食糧危機は怖くない?

冬に始まったウクライナ戦争が夏を迎え、ロシアとウクライナが小麦の29%、世界の総カロリーの12%を輸出する最大の穀倉地帯であることから食糧危機はもはや不可避とされます。国民に食糧備蓄を呼びかける国もあり、家畜の餌を人間にまわすといった方法も含め抜本的な解決策は見当たりません。ひとたび食糧危機が顕在化すれば棚から商品が消えることは必至ですが、食べることを最小化することが最大の対策かもしれません。不安を増大させる原因が食への欲望なら、食べることへの執着を手放すことが有効な対策でしょう。大半の人は賛同しないでしょうが、人間は通常考えられているよりはるかに少ないカロリーで生きることが可能です。ライトイーターと呼ばれる300kcal程度で生きる人は世界に数十万人いるとされ、食べる量を減らせば食べ物への集中度が増しむしろ満足度は高まります。食糧危機は、不健全な食べ過ぎ解消と人体の可能性追求の絶好の機会になるのかもしれません。

大衆車の方が幸せ

鹿児島県南部の知覧町まで車で往復し、初日は1,100kmほどを走りましたが、フィアット最小クラスの大衆車でも、以前乗っていた排気量が4倍の車でも遠乗りの快適さや楽しさには違いがないと思います。30年前に乗っていた初代のフィアットパンダは中央道の談合坂の登りでは80km/hを維持するのが精いっぱいでしたが、ほぼ同じ排気量ながらターボを備えた現行車は新東名の多くを占める120km/h区間の流れに乗るのに何のストレスもありません。GT-RやLX600といった国産車は今や2,000万円クラスですが、移動が車の本質であるなら、10倍の値段を払う価値を感じません。小さい車なら制限速度の範囲で走ってもストレスを溜めませんし、運転していることさえ忘れるような快適な車のように眠くなることもありません。高級品になるほどあらゆる商品の限界効用は急速に逓減して行き、変な執着がわかない分大衆車の方が幸せなのかもしれません。

塩と砂糖と脂肪だけ

普段は外食をほとんどしませんが、旅先での食事は大きな楽しみです。旅行中も一日一食ですが、他方でグルメ情報を血眼で調べることもありません。一番印象に残った食事は九州の帰り道に三原市で泊まった宿です。1泊2食4,900円という破格の値段は戦後まもなく建てられた施設が老朽化しているからですが、それを懐かしい昭和の風情と受け止めるのはこちらの勝手です。大金を払えば期待が先行する反面、この値段なら何を出されても平静でいられます。しかし予想を超える料理に手抜きはなく、朝夕に出された脂の乗った焼き魚の美味しさは格別でした。良い食材があればあとは基礎調味料の問題であり、ヒトの美食追求とは詰まるところ塩と砂糖と脂肪を求めているだけでしょう。前者は身体の維持に必要であり、後者はかつて貴重な食糧であった果物を見つけた時の麻薬的な歓喜の記憶だと思います。グルメ情報の氾濫は過剰な期待と執着を増やすだけのように見えます。

自分の能力を使う移動が旅の本質

アメリカなどに比べて道路インフラが見劣りする日本ですが、九州まで自動車で移動するメリットは少なくありません。何より公共交通機関のない場所に自由にアクセスでき、天候や時間の変更に柔軟に対応が可能です。ラブラドールと一緒に旅ができ、夜は犬小屋になります。自動車は移動する家でもあり、自宅を遠く離れてもそこは部屋の一部です。運ぶことを気にせずお土産を買うことができ、自宅にある家電品を積んで行けば湯治宿でも自宅同様の快適さが確保されます。自分の足ではないまでも長距離ランニングに近い感覚が得られ、往復3,200kmを走ると一種の達成感とともに移動を主体化できます。自動車の運転は左脳で判断し、右脳が車の動きをイメージする共同作業とされ、無意識に周囲を見渡し手足が勝手に動いて状況を予測しすべてを把握し、同時に集中しています。自分の能力を使い移動することは旅の本質なのかもしれません。

昭和の感性は知的で大人?

昨日は父方の親戚が住職をする広島県内の寺を訪れました。故郷らしき場所を持たない自分にとっては、子供の頃、夏の暑い時期に来ていた記憶をとどめる特別な空間です。山の中腹にある境内から瀬戸内海越しに眺める島々は、田舎ならどこにでもある当たり前の風景の連続する心地よい場所です。質素な暮らしを通した静寂の中でこそ自分の内面に焦点を合わせることができると思います。その後宿泊した三原市の旅館は戦後まもなく建てられた懐かしい昭和の風情を残す建物で、床の間や明り取りの障子の造作など、簡素ながら日常のなかに芸術性に接する美意識を当時の日本人が持っていたことが分かります。日本が今ほど豊かになる以前の昭和の感性の方が、今風の快適な宿泊施設より知的で大人に見えます。

生きたかった未来

昨日は九州に来る最大の目的であった知覧特攻平和会館に行きました。鹿児島県にはなぜか縁がなくて訪れるのは高校生以来です。印象的なのは死を目前とした遺書の字の美しさです。達観の境地がそうさせるのか今なら高校生か大学生の年頃なのにどの遺影の写真も落ち着き払って見えます。展示物について多少の知識はありましたが、それでも自然と涙が流れます。心無い平和活動家は戦争賛美と言いますが、若い彼らが生きたかった未来を生きるすべての日本人が見るべき場所だと思います。特攻作戦を美化したり肯定すべきではありませんが、福島の原発事故でも国難を救ったのは無責任な指導者ではなく捨て身で対処した最前線の人たちです。平和が当たり前になると無事に生きられることに感謝をすることもなくなり、自分の幸福ばかりを追求します。戦争が異常であるなら、歯止めのない我欲と堕落に満ちた今の風潮も異常でしょう。

些細な親切でも感動する

昨日は鹿児島の妙見温泉の湯治棟に泊まりました。一人3,500円ながら3人が泊まるのに十分以上の6畳二間で、何より三方を木立に囲まれた露天風呂は高級旅館並です。建物は場末の湯治場の風情ですが、快適な高速Wi-Fi環境が確保され、必要な機能以外は過不足なく、金額に見合った以上の価値を感じる宿は最高です。高級な宿に泊まることがないのは単にケチということに加え、値段の高い宿はいずれも不要なお仕着せサービスばかりが目立ちこの基準を満たさないからです。レストランでも旅館でも値段が高くなると、売り手側が偉くなり押し付けサービスが増えていきます。高級店になるほどお客に主導権があるようで、実は押し売りを断れないだけだと思います。高いお金を出して何か不満が発生すると許せない気持ちになりますが、この値段で泊まるのは申し訳ないと思える値段の宿に対しては元々感謝しかないので、不満を感じるはずもなく些細な親切でも感動します。

快楽を求めるのは生き残るため

昨日は朝の博多を旅ランしました。東京とは違い4時にはまだ薄暗い西日本では、汗をかかない爽やかなランニングを楽しめます。自宅にいるときは一切走りませんが、旅先では街の全体を把握するために走ることが最良であり、位置関係と距離を身体感覚として理解できます。自分の足で長距離移動することが当たり前だった時代には、すべての旅人はアスリートでしたが、現代の軟弱なアスリートは旅先ぐらいでしか走りません。面倒で苦痛なランニングは、7割の人が1年以内に止める挫折しやすい運動ですが、走り終わると爽快です。米国ではマラソンがブームになるのは大恐慌やベトナム戦争などの国家の危機とされ、911テロの翌年にはトレイルランニングが突然ブームになりました。危機が訪れると人間は原初的な生き残りのスキルである走ることに目覚め、同時に生き延びることを優先してそのDNAは、刹那的な快楽のトレッドミルを走り続けさせるのかもしれません。

車でもランニングハイ?

昨日は博多に宿泊しました。博多には何度も来ましたが、車で来るのは初めてです。120km/h制限の新東名を使うと名古屋まではあっという間で、朝3時に東京を出ると博多には15時前に着きます。海外に行けるほどの時間をかけて行くと、国内であってもある種の充足感があります。大きくて快適な車の方が長距離移動に適していると思われがちですが、最小クラスの車で行くことにむしろ意義があると思います。二足歩行を手に入れた人類の体は長距離走を得意として、ヒトの二足歩行はチンパンジーの四足歩行の4分の1のエネルギーしか使わず、長距離を走るために人体は進化したとされます。ヒトの骨と筋肉、関節は長距離走に伴う反復的な負荷を吸収し、人類は体毛をなくして発汗という冷却システムを得たことで、動物を追い詰めて捕獲することができるようになりました。マラソンで得られるランニングハイは獲物を捕まえた達成感の名残とも言われますが、自分の足で走らなくても博多の景色がいつもと違って見えます。

少食こそが美食

普段使うスーパーにも値上げの波がやって来ています。家計を直撃する光熱費や燃料、食品の値上げへの有効な対策は消費量の削減でしょう。一日二度の食事を一度にすればコストは半減し、よく噛む瞑想的な食事は無用に食べる必要がなくなり健康的です。食事を減らせば体調は良くなり、何より美味しく感じ充実感を得られますが、長年の習慣を手放すのは寂しいもので、たいして空腹でもないのに惰性的に食べてしまいます。空腹時の食事は労せず美味しいものを食べる最良の方法ですが、自然の道理に気づく人は少数です。食品の値上げを積極的に受け入れ、食べない自由に近づくことこそ建設的だと思います。美食文化は豊な人生を想像させますが、食欲への衝動は加速され抑制が効かなくなります。17世紀のイギリスの哲学者ジョン・ロックが言ったように、「美味とは食物そのものにあるのではなく、味わう舌にあるもの」であって、味覚が鋭敏になる少食こそが美食でしょう。

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