本能を尊ばない現代人

先月惜しくも亡くなったリュック・モンタニエ氏の著書を読みました。HIVウイルスを発見しノーベル賞を受賞した科学者でありながら、人間は物事の本質を認識することができないとする不可知論者であったことは少し意外です。科学技術が発展するに従い人は科学的に証明されたことだけを信じるようになり、自分の感性で捉えたものを軽視するようになりました。しかし、偉業を成し遂げる人物は常に謙虚であり思考領域が広いのでしょう。食事を減らせばお腹もすかず、体はむしろタフになるといった、常識と真逆のことが自分の体で起こると、現代科学を軽信しそこに思考の基盤を置くことは危険だと思います。昨日はネットフリックスでボーイングの新鋭機737MAXの連続墜落事故のドキュメンタリーを見ました。ボーイングがマクドネル・ダグラスと合併した頃から社内に蔓延し始めた株価至上主義が事故の背景にあるようです。人はお金や権力、物欲と自我の肥大化により直感を鈍らせ、どこからともなく感じる本能を尊ぶことができなくなるのでしょう。

視野を狭める世間常識

残り物には福があるということわざは、捨てるはずの食材にも言えます。我が家では酒粕を味噌汁に入れますが、こくが出てタンパク質とビタミンB2が豊富に含まれます。おからもよく使いますが、食物繊維が豊富で腸を健康に保ち、徐波睡眠の時間が延びて良質な睡眠が得られます。熟成が進む黒バナナは酵素が活性化しショ糖が分解されGI値が下がり太りにくく、トリプトファンやヒスチジンといったアミノ酸はストレス緩和に効果的です。これらはいずれも価格が安く、熟成した黒バナナはスーパーなどで見切り販売される割には甘味が増し最高のデザートになります。頻繁に使う大豆ミートは保存がきいて安価な上に、肉料理と同等以上に美味しく健康的です。ノーベル医学賞を受賞したリュック・モンタニエ博士は、新鮮な果物や野菜から抗酸化物質を摂り酸化ストレスを抑えることが免疫力を高め薬より重要と言います。過食が病気の原因になるように、お金を使うほど得るものが少なく、物を買うほど楽しさが目減りするのは、世間常識に従うことで視野が狭くなり本質を見失うからでしょう。

予言書は10年以上昔の本

侵攻から1か月が過ぎ、世界二位の軍事大国のはずのロシア軍の弱さと、西側に支援されたウクライナの善戦が目立ちます。プーチンを狂気に駆り立てた背景を推し量ることは困難ですが、終戦前後に日本に対してソ連が行った残虐性を忘れることはできません。他方で大量破壊兵器を持つとの触れ込みでイラクに侵攻したアメリカにも善良さはありません。不透明な時代の潮流をつかむ上で参考になるのは、10年以上昔に書かれた本だと思います。一般には最新の本が好まれる傾向にありますが、昔から今の状況を正確に伝えている、予言書とも言うべき書籍の著者の警告は参考になります。見極めのポイントは、特定の背景を持たず、金に無縁そうな地味な学者や研究者で、独自の情報チャネルや一次情報にアクセスしうる人です。人は未来が開けると安心しますが、何事も妄信せずに、そこから先は自分で探求するしかないと思います。生きる意味と目的を探求するDNAは刷り込まれた人の本能であり、手放せば真理に到達することもないのでしょう。

物珍しさより本音

連休中の観光地は賑わったようで、普段の生活を取り戻せることは希望につながります。国境も徐々に開かれ始めましたが、何が起きるか分からない時代に、国内と同じ感覚で行き来することは難しくなりそうです。花粉症の季節に二度ハノイに行き、確かに刺激的ですが、快適に滞在をするならやはり国内に限ると思います。物価が安いとは言え、もはやデフレ日本とそう変わらず、食べ物も概して日本の方が健康的です。海外旅行が億劫に感じられるのは面倒になったからばかりではなく、物珍しさより本音に近い満足を求める心境変化がある気がします。視覚情報を確認するためだけの観光地には興味が起きず、旅行で重視するのは一人だけになれて何かを感じられる静かな場所です。インスタなどで拡散され人が集まる場所を避け、観光客が知らない二級史跡やパワースポットと思しき場所をGoogleマップ頼りに探します。その場所と自分が直観的につながれ、何かを訴えかけて来るような所で時間を過ごすことこそ、観光の醍醐味だと思います。

不調は警告灯

那覇に滞在している間に刺激物と過食を控えた結果、長年患っていた逆流性食道炎は気にならないレベルに改善しました。不調は身体のバランスが崩れていることを告げてくれます。一部の医師によって血液浄化説が説かれるガンにしても、風邪にしても、肥満にしても同様で、崩れたバランスを元に戻せば治ると思います。この3週間ほどカフェイン抜きの生活をしたので、おそらく頻繁に飲んでいた紅茶が犯人ではないかと疑っています。原因が分かってしまえばむしろ不調は身体の状態を示す警告灯として機能し、いつでも健康に戻せる自信になります。山に行ったあとに持病だった腰痛が再発することはありますが、原因が分かっているので、下山後に適切なメンテナンスをすれば治ります。風邪も同様で、のどの痛みを感じた段階でジンジャーティーを飲んで何も食べずに寝れば一晩で治ります。こうした知恵は以前の日本では多くの人が実践していましたが、化学薬品を常用するようになり免疫力と思考力が低下した結果、医療ビジネスから抜け出せなくなったのでしょう。

働く休暇

那覇に3週間ほど滞在して、航空券、ホテル、2度借りたレンタカー、食費を含めて総支出は8万円ほどでした。高級ホテルなら一晩で使う金額ですが、見たかった沖縄本島南部、中部の史跡の大半やホテルを見ました。東京の自宅にいてもこれに近い生活費を支出することを考えると、ノマド的な暮らしが普及すると、産業分類上は旅行代金とも住宅コストとも言えない新たな市場が成立することを実感します。花粉症による不快さと生産性の低下が防げることを考慮するなら、これらは生活必需品の一種だと思います。設備と蔵書の充実した沖縄県立図書館なら、東京では予約者が多くて借りられない人気本をまとめて読むことができます。労働生産性が低いとされる日本固有の短期勝負の休暇という概念は、より長期の働く休暇にやがて変わっていくのでしょう。当たり前だと思っていた働き方から距離をおくと、働く意味や生きる意味について考えます。早くも泳げる砂浜で強い日差しを受けていると、何もなくても幸せに生きていけるような気がします。

自然の元で働く

夏を感じさせる那覇から冬のような寒さの東京に逆戻りすると日本列島の大きさを感じます。例年ですと3月下旬には花粉症が収まるのですが、今年は長引くのかもしれません。テクノロジー進化によって、固定された職場から解放されればどこにいても同じように生活でき、理想の働き方を叶えます。クリエイターを名乗る人はたくさんいますが、その本質は自分で仕事を作り出せることでしょう。四半世紀のリモートワーク歴で得た結論は、仕事の締め切りが間近にありさえすれば、働く場所はどこでも構わないと思います。ただし、生産性の低い場所をあげるならそれはオフィスと図書館です。オフィスは知人が近くにいるために気が散り、図書館は静かすぎて小さな音でも気が散るからです。脳の血流が著しく低下するこの季節こそ避粉地に職場を移すべきでしょう。非接触が奨励される社会では遠隔化の技術が進み、空も空気もきれいな本来あるべき場所で働くことが可能です。自然の元で働けば、人工的な空間に意識を沈めていくことの危うさを感じられると思います。

加齢が楽しみ?

東京ほどに暑くも寒くもない沖縄は、台風直撃や塩害被害などはありますが、住みやすい場所だと思います。それゆえ米国型食文化が流入する以前は、長寿地域である世界の代表的なブルーゾーンの常連です。早めに予約をすれば航空券は驚くほど安く、海外に行けない今は避粉地だけにしておくことはもったいないと思います。沖縄と言えば離島のリゾートなどに憧れますが、那覇近郊の都市インフラの整ったエリアでも海の美しいところはあります。国際通りの雑踏からそう遠くない場所にも自然が残り、神がたどり着いたとされる拝所は至るところにあります。神代から続く信仰心は、健康との間に因果関係を見つけることができるかもしれません。アニミズム的な自然崇拝や土着的信仰に基づく琉球神道は今も健在です。歳を重ねるほどに幸福感が高まるとされる、いわゆる老年的超越は高齢期に物質主義的で合理的な世界観から、宇宙的、超越的な世界観への変化に起因する説が有力です。沖縄に住むと加齢が楽しみになるような気がします。

市場の萌芽は業際に

帝国データバンクの景気動向調査によると旅館ホテルの先月の景気DIは3カ月連続で悪化し、2カ月連続で51業種中の最下位となりました。疫病騒動に加え、不穏な世界情勢や燃料価格の上昇、インフレ懸念など悪材料が多く、個人消費関連が下向いたかっこうです。観光依存の高い那覇では休業中の飲食店やホテルが多く、良い材料を見出すことが困難です。世界で同時多発的に起こっていることは事業戦略におけるシナリオ策定の重要性を認識させます。数年前の北海道や沖縄での不動産バブルは明らかに行き過ぎで、熱狂しているときは供給過剰に気づきません。どの業界にも相場が乱高下する一定周期のサイクルがあり、需要増加、相場上昇、供給過剰、相場下降を繰り返します。しかし、景気は循環し嵐が過ぎればまた春を謳歌できると楽観視しない方が良いのは、繰り返される自粛により消費のあり方が変化しているからです。市場環境の変化は危機とともにビジネス機会をもたらし、ホテルで言うならワンルームマンションとの業際に市場の萌芽を見出せるのでしょう。

模倣できないことが強み

那覇の商店街を歩いていると星野リゾートの催行するツアーに出会います。都市型観光という新境地を開拓するOMO5沖縄那覇が提供するもので、ローカル色の強い行きつけのスーパーである、フレッシュプラザユニオン前島店もコースに入ります。見知らぬ街に行くとスーパーに入ることを楽しみますが、独特の食文化を垣間見られるスーパーは立派な観光資源です。星野リゾートの強みは、変に力が入っていないのに卓越していて、迎合するわけでも押し付けるわけでもないのに、圧倒的な人気でREITが利回りを出せます。市場の欲しがる最大公約数を高値で売るマーケティングの秀逸さは戦略のハイライトですが、実はあまり参考になりません。多くの成功事例は見れば売れる理由が分かり模倣が可能ですが、星野リゾートの場合はそこまで熱狂的に支持される理由がよく分かりません。後講釈でその強さを分析することはできても、再構成して模倣しにくいことこそ真の強みかもしれません。

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