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進化した伝統


日本古来の履物である雪駄の専業メーカーサカガワとミズノのコラボ商品を、SNS広告で見ました。ミズノのソールがつくと2万円前後の価格になりますが、大和工房ブランドでサカガワが販売する雪駄なら3分の1程度の値段で買えます。当社が位置する奈良県西部は、かつて国内で90%のシェアを誇る和履物の産地で、江戸時代に農家の副業であったワラ草履作りが発端とされます。伝統的な技法を継承した和履き職人の手作業によるつくりに、日常使いができる履きやすさが加えられた雪駄は、実用的かつスタイリッシュで、履くと自然に背筋が伸びるような清々しさを感じさせます。伝統を継承しつつ、現代のライフスタイルに適合した新たなファッションとして提案することは古民家も同じで、先祖伝来の生活の知恵を未来に伝え、暮らしを体現する進化した伝統とは何かを考えさせられます。

古民家はタイムカプセル


川崎市立日本民家園に行きました。古民家に関心があるのは学術的な興味ではなく、商業施設として蘇らせた古民家が専ら関心の対象です。古民家は代々住み続けるごとに改造部分が増え、復原調査から建物の歴史を解きほぐし、建築当初の古い形に戻された姿は古の生活を伝えるタイムカプセルです。現代の工法を使わず、ハンドカットされた木材などの自然素材で作られた、素朴でシンプルな家は自然の風景に溶け込みます。古民家を商業的に再生するときに問題になるのは、どの時代まで戻すのか、現代人が求めるアメニティ水準をどこまで満たすのかという点だと思います。最大の制約は改修コストですが、現代的なテクノロジーで快適な家にしてしまえば、先祖代々受け継がれてきた知恵を消し去ってしまう気がします。文化の発祥は生き残るために必要な知恵だったはずであり、快適過ぎる古民家にはリアリティを感じません。

自己肯定感の原点


トランプ大統領を描いた問題作『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を見ました。トランプがプロデュースして人気を博したリアリティ番組の名を冠した作品は、グロテスクな映像も含めて迫真に迫り、その高い完成度により映画と現実の境界が曖昧になって行きます。アメリカでの興行成績はいまひとつで評論家も酷評気味ですが、近年最高の問題作であり、これを超える作品は当分作られない気がします。大統領選挙直前という絶好のタイミングで公開された映画は、トランプを貶めたいという政治的背景抜きに、人間の表裏を赤裸々に見せたかったのだと思います。大統領になる可能性のあった実在の人物を、ここまで汚く描けるのは、エンタメ大国アメリカの執念すら感じます。史上最高齢で就任した大統領が、不健康な生活にも関わらずあそこまでパワフルなのは圧倒的な自己肯定感であり、その原点を知る良い映画だとお勧めできます。

生きるために必要な動作


週1回のペースでストレッチを受けるようになり4か月が過ぎました。固まった筋肉を正常に戻すのに概ね3か月かかると言われていましたが、しびれるようなだるさは今も残ります。しかし、歩くのにも不自由するほど腰痛が悪化したときを100とするなら、今は30程度の痛みで改善効果があることは確かです。当時読んでいた腰痛関連の本や、診察をした医師がストレッチを勧めていたこともあってか、最初に施術を受けたときに改善する予兆を感じました。我が家のラブラドールを見ていると、誰が教えた訳でもないのに散歩の前には必ずストレッチをしています。ストレッチは動物が生きるために必要な動作なのかもしれません。腰痛の85%は原因不明とされますが、長年の悪い姿勢や体を動かさない習慣が筋肉をこわばらせ、腰に負荷をかけていることは間違いないと思います。

キング・オブ・サウナ


サウナ界の王と崇められるスモークサウナは常に気になる存在です。ストーブや煙突が発明される以前の原始的な浴室が、キング・オブ・サウナと呼ばれる理由は、単にノスタルジーによるものではありません。サウナブームの盛り上がりに違和感を覚えなるなか、先々週末に行った日本の伝統的な石風呂はまさにキング・オブ・サウナそのものでした。もはやサウナと呼ぶ必要さえなく、日本古来の蒸気浴こそが、ストレスと病気の蔓延する現代社会が求めているものだと思います。山口県を中心に瀬戸内海をはさんだ愛媛、大分にも分布する石風呂の歴史は平安時代にさかのぼります。しかし、人知れずひっそりと山奥に埋もれる野谷石風呂を見たとき、同様の入浴方法ははるか古代より世界中で普及してきたはずだと確信しました。火を外に出し、蓄熱した石が伝えるやさしい暖かさに触れると、今までのサウナへの妙なこだわりが無意味に思えます。

慎ましく清々しい生活


東京に住んでいると地下鉄やターミナル駅でオーバーツーリズムの弊害を日々目にします。その結果、都心のラグジュアリーホテルは庶民の手の届かない価格帯になり、出張で泊まれるホテルさえ無くなりつつあります。物価に関して優等生とされてきた日本ですが、日々の買い物でも野菜や果物の値段は少し前の倍の値段になり、燃料価格や水道料も倍増しています。他方で、地方都市に行くと価格上昇は幾分ゆるやかで、野菜などは都会より安く、温泉宿でも3、4,000円で泊まれるところがあります。自然の恵の恩恵を受けられない都会では、原価、経費、人件費の上昇がすべて商品価格に影響しますが、自給自足的に農作物を作り出すことができる地方部は、むしろ生活が豊かな気がします。田舎に行くと、現代人が欲望に溺れる前の、慎ましく清々しい生活が残っているのかもしれません。

テレビ終焉の年


メディア史に残るフジテレビのスキャンダルを端緒に、テレビの瓦解が始まるのかもしれません。売上ではすでにネット広告に逆転され、テレビを見ない人は一定数にのぼります。フジテレビのスポンサーの3割が離れたと伝えらますが、トヨタと経団連会長企業の日本生命が距離を取ったことは雪崩現象の予兆です。テレビCMの有効性に疑問が呈されていたところに、テレビCM自体が企業価値の棄損や消費者離れにつながるとなれば、横並び発想の日本企業が広告の出稿を取りやめるのは時間の問題です。大宅壮一氏がテレビの低俗性が、人間の想像力や思考力を低下させる「一億総白痴化」に警鐘を鳴らしたのは70年近く前ですが、昨年はマスメディアによる選挙報道の偏向ぶりが露呈した一年でした。もの言う株主とスポンサーの撤退により、今年はテレビ終焉の年として記憶される気がします。

進歩していない80年


金曜日は大月短期大学の最後の授業があり、以前から行きたかった大月防空監視哨跡に行きました。ここに特別の思い入れがあるのは、かつて自宅の近所にB29が墜落したからです。勿論その痕跡はありませんが、娘が通っていた中学校には、鈍く光る機体の一部が保管されています。富士山を目標に飛来したB29は、大月上空で右旋回し首都圏への空襲に向かい、その最前線が大月と言えます。日中は双眼鏡で監視を行い、夜間は聴音壕内で音から機種を探り警察電話で通報をしたと言います。この情報により空襲警報が発令され、立川にある飛行集団本部が迎撃の判断をしました。自宅の近所に落ちた機体は、1945年3月の東京大空襲を上回る562機もの機数で行われた5月24日未明の空襲で、6基の75mm高射砲が置かれた千歳船橋高射砲陣地からの砲撃による撃墜とされます。聴音壕の石積みは、戦後80年の世界が何も進歩していないことを物語るように見えます。

美学や生き様が随所に現れる


山口県の石風呂のインパクトが強過ぎたので失念していましたが、その帰路に立ち寄った宇部サウナセンターは、国内トップクラスの施設だと思います。まず小野湖の湖畔にある敷地も非凡ですが、自作のドーム型サウナが独特です。さらに肉厚でスパルタンなストーブは、鉄工関連の仕事をするオーナーの自作です。元々は養魚場の施設であった小屋を、10年ほど前から改修をはじめ、地元の赤土を練り込んだサウナは4年前に作ったと言います。自然豊かな水辺は、サウナにとって最高の立地です。シーズンを通して17℃の水風呂は、地下120mの岩盤層から自噴する、ほんのり硫黄の匂いがするph9.6の冷鉱泉が贅沢に使われます。何よりも、鉄工屋、お好み焼き屋、風呂屋、街の便利屋を営む、オーナーの美学や生き様が随所に現れる施設は魅力的です。

街中の秘湯


昨日は山梨県の竜王ラドン温泉に泊まりました。源泉100%掛け流し、驚異の秘泉などとうたい、WEB上には泉質を賞賛するコメントが並びます。地下1,000メートルから湧き出たナトリウム-炭酸水素塩泉は毎分130リットルの掛け流しで、肌にまとわりつくようなお湯は飲泉もできます。老朽化が目立つ館内は秘湯風情が漂い、東京から1時間半の街中の秘湯といった雰囲気です。指示通りに浴槽に10分つかり、次にラドンガスが送られるラドン吸引室の浴槽に20分入りますが、一般の温浴以上の効果は感じません。浴室内には病気の治効成績90%と書かれ、ここまで言い切って大丈夫なのか心配になるほどですが、サウナ以上の発汗作用も、山梨最強の湯治効果も体感することはできませんでした。前評判で期待値が上がり過ぎたのか、サウナに入り過ぎて通常の温浴では汗をかけない体質になったのか、自分にとっては普通の温泉でした。

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