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無補給で1,000km走れる


夏休みの自由研究は「ファットアダプテーション」です。体が抱える脂肪を効率的に燃焼させる回路を活性化させると、無限とも言える燃料を手にすることになり、体重60kg、平均的はBMIの男性の場合、無補給のまま理論的には1,000km以上の距離を走れる計算です。しかもインスリン分泌が大幅に抑制されるために血糖値は安定し、空腹感をあまり感じず、ハンガーノックとは無縁のまま安定したエネルギーレベルを維持できます。一部のウルトラエンデュランスランナーが気づいた、太古から続く人体の神秘が科学的な裏付けを得るには、2016年の「FASTER Study」を待たねばなりませんでした。TJARのような400km超の山岳レースを、なぜ人間は走り切れるのか、58歳のマルコ・オルモが100マイルレースの最高峰UTMBで、なぜ二年連続優勝できたのか、といった素朴な疑問が氷解します。長野県にいると、理論ばかりではなく自分の体を使った人体実験もでき好都合です。

細マッチョが健康長寿


EBMが叫ばれ久しいですが、世の中のエビデンスと呼ばれるものの多くは、特定の主張をもっともらしく化粧するための道具だと思います。たとえば「老年期は小太りが長生き(BMI 25〜29.9が最も死亡率が低い)」というデータがあります。これを真に受けて、歳をとってからは多少太った方が健康的と考えるのは危険だと思います。多くの嘘の手口は、相関関係を因果関係と錯覚させることで人を欺きます。この種の疫学研究の結論を歪める理由は第三の因子の存在で、この場合標準的なBMIの高齢者のグループには、すでに重篤な病気を患い体重が減少した人が含まれます。つまり、「健康的な痩せ」と「不健康な痩せ」を混同することで、致命的なミスリーディングが生じます。健康な百寿者がそうであるように、細マッチョこそが健康長寿の秘訣であり、信じられるのは自分の体が発する声だけなのかもしれません。

生き残るためのAX


新卒入社したばかりの娘は、今週は長野県でリモートワークをすると言います。サービス残業や長時間労働、パワハラにも寛容だった時代を知る世代からすると、隔世の感があります。それでも「最近の若い者は」と嘆く気になれないのは、長年の経験に基づく直観やそこに至る努力は、もはやビジネス界におけるプレゼンスとは言えないからです。AIが普及をすれば長いだけの経験に価値はなく、DXを背景とした新・新人類の出現は、かつてのネアンデルタール人のように、旧・新人類を駆逐してしまうかもしれません。他方で、DX化による便利さは、PayPayに紐づけされ口座の預金が引き出されてしまうように、脆弱な面もあります。結局のところ、われわれ旧・新人類が生き残る方法は、経験に裏打ちされた感性や審美眼といった、身体化されたアナログ・トランスフォーメーション(AX)しかないのかもしれません。

繰り返される奇跡


今の時期に隔年で開かれるTJARは、今年はありませんがその裏レースとして、日本海から太平洋まで富士山をはじめ日本の主峰を超え、もはや本家を凌駕する4、500kmの大会が開かれます。唯一関心があり感情移入できるスポーツはトレイルランニングで、北アルプスに観戦に行くこともあります。TJARに世間の耳目が集まるのは、人体の無限の可能性を感じるからだと思います。7年間毎日欠かさず、長い時には80kmを超える山道をわずかな粗食で歩き続ける千日回峰行にせよ、58歳のマルコ・オルモが100マイルレースの最高峰UTMBにおいて2年連続優勝した偉業も、現代栄養学が説明を避けてきた、無限とも言える人体のエネルギー産生メカニズムによるものです。こうした奇跡は、人類の歴史において幾度となく繰り返され、科学は常に修正されてきたのでしょう。

プチ千日回峰行の生活


三連休に入り、街では交通渋滞が起き、山は人であふれます。経済がまわるのは良いのですが、人混みと渋滞が嫌いなので、世間の行動パターンを回避する必要があります。朝西岳に登ることが長野県にいるときの日課ですが、この時期はマイナーな山にも人が押し寄せるので、暗いうちに登り始めます。多い年には50回以上登る勝手知ったる山ですが、累積標高は1,000mを超え、肌寒い昨日でもたっぷりと汗をかきます。東京、福島、長野の三拠点生活のどこか一つを選ぶなら、毎朝八ヶ岳に登るプチ千日回峰行の暮らしができる長野県です。厳しい食事制限と極度の身体活動という本家の荒行は、現代栄養学の常識では説明できませんが、修行者の体内ではファットアダプテーション現象が起き、ケトン体をエネルギー源とする代謝回路が活性化すると考えられます。多くの宗教家が長寿なのは、荒行には健康増進の効果があるからかもしれません。

予定調和のファンタジー


賛否の意見が入り乱れるジャングリアですが、賛成派は沖縄資本の入るパークの経済効果など事業の意義を評価し、反対派はパークの絶対的なキャパシティ不足とクオリティを問題にしているようです。新しいチャレンジは暖かい目で大目に見るべきとの意見がある反面、沖縄経済のためには、継続して利益を生みだせるクオリティが必要との主張ももっともです。TDRでさえ人生で3度しか行っていな自分には評価の資格がありませんが、映像を見る限りごく普通という印象で、行くことはなさそうです。どこにでもある自然や冒険を金で買うことにはどうしても納得ができません。自然のなかで体を動かせばそこに身体感覚も加わり、リアリティのある体験になるのに、わざわざ劣化した商品にお金を出す気になれません。予定調和のファンタジーというテーマパークが抱える矛盾を、ジャングリアは露見させてしまったのかもしれません。

理想の食事


白河に来ると日中でも22℃と、灼熱の東京とは別世界で一息つけます。自宅を離れるときは一日一食ですが、食事を減らす方が明らかに体の調子がよくなります。健康界における議論の一つに、一日三度の食事をすべきか、それともオートファジーなどを促すいわゆる16時間断食をするべきかという真逆の主張があります。一日一食が健康に良いと考えるのは、自身が二食より一食の方が体調が良くなる実感がある事と、一日一食の実践者に肥満体形の人がいないことです。他方で一日一食生活への批判は、1回の食事では1日に必要な全ての栄養素をバランス良く摂取することが難しく、とくにタンパク質などの栄養不足とそれによる筋肉量の低下です。現状の結論は、一度の食事を高タンパク・高栄養を意識し、空腹を感じる時はタンパク質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富なナッツをつまむことです。

下積み不要説の真偽


新社会人4カ月の娘を見ていると、下積みは大変だなと思う反面、リモートワークの普及によって、自分の時代には常態化していた、付き合い残業とは無縁の生活がうらやましくもあります。建前が後退して、組織が成果を追求する機能体に近づくと、他方で弊害も生じます。終身雇用が崩れ、転職が当たり前になると、疲弊した中間管理職に新人を育てる余裕はなくなり、他方でインターネットの普及により、専門知識やスキルに比較的容易にアクセスできるようになると、下積み不要説も真実味を帯びます。身体化された職人の技や感覚、長年の経験で培われる目利きや、医療従事者のような膨大な基礎知識と臨床経験の積み重ねこそが、これまでの日本クオリティの基盤を作ってきたことを考えると、終身雇用、年功序列、企業内組合などの昭和の家族的経営が必ずしも時代遅れとは言えず、急速な働き方の変化には一抹の不安を覚えます。

スマホを捨てよ


5年半ぶりに新しいスマホを手にしたあとに、地獄はやってきます。ひどいのがGoogleへのログインの際に表示される崩された文字によるCAPTCHA画像で、ここまで崩されると人間のパターン認識では読めません。CAPTCHAを突破するために専門化したAIを使ったボットは通過できても、人間が読めないという本末転倒が起きます。限定された用途にしかスマホを使わないため、不慣れなデバイスで無益な確認を何度も繰り返される苦痛は地獄という表現が適切です。あまりにも不自然に歪められ、ノイズが多過ぎ、文字同士が融合すると、人間の脳はそれを意味のある文字として認識できなくなります。一方、AIは純粋にピクセルのパターンを解析するため、人間が混乱するような歪みでも、学習したデータに基づいて正解を導き出します。攻撃者が得意なCAPTCHAを最後の砦にするGoogleからの警告は、「スマホを捨てよ」と聞こえます。

招き入れたトリガーフード


5年半使ったiPhone 8をiPhone 16に変更しました。大きく厚く重くなったボディーはむしろ退化で、そのハイスペックにふさわしい使い方はしていません。今やスマホがなければ社会生活はできませんが、脳を刺激してマインドフルネスから遠ざけ、健康を阻害しているのもスマホです。近年企業のトップマネジメントや起業家の間で、修行僧(Monk)のように禁欲的で規律正しい生活を送る「モンクモード」が注目を集めます。物質的な欲望から離れ、内観と瞑想によって精神的な成長を求めるために、SNSやインターネットの過剰な情報から距離を置き、平穏を取り戻すことでビジネスにおける成功を目指します。集中を奪う外部刺激を遮断することは、クリエイターや作家などが創造性を高め、質の高い作品を生み出すためにも必要です。新しいiPhoneを手にしてもうれしくないのは、食べ過ぎてしまうトリガーフードを自宅に招き入れた気がするからです。

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