現役を貫き通した人生


かつて同じ会社に在籍していた経済アナリストの森永卓郎氏が、原発不明がんのため67歳で逝去しました。たまにエレベーターに乗り合わせるぐらいでしたが、親近感があります。包み隠さず話す独特のキャラクターで愛された森永氏は、2023年末にステージ4のすい臓がんであることを公表した後も驚異的な復活で執筆活動に励み、1か月間に13冊を書き上げたと言います。メディア出演も精力的に続け、亡くなる前日もTBSと文化放送に生出演し、数時間前までは放送局と次回の出演の話をしていたほどで、まさに生涯現役を貫き通した人生です。何かをやり遂げたいという使命感は、年収300万円時代やザイム真理教などの流行語を生み出し、死を間近に失うものが無くなったことで壮絶さを増していったように見えます。生涯現役で働くことは幸せだと思いますが、これほどの使命感を持てる人生こそ、生きるに値するのでしょう。

日々機嫌よく過ごす


先日は小学校以来の友人宅に行き、94歳になるお母様にも会いました。大変お元気な様子で、ユーモアのセンスがあり笑い通しでした。92歳になる義理の父も含めて、年を重ねて元気な人に共通するのは、深刻に考え過ぎないメンタルの強さであり柔軟さだと思います。笑いが健康に良いことは知られますが、心身一如と言われるように、考え過ぎや悩むことによるストレスや不安が、身体的な不調を引き起こしていると思います。この逆も然りで、身体の不調が精神に影響を与えるように、心身は切り離せない不可分の存在のはずです。年をとるほどに頑固になり、自我を押し通して人と対立する人もいれば、老年的超越の境地に至り日々機嫌よく過ごす人もあり、どちらが健康に良いかは論ずるまでもないのでしょう。将来の健康の8割は自分で決められると言われますが、何事も良い心掛け次第なのかもしれません。

1泊分の値段で1か月


昨日は土湯温泉の御とめ湯りに宿泊しました。土湯温泉は全国でも数少ないオトメユリの群生地です。日帰り温浴施設に隣接する20㎡ほどのワンルームは、電子レンジや冷蔵庫を備え、簡単な調理が可能で3,980円で泊まれます。旅館やホテル近隣の空き家やアパートを、分散型客室として収益化するのは合理的な方法だと思います。Wi-Fiも早く、コワーキングスペース風のカフェもあってコーヒーが無料で飲め、車で10分走るとスーパーがあるのも魅力です。週額19,800円、月額59,800円の値付けも良心的で、山々を望む魅力的な露天風呂、サウナと冷たい沢水を引いた水風呂、アルカリ性単純泉の源泉かけ流しにつかる生活は、仕事もはかどりそうです。高級な宿なら1泊分の値段ですが、1か月温泉地に滞在し、近隣の共同浴場を巡りトレッキングをする方が、はるかに豊かな気がします。

有益で合理的な趣味


昨日は宮ケ瀬湖の近くにある仏果山(ぶっかさん747 m)と高取山(706m)に登りました。愛川ふれあいの村を起点にすると2時間ほどでラウンドできる低山ながら、宮ヶ瀬湖と丹沢表尾根、関東平野を一望する景色が見事です。自動車なら我が家から1時間ほどと手軽で、夜明け前から登り始めれば他の予定を犠牲にする必要もなく、早朝の低山ハイクは最も有益で合理的な趣味だと思います。しかし、これは東京に住む場合の話に限られ、日本の大半の地方や郊外であれば15分程度の時間距離で、このような里山にアクセスできます。晴天の日曜日の朝でさえ登山道で人に会うことがなく、これほどマインドフルネスで、刺激的で健康的な娯楽はなく、しかも数人で同行するならわずかな交通費しかかかりません。都市的な消費の罠は、それを重ねるうちに商業的な取引でしか幸せを感じられなくなることなのかもしれません。

進化した伝統


日本古来の履物である雪駄の専業メーカーサカガワとミズノのコラボ商品を、SNS広告で見ました。ミズノのソールがつくと2万円前後の価格になりますが、大和工房ブランドでサカガワが販売する雪駄なら3分の1程度の値段で買えます。当社が位置する奈良県西部は、かつて国内で90%のシェアを誇る和履物の産地で、江戸時代に農家の副業であったワラ草履作りが発端とされます。伝統的な技法を継承した和履き職人の手作業によるつくりに、日常使いができる履きやすさが加えられた雪駄は、実用的かつスタイリッシュで、履くと自然に背筋が伸びるような清々しさを感じさせます。伝統を継承しつつ、現代のライフスタイルに適合した新たなファッションとして提案することは古民家も同じで、先祖伝来の生活の知恵を未来に伝え、暮らしを体現する進化した伝統とは何かを考えさせられます。

古民家はタイムカプセル


川崎市立日本民家園に行きました。古民家に関心があるのは学術的な興味ではなく、商業施設として蘇らせた古民家が専ら関心の対象です。古民家は代々住み続けるごとに改造部分が増え、復原調査から建物の歴史を解きほぐし、建築当初の古い形に戻された姿は古の生活を伝えるタイムカプセルです。現代の工法を使わず、ハンドカットされた木材などの自然素材で作られた、素朴でシンプルな家は自然の風景に溶け込みます。古民家を商業的に再生するときに問題になるのは、どの時代まで戻すのか、現代人が求めるアメニティ水準をどこまで満たすのかという点だと思います。最大の制約は改修コストですが、現代的なテクノロジーで快適な家にしてしまえば、先祖代々受け継がれてきた知恵を消し去ってしまう気がします。文化の発祥は生き残るために必要な知恵だったはずであり、快適過ぎる古民家にはリアリティを感じません。

自己肯定感の原点


トランプ大統領を描いた問題作『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を見ました。トランプがプロデュースして人気を博したリアリティ番組の名を冠した作品は、グロテスクな映像も含めて迫真に迫り、その高い完成度により映画と現実の境界が曖昧になって行きます。アメリカでの興行成績はいまひとつで評論家も酷評気味ですが、近年最高の問題作であり、これを超える作品は当分作られない気がします。大統領選挙直前という絶好のタイミングで公開された映画は、トランプを貶めたいという政治的背景抜きに、人間の表裏を赤裸々に見せたかったのだと思います。大統領になる可能性のあった実在の人物を、ここまで汚く描けるのは、エンタメ大国アメリカの執念すら感じます。史上最高齢で就任した大統領が、不健康な生活にも関わらずあそこまでパワフルなのは圧倒的な自己肯定感であり、その原点を知る良い映画だとお勧めできます。

生きるために必要な動作


週1回のペースでストレッチを受けるようになり4か月が過ぎました。固まった筋肉を正常に戻すのに概ね3か月かかると言われていましたが、しびれるようなだるさは今も残ります。しかし、歩くのにも不自由するほど腰痛が悪化したときを100とするなら、今は30程度の痛みで改善効果があることは確かです。当時読んでいた腰痛関連の本や、診察をした医師がストレッチを勧めていたこともあってか、最初に施術を受けたときに改善する予兆を感じました。我が家のラブラドールを見ていると、誰が教えた訳でもないのに散歩の前には必ずストレッチをしています。ストレッチは動物が生きるために必要な動作なのかもしれません。腰痛の85%は原因不明とされますが、長年の悪い姿勢や体を動かさない習慣が筋肉をこわばらせ、腰に負荷をかけていることは間違いないと思います。

キング・オブ・サウナ


サウナ界の王と崇められるスモークサウナは常に気になる存在です。ストーブや煙突が発明される以前の原始的な浴室が、キング・オブ・サウナと呼ばれる理由は、単にノスタルジーによるものではありません。サウナブームの盛り上がりに違和感を覚えなるなか、先々週末に行った日本の伝統的な石風呂はまさにキング・オブ・サウナそのものでした。もはやサウナと呼ぶ必要さえなく、日本古来の蒸気浴こそが、ストレスと病気の蔓延する現代社会が求めているものだと思います。山口県を中心に瀬戸内海をはさんだ愛媛、大分にも分布する石風呂の歴史は平安時代にさかのぼります。しかし、人知れずひっそりと山奥に埋もれる野谷石風呂を見たとき、同様の入浴方法ははるか古代より世界中で普及してきたはずだと確信しました。火を外に出し、蓄熱した石が伝えるやさしい暖かさに触れると、今までのサウナへの妙なこだわりが無意味に思えます。

慎ましく清々しい生活


東京に住んでいると地下鉄やターミナル駅でオーバーツーリズムの弊害を日々目にします。その結果、都心のラグジュアリーホテルは庶民の手の届かない価格帯になり、出張で泊まれるホテルさえ無くなりつつあります。物価に関して優等生とされてきた日本ですが、日々の買い物でも野菜や果物の値段は少し前の倍の値段になり、燃料価格や水道料も倍増しています。他方で、地方都市に行くと価格上昇は幾分ゆるやかで、野菜などは都会より安く、温泉宿でも3、4,000円で泊まれるところがあります。自然の恵の恩恵を受けられない都会では、原価、経費、人件費の上昇がすべて商品価格に影響しますが、自給自足的に農作物を作り出すことができる地方部は、むしろ生活が豊かな気がします。田舎に行くと、現代人が欲望に溺れる前の、慎ましく清々しい生活が残っているのかもしれません。

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