ロウリュをしたがる人々


八ヶ岳にいるときは松本の温浴施設、林檎の湯屋 おぶ~に行きます。往復100km走ってでも行く価値があると思います。一日滞在しても900円という良心的な価格により、サウナランキングにコスパ部門があるなら一位を狙える施設です。「サウナイキタイ」の長野県部門2位ですが、トップは伝説の施設「The Sauna」ですから実質トップと言えます。サウナは本格的で、多くの人は6分ともたずに出ていきます。二か所のサウナは温度も湿度も十分で、大半の人は下段に座ります。3分も入れば十分な汗をかけるのですが、困るのはロウリュをしたがる人が多いことです。すでに湿度も温度も十分なのに、よせばいいのに何杯もかけてしまい、あまりの熱さに耐えきれずロウリュをした本人が真っ先に出て行きます。自分の体に聞けばこれ以上のロウリュは不要と分かりますが、サウナと言えばロウリュという思い込みで形から入る人が多いのだと思います。

スペクタクルなキャビン


今シーズンは例年になく山に登りました。普段の八ヶ岳に加え、北・南・中央アルプス、乗鞍岳、御嶽山、白山、雨飾山と比較的広範囲なのは、ベースキャンプとしてN-VANが快適な寝室を提供したからです。車中泊なのに家よりよく眠れるという逆転現象が起き、山を楽しむハードルが下がりました。自然に囲まれる登山口は、暮れ行く時間の稜線や星空を眺めるスペクタクルなキャビンで、もはやホテルに泊まる価値さえ感じなくなりつつあります。地元の温浴施設やスーパーを利用しますので、地域の生活に触れることもできます。北ノ俣岳の登山道修繕ボランティアに行ったときは妻と2人の就寝で、さすがにこれは無理があるものの、緊急用としては使えます。初めて買った国産車で、自分史上最低価格の商用車にこれほど魅了されるのは、人生をシンプルにしたい今の自分に、顕示的消費とは無縁の機能特化の万能車が心地よいからでしょう。

山はすでに冬


山で聞かれて悩ましいのが「あと何分ですか?」という質問です。スピードハイクと標準タイムでは倍ほど違いますし、下ってきた時に上りの時間を聞かれても誤差は広がります。YAMAPのような登山アプリが普及したことで聞かれることはなくなりましたが、乗鞍岳に登ったとき、久しぶりに聞かれました。初老の夫婦が三本滝駐車場から登り始めて、帰りはバスで戻ることを想定しているようなので、次のバス停までのおおよその時間を伝えました。聞いてくるのは山に不慣れな人ですから長めに伝えますが、教えてからあの夫の疲労具合ならもっとかかるかもしれないと心配になりました。トレイルはよく整備され、まだ午前中だったのですが、バスの時間も調べていないようなので、万が一バスを逃すようなことがあれば途中で歩けなくならないとも限りません。都会は残暑でも、この時期の山はすでに氷が張る冬であり、季節の境目は遭難への警戒が必要です。

早期発見の嘘


多くの宣伝は恐怖と脅しを使いますが、頻繁に表示される「ガンの早期発見」広告は不快であり、有害だと思います。検査精度が上がるに従い、一生悪さをしない潜在ガンを見つけてしまい、米国などでは過剰医療が問題視されます。生前には発見されず、死因にもならなかった潜在的なガンは実際に一定数が見つかります。問題なのは「早期発見」が過度に単純化されることで、検査前だけ節制するような本末転倒も起きます。問題はいくら早期発見をしてもガン自体は減らないことです。ガン検診には科学的根拠のあるものが含まれ、全てを否定するものではありませんが、肥満や身体活動不足、飲酒、加工肉・赤肉の過剰摂取を避け、代謝状態を良好に保ち、病気を寄せ付けない身体を作ることが先決のはずです。二次予防にばかり注意が向く社会は不健全で、病気を未然に防ぐ一次予防は、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病も防ぎます。

不眠症はエジソンから


この夏の意外な発見は、車中泊の方が家よりよく眠れることです。これは自宅よりN-VANの方が寝室として優れているという話ではなく、日没後は最小限の光と人工音のしない生活により、人は本来の睡眠リズムを取り戻すのだと思います。寝室をなるべく暗くすることは家でも心掛けてきましたが、おそらくそれより重要なのは、日没以降は明りをほとんど使わない、昔ながらのリズムで生活をすることだと感じます。これを体感できたのは、人工の光と音をほとんど浴びない登山口の駐車場が実験環境になったからです。もともと睡眠が浅く、4時間程度で起きてしまう日が多いのですが、異例なことに登山口では8時間も寝てしまうことがあります。サンプルが少ないので確信めいたことは言えませんが、エジソンが電球を発明した時から人間の不眠症は始まった気がします。

スピードハイクはレジャーの王様


日曜日は扇沢から針ノ木岳に登り種池山荘まで縦走しました。19.7km、累積標高2,250m、3,000kcalある針ノ木サーキットと称されるラウンドコースです。稜線に立つと、これから歩く全コースの山を一望できます。痩せ尾根を走るのは危険ですが、スピードハイクなら扇沢まで7時間半で戻ってこられます。景色を見る余裕すらないトレランほどストイックではなく、他方で、全行程を最大心拍の8割程度を目安に歩き、休憩は写真撮影と水分補給、腰痛対策のストレッチだけです。最小限の荷物でなるべく遠くまで行くことに面白さを感じます。スピードハイクがレジャーの王様だと思うのは、移動・運動・自然・挑戦・精神的高揚を低コストで手に入れられるからです。山岳という最高のフィールドで、自分の身体そのものがアクティビティの主体となる点に自由を感じ、長時間の有酸素運動により脂肪を燃焼させ、筋力を高める健康効果まで期待できます。

カツ丼を食べに山に行く


以前はカツ丼をよく食べました。しかし一日一食生活になると必然的に外食をする機会はなくなります。例外は多少ハードな山歩きの後で、無性におなかが空く時があります。先週木曾駒ケ岳に登った後も、刹那的な食欲に負けて通りすがりの店でソースカツ丼を食べました。いかにも観光客向けの店で、少し豪華ですが値段も相応です。食べたかったのは、観光客向けに演出された商品ではなく、昔からその町で食べられているオーセンティックなカツ丼です。帰宅してそんな店はないか探していたところ、カツをタレにくぐらせて揚げたての香ばしさとしっとり感が合いそうなカツ丼を出す、日常食に近い定食屋を見つけました。昭和から続く食堂の雰囲気に身を置きたいと感じるのは、食欲が最大だった学生時代の記憶が蘇るからでしょう。ついでに店から比較的近い塩見岳に登ることにしました。

山の評価は登山口で決まる


塩見岳に登りました。東峰、西峰ともに3,000mを超す双耳峰です。今シーズン登った山のなかでは黒戸尾根から登った甲斐駒ヶ岳に次ぐスパルタンさで、距離24.7km、累積標高2,345m、消費カロリーは3,310kcalあり、とくに標高2,753mの塩見小屋から山頂までの標高差300mを岩場で一気に稼ぐややテクニカルなルートです。日帰りの難易度の高い山は登山口で前泊する人が増え、前日の17時半に着いたときには駐車場の8割がたが埋まっていました。メジャーな山の場合、登山口にはトイレと飲料水を確保できる所が多く快適です。オートキャンプ場ではありませんので、テーブルや椅子を持ち出す人もなく、日没後はみな車のなかでひっそりと過ごし明かりが漏れる車もありません。鳥倉登山口が優れるのは南アルプスの稜線を間近に望めることです。夕焼けに赤く染まる山を見たあと、稜線の上に月が昇り、こんな絶景とその後の星空を寝床から楽しめるホテルはありません。

一人のためのキャンピングカー


秋の長雨でぬかるんだ道に敷くウッドチップをもらいに、清掃センターに行きました。N-VANなら90Lの袋8個を楽々飲み込み、左右のスライドドアからの積み込みも楽です。積載重量が350kgから300kgに減りますが、以前旅館で使っていた軽トラと違い、荷物を濡らさずに運べます。一人のためのキャンピングカーとしてはきわめて優秀で、車中泊・普段使いと仕事の兼用車として、あらゆる場面を一台でこなす合理的な道具だと思います。他方でN-VANの弱みは商用車なりの乗り心地や直角のリアシート、53psの非力さです。しかし当初は文句を言っていた家族も文句を言わなくなり、要は慣れの問題だと思います。53psも山道でなければ気にならず、むしろエンジンを回して走る楽しみと受け止めることもできます。どれほど弱点があろうとも、一人の宿泊に最適化された親密な空間を、狭い林道を通って登山口まで持ち込めるN-VANに代わる車はありません。

消費価値から距離を置く


シルバーウィークの支出は比較的少額でした。権現岳、木曾駒ケ岳、北ノ俣岳に登り、登山道修繕ボランティアに参加し、山がオフの日は川に面する美しい友人宅で素敵なランチを頂きました。支出額を抑えたという気持ちもありますが、自分にとって効用の高いものに資源を集中した結果、あまりお金を使わなかったという感覚です。台風の影響により行楽地の天気は冴えませんでした。しかし、山ごとの天気予報を見ていると変化の傾向がつかめ、どの山に行けば、悪天候と混雑を避けながら自然の中で快適に身体を動かせるかの見当がつきます。混雑している場所での消費行動は受動的になり、お仕着せの商品を買うことは、過ごす時間に関与する余地を小さくします。現代の消費空間で誰かが用意した娯楽を消費するより、世間的な消費価値から距離を置き、自分で価値ある時間をつくる方が休日の満足度は高い気がします。

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