仕事にも転地療法


旧前田侯爵邸のある駒場公園内で営業する、BUNDAN COFFEE & BEERに行きました。ひと気のない日本近代文学館の1階にひっそりとたたずむ、隠れ家カフェです。「日本サウナ史」の著者でもある草彅洋平氏の個人コレクションとされる書籍が壁一面に並びますが、雑多な内容で特段テーマ性やその人柄を感じることはできません。サラリーマン時代から仕事を始めることが苦手で、仕事にも転地療法が必要だと思います。パソコン一台をもって家から離れると、やっと仕事をする気になるのですが、フリーWi-Fiが災いしてAIとのチャットを始めてしまいます。この店を目的に来ない限りたどり着かないロケーションにも関わらず、9時半の開店からしばらくすると大半の席が埋まります。結局目的の仕事ははかどらなかったのですが、全身の力が抜けていくような静寂とある種の懐かしさの漂う空間に身を置くと、様々なインスピレーションを受けることは確かです。

美容効果ナンバーワン


西麻布のサウナ「アダムアンドイブ」に行きました。サウナ愛好家の間で聖地とされる老舗の一つです。カラフルで特異な形状をした外観とは裏腹に、内部はこぢんまりとしており自分の店といった愛着が持てそうです。場所柄入れ墨を禁じていないため、全身に入った人を見かけることはこの店ならではです。浴槽にサウナパンツをはいて入ることや、館内着がガウンなのもこの店の特徴で、昭和の高級サウナの面影を残します。110℃近い高温サウナと、よもぎ蒸しのウェットサウナがあるのですが、何と言ってもこの店のアカスリは自分基準では日本一だと思います。微妙な角度をつけて強めにこすられる快感は、この店を卓越した存在にします。アカスリとオイルマッサージ、入浴料で1万5千円ですが、世間のスパと呼ばれるものにおける美容効果のコスパはナンバーワンだと感じます。

身体は元に戻る


20年ぶりぐらいに胃カメラの検査を受けました。昔から胃が弱く、半世紀ほど前に飲んだ胃カメラは、太い電源コードぐらいあり大変な思いをしました。直近で飲んだ胃カメラは完全に熟睡状態で何の苦痛もありませんでしたが、昨日は多少喉の違和感はあるものの、それほどつらいものではなくすぐに終わりました。鮮明な胃のカラー映像を見ると、素人目にも問題はなさそうです。昨年は5年ほど悩まされ続けた腰痛を達人のストレッチにより克服したので、今年のターゲットは30年来続く胃の不調です。胃の不調を30年も放置してきたのは、何度か受けた胃カメラでは問題がなく、食べ過ぎたときに決まって胃の調子が悪くなるので、むしろ食べ過ぎを警告してくれて好都合に思えたからです。一度は0.2まで低下した視力も福島の山中で生活すると1.5に戻り、歳を重ねてからも人間の身体は元に戻ると思います。

探求したいものとだけ暮らす


先日のソウル行きはLCCのピーチを使ったため、荷物の7kg制限を受けます。パソコンとその電源だけで結構な重さになり、シェイバーやモバイルバッテリーを含めると、夏山縦走なみに持ち物を絞っても7.8kgになります。パソコン以外の重量物を上着のポケットにしまうことで何とか重量制限をクリアしますが、実際には羽田でも仁川でも荷物を計量されることはありませんでした。旅は身軽で行くことで状況変化に適応でき、それは人生も同じだと思います。人生の後半に入り、長い旅を続けるには荷物は軽い方がよいと感じます。企業組織を離れ、社会的地位、見栄、様々な執着、気の進まない人間関係など、背負ってきた重い荷物を降ろす解放感こそが第二の人生の醍醐味かもしれません。誘惑の雑音を断ち切り、日々小食で身体を動かし、自分の探求したいものとだけ暮らす日々こそが贅沢のような気がします。

災害復旧の先進国


31年前の大震災の日も、地下鉄サリン事件の日も、その日どこで何をしていて、どんな光景を目にして何を思ったのかを、はっきりと記憶しています。とくに阪神・淡路大震災の日は松江に行った帰路で、神戸に泊まるか奈良に泊まるか迷った末、奈良ホテルに泊まったことに幸運を感じます。地震で目が覚め高い天井の木製の壁がゆがむのを見ました。一部のガラスが割れ、ダイニングで朝食をしているときに余震があり、女性スタッフが悲鳴を上げて逃げます。常に災害に直面する日本は、災害復旧の先進国でもあると思います。地震のあと、あらゆるライフラインを人知れず支える多くの人の努力によって、われわれは不自由のない日常を迅速に取り戻すことができることは忘れてはならないのでしょう。福島原発のような巨大災害に限らず、日々の降雪に対しても夜を徹して働く人への感謝を常に持ちたいものです。

地域の記憶を残す


福島県玉川村にある観光・体験交流施設「森の駅yodge(ヨッジ)」に宿泊しました。1910年に四辻分教場として設立された旧四辻分校を5年前にリノベーションした施設です。オフシーズンの平日とは言え、税サ込5,400円には地元和牛のハンバーグコース5品、バウムクーヘンづくり体験と朝食が含まれ、実質宿泊費は無料です。宿泊客は他になくスタッフは3名いますので、自治体の観光促進キャンペーンの補助があったとしても大胆な価格です。5年間の指定管理は今年更新されるようですが、村の議会を通す必要のある委託料は、それほど大きな金額にはならないはずです。公共施設にありがちな、ハード先行で運営がそれに追いつかないこともなく、料理を含めた宿泊施設としての運営はプロの仕事です。福島空港を持つ玉川村だけに、空港マネーで整備された豪華施設は、地域の記憶を残す取り組みとしても必見かもしれません。

自分がホテル側だったら


ソウルに行った際はいくつかのホテルを見ました。視察には3つのパターンがあって、客を装い入る、実際にホテル内でお金を落とす、フロントで身分を名乗り、もしくは次回泊まりたいからと言って見せてもらう場合があります。ソウルを代表するライフスタイルホテルであるモンドリアンホテルに行った時、ちょっとしたアクシデントがありました。スキー板を持った宿泊客がエレベーターホールの照明器具にぶつけて壊してしまったのです。こういう時、自分がホテル側だったらどのように対処するかを考えます。スキー場のホテルではありませんので、このケースの場合ホテル側に落ち度はなく、100%客側の管理責任が問われるはずで、よほどの上顧客でもない限り賠償請求をすると思います。さすがに休業補償までは請求に含めないまでも、デザイン性の高いホテルだけに、照明器具の値段は双方が気まずくなる金額になる気がします。

日本を離れてインスピレーションを受ける


連日氷点下10℃のソウルでは街中でも冬山装備が必要ですが、東京に戻ると日本の冬がなんとも穏やかで温暖な季節に思えます。飛行機なら2時間足らずで着き、直前予約のピーチの片道運賃は1万円少々で、仁川に4:40に着いて、復路は22:50発と現地滞在を最大化できます。様々な健康リスクやストレスを考えると海外旅行に食指が動かないのですが、コト消費の王様はやはり旅行です。スマホの翻訳アプリがあれば国内旅行の感覚で不便がなく、娘に交通ICカードを借りたので、現金を使ったのはスッカマで買ったシッケ(韓国の発酵飲料)だけです。物価は日本とほぼ同じで、現地の交通費が安いことも海外旅行のハードルを下げます。全くストレスのない国内旅行とは違い、多少のストレスを受けることも脳を活性化するには好都合で、日本を離れてインスピレーションを受ける異国の最右翼はソウルをおいて他にはない気がします。

飲食店のLCCモデル


ソウルでは基本的にミシュラン・ビブグルマンのLCCモデル(低価格・高回転・単品勝負)の店に行きました。断トツの高収益店舗は武橋洞プゴクッチプです。干しスケトウダラのスープ専門店で1968年創業の老舗です。朝7時の開店に行っても100席の店内はすでに埋まり、氷点下10℃の強風のなか20人ほどが並びます。10分ほどすると最初の回転で入れます。メニューは干し鱈のスープのみですが、栄養価が高く、美容や二日酔いに良いとされます。主たる客層はサラリーマンと観光客で、早く食べたい人には最適です。座ると同時にスープが出て、オーダーの手間ゼロ、提供待ち時間最短、会計は単一料金と驚異の回転率です。ざっくり計算すると坪売上は150万ほどに達する化け物店舗で、厨房6名、ホール6名で大量の客をさばきます。別段美味しいとは思わないのですが、大量仕入れにより上質な食材を煮崩れしない状態で出せるのでしょう。

最高のショールーム


ソウルに来た目的はサウナの源流とも言えるスッカマの構造を見ることですが、ほかに聖水洞のリノベーション商業施設と梨泰院のライフスタイルホテルの視察です。梨泰院は3年前に159人が亡くなったハロウィンの悲惨な事故の現場ですが、傾斜は10%程度で一見して危険な感じがなく、当日の人の過密が異常なものだったことが伺えます。ホテルは1980年代のアメリカのブティックホテルの源流の一つであるモンドリアンで、今はアコーの商品ラインです。当時のブティックホテルの大半はグローバルホテルチェーンの傘下に組み込まれましたが、アコーはチェーン化によりホテルが退屈になることを避けるために、運営を完全に切り離したことは賢明でしょう。1980年代にオリンピック目当てに開業したホテルを140億円で買い取ったのは中堅ゼネコンで、これは自社の施工技術とリノベーション物件の実績に関する最高のショールームと言えそうです。

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