キングオブサウナ


昨日は東大寺別院阿弥陀寺の石風呂に行きました。保存会の人により動かされている石風呂は全国的に先月行った岸見と2か所だけです。かつては大分や愛媛、広島県にも多くの石風呂が動いていましたが、この10年でも多くが休業状態になり、お二人のボランティアもいつまで続けられるのかと思ってしまいます。昭和56年に作られたレプリカですが、近くには建築年代の分からない小さな石風呂も残ります。井形に組まれた木を朝5時半から4時間燃やした燃え殻を囲炉裏に移し、水を撒き、近くで採取したショウブ科のセキショウとむしろを敷くと入れます。天井付近の温度は170℃で名物の焼き卵?がつるされます。毛布をかぶり10分も入ると滝のように汗がでますが、さらさらした汗でシャワーを浴びる必要がないのも岸見の石風呂と同じです。とにかく暖まり、同じ構造のスモークサウナがキングオブサウナと呼ばれる理由が分かります。

躊躇なくどこへでも


昨夜は語学留学に渡仏する娘を羽田空港に送り、その足で夜通しN-VANを運転して山口県に来ました。以前なら夜行運転するなど思いもしませんでしたが、いつでも熟睡できる居住空間を備えるN-VANなら、躊躇なくどこへでも行けます。N-VANが来てから旅行に出る回数が増え、月5,000kmペースで距離を伸ばしていますが、軽の商用車なのにこれまで乗ったどの車より疲れないのは意外です。これほど優れた車が100万円台なかばで買える日本人は幸せで、実用上何も困らないのにブランドやデザイン、過剰な性能と見栄という虚構に、法外なエクストラコストを払う気はなくなります。権威付けと洗脳によって多額の追加料金を払わせることで経済が成り立っている以上、それを否定することはできませんが、N-VANに満足すると消費社会に加わる気が減退します。

石風呂を巡る旅


理想のサウナを求めるなかでたどりついた石風呂は、山口県を中心に瀬戸内一帯に、説によっては数千か所あったとされます。伝統的な北欧サウナであるスモークサウナと同じ仕組みの石風呂が、平安時代に川の近くに作られたのは木材を運ぶためですが、海の近くにも見られるのは海藻により蒸気を出すためでしょう。自然の洞窟を利用した石風呂もありますが、大半は人工的に作られたもので、かつては日本中にあった瓦を焼くためのだるま窯に類似した形状です。だるま窯の歴史は安土桃山時代の関西地方の寺に始まるとされますが、そのルーツは古墳時代にさかのぼります。縄文や弥生の人々が野焼きで土器を焼いた時代から、人々が暖を取るためにその熱源を利用するのには、それほど時間がかからなかったはずです。サウナを巡る旅は石風呂のルーツをたどる旅になり、古代の窯の歴史を探る旅路へと向かいつつあります。

付帯事業としてのサウナ


サウナ施設巡りをしていると、入浴をしなくても写真やYouTubeから内部の様子は大概分かります。しかしその例外が福島県にあるサウナ発達です。昔ながらの建物が所々に残る風情のある地域とも言えますが、田舎にありがちな特徴のない住宅街に立地します。一歩間違うとゴミ屋敷のような雑然とした庭先に異様なアースバッグサウナがあり、とても人気施設の入口には見えず、初めて訪れる人は躊躇するはずです。あまり自分好みではない独特過ぎる世界観と、5時間で23,400円の貸し切り価格に一人では利用する気になれませんが、見る価値を感じる場所です。空き家を修繕し、災害ゴミを利用して完成させた宿は、敷地内で営業する飲食店の食事や地元の魚屋さんの刺身やお菓子屋さんのケーキを頼むことができます。サウナを単独営業するのではなく、他の事業との相乗効果を出す付帯事業化は今後も増えそうな気がします。

現役を貫き通した人生


かつて同じ会社に在籍していた経済アナリストの森永卓郎氏が、原発不明がんのため67歳で逝去しました。たまにエレベーターに乗り合わせるぐらいでしたが、親近感があります。包み隠さず話す独特のキャラクターで愛された森永氏は、2023年末にステージ4のすい臓がんであることを公表した後も驚異的な復活で執筆活動に励み、1か月間に13冊を書き上げたと言います。メディア出演も精力的に続け、亡くなる前日もTBSと文化放送に生出演し、数時間前までは放送局と次回の出演の話をしていたほどで、まさに生涯現役を貫き通した人生です。何かをやり遂げたいという使命感は、年収300万円時代やザイム真理教などの流行語を生み出し、死を間近に失うものが無くなったことで壮絶さを増していったように見えます。生涯現役で働くことは幸せだと思いますが、これほどの使命感を持てる人生こそ、生きるに値するのでしょう。

日々機嫌よく過ごす


先日は小学校以来の友人宅に行き、94歳になるお母様にも会いました。大変お元気な様子で、ユーモアのセンスがあり笑い通しでした。92歳になる義理の父も含めて、年を重ねて元気な人に共通するのは、深刻に考え過ぎないメンタルの強さであり柔軟さだと思います。笑いが健康に良いことは知られますが、心身一如と言われるように、考え過ぎや悩むことによるストレスや不安が、身体的な不調を引き起こしていると思います。この逆も然りで、身体の不調が精神に影響を与えるように、心身は切り離せない不可分の存在のはずです。年をとるほどに頑固になり、自我を押し通して人と対立する人もいれば、老年的超越の境地に至り日々機嫌よく過ごす人もあり、どちらが健康に良いかは論ずるまでもないのでしょう。将来の健康の8割は自分で決められると言われますが、何事も良い心掛け次第なのかもしれません。

1泊分の値段で1か月


昨日は土湯温泉の御とめ湯りに宿泊しました。土湯温泉は全国でも数少ないオトメユリの群生地です。日帰り温浴施設に隣接する20㎡ほどのワンルームは、電子レンジや冷蔵庫を備え、簡単な調理が可能で3,980円で泊まれます。旅館やホテル近隣の空き家やアパートを、分散型客室として収益化するのは合理的な方法だと思います。Wi-Fiも早く、コワーキングスペース風のカフェもあってコーヒーが無料で飲め、車で10分走るとスーパーがあるのも魅力です。週額19,800円、月額59,800円の値付けも良心的で、山々を望む魅力的な露天風呂、サウナと冷たい沢水を引いた水風呂、アルカリ性単純泉の源泉かけ流しにつかる生活は、仕事もはかどりそうです。高級な宿なら1泊分の値段ですが、1か月温泉地に滞在し、近隣の共同浴場を巡りトレッキングをする方が、はるかに豊かな気がします。

有益で合理的な趣味


昨日は宮ケ瀬湖の近くにある仏果山(ぶっかさん747 m)と高取山(706m)に登りました。愛川ふれあいの村を起点にすると2時間ほどでラウンドできる低山ながら、宮ヶ瀬湖と丹沢表尾根、関東平野を一望する景色が見事です。自動車なら我が家から1時間ほどと手軽で、夜明け前から登り始めれば他の予定を犠牲にする必要もなく、早朝の低山ハイクは最も有益で合理的な趣味だと思います。しかし、これは東京に住む場合の話に限られ、日本の大半の地方や郊外であれば15分程度の時間距離で、このような里山にアクセスできます。晴天の日曜日の朝でさえ登山道で人に会うことがなく、これほどマインドフルネスで、刺激的で健康的な娯楽はなく、しかも数人で同行するならわずかな交通費しかかかりません。都市的な消費の罠は、それを重ねるうちに商業的な取引でしか幸せを感じられなくなることなのかもしれません。

進化した伝統


日本古来の履物である雪駄の専業メーカーサカガワとミズノのコラボ商品を、SNS広告で見ました。ミズノのソールがつくと2万円前後の価格になりますが、大和工房ブランドでサカガワが販売する雪駄なら3分の1程度の値段で買えます。当社が位置する奈良県西部は、かつて国内で90%のシェアを誇る和履物の産地で、江戸時代に農家の副業であったワラ草履作りが発端とされます。伝統的な技法を継承した和履き職人の手作業によるつくりに、日常使いができる履きやすさが加えられた雪駄は、実用的かつスタイリッシュで、履くと自然に背筋が伸びるような清々しさを感じさせます。伝統を継承しつつ、現代のライフスタイルに適合した新たなファッションとして提案することは古民家も同じで、先祖伝来の生活の知恵を未来に伝え、暮らしを体現する進化した伝統とは何かを考えさせられます。

古民家はタイムカプセル


川崎市立日本民家園に行きました。古民家に関心があるのは学術的な興味ではなく、商業施設として蘇らせた古民家が専ら関心の対象です。古民家は代々住み続けるごとに改造部分が増え、復原調査から建物の歴史を解きほぐし、建築当初の古い形に戻された姿は古の生活を伝えるタイムカプセルです。現代の工法を使わず、ハンドカットされた木材などの自然素材で作られた、素朴でシンプルな家は自然の風景に溶け込みます。古民家を商業的に再生するときに問題になるのは、どの時代まで戻すのか、現代人が求めるアメニティ水準をどこまで満たすのかという点だと思います。最大の制約は改修コストですが、現代的なテクノロジーで快適な家にしてしまえば、先祖代々受け継がれてきた知恵を消し去ってしまう気がします。文化の発祥は生き残るために必要な知恵だったはずであり、快適過ぎる古民家にはリアリティを感じません。

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