情報価値のない会話


長時間運転をすることが多いのでたまにラジオを聞きます。一番聴くのは受信エリアの比較的広いAFN(FEN)で英語に耳を慣らすのに役立ちます。かつては1988年開局のJ-WAVEを聴きましたが、今はほとんど聞かないのはパーソナリティによるおしゃべりやリスナーのお便り紹介を聞くのが苦痛になったからです。公共放送であるラジオは固定の著作権使用料を払えば、音楽はかけ放題のはずですから、私にとって理想のJ-WAVEは、音質の良いFENであって欲しいのです。競合する音声メディアが増え、人々の可処分時間の獲得に負けたメディアに生存空間はないのに、ラジオの経営は旧態依然とした印象で、“More Music Less Talk”という本来のJ-WAVEのコンセプトに戻ってほしいのです。ラジオやテレビが癖の強いタレントを使って情報価値のない会話を垂れ流すのは、それでも著作権使用料を払うよりコストが低いからのような気がします。

思想を買うプロダクト


マニュアルトランスミッションで乗れる4WDの道具車としてN-VANを気にいっていますが、もし乗り換えるとしたら唯一無二のオールラウンドミニバンとして知られるデリカD:5は有力候補です。デビューからすでに20年近くが経過しながら、昨年度は発売以来過去最高の年間販売台数を記録したことは異例です。オフロードミニバンとして世界的にも稀有なポジショニングを確立しながら不遇の時代が続いたデリカに、時代が追いついたと言えます。SUV風デザインの車は近年世界的に増えましたが、戦後のウィリス・ジープのノックダウン生産に始まり、日本の環境に合わせた三菱ジープとして展開し、世界のラリーシーンを席捲してきた本格4WDのDNAを継承するのがデリカです。無骨でメカニカルな世界観を持つ車が強烈な個性として浮上したのは、車がステイタスの道具ではなく、思想を買うプロダクトに成熟したからのような気がします。

健康管理ゲーム


世界の投資の行く先は、人間の知能を超える存在となりつつあるAIです。これに次いでシリコンバレーの投資家の関心を集めるのは、アンチエイジング領域です。AIが知能で人類を凌駕してしまえば、人体に残されるのは肉体だけで、最後に信じるべき自分という存在の寿命を延ばし、健康に近づけるという原始的な身体回帰に人々は熱狂します。シリコンバレー発のマインドフルネスブームがそうであったように、健康問題は人生後半の話ではなく、現役パフォーマンスの核心になりました。その渦中にあるのが、投資家のBryan Johnsonが掲げる「Don’t Die(死ぬな)」運動で、彼は毎年自分の健康に数億円を投入します。しかし、40代の彼は太陽光を避けるために不自然に色白で、やたらと発達した筋肉が目立ちます。シリコンバレーが信じるものは要素還元されたデータとアルゴリズムだけで、人生そのものを健康管理ゲーム化する風潮には違和感を覚えます。

根強い舶来信仰


長年ブラウンのシェーバーを愛用していましたが、刃が破損しました。バッテリーが十分に使えるので替え刃を探したところ、消耗品課金のレイザー&ブレード・モデルを地で行くように、正規品の替え刃価格は新しいシェーバーが買えそうな値段です。サードパーティ製品は半額ほどですが、ユーザーレビューが低くリスクが高そうです。そこでブラウンの替え刃より安いパナソニックのシェーバーを買いましたが、その性能と進化は想像以上です。ブラウンの肌に吸い付くようなパワーはなく音も控えめですが、剃り残しがなく、剃ったひげの逆流がない点はブラウンより優秀です。さらに、肌当たりが柔らかく、本体は軽く、デザインも良好で、ブラウンへのブランドロイヤリティは一瞬で崩れました。自分の世代が刷り込まれた、文明の象徴としてのドイツ製自動車に対する舶来信仰に近く、日本製品を過小評価する外部権威への弱さは根強く残ります。

旅館運営は総合芸術


旅館であれカフェであれ、行った店を自分ならどのように経営するかを考えます。一昨日泊まった川治温泉の川治一柳閣本館は頭の体操をするための好事例でした。高度経済成長期とバブル経済期の特殊な市場環境に適応した大型旅館を人口減少時代に延命させることは、リスクに見合わない危険な賭けに映ります。同じ再生プレイヤーでも大江戸温泉物語のように、プレミアム業態化などの色気を出さず、食欲と低価格というストレートな欲望に直結する商品力で勝負する伊東園方式は、商品力維持の点で難易度が高いと感じます。リピートに至る高い満足度を維持しながら、飽きずに来させ続け、100室超の大箱を通年稼働させることは単純に見えて非凡な才能です。食事の質は高くありませんが、食材高騰の時代に、安い日なら7、8,000円で1泊2食を賄い、温泉などの水道光熱費を吸収して利益を出す運営は総合芸術にも見えます。

団体旅行文化を伝える遺構


昨夜は川治温泉の川治一柳閣本館に泊まりました。1934年(昭和9年)創業の老舗であり、100室超の川治温泉最大級の旅館です。ご多分に漏れず、足利銀行の経営破綻と連動して2008年に負債総額50億円で自己破産しました。現在は伊東園ホテルズ が取得し、首都圏からのバス送迎による平日シニア大量送客と、1泊2食バイキングにより巨大旅館を再生します。一人宿泊で7,000円台の価格破壊力は相変わらず魅力的です。食事内容に期待できるはずもなく、揚げ物中心のどちらかと言えば寿命を縮めそうな内容ですが、そこは大箱の強みで寿司や刺身も用意されます。この旅館のハイライトは5階にある露天風呂で、川を挟んだ対岸のほぼ垂直に切り立つ山の新緑が目前に迫る光景は迫力があります。昭和の巨大旅館の空気を今に伝える施設は、世界的にも稀有な日本の団体旅行文化の遺構として、残してもらいたいものです。

独自の世界観を形成する


昨日は大月市立短大の出講日でした。大月までの運転は気分転換になり、新緑の山を間近に望む教室に癒されます。大学生活と言えばカフェ、居酒屋や雀荘など都会的なイメージと重なりますが、自然豊かな環境で学ぶことは発想を広げ、人の身体性が注目される時代にはアドバンテージになる気がします。米国では2025年の後半から、学士号取得者の失業率が、準学士号取得者(短大)の失業率を上回り、これは1990年の統計開始以来初めてのことで、学位取得が投資に見合わないことを示します。AIが多くのホワイトカラー業務を自動化する時代には、大学教育に求められる役割も自ずと変わるはずです。ホワイトカラー大量生産モデルにおける知識供給機関の役目は終わり、AI時代における人間形成を再定義する必要がありそうです。人生設計的なキャリア教育を捨て、独自の世界観を形成することが求められているのかもしれません。

肌は中から美しくなる


昨日は西麻布のサウナ、アダムアンドイブに行きました。唯一のスキンケアは、肌のターンオーバーの周期に合わせて月一度アカスリに通うだけです。昭和の面影を残す施設は110℃近い高温サウナと、よもぎ蒸しのウェットサウナがあり、どちらの満足度も高いのですが、ハイライトは韓国式の摩擦圧の強いアカスリです。物理刺激の強いミトンを使い、体位変更により微妙な角度をつけてこするアカスリは卓越していると思います。アカスリ後にドライサウナに入ると普段より汗の量が増え、入浴後の肌艶も良くなります。サウナに定期的に入ると肌が潤い、那覇で2週間続けてサウナに入ったときは顔のシミも消え、サウナブームのなかでもサウナによる美容効果は過小評価されていると思います。肌は内臓の状態を反映していると言われ、暴飲暴食も避けるようにしています。外から取り繕わなくても、肌は中から美しくなるものだと思います。

最下層という潔さ


ポルシェを乗り継いだ近所の家がモーガンに替えました。最初に買った車がイタリアのオープンカーでしたので、モーガンは気になる存在です。スポーツカーは今も魅力的ですが、生活を複雑にしたくない気持ちがそれを打ち消します。2年前に旅館の業務用に買ったN-VANは最低価格帯の商用車ですが、6速MTは運転して楽しく、雪道に強い4WDは自分にとって最適です。53psと非力ながら80年代のボーイズレーサー的に高回転まで回せば過不足なく、小さなボディは登山口を目指すときの狭い林道での行き違いや駐車時にその威力を発揮します。ラグジュアリーな車の幻想に薄々気づいていましたが、最後に未練を断ち切ったのはヒエラルキーの最下層という潔さだと思います。人はDNAレベルに埋め込まれた性癖によって、階段があれば登りたくなり、終わりなきラットレースを最後まで走り続けるか、レースを降りるか2つの選択肢しかない気がします。

権威的な嘘


先月エベレスト街道から戻って以来、自分としては異例なことに睡眠時間は9時間に及びました。これは高度順応のために夜間も水分を摂取し、ほぼ2時間おきにトイレに起きていた反動です。今は普段通り5、6時間に戻り、これが自分の睡眠リズムだと思います。世間には7時間以上眠れといったプロパガンダが広まりますが、健康は個別の問題であり、一律眠れという主張は不自然です。睡眠に関しては未解明なことも多く、7時間説の根拠となるエビデンスは怪しく感じます。人々の最大の関心である健康を人質にとったビジネスは巨大で、ヘルスリテラシーとはこうした権威的な嘘に騙されないことかもしれません。健康体である限り、眠りたいときに眠り、食べたいときに食べることが最も健康的なはずです。人間ドックも受けませんが、毎日の便と尿を常にモニターする方が、体調を正確に反映していると思います。

Translate »