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希望は路上にある?

米アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞を受賞した話題作「ノマドランド」は社会の周縁部に取り残された人々を描く、ドキュメンタリーとフィクションの境界のない異色作です。仕事と家と夫を失った未来に行き場のない主人公を描きながら、ある種の憧れを観客に抱かせます。中産階級の消費主義と自然と触れ合う流浪の暮らしの対比表現を使いながら、Amazonの倉庫で過酷に働くワーキャンパーのリアルは、格差批判ではなく希望を示しているように見えます。ヴァンとコミュニティと自然以外を捨て、地球とのつながりを感じながら自分をそぎ落としていく生き方は清々しさを与えます。出演キャストに実在のノマドを使い、ノーメイクでマジックアワーの自然光撮影を多用する手法も独特な世界観を作ります。北京生まれの監督クロエ・ジャオの手柄を宣伝に使おうとした中共は、彼女が中国での生活は檻のようで事実は何も知らされていなかったと語ったために上映を取り止めたことも話題になりました。65歳以降働くことなしに生活できる米国人が17%という現実に答えを見出すなら、歳を重ねるほど土に近づく生き方なのでしょう。

心を奪う執着の匂い

緊急事態宣言の4都府県では生活必需以外の不要不急の営業自粛が広がりその損失は7,000億から2兆円と試算されます。衆参3選挙の与党全敗は感染を止められないことへの批判票に見えますが、一年の猶予がありながら重症者病棟の確保を怠り記者会見ばかりする自治体の責任が問われるべきだと思います。行楽シーズンの消費制限に良い面を見出すなら、行き過ぎた快楽偏重の生活を疑う機会を提供することでしょう。売り手は必需品を、高価格設定が可能な必欲品に置き換えることに腐心します。マーケティング手法の裏の本質は、脳の性癖や自己顕示欲、錯覚、心理的圧力などの巧妙な手段による騙しの技術です。消費者は無駄に多く買い、食品ロスは国民一人あたり年間48.6kg、家庭からの排出も22.5kgというおぞましい食品廃棄量です。それを問題視しないのは程度の違いこそあれ皆が手を染める共犯関係にあるからです。気晴らしの快楽は必要でも、健康を害するほどに中毒や依存が常態化する社会は問題です。必需品で生活する限り中毒や執着は起こらず、心を奪う執着の匂いを嗅ぎ分けることが健全な生活を送る上で必要でしょう。

最も簡単なダイエット法

国内最大のトレランイベントUTMFが開催されるはずだった週末に緊急事態宣言が始まりました。山に入ることの清々しさは身の丈の生活を強いられることにあると思います。山では自分が背負える範囲の荷物で生活をするために温かい一杯のコーヒーが贅沢になります。一方下界に戻ると等身大を超える野放図な生活が可能になり、人工的な誘惑でしか幸せを感じられない人はそれを豊かさと感じます。家庭には業務用並の巨大な冷蔵庫が入り、人は冷蔵庫の容量にあわせて食べるようになります。冷蔵庫に余裕があれば、あれもこれもとついでに余計な買い物をし、その全ては胃かゴミ箱に行きます。日本の製造業がJIT生産システムにより圧倒的に強かった頃、日本語翻訳を17年間禁じられたTOC理論はボトルネック工程を最大限に活用することであらゆるプロセスの生産性を高めるマネジメント理論です。これを逆に利用するなら冷蔵庫を小さくしてボトルネック工程を絞れば自ずと食べる量が減り、簡単にダイエットできます。先祖を2、3代も遡れば冷蔵庫のない生活は当たり前で肥満する人もいなかったはずです。

執着と中毒を絶ち切るのは簡単

コロナ禍ならぬコムロ禍と呼ばれる皇室問題は親戚3人の相次ぐ自死など火曜サスペンス劇場の様相を呈してきました。サスペンスドラマの多くが描く金への執着がもたらす惨禍は、一般人にも無縁ではありません。金のない不幸を逃れようとするあまり、人は金に執着する不幸の罠に気づきません。欲望を限りなく増殖させ執着を生み出せば、やがてそれは憎悪と結びつきます。生きる上で必要な欲は人生の牽引力になる反面、終わりなき執着が自らを破滅に導き、向上心と屈折した貧しさはときに紙一重です。多くの宗教由来の慣習に断食が含まれるのは、最も身近な執着が食べ物だからだと思います。食べ物への執着が薄れると物事への執着も薄れやがて心は浄化されます。一方で、プライドや見栄、虚栄心のために消費をするならその執着は人生を支配するのでしょう。心の執着と体の中毒を絶ち切ることは一見難しそうに見えて、実は簡単だと思います。不要なものを捨て執着と中毒の対象になりそうなものに近づかないだけです。ヒエラルキーを意識させる消費や血糖値を上げる食品を遠ざけ、いつも控えめで感謝を心がければ心身は健康になるのでしょう。

ガムが食欲センサー?

ステイホームにより調理家電の売上が伸びた反面、会社に行く機会が減りシェーバーの売上は13%低下したと言います。不景気になると最初に節約のターゲットになるのは背広ですが、身なりがだらしなくなると老けて見えます。多くの場合、人は若々しくいるための消費より、生活を堕落させて不健康になることにお金を使うようになります。効率よく売るためには消費者を中毒にさせその依存性を利用することが効果的だからです。過食の健康リスクが過小評価され、美食による快楽が優先されるのは健康な時だけです。健康に良いとされる運動もやり過ぎれば体を壊すように、生命維持に必要な食欲も正常な制御が効かなくなると体を蝕みます。食欲の多くは脳が低血糖を警告するために生じ、大量にインスリンを分泌する生活を続けていると、栄養素を求める本来の食欲との間にタイムラグが生じ曖昧な食欲に支配されます。どれほど自分がお腹を空かせているかを測るセンサーはガムだと思います。体が飢餓状態になるとあらゆる栄養素を吸収しようとするために、ガムの味は短い時間で無くなります。過食を防ぐ秘訣は自分の食欲を疑うことかもしれません。

持つことでは幸せになれない

世界5大モーターショーの一つ東京モーターショーの開催中止が伝えられます。幕張からビッグサイトに戻り順調に入場者数が伸びていたところに水を差された格好で、成長分野と目されていたMICEやIRなどの集客ビジネスにもコロナ禍の暗雲が立ち込めます。EV化やカーシェアリングに加えて半導体不足など日本の基幹産業を取り巻く環境には逆風が続きますが、最大のリスクは豊かさの象徴としての自動車が憧れの対象でなくなったことでしょう。バブル経済期以前は大衆車ですら欲望の対象で「いつかはクラウン」というCMが成立しましたが、そのクラウンでさえ存続が怪しくなりました。今の時代にかつての車ほどのインパクトで消費欲を掻き立てるものはないと思います。冷静に考えると人は持つことでは決して豊かにも幸せにもなれないと思います。それは高速道路でのマナーの悪さが高級車に目立つことでも分かります。持つことで執着を増やしヘドニック・トレッドミルと呼ばれる快楽順応の罠にはまると、人の目ばかりが気になり偽りの幸せに合わせて自分を演じることになります。

中毒から離れる正常な食欲

時々サウナに行くとアメリカほど肥満が深刻でないとされる日本でも食べ過ぎが蔓延していることが分かります。入って来るなり肩で息をするように荒い呼吸をしている人は例外なく肥満しています。以前は体重が今より20kg重かったのですが、普段から20kgの荷物を背負い生活していると思うとその負荷は大変なものです。山にスピードハイクに行くときの荷物は5kgほどで、テント泊の縦走に行くとできもせいぜい12、3kgですから、山に慣れた人でないと20kgもの荷物を背負って山に入ることはできません。その余計な20kgの負荷を心臓と膝が一手に引き受けていたので膝を壊すのも道理です。普段から汗かきでしたが、今は軽い運動なら心臓はゆるゆると回っているだけですから汗をかくこともなくなりました。人間の寿命の心拍20億回説を信じるなら心臓への負荷は下げるべきでしょう。運動で痩せることは難しく、食事の回数を減らすことで狂気の食欲に正気を取り戻させることが効果的だと思います。一日二食、一食と食事を減らしていくと不思議と無闇におなかが空かなくなり、これが中毒のサイクルから離れた正常な食欲だと分かります。

濃密よりは希薄がよい?

英国にいる娘が珍しく連絡をしてきました。誰でも悩み事を抱えますが、その多くは人間関係に起因します。人間関係を選べない閉鎖空間は会社組織に限らず、ママ友やFacebook友達の間でさえときにはトラブルが殺人事件に発展します。友達が多いほど、人間関係が濃いほど幸せという思い込みと、仲間はずれにされたくない本能的恐怖が日本人の我慢の元凶だと思います。人間関係の豊かさはセーフティネットになり得る反面、人間関係の重要さが強調され過ぎた結果、大脳新皮質に支配され自分の本能や感性を抑圧して人間関係を維持しようとします。嫌な人間関係を続けていると自分に嘘をつき心が衰弱していきます。ストレスを溜めないためには抑圧から開放される鈍感さと、希薄な人間関係を受け入れることが重要だと思います。人が人間関係で病むのは関係が希薄だからではなく、濃密過ぎるために過剰な介入や依存、支配がストレスになるからです。深く濃密な付き合いはいずれ時間が経てば破綻することが多く、適正な距離を保ち付き合う割り切りも必要でそれは身近な家族関係であっても同じでしょう。

ブランディが人類を救う?

コロナ禍のスペインでは夜間外出禁止令のために夕食時間が早まり、ブランチならぬドランチ(Drunch)が注目されていると言います。遅めのランチと早めのディナーを合わせた食事が、健康ブームを受けてフランスで始まったのが2009年とされます。本来21時頃から始まる夕食を21時に終わらせるための苦肉の策ですが、ブランチとドランチを統合した「ブランディ?」の一日一食の間欠的断食は健康増進につながると思います。あらゆる動物実験で食事を減らすことが老化を防ぎ個体を長生きさせ、間欠的断食が安全で驚くほど効果的であることを多くの研究が実証しています。間欠的断食でインスリン分泌の少ない時間を延ばし、高強度の運動を組み合わせることで体脂肪減少を加速化させ健康維持につながります。週末は午前中に何も食べず小金井公園まで33km歩き、ここまでは良かったのですが昼食後に食べた鯛焼きにより2時間後にはインスリンの大量分泌による低血糖状態でめまいが始まりました。人体は精密機械のように正確に反応することで恒常性を維持しており、大切に扱うことを警告していると思います。

先進的だった江戸の知恵

昨日は自宅の近所を流れる玉川上水を遡り小金井公園まで歩きました。朝起きて天気を見てから出かけることができ午前中に戻れるご近所徒歩旅行の魅力はお金がかからない手軽さです。往復33kmのマイクロツーリズムは、歩くだけですので体への負荷もなく日頃の運動不足を解消するのに最適です。美しい木々がロンドンあたりの公園を思わせる小金井公園は都立公園最大の80.2haの面積があり、よく行く駒沢オリンピック公園のほぼ倍の規模です。ラブラドールも公園で遊べることを知っているらしくぐんぐんと先頭を行きます。この散歩道の楽しさは武蔵野の雑木林を行くところにあります。江戸の町に飲料水を供給するために作られた玉川上水は、江戸時代以前は草原だった武蔵野台地で大規模な新田開発が相次ぎ広大な農村地帯を誕生させました。農地の肥料として使う腐葉土を確保するために、コナラやクヌギなどを植えて林が作られ、これが武蔵野の雑木林と言われます。物欲まみれの現代に流行るSDGsより、江戸時代の知恵ははるかに理にかない先進的だったのでしょう。

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