
70人用とされる直径90cmの大鍋を使い連日薪によるパエリアを作り、朝晩に大量の米とオリーブオイルを摂取しているにもかかわらず、体重が増えません。極論ですがぼくは適度な運動をしている限り何を食べてもよいと思っています。
例年この季節になると1週間程の休暇を取り旅に出ることが常でした。しかし新甲子温泉で暮らすようになり、切実に旅に出たいと思うことがなくなりました。もちろん興味の対象として、世界には見てみたいものや行ってみたいところはあります。しかし、楽しみとしての旅は自分の足で行くトレッキングが最高だと思います。今のぼくが魅かれる旅は宿から続くトレイルの先にある沼原湿原のブナ原生林であったり、標高1,900m級の会津の山々の稜線をめぐる2、30kmの小旅行です。
50歳になるまで全く運動をしなかったぼくをここまで変えたのはこれらの美しいトレイルです。運動をすると血液中のトリプトファンのレベルが上昇し脳内のセロトニン濃度が上がることが分かっています。人間は本来動くように生まれついた動物であり、これらのトレイルを使い、運動の楽しさを多くの人に知ってもらえる宿にしたいと思います。
今朝の新甲子温泉は夜明け前から快晴で美しい星空が広がりました。4時半に那須の峠の茶屋を出発して朝日岳、茶臼岳を2時間ほど歩きました。早朝の茶臼岳、朝日岳一帯ではかなりの確率で美しい雲海を見ることができ、雲海に浮かぶ日の出を望むことができます。
昨日は70人用とされる90cmのパエリアパンで初めてパエリアを作りました。市販されるパエリア鍋としては最大のもので、厨房で洗うこともできませんしフライパンを移動するのも容易ではありません。写真の左に写る17人用52cmの鍋が2,000トンクラスの駆逐艦なら、90cm鍋は64,000トンの戦艦大和といったスケール感です。わずか6人分を作ったために鍋の傾きが影響してご飯の炊きあがりに若干のムラがありますが一応及第点です。この2週間ほどは毎日パエリアを作っていて、この半世紀生きてきたなかで食べたパエリアの量を、超えたのではと思えるほどです。
昨夜は明るい月が昇っているのに、台風一過のためか満天の星空でした。外に椅子を持ち出し、さわやかな夜風に吹かれながら虫の音を聞いていると、夏が来ないままに秋の気配です。今朝の新甲子温泉は気温15度ほどと寒く、5時前に峠の茶屋から出発して茶臼岳を目指すと秋の空気です。今は廃村となった三斗小屋宿跡へのルート調査も兼ねてラブラドールと25kmほどを歩きました。累積標高は1,693m、消費カロリーは1,311Kcalですが、何も糖分を取らなくても水だけでエネルギーに不足はなくこの倍くらいの距離は歩けそうです。糖質依存の栄養学常識が塗り替えられる日は近いと思います。

明け方の激しい雨があがり、今朝の新甲子温泉は深い霧に包まれています。昨日は同い年の前職の同僚が日本一周の途中に宿泊してくれました。47都道府県に足跡を残す旅のために、宿には昨夜18時半に着き今朝は4時半に出発するあわただしさです。カメラ、スマートフォン、充電器と着替えだけの荷物は驚くほど少なく、長距離トレイルレース並みのストイックさです。旅の魅力はぼくがトレイルレースにはまる理由の一つだと思います。60kmを超えるような長距離レースになるとどこか長旅をする感覚があります。
今日も新甲子温泉は晴れて、泊まりに来てくれた以前の職場の同期夫妻と5時過ぎから茶臼岳に登りました。峠の茶屋からのアクセスは高山感あふれる百名山へのアクセスとしてはきわめて良好で、駐車場から30分ほどで標高1,900m級の那須連山の稜線に出ることができます。茶臼岳の山頂で、美しい雲海の上に昇った朝日を浴びながら大きく深呼吸をすると、全身に山の新鮮な空気が取り込まれるようです。宿に戻り温泉に入ってからパエリアパンで焼いた野菜や卵、フレンチトーストの朝食です。今後はこれを朝食の定番にしようと思います。
今朝は2時半に起きて温泉に入り、火照った体を冷まそうと外に出ると星空が見えます。なぜか焚火がしたくなり、玄関先に椅子を持ち出し、工務店でもらった廃材で焚火をしながら星を眺め紅茶を飲みます。薪の焼ける匂いを嗅ぐとアメリカ西海岸の海沿いの高級リゾートを思い出します。東京では星空も焚火も制約がありますが、ここではごく日常的に楽しめます。都市の豊かさに疑問を覚える人が増えることは不思議ではありません。何もないのにすべてがあるのが田舎だと思います。
