JTBが資本金を23億円から1億円に減資することで税制上の中小企業扱いになると報じられます。節税メリットのある中小企業化はスカイマークや毎日新聞社でも話題になりました。これらの企業が属するのは、需要が衰退する斜陽産業どころか存在価値すら怪しい事業になり始めています。国税庁によると資本金1億円超の大企業は2011年度の24,380社から7年連続して減少し2018年度に18,810社となりました。時代を反映してか、若い世代は大きな組織で高いポジションを目指す生き方から比較的自由です。所詮社畜のトップを目指すだけと冷ややかに見る向きもあり、起業を考える人は増えたと思います。大企業の持つ安定性、高い生涯賃金、世間体といった分かりやすい外部基準に幸せを感じるのは本能ですが、落とし穴もあります。人は自分の世界観のなかでしか生きられず、気づかぬうちに他人との比較でしか自分の居場所を確認できなくなります。いつかはポジションを失うピークアウト型の人生が虚しさを伴うのはそのためでしょう。百寿者の心理的特徴に年を重ねるほど幸福感を高める老年的超越があります。物質的、刹那的な快感から離れ、非合理な自分なりの世界観に移っていくことが第二の人生なのでしょう。
不遇でさえ尊厳に変わる
グランドスラムでの優勝回数を18にしたジョコビッチは世界ランキングで歴代最長のロジャー・フェデラーが持つ310週を抜いて1位通算在位記録を達成しました。全豪オープンでは選手の隔離環境に関して要望をまとめたリストを主催者に提出したことで各所からの批判を招きました。「メディアにより事態がエスカレートした」「気持ちの面で過去最高に過酷な大会の一つだったと思う」と本音を明かします。トップに君臨し続けるには逆境を乗り越える強さが必要です。33歳とは言えトップアスリートの世界は体力との戦いでもあり、「老いたとは思っていないが、10年前とは違う。ベストなパフォーマンスを出すにはより賢くなるべきだ」と語ります。いかなるスポーツであれ世界最高峰の試合に魅せられるのは極限状態での葛藤に生き様を見るからだと思います。限界でも常に辛い選択肢を選ぶ強靭な精神力を支えるものこそ生きる意味でしょう。トレイルランニングの最高峰レースUTMBで58歳、59歳で二連覇をしたマルコ・オルモは走ることは不遇だった人生へのリベンジだと語ります。人生という冒険を乗り切ることが生きる意味なら不遇でさえ尊厳に変わるのでしょう。
糖質制限がもたらす偉業
大坂なおみに続きジョコビッチが全豪オープン9度目の優勝、2度目の3連覇という偉業を達成しました。ジョコビッチは小麦などに含まれるグルテンに対する自己免疫疾患であるセリアック病を患っており、彼の著書はカーボローディングなどの迷信を信じていたスポーツ界に衝撃を与えました。テレビで試合を見た栄養学者が倒れた様子を見てこの症状が喘息ではなく食べ物が原因の呼吸困難だと気づいたのがきっかけです。検査の結果グルテン不耐性が判明し、2010年にグルテンフリーの食事を取り入れ翌年からの大躍進が始まりました。効果は短期間で現れ、不調が改善しただけではなくケトン体を使うことで脳と体の反応速度が上がり、早く動くことで守備範囲が広がりました。解糖系からケトン体系燃料に切り替えるとATP産出が25%高くなり燃費効率が改善され、ケトン体そのものには抗酸化作用や抗炎症作用があり血糖値も上げません。遺伝子組み換えが小麦を、グルテン含有量が人の耐性限度を超え、手っ取り早く快楽を得られるドラッグ食材に変えました。産業が健康を破壊する以前の人間本来の食べ方に戻るべきだと思います。
寒い方が健康的
花粉の飛ぶ季節となりましたが、結局この冬我が家では一枚のホットカーペット以外に暖房器具を使いませんでした。地下住戸の気温が年間を通じて安定しているというのは本当で、殺人的な東京の夏の暑さも扇風機があれば無理なく過ごせます。年間を通じてエアコンを使ったのは2、3度で、電気代は以前の3分の1になりました。扇風機で空気を循環させれば洗濯物の室内干しにも問題がなく吹き抜けがあれば採光にも不満はありません。戸外からの視線が全く気にならず、上層階の住戸と比べ地下住戸の価格が割安に設定されることも大きなメリットで、デメリットを見出すことが難しいほどです。環境に負荷をかけない暮らしは同時に自分の体への影響も和らげます。冬の暖房が暑すぎ、夏の冷房で体が冷え切る商業施設の不快感に比べ、多少厚着をして足元だけ暖めた方が健康的です。低体温は万病の元とされ、エアコンを使って生理的な快適さを得ることは体に良さそうに見えてむしろ逆効果だと思います。低体温の原因は筋肉量の低下であり、恒温動物である人間は、寒いと体温調節中枢が血流を増やし深部体温を上げ内蔵脂肪を燃やすのでスリムな体型維持にもつながり健康的です。
ポストバブルからポストコロナへ
社会人になって数年後にバブル経済がピークに達しキャリアの多くを「ポストバブル」という重苦しい時間とともに過ごしました。ホテル業界に関して言えばその総括がないままに失われた20年が過ぎ、突然アパホテルが3万円で売られるインバウンド・オリンピックバブルが起こりました。そしてこれから、ポストコロナの時代が始まります。ポストバブルに必要だったのは収益構造の抜本的見直し、言い換えると事業目線の転換でした。これに必要な資質は果敢にリスクを取る高い創造意欲だと思います。アントレプレナーシップを失ったとき企業の終焉が始まり、人の生命力も衰え始め、低迷する企業の大半はこの資質に欠けます。ポストバブルでは消費意識の変化という需要側からのイノベーションが起きましたが、ポストコロナは経営資源の調達方法が変わる供給側からのイノベーションが始まると思います。思考様式や意思決定の構造が惰性化している組織はその体力を奪われるはずです。企業がイノベーティブに変わっていく時期は不況期で、必死に事業を成立させる状況に至って、従来とは違う事業家が現れ事業領域と市場を革新するのでしょう。
接待は不幸の始まり?
安倍ロス、森ロスに陥ったマスメディアが次に狙うのは菅さんの息子の接待問題と自民党を離党した議員の接待飲食店問題でしょう。コロナ禍で接待需要は激減し高級食材のだぶつきが話題になります。高そうな店に連れて行ってもらい美味しいものをたくさん食べられ無邪気に喜ぶ人は少なくないでしょう。接待や夜の付き合いをビジネスと切り離すことはできませんが、他方でユニクロの柳井さんのように、夜の付き合いをほとんどせずに仕事が終わると真っすぐに帰宅して成果を出す人もいます。村八分を恐れる日本人はトイレから残業から飲み会まで付き合いを尊びますが、自分の生きる時間を誰かに支配されることは不幸の始まりだと思います。接待されて自分のお金を使わないとしても栄養過多でその分好きなものを食べる分量を減らさなくてはなりませんし、二次会三次会の無理が祟り体調を崩す人もかなりの数にのぼります。最終的な幸せが健康に生きることなら、その場限りの楽しみや打算による付き合いをすることで失うものは多く、そのジレンマは豊かな飽食時代ならではだと思います。
誰も信じない
コーヒーやチョコレートの健康効果が喧伝されて久しいですが、にわかに言われ始めた健康習慣は真偽の定かでないものが少なくありません。納豆が優れた食品であることは間違いなくても、付いてくるタレを使うと健康効果は帳消しになりそうです。膝の痛みにはコンドロイチン、疲労回復にはタウリンといった刷り込まれた知識も浪費の原因です。医者の言うことを信じる日本では一生治らないと思い込み自ら生涯顧客になりますが、これらの迷信も度々覆されます。ワイドショーが垂れ流す健康情報は嘘が多過ぎて放送が禁じられるようになりましたが、起床後すぐにお湯を飲むなど一見理にかなった習慣も適切とは限りません。体調を崩すと藁をも掴む気持ちになりますが、特効薬かのような誤解を意図的に与えるメディアは確信犯です。断食や運動習慣は現代人に必要ですが、状況によっては体調を崩す危険をはらんでいます。日本が世界最大の薬消費国なのは体を機械のようにみなし自然治癒力を信じないからでしょう。人体に一般法則はあてはまらず、自分の体が発する声に耳を傾け自分なりの方法で健康を維持するしかないと思います。
満たされる虚しさ
何年も不調を抱えたことはないのですが、強いて言えば眠りが浅いことが悩みです。就寝後4、5時間するとちょっとした音や明かりで目が覚めてしまい、目覚まし時計を使う必要がなくなりました。人体は一人一人がユニークな存在で、7時間睡眠が最も長生きといった画一的な迷信は信じないのですが、深く眠りたいときは睡眠負債を増やすために夜更しをします。眠りに対して体を飢餓状態に置くと普段より長く気持ちよく眠れ、不眠症を訴える人の多くが自分は不眠症だと思い込む眠り過ぎだと思います。食べ過ぎの解消に断食が適すのは、体を飢えさせることで食事に対して繊細になり少量の食事に満足するのと似ています。睡眠負債があるから快眠でき、空腹状態だから食事が美味しいように、人間の体が進化の過程で身に付けた美徳は、満たされることなく欠乏状態において体調がベストになる性質だと思います。一方で満たされることに虚しさがつきまとうのは、欠乏への恐れから満腹状態を続けることで代謝が正常に行われず免疫力も低下するからでしょう。
平凡でささやかな日常
一年前の今頃はダイヤモンド・プリンセス船内における集団感染騒動の渦中で13人が死亡する感染事故となりました。感染拡大が収まらないアメリカでは昨年12月時点でホテルの空室累計が10億室を超え業界は苦境に追い込まれました。成長分野と見込まれていた観光産業は世界的に打撃を受け、旅行者数が2019年の水準に戻るには4年程度かかると予測されます。リタイア層に最も人気のある海外旅行に行けなくなり、感染を恐れて外出が億劫になれば生きる気力まで失います。一方で、元気なうちに世界を回りたいと急かされるように旅行に出るトレンドにも疑問を感じます。新しい消費を楽しみ様々なものに挑戦する非日常的な行為に脳は幸福を感じますが、問題は消費を礼賛することでしか充実感を味わえなくなることです。海外旅行が退屈な日常の代償行為なら満たされることはなく、刹那的快楽を求め非日常を人生の目的に置くのは無理があると思います。人生の目標が定まれば平凡でささやかな日常に幸せを見出すことができるのでしょう。
脳の暴走を防ぐ最低限の暮らし
一人で過ごすときは一日一食ですが家族といるときの朝食は固形物を摂らず味噌汁のスープだけにします。一見味気ないように見えて具材が入らない味噌汁は味覚に集中でき複雑な味を感じ、食べる喜びはむしろ豊かになります。何事においてもストイックさが魅力を放つのは物や情報が少なくなることで五感が研ぎ澄まされるからだと思います。貧しい時代の豊かさは欠乏が満たされる快ですが、物があふれる時代の豊かさは内面と向き合う静けさのなかにあるのでしょう。大半の中毒症状がそうであるように食べれば食べるほど食べたくなる過剰摂取のサイクルを止められなくなります。問題は体が欲求していないのに脳は食欲を感じるアンバランスにあり、くつろいだ呼吸を意識するだけでも冷静になり食欲は薄らいでいきます。生物が脳を獲得したのは5億年ほど前で進化の課程の8割から9割を脳のない状態で過ごしたために、他の臓器などお構い無しに脳は自らの欲求だけを満たそうとします。脳の暴走を防ぐには無用な欲望と執着が起きない最低限で暮らし無駄に感情を動かされないことだと思います。