発想力は移動距離に比例する

長野県や福島県と東京の間をよく移動します。人類は、快適な環境を求めて移動をしてきたことで生き延びることができたように、移動は本能的な欲求のような気がします。コロナ禍におけるリモートワークの半ば強制的な実証実験により、自然のなかで働く可能性に多くの人が目を向けました。イノベーションを起こすには今までにない発想が必要になりますが、「発想力は移動距離に比例する」とも言われます。モーツァルトは人生の3分の1を、演奏旅行を兼ねた旅に費やしたと言われ、世界史的な偉業の多くは旅から生まれました。日常生活を離れる旅は視野を広げ、刺激を与え、創造性を発揮させます。森林浴など、自然空間への転地効果や運動療法は、主にストレスマネジメントの観点から注目されてきましたが、本領を発揮するのは0から1を生み出すような、付加価値の高いビジネス創造の場面だと思います。

睡眠時間を気にする必要はない

今朝は午前1時過ぎに韓国から戻った娘を迎えに羽田空港に行きました。復活したインバウンドにより真夜中の空港には人があふれ、多くの人がビデオ通話をしているためか、Wi-Fiの速度は悲劇的な遅さです。学生時代は夜型生活でしたが、少なくともこの数十年は朝型で、予定があると目覚まし時計なしに勝手に身体が覚醒します。7時間睡眠が最も長生きというデータを信じていないのは、短い睡眠時間でも頭はクリアで疲れも取れると感じるからです。重要なのは最初のノンレム睡眠のサイクルと睡眠深度のはずです。この時成長ホルモンが分泌され、その量は1日の分泌量の7割とされます。5分以内に眠るとノンレムへの導入が短くなり、効率よく脳を休め、傷ついた体を修復して脂肪を燃焼し、タンパク同化作用で筋肉をつけるとされます。最初のノンレムに集中して眠るなら、睡眠時間を気にする必要はないと思います。

繊細か微細か

Netflixの「ファイブスター・シェフ」を見ました。ロンドン屈指の高級ホテル、ザ・ランガムにある、アフタヌーン・ティー発祥の地であるパーム・コートのヘッドシェフ選考に密着したドキュメンタリーです。選りすぐりの逸材7人から一人に絞るプロセスで、それぞれが成長し、誰が選ばれるのか最後まで目を離せません。20代や入れ墨を入れた参加者が多いことも印象的で、世界トップの伝統的価値観にも変化の兆しを感じます。エンジニア出身者や、正式に料理を学んだ経験がない人もいて、新風を吹き込むことを期待されているのでしょう。特別の日にふさわしい唯一無二のレストランとして大金を払わせ、独創的で利益を出すメニューが求められ、インスタでバズることも重要です。心を動かされない料理が、容赦ない辛辣な言葉でこき降ろされるのは、料理の繊細さに大金を払う人がいるからでしょう。一瞬で消える微細な差への追求は続きそうです。

カウンタークロックワイズ・ドライビング

今朝は八ヶ岳に登ってから東京に戻るつもりでしたが、夜中に目が覚めそのまま帰ることにしました。夏の夜のドライブは渋滞とは無縁で移動時間も短く、涼しい上に運転を楽しめ、早朝登山をあきらめる価値があると思います。空が白み始める大月あたりの国道20号線は気持ちの良いワインディングロードで、山中からヒグラシの合唱が降り注ぎます。人が心から老いるとすれば、カウンタークロックワイズ研究にあるように、若い時代を追体験することは効果的なアンチエイジングで、真夏の夜のドライブなどは最適でしょう。1.3Lのフィアットのディーゼルエンジンをレッドゾーン近くまで回すと、最初に乗った初代ギャランの同じ排気量のエキゾーストノートを彷彿とさせ当時の記憶が蘇ります。相模湖ではバイクの事故を見ましたが、若者を引き付ける夜中の魅力は危険な魔性を持つからでしょう。

スピードハイクは最良のリトリート

東京より10℃ほど涼しい長野県富士見高原に来ました。同じ長野県でも妻は電車で北アルプスに行き、娘は大学の友人と会いに韓国に行きました。家族で旅行に出るのは年に1、2度あるかないかですが、適当な距離を保ち、好き勝手に過ごすことにはメリットがあります。一つは内省の時間を持てることで、昨夜は珍しく8時間たっぷりと睡眠を取り、今朝は編笠山と西岳に登り7時過ぎには下山しました。心身を整えるリトリートは、一人で過ごすに限ると思います。登りは息を吐き切る呼吸で日頃の浅い呼吸を直し、下りは走る瞑想で雑念が消え、脳のエネルギー消費が削減されます。食事の量も減らしますので、体内の未消化物は山へのハイキングでエネルギーに変わるはずです。十分な睡眠と、脳を休め、ミトコンドリアを強化する空腹でのスピードハイクは、自分にとって最良のリトリートです。

コンプラより人間性

中古車販売大手のビッグモーターによる保険金不正請求の波紋が広がります。強引な利益追求方針と修理粗利1台14万円のノルマにより、半ば組織的に車を故意に傷つける器物損壊が横行し、新品と偽り中古部品を使う詐欺行為もあったとされます。損保会社からの出向者も複数いて、その火種は周辺に及ぶ可能性があります。保険料上昇につながる企業犯罪にも関わらず、経営陣の会見が開かれないことも異様で、社長の報酬1年返上も信頼回復とは程遠く、金には金という品性の無さを感じます。他方で、コンプライアンスを強化することは、品行の劣る人間が成功を手にする社会の退化への対策にならないと思います。それはコンプライアンスが、組織人の保身のために使われ、企業経営からダイナミズムを奪うからです。人間性の回復なしに、経営に道徳を取り戻すことはできないのでしょう。

最も自然の恩恵を享受する世代

各地が熱波に襲われる時期ですが、連休初日に行った雨の甲子高原では、車載の気温計が14.5度を指す天然のクーラーによる別天地です。氷点下15度の厳冬期の寒さは身に染みていますが、体温を超える灼熱の東京と違い、自然の美しさに救われます。初めて甲子高原に来た7年前以来、心の健康を保ってくれるのは、阿武隈源流のブナ原生林の癒しだと思います。源流地域は雨が多く、那須おろしと呼ばれる突風は鉄筋コンクリートの建物を揺らし、雪の日なら1m先も見えない過酷な自然環境だとしても、無機質な都会と違い、生命の営みを感じることができます。祖先の苦労のおかげで、現代人は自然の脅威から身を守ることができるようになり、人類史上最も自然の恩恵を享受できる世代だと思います。しかし、自然と隔絶した生活を続けるうちに、その恩恵を過小評価し、感受性を失い、我欲に翻弄されているのかもしれません。

仕事は人生の目的

日曜日は八ヶ岳の麓大泉町にあるワーキング・プレイス8MATO(やまと)を見せていただきました。八雲神社に隣接する約2,700 坪の土地を利用した施設は、森を含む施設全体にWIFI6による高速ネットワークが完備されます。赤松を伐採した明るい広葉樹の林でも200Mbps以上で接続できると言い、アウトドアで働くワークスタイルを提案します。建物に使用されている木材は、敷地で伐採された赤松などが使われる究極の地産地消です。礎石にした自然石の形状に合わせて、床を支える柱の底を刻んで乗せる伝統構法「石場建て」が採用され、柱や梁にも釘やボルトは極力使わず木組みされる日本古来の構法と技が生かされます。デンマーク発のテントブランドROBENS(ローベンス)の二張りのテントも常設され、さらに森に溶け込むこともできます。過酷な通勤電車と殺風景なオフィスから解放され、自然の元で働くなら、仕事は人生の目的になるのかもしれません。

トレランは脳疲労を癒す

週末は連日八ヶ岳の編笠山(2,524m)、西岳(2,398m)に登りました。冨士見登山口から3時間でラウンドできるこのルートは、大きな岩塊や八ヶ岳らしい樹林帯を抜ける変化に富んだトレイルです。昨日のように暑い日には、その冷たさが際立つ乙女の水も大きな楽しみです。日の出前に登り始めると7時には戻れる手軽さがゆるトレランの魅力ですが、最大のメリットは脳疲労に効くことだと思います。スピードが増す下山道は着地に集中をするので、サウナや瞑想により脳疲労が緩和するように、デフォルトモードネットワークによる脳のエネルギー消費を抑えてくれます。転倒の原因になる、滑る、転がる、躓く障害を素早く見つけて着地場所を探すと同時に、なるべく腰への衝撃とソールの減りの最小化を瞬時に判断します。一方で登りは規則正しいリズム運動によりアイデアを思いつくことが多く、脳を健康に保つことに役立つ気がします。

美しく成長する住宅

土曜日は秘境桧枝岐に近い南会津の古民家を見に行きました。屋内に入ると堅牢なつくりであることが分かり、2メートルの降雪がある豪雪地帯ながら、あと100年ぐらいは使えそうです。新潟との県境が冬季閉鎖になり、東京からアクセスが悪い陸の孤島のような山中に、140年も前に立派な家を建てたことが不思議に思えます。今より雪が深かった時代の先人の苦労は、想像を超えるものでしょう。古民家は人間の寿命より長く使え、代々受け継がれてきました。代替わりする度に改造され、近代になるほど自然と調和しない美的感覚に欠ける造形になっていきます。生理的な快適さや利便性を追い求めた結果、民家のプロポーションは変化し、日本人の審美眼は損なわれてきたと思います。家も車も壊れる前に買い替える風潮の日本で、代々直しながら使い続け、美しく成長していくような住宅が作られる日は来るのでしょうか。

Translate »