何年も不調を抱えたことはないのですが、強いて言えば眠りが浅いことが悩みです。就寝後4、5時間するとちょっとした音や明かりで目が覚めてしまい、目覚まし時計を使う必要がなくなりました。人体は一人一人がユニークな存在で、7時間睡眠が最も長生きといった画一的な迷信は信じないのですが、深く眠りたいときは睡眠負債を増やすために夜更しをします。眠りに対して体を飢餓状態に置くと普段より長く気持ちよく眠れ、不眠症を訴える人の多くが自分は不眠症だと思い込む眠り過ぎだと思います。食べ過ぎの解消に断食が適すのは、体を飢えさせることで食事に対して繊細になり少量の食事に満足するのと似ています。睡眠負債があるから快眠でき、空腹状態だから食事が美味しいように、人間の体が進化の過程で身に付けた美徳は、満たされることなく欠乏状態において体調がベストになる性質だと思います。一方で満たされることに虚しさがつきまとうのは、欠乏への恐れから満腹状態を続けることで代謝が正常に行われず免疫力も低下するからでしょう。
お知らせ
平凡でささやかな日常
一年前の今頃はダイヤモンド・プリンセス船内における集団感染騒動の渦中で13人が死亡する感染事故となりました。感染拡大が収まらないアメリカでは昨年12月時点でホテルの空室累計が10億室を超え業界は苦境に追い込まれました。成長分野と見込まれていた観光産業は世界的に打撃を受け、旅行者数が2019年の水準に戻るには4年程度かかると予測されます。リタイア層に最も人気のある海外旅行に行けなくなり、感染を恐れて外出が億劫になれば生きる気力まで失います。一方で、元気なうちに世界を回りたいと急かされるように旅行に出るトレンドにも疑問を感じます。新しい消費を楽しみ様々なものに挑戦する非日常的な行為に脳は幸福を感じますが、問題は消費を礼賛することでしか充実感を味わえなくなることです。海外旅行が退屈な日常の代償行為なら満たされることはなく、刹那的快楽を求め非日常を人生の目的に置くのは無理があると思います。人生の目標が定まれば平凡でささやかな日常に幸せを見出すことができるのでしょう。
脳の暴走を防ぐ最低限の暮らし
一人で過ごすときは一日一食ですが家族といるときの朝食は固形物を摂らず味噌汁のスープだけにします。一見味気ないように見えて具材が入らない味噌汁は味覚に集中でき複雑な味を感じ、食べる喜びはむしろ豊かになります。何事においてもストイックさが魅力を放つのは物や情報が少なくなることで五感が研ぎ澄まされるからだと思います。貧しい時代の豊かさは欠乏が満たされる快ですが、物があふれる時代の豊かさは内面と向き合う静けさのなかにあるのでしょう。大半の中毒症状がそうであるように食べれば食べるほど食べたくなる過剰摂取のサイクルを止められなくなります。問題は体が欲求していないのに脳は食欲を感じるアンバランスにあり、くつろいだ呼吸を意識するだけでも冷静になり食欲は薄らいでいきます。生物が脳を獲得したのは5億年ほど前で進化の課程の8割から9割を脳のない状態で過ごしたために、他の臓器などお構い無しに脳は自らの欲求だけを満たそうとします。脳の暴走を防ぐには無用な欲望と執着が起きない最低限で暮らし無駄に感情を動かされないことだと思います。
面子を捨てた業界再編
藤田観光が東の椿山荘と双璧を成す大阪市の太閤園を国内法人に売却し329億円の特別利益を計上すると公表されました。2019年のG20大阪サミットの閣僚会合に使われた同社を代表する施設は会社にとって精神的支柱と言えます。ワシントンホテルの売上が前年比の26.6%に留まったのが致命的で会社再建のための苦渋の決断であったことは想像に難くありません。債務超過は回避したものの大きく毀損した自己資本比率は1.2%に低下しました。しかし、決算説明資料に並ぶ文言はリピーター獲得や高付加価値商品による収益確保など平時と変わらず、徹底したコストカットや資産売却以外に効果のある施策が見られず、経営陣以下どうして良いのか困惑しているのでしょう。一時帰休や処遇変更により中核となる人材の慰留が困難になれば負のスパイラルが止まらなくなります。業界はSARSやテロの影響により客室稼働率が落ち込む困難を乗り切った経験がありますが、今回は供給過剰の市場を前例のない落ち込み幅が襲い、かつての日産が行ったような面子を捨てた業界再編規模の経営の刷新が必要な局面を迎えているように見えます。
コロナ禍がもたらす幸せ
串カツ田中はトレードマークとも言える二度づけ禁止のソースをかける方式に改めてから廃棄ソースが7割減ったと伝えられます。従来は当然とみなしていた習慣のなかにはオフィスでの仕事のように止めて良かったことも少なくありません。厳格な都市封鎖をすることなく国際的には優等生と言えるレベルまで感染を抑え込んだ日本では、コロナ禍に好ましい面を見出すことができます。ウィルス干渉もあって風邪やインフルエンザが激減し総死亡者数は例年より減ったとされ、心がけ次第で人は健康になれることが期せずして証明されたと思います。飲食店には気の毒ですが、ナイトライフが制限されたことでサーカディアン・リズムに沿った健全な生活を多くの人が取り戻し、社会全体の健康は増進されたと見ることもできます。元々衛生環境に優れ意識も高い日本で手洗いや咳エチケットが継続されるなら、感染症予防が徹底され無用な薬を飲む無駄もなくなります。不摂生な生活習慣を改め健康になれば幸せの半分は実現されたのも同然でしょう。
野暮なデザインが低成長の原因
昨日近所の八百屋さんで見かけたラベルに目が止まり結局その店で買い物をすることになりました。菊芋は水溶性の食物繊維イヌリンが多い天然のインスリンと呼ばれ血糖値上昇が穏やかになり、食物繊維量がごぼうの倍とされ腸内環境を改善します。パッケージはマーケティングの5つ目のPとも言われ、とくに消費者関与が低い毎日の買い物においてはパッケージデザインなど商品の性能品質に無関係の要素が購買の引き金となります。他の野菜にも食物繊維豊富といった表記がされ、もう一品多く買わせることに貢献していると思います。飲食店では追加の飲み物一杯を勧めることの重要性を従業員に説きますが、年間売上を何割か上昇させることも可能でしょう。書籍の売上もポップ次第ですが、日本における商品パッケージは野暮なデザインが多く、潜在客を遠ざけています。低成長の続く日本では景気が悪いと他責思考が広がりますが、やるべき簡単なこともせずに売上が上がらないとこぼしている事業者は少なくないと思います。
言い伝えこそ健康の真実
すぐに覆されるにわか健康常識に対して昔からの言い伝えは色褪せることがなく、「いただきます」「ごちそうさま」といった代々受け継がれる感謝の風習、少食や運動が健康に良いことは近年の科学が解き明かしました。他方で先祖伝来とまでは言えない習慣には疑わしいものがあり、1950年に始まったパンと牛乳の学校給食や朝食をきちんと食べることなどプロパガンダによる習慣はグレーゾーンでしょう。解糖系が優位な成長期の子供は別として、更年期以降の大人にとって朝食はむしろ有害だと思います。ブレックファストの語源が示すように、古来より様々な宗教が重視してきた断食を短く切り上げる必要はありません。フェイスブックの最強コンテンツが食事にまつわるものなのは毎日のイベントでありもっとも身近な欲望の対象だからです。最近は心境が代わり、食事の頻度と量を減らすストイックさが食事を豊かなものにすると思います。一度に口に入れる量を減らし、よく噛み、味わいながら時間をかけて食事をすれば満腹になりお腹が空かなくなります。子供の頃「良く噛みなさい」と言われたもので、言い伝えにこそ真実があるのでしょう。
週休6日で十分?
厚生労働省が9日発表した2020年の毎月勤労統計調査によると、基本給や残業代などを合わせた1人当たりの現金給与総額が2年連続減少し、残業代に当たる所定外給与が12.1%減りリーマン・ショック以来の減少幅になりました。残業代どころか仕事が蒸発する飲食業は産業の成り立ちそのものを見直す局面にあります。2020年は強制的なリモートワークが国家的に推進されたことで、昔なら言い出しにくかったワーケーションなど本音の働き方を主張する雰囲気が生まれました。さらに発展して仕事が自己実現につながるならいくら働いても気にはなりませんし、組織のルールに縛られず仕事に専念できる環境なら週休3日どころか一部の職種は週に1日も働けば十分でしょう。使っても使わなくても減っていく時間は保存することができない最も貴重な資源ですが、18世紀の労働者を想定した硬直化した労働概念は時間をお金に変える発想が時間を失う恐怖を生みます。仕事が立身出世の手段ではなく終わりなき自己実現となれば、成長に向かう根源的モチベーションが生じお金と時間のトレードオフが解消されるのでしょう。
味覚は価格で定義される
三密回避で試食もできない今年のバレンタインチョコ商戦は盛り上がりに欠ける印象です。一年分の多くをこの時期に売る業界にとって痛手でしょう。バレンタインシーズンの輸入チョコレートは大量輸送のために冷凍され、口溶けの滑らかさが悪いとされます。その違いを見出すことはできませんし、意味があるとも思いませんが、あらゆる食品のなかでチョコレートほど味と価格の差にアンバランスを感じるものはないと思います。業務スーパーが売る200g300円ほどの輸入トリフチョコレートとその10倍の値段で売られる高級ブランドチョコは味の違いは分かっても10倍の価格差を正当化する理由を見出すことができません。われわれは意識することなく美味しいという言葉を発しますが、感覚器官への刺激により肉体は感覚情報を自覚し、経験により形成された認知プロセスを通じて感覚情報を意味づけ日々評価判断を行っています。インプットにより意識と認識が生まれるだけでそこに存在するものは物質ではなく外部刺激に真実はないとも言えます。ドットの集合体に過ぎないデジタル画像を見た脳は神経伝達物質の分泌により楽しいとか、悲しいといった感情を持つのも同じで、結局のところ味覚は価格で定義されるだけなのかもしれません。
危機管理なき専門家
各国で政権交代や政変が起こり、ビジネス界でもジャック・マーやジェフ・ベゾス、孫正義氏の引退報道が続くなか、「マックからマックへ」で有名な原田泳幸氏の逮捕に衝撃が走りました。高級路線で失敗し異物混入事件が起きたマクドナルドを去り、国内最悪の個人情報漏洩事件のベネッセでも疫病神と囁かれました。ジョブホッパーが多いIT業界出身の上級サラリーマンに対しては、経営手腕を疑問視する声もあり企業を無茶苦茶にするクラッシャー原田と揶揄されました。華麗な経歴とは裏腹に有名なシンガーソングライターである妻との生活は満たされなかったのかもしれません。DVは発見が困難な上に当事者に罪の意識が欠けるため周囲が気付かないうちにエスカレートします。忖度に慣れた権力者にありがちな傍若無人な態度が自らのキャリアを終焉させたのでしょう。企業の危機管理を専門に多くの講演をしてきた氏だけに、今回も皮肉なコメントがされます。肩書や報酬などの地位財に囲まれ、比較することでしか自分の幸せを確認できなかったのかもしれません。