激しい地上戦が行われた那覇近郊には多くの戦跡があります。しかし新都心として再開発された安里五二高地(シュガーローフ)のように、案内板がなければそこが日米激突の最前線であったことを示すものはありません。この小さな丘が1週間にわたり米軍を撃退し続けたことは驚きです。GHQによるウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムによって、われわれは勇猛な先祖の話を伝承できていません。昨日は映画ハクソー・リッジで有名な前田高地(浦添城址)とその近くにある嘉数野戦病院壕跡に行きました。国道330号線拡張工事により、草木に覆われた金網のなかが病院壕跡であることを示すものはありません。近くには住民の避難壕として使われていたチヂフチャーガマなどがひっそりとたたずみます。ペリリューでもサイパンでも未だに機銃弾や戦闘車両、航空機の残骸が放置され戦争を生々しく伝えますが、日本では戦争の痕跡が消されそこから学ぼうとしません。戦争を語らず、祖先の苦労も知らずに平和が永久に続くとは思いません。
食欲は自分を欺く
昨日行った瀬長島は、那覇空港に隣接して海水浴場や温泉があります。便数が間引かれているようで着陸する飛行機は多くありません。夜は国際通りを歩きましたが、週末とあって久しぶりに活気を取り戻していて多少安心しました。特定のエリアに人が集まっている可能性もあり、中心部を離れると刺身三点盛り100円の看板を出しながら開店休業状態の店も見かけます。那覇の魅力は南国を思わせる鳥や植生に留まらず、どこか東南アジア的な猥雑さの雑踏で、日没以降も半そで半ズボンで歩ける気候が気分を盛り上げます。公設市場はプレハブになりましたが、昔ながらの商店街は価格が庶民的で、東京では見かけない郷土料理の総菜を見つける楽しみがあります。那覇に限らず最近外食に気が進まないのは、アウェイの環境で食べると食事に集中できないからです。嗅覚、視覚、聴覚、テキスト情報などにより刺激される食欲は自分を欺いていて、雑音が増えると自分の身体の欲求に忠実に食べることが難しくなると思います。
歴史の教訓を生かす時
中心部から那覇基地の滑走路まで直線距離なら2.数kmの那覇は、戦闘機を最も見る街です。ウクライナ情勢への警戒のためか日中はF15が繰り返し飛行し、夜になっても爆音を響かせます。戦争を知らない多くの日本人は、戦争が起こることを想像できませんが、起こるはずのないことが起こるのが今の時代だと思います。オーストリア・ハンガリー帝国の帝位継承者が暗殺されたとき、世界が戦禍に覆われると考えた人はいなかったでしょう。第二次世界大戦で確定した国境線の現状変更を狙う中国が侵攻し、北朝鮮が南下すれば、インドは中国国境に向かいミリタリーバランスの歪が大戦にならないとは言えません。プーチンが戦術核の使用と原発攻撃を明言したように地球に安全な場所はなくなります。かつてフランクリン・ルーズベルトは、世界的な事件は偶然起こるのではなく前もって仕組まれていた、と言いました。戦争と疫病が繰り返されてきた近代以降の歴史の教訓を生かし、物質文明を発展させる上で犠牲にしてきた調和に立ち返る時だと思います。
500円で体験する食文化
南国らしい鳥の声で目覚め日中は半そでで過ごせる那覇は好きな街です。ホテルから半径1km圏内で暮らすように滞在する生活観光にとって、地図なしで歩け変化に富む街は最適です。日帰りも含めてかなりの回数来ましたが、来るたびに那覇の中心部は野放図な商業主義の蔓延により醜いマンションやホテル、ファンシーな商店が街並みという文化を破壊し、南国らしい植生を含めてエキゾチシズムが失われていくように見えます。昨年よりも営業する商店が減り、風情のあった沖縄料理の店はPCRセンターになりました。長期滞在で困るのが食事で、キャンプ用のバーナーは持って来ていますが調理ができる環境ではなく専ら総菜を買います。どことなく東南アジアの市場を思わせる地場スーパーのフレッシュプラザユニオンや、昭和の雰囲気を残す太平通り商店街が好きで地元の人の食生活を想像します。国際通りから離れるほどディープかつ価格が安くなり、写真の総菜とお弁当は3点で500円ながら沖縄の食文化を体験できます。
コロナ禍唯一の贈り物
花粉症を避けるために、期待したほどには温暖ではない那覇に来ました。くしゃみがひどく肋骨が折れそうな程で常に頭がぼんやりするためにこの5年ほど那覇かハノイにいます。大気汚染や抗生物質投与が花粉症の原因とされ、腸内環境の悪化による自己免疫疾患の対策は無数にあり、その市場規模は少なく見積もっても1,000億円以上とされます。有効な治療法もあるようですが、抗ヒスタミン剤の副作用は多岐にわたり、なるべく自然な方法で治したいと思います。花粉症の始まる前に口呼吸で花粉を取り込む免疫寛容や、日光浴によるビタミンD合成、漬物による乳酸菌やゴボウによる水溶性食物繊維のフラクトオリゴ糖摂取などが有効とされます。酪酸菌の働きを活性化する菊芋も効果が期待でき、この時期の我が家の食卓に菊芋は欠かせません。青山のファーマーズマーケットで500円する菊芋は、旅館のある福島県西郷村なら1.5倍ほど入って100円で買えます。どこにいても仕事ができる時代が一気に到来したことはコロナ禍唯一の贈り物でしょう。
住めば都ではない
英国にいる娘とシェアホームをする友人が、もらったカップケーキを食べて痙攣を起こして病院に行ったと言います。大学のクラブ活動で普通に出されたものですが、ドラッグの類が入っていたようで、海外では日本人の想定の上を行くリスクに備える必要があります。おまけに悪名高き英国の医療体制は本当で、救急なのに5時間も待たされたそうです。娘の大学では教員のストライキで授業がなくなるなど、海外は住めば都ではなさそうです。医療体制や治安の良さは日本の美点ですが、どこでもきれいな水が手に入り、世界的にも稀有な健康食品がこれほど安価に入手できる国はないと思います。湯豆腐や納豆は調理の手間さえなく、ご飯と漬物に味噌汁があれば幸せです。幸せというのは厄介な感情で、そんな日本にいてもさらなる幸せの幻想を追い、中毒と執着が人を不幸にします。ウクライナの悲劇を見るまでもなく、平和な日本に住めるだけで幸せですが、終わりなき欲望を満たすために人はさまようのでしょう。
無意味な実需
ズームでの会議が主流のポストコロナ社会では出張が半減するとされます。出張ついでに旅行を楽しむトレンドは欧米などで盛んでしたが、米国では出張の90%が減少したとの調査もあります。その流れを加速する判決が昨年末に高松地裁で出ました。2017年6月に香川県議6人が行った欧州視察を巡り、8泊9日分の旅費600万円強の全額返還を求めたものです。政務活動費の情報公開度3年連続全国ワースト2位の香川県議会ですが、内部告発があったのか、FNNが勝手に同行して出張の一部始終を記録し全国放映したことが決定打になりました。慣例的に行われた視察に名を借りた慰安旅行が氷山の一角であることは明らかで、ビジネスクラスで四つ星ホテルに泊まった割にはドイツの地熱発電所に1時間半、スイスの観光局に1時間、イタリアのパルマ市庁舎を30分訪れただけで昼間からビールを飲み、旅行会社が作成したコピペだらけの視察報告書も問題になりました。予算消化のための無意味な視察でも業界を潤した実需と思うと少し複雑な気がします。
たどり着けない真実
少なくないFBFが当事者に近いウクライナ問題について語る資格はありません。確かなのは背景が複雑に重層化し単純に善悪で語るのが難しいこと、国の枠組みを超えた意図が働いていること、われわれは最後まで真実にたどり着けないことでしょう。メディアが伝えることより深層に問題の本質があると気づくきっかけを与えたことは救いかもしれません。大胆な仮説抜きに今の国際情勢を見ることはできず、功利主義と目先の快楽が蔓延する退廃しきったこの国で、われわれの思考を固着させてきた常識や歴史に疑問を持つことが平和な生活を守るための第一歩だと思います。物事を極端に単純化したポリティカル・コレクトネスを無批判に受け入れる人は知識人を自負する人のなかにも少なくありません。批判にさらされることを避け、大半の人は踏み込んだ政治的意見を表明しませんが、資本と政治とメディアが利己的に結託した暗い未来を防ぐには、娯楽と化したニュースを眺めるのではなく、誰もが深く学び思考力を高める必要があると思います。
住宅建材界のユニクロ
昨日は南青山にあるサンワカンパニー のショールームに行きました。販売代理店や中間業者を介さない直接販売でもたらした、スタイリッシュなデザインと価格の透明性、驚くほどの安さは住宅建材界のユニクロです。今の家でもこの製品を使っていますが、これまでの価格は何だったのかと思わせます。建材の卸売販売から始まり、製造から小売りまでを一貫して手掛ける業界の破壊者は価格の透明性という革命を起こしました。デザイン性の高い商品の自社開発、EC販売により、HISが海外旅行を身近にし、SPAがファストファッションを生み出したのと同様のインパクトを市場に与えます。息子には継がせないと公言していた創業者が、伊藤忠商事にいた現社長に跡を託したのは、肝臓がんで急逝する3日前でした。東証マザーズ上場企業で最年少となった二代目はグローバル企業に舵を切り、多くの社員が去ったと言います。日本企業初となるミラノサローネでの受賞など、デザイン性の高い空間を多くの人が楽しめるトレンドをこれから生み出していくのでしょう。
愛国心を嘲笑する退廃
国際的に承認された国境線の変更は国際秩序を破壊する侵略行為でありその責任はロシアにあります。かつては1,800余基の核弾頭とICBMを持ち、今でも100万丁のセミオートマチックライフルが家庭に眠る重武装国家相手の戦いは、名目GDPで韓国と変わらないロシアを消耗させるとの観測もありましたが、電撃的侵攻はウクライナ全土を制圧してしまいました。長期制裁に慣れている独裁政権は、中間選挙で大敗必死のバイデンとガス供給の4割、原油供給の2割をロシアに依存するヨーロッパの弱腰を見越し、一人勝ちした格好です。恐ろしい国々に囲まれた日本の最大の危機は、社長になること以外にたいしたビジョンもないサラリーマンのような人が首相をしていることかもしれません。われわれは国家によって生きていますが、国家の基礎は領土です。島国ゆえに国境線に鈍感で愛国心を嘲笑する退廃が支配する日本に必要なのは、1万km離れたフォークランドに機動部隊を送り領土を奪還したかつての英国のような気概でしょう。