興味の対象として、世界には見てみたいものや行ってみたいところはあります。しかし、楽しみとしての旅は自分の足で行くトレッキングが最高だと思います。今のぼくが魅かれる旅は宿から続くトレイルの先にある沼原湿原のブナ原生林であったり、標高1,900m級の会津の山々の稜線をめぐる2、30kmの小旅行です。

50歳になるまで全く運動をしなかったぼくをここまで変えたのはこれらの美しいトレイルです。運動をすると血液中のトリプトファンのレベルが上昇し脳内のセロトニン濃度が上がることが分かっています。人間は本来動くように生まれついた動物であり、これらのトレイルを使い、運動の楽しさを多くの人に知ってもらえる宿にしたいと思います。

雲海に浮かぶ那須連邦

今朝の新甲子温泉は夜明け前から快晴で美しい星空が広がりました。4時半に那須の峠の茶屋を出発して朝日岳、茶臼岳を2時間ほど歩きました。早朝の茶臼岳、朝日岳一帯ではかなりの確率で美しい雲海を見ることができ、雲海に浮かぶ日の出を望むことができます。

一生分のパエリア?

昨日は70人用とされる90cmのパエリアパンで初めてパエリアを作りました。市販されるパエリア鍋としては最大のもので、厨房で洗うこともできませんしフライパンを移動するのも容易ではありません。写真の左に写る17人用52cmの鍋が2,000トンクラスの駆逐艦なら、90cm鍋は64,000トンの戦艦大和といったスケール感です。わずか6人分を作ったために鍋の傾きが影響してご飯の炊きあがりに若干のムラがありますが一応及第点です。この2週間ほどは毎日パエリアを作っていて、この半世紀生きてきたなかで食べたパエリアの量を、超えたのではと思えるほどです。

持続的な幸せ

今朝の新甲子温泉は朝霧に包まれ、東京とは別世界の冷涼な気候です。ここで暮らすようになってからよく幸せについて考えるようになりました。都市に暮らしているときは、美味しいものを食べる、海外旅行に行くといった脳が感じる刹那的なHappyを幸福だと思っていましたが、それは持続性のない空虚な幸せだと思います。

日常のなかにある小さな幸せが連続する状態が幸福だと思います。源流の森で沢音を聞きながらパソコン仕事をする、夜明け前に焚火をしながら星空を見上げる、ラブラドールと朝霧の森を歩く、足元に山菜や可憐な花を見つける、温泉から那須連峰に日が沈むのを眺める、阿武隈源流を見下ろす丘で本を読む、早朝のトレイルを駆け降りる、夕暮れ時に友人と薪のパエリア鍋を囲む、誰もいない展望台から朝焼けを眺める、そんなささやかな幸せが連続することが幸福だと思います。他方、都市生活で見出す幸せの多くはお金で得る断片的な幸せです。

さらに言えば健康であることやお金の心配がないことは重要だと思いますが、必ずしもそれが絶対条件だとは思いません。幸せは自己の内面にあると考える人が増えれば、自然に恵まれた過疎地の未来は必ずしも暗澹たるものではないと思います。

塗り替えられる栄養常識

昨夜は明るい月が昇っているのに、台風一過のためか満天の星空でした。外に椅子を持ち出し、さわやかな夜風に吹かれながら虫の音を聞いていると、夏が来ないままに秋の気配です。今朝の新甲子温泉は気温15度ほどと寒く、5時前に峠の茶屋から出発して茶臼岳を目指すと秋の空気です。今は廃村となった三斗小屋宿跡へのルート調査も兼ねてラブラドールと25kmほどを歩きました。累積標高は1,693m、消費カロリーは1,311Kcalですが、何も糖分を取らなくても水だけでエネルギーに不足はなくこの倍くらいの距離は歩けそうです。糖質依存の栄養学常識が塗り替えられる日は近いと思います。

ビギナーズラックだったのか?

今朝の新甲子温泉は20度ほどと涼しく、明け方の雨も止み日がさしています。標高800mでも雲の上に出て白河が雨でも晴れることがあります。新甲子が雨でも稜線は雲の上で晴れていることもよくあります。天気予報は気休めにもならず天候が刻々と変わるのもここの特徴だと思います。そのためか虹をよく見かけ、今朝も出ていました。

最近は毎日のようにパエリアを作っていますが、日本パエリア協会の中村さんに指導してもらった初回を超えることができません。私の解釈ではパエリアづくりの難しさは2、30分後の鍋の状態を予測して火加減、水加減、米の投入時期を見極めることだと思います。米が炊けないか焦げるかのトレードオフの問題があります。そこに鍋の傾きという要素が加わるのでことはさらに複雑です。

長旅の魅力

明け方の激しい雨があがり、今朝の新甲子温泉は深い霧に包まれています。昨日は同い年の前職の同僚が日本一周の途中に宿泊してくれました。47都道府県に足跡を残す旅のために、宿には昨夜18時半に着き今朝は4時半に出発するあわただしさです。カメラ、スマートフォン、充電器と着替えだけの荷物は驚くほど少なく、長距離トレイルレース並みのストイックさです。旅の魅力はぼくがトレイルレースにはまる理由の一つだと思います。60kmを超えるような長距離レースになるとどこか長旅をする感覚があります。

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