政治は妥協の芸術

政治は妥協の芸術と言われますが、大半の公約を覆す石破氏は、政治への信頼が失墜した今、ふさわしくないリーダーに見えます。総裁選で石破氏に投票した議員リストが出回る一方、旧安倍派を非公認にする二重処分に自民党内では激震が走りました。自民が下野した民主党政権誕生の時は、非自民勢力をまとめる小沢氏がいましたが、今の野党にはそのような存在も時間もありません。立憲民主党の野田党首と、体形も年も、ヘビースモーカーであることも、財務省フレンドリーな政策も同じ石破政権と、野党との間には選択肢がなく、岩盤保守層がどれだけ政権を見限るのかに注目が集まります。反主流を歩んできたトップが国を導き、党内の勢力図が大きく変わり対立が深刻化したあと、何が起きるのかという政界の社会実験から目が離せません。

昭和的な旅

娘はK-POPの推し旅で台湾に行きました。この半年でシンガポール、インドネシア、韓国、台湾に行き、国内旅行より海外のライブに行く回数の方が多く、LCCの存在は旅行市場を変容させたと思います。若者が旅行をしない理由の一つは運賃の高さで、国内市場を寡占化してきたJRは、国際線の航空運賃が法外に高かった時代の戦略を、見直す必要があるのかもしれません。マスマーケティングの代表例といえる、「そうだ 京都、行こう。」的なアプローチは早晩通用しなくなりそうです。推し活に代表されるニッチでマニアックなマーケットは、旅へのモチベーションが高く、国際線に乗ることへのハードルが下がります。JRの豪華列車人気にどこか違和感を覚えるのは、若い世代の先鋭化した旅のニーズに対して、昭和的な旅の発想から進歩していないように見えるからです。

写真修正の波紋

YouTube界隈では、発足したばかりの石破政権をネタにするエンタメ化が盛んで、「だらし内閣」という流行語を生んだ組閣後の官邸写真が拡散しました。政治への関心が高まるのは良い傾向ですが、官邸が写真を修整したのは問題だと思います。ルッキズム以前の問題として国の信頼に関わり、首相官邸による公式写真の加工は独裁国家が使うフェイク写真と同じです。今年3月キャサリン英皇太子妃が子ども3人と一緒に写った家族写真が加工されていたことが発覚し、主要な通信社がこの写真を一斉に削除しました。プライベートとして撮られた写真ながら、王室がXに投稿した画像は歴史的な記録であり、完全な信頼を得る必要があります。価値観に基づく人為的修正は事実を伝えるジャーナリズムにおいては許されず、効果的に嘘をつける写真を偽れば誰も信じなくなるのでしょう。

総裁選より興味深い

国民人気不動の一位だった石破氏ですが、政権支持率は自民党が下野した麻生内閣より低い51%で、21世紀に発足した内閣としては最低との調査もあります。組閣後の官邸でのひな壇写真も、着こなしや姿勢が問題視され「だらし内閣」がトレンド入りし、官邸は写真を加工しました。せっかくの晴れ舞台なのに、本人すら総理になれるとは思っていなかったのかもしれません。派閥の暗躍により生まれた政権は、言われた通りに踊るしかなく、政策通との前評判とは裏腹に、正論を吐くばかりの外交防衛政策も米中から警戒されます。その変節は右派左派どちらからも批判され、お目こぼしをしてきたマスコミも言行不一致を問題視し始めました。5日目にして満身創痍の長老傀儡政権は、身体検査もなく入閣した閣僚のスキャンダルが噂され、自公で40議席を失うとの観測もあります。総選挙は総裁選より興味深いドラマになりそうです。

生活習慣に課税を

健康保険組合連合会は、高齢者の窓口負担や高額医療費補助の患者負担を引き上げる、医療制度改革の要望を公表しました。70〜74歳は所得に関係なく、現役世代と同じ一律3割、75〜79歳は原則1割から2割に引き上げるものです。半年に一度歯科医に行く程度ですから3割負担はそれほど気になりませんが、頻度の高いお年寄りにとっては死活問題でしょう。高級飲食店の顧客で目立つのは、かつては製薬会社で、医師への接待費用も加算された薬を生涯飲み続ける薬漬け大国を見直すことが先だと思います。降圧剤など、日本が世界の市場シェアの握る疾患は、恣意的な基準次第で増やすことができます。世界に誇る国民皆保険によって、自分の体を医師任せにする風潮の改善や、ソーダ税のようにリスクの高い嗜好品などの生活習慣に課税をする方が、誰もが幸せになれる気がします。

最高もなければ最低もない

ご祝儀相場の無い異例の船出となる石破政権が始まりました。周囲の評判は芳しくありませんが、最高もなければ最低もないのが民主主義の宿命と受け入れざるを得ません。良くも悪くも自民党の総裁選以降、ビジネス界の空気も変わり始める気がします。コロナ禍によってプチバブルのはじけた宿泊・観光業界ですが、その後のインバウンドの回復が予想外に順調だったために、その恩恵に浴するエリアでは再びバブルに向かっていると思います。バブル経済を実体験している人間の強みは、バブルの空気の匂いをかぎ分けられることで、グランピングやサウナの熱狂にも比較的冷静でいられます。自分の肌感覚とはかけ離れた、高額のリゾート物件が飛ぶように売れる昨今の動きは、80年代の既視感を覚えます。結局、ビジネスの世界においても、最高もなければ最低もないのかもしれません。

安易に稼いで適当に使う

富士山の今年の7月1日~9月10日の開山期間の登山者数が、前年比約7.7%減の20.4万人になったと発表されました。山梨県側から登る人に対し1人2,000円の通行料の支払いを義務化した結果、山梨側が前年比16.3%減の11万4,857人、静岡側が6.4%増の8万9,459人と山梨ルートが敬遠され、コロナ禍を除きこの10年で最少となりました。オーバーツーリズム対策として、世界の観光地では有料化の風潮がありますが、強制的な入山料徴収は乱暴な方法だと思います。日本が失われた30年から脱却できないのは値上げが難しいからで、民間セクターは価値を生み出すことを常に考えます。一方で入山料として安易に稼いだお金は、適当に使われるリスクがありますが、登山客の期待は高まり、それに見合う環境整備が求められます。全国で進む宿泊税など、インバウンドブームに浮かれて、安易に稼ぐ発想が日本に蔓延することは避けたいものです。

巨匠か虚像か

世界的に名を知られる建築家の隈研吾氏の出世作、栃木県の馬頭広重美術館の改修が問題になっていると伝えられます。開業20年を過ぎた頃から木材の劣化が進み、改修費用の3億円を自治体は負担できないと言います。隈建築の特徴である木製ルーバーの造形については賛否がありますが、メジャーになり過ぎて見飽きてしまい、芸がない印象を受けます。アイデンティティを感じる反面オリジナリティがなく、AIや3Dプリンターの時代になるとその価値は低下するように思えます。地場産建材の使用が求められる公共施設とはいえ、長期修繕計画を十分に見込んでいないのであれば事態は深刻でしょう。安い予算でも仕事を受ける大量受注をこなす手法が、建物を木材で覆う「隈建築」ですが、世界的建築家・隈研吾の評価が定まるにはまだ時間がかかりそうです。

腰痛原因は腰にあらず

腰痛歴は7、8年になりますが、昨年まではそれほど深刻な痛みではなく積極的に治すモチベーションが起きませんでした。しかし、この半年は生活に支障をきたすようになり、様々な腰痛治療を試しました。即効性があるのは鍼灸でしたが効果は一過性の印象です。腰痛関連の書籍に目を通すと、非特異的腰痛の原因は硬くなった筋肉とする主張が目立ち、ストレッチが良いとされます。近所のドクターストレッチに4回ほど通いましたが、これまで受けた様々な治療とは異なり、改善度合いが小さい反面、そこから悪くなることがなく治癒に向かっている効果を感じます。伸ばしているのは臀部が中心ですが、筋肉が固まることで腰が引っ張られ神経を圧迫するようです。すぐにブロック注射を打とうとする医者ではなく、疾患の完全な治癒を目指す治療法にこそ保険を適用すべきだと思います。

生物学的な年齢を人生の中心に

日本老年学会が2017年に提言した、高齢者の定義を「75歳以上」にする案がにわかに注目を集めています。統計データの解析によると、高齢者の健康状態と身体機能は改善傾向にあり、若返りが著しい理由は栄養の改善や健康意識の高まり、医療の発達とされます。一方で、中年以降の肥満や3、40代女性の体力低下、若い女性の低体重、子どもの活動量減少などの懸念材料もあります。WHOをはじめ国際的な高齢者の定義は65歳以上が一般的ですが、サザエさんの波平が54歳の設定であるなら戦後より20歳は若返った印象です。一方で現在も60歳で還暦を祝い、定年時期も10年しか伸びていません。年齢の引き上げは、年齢呪縛にとらわれ自分から老いる人を減らす効果がありそうです。元気な高齢者に共通する考え方は自分の年齢を意識しないことで、暦年齢より生物学的な年齢を人生の中心に据えるべきかもしれません。

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