誰もが起こしうる事故


昨日は近所の世田谷線の線路に乗用車が侵入し、世田谷線が止まりました。のどかな路面電車とは言え、3時間も止めてしまえば膨大な金額の損害賠償を請求されるはずですが、現場は至ってのどかな雰囲気です。乗用車は目の前の駐車場からバックで道路に出る際に、ペダルを踏み間違えたのだと想像されますが、駐車場の入り口がクランク状のため、体をねじった状態で軸がずれてしまえば、踏み間違えは起こりえます。他方で振替輸送費や運休損害に関する営業補償は、通常の対物賠償保険ではカバーされず、数千万の請求を自腹で払わされる可能性があります。間が悪いことに、この場所は1年ほど防護柵がなくロープが張られていたために、鉄道会社側にもリスクマネジメント上の責任の一端があるのかもしれません。誰もが起こしうる事故で自己破産しかねない恐ろしさを実感しました。

石を通して古代とつながる


石風呂にはまったきっかけは、昨年11月に長崎県のドーム式石室サウナに行ったことです。松の木が松明のように燃やされ、150℃を超える原始的なサウナは、人類とサウナの長い歴史を想像させます。創業者がソウルで体験した、スッカマ(炭窯)と呼ばれる韓国伝統の古式サウナをモチーフにしています。1月に訪れた山口県岸見の石風呂や阿弥陀寺の石風呂の衝撃は、皮脂腺から出ると思われる普段とは違う大量の汗と冷えない体です。石風呂と北欧のスモークサウナは同じ構造で、キングオブサウナと呼ばれる理由がこの時初めて分かりました。大分や愛媛、香川にも遠征し、人知れず山中に埋もれる岩窟に作られた石風呂を見ていると、1,300年の時を超えて古代の暮らしとつながれる気がしました。ピラミッドや磐座信仰がそうであるように、数千年の時を超えて古代の知識を受け継ぐ方法は、石を通して行う以外にないのかもしれません。

イメージだけを消費している


予想できたことですが、ジムニーのロングボディー・5ドアのノマドが発売4日で3.5年分のバックオーダーを抱え販売停止になりました。ジムニーが気になる存在なのは、プロユースに耐える圧倒的な走破力にあります。メルセデスベンツGクラスを小さくしたようなスクエアな外観も人気の理由ですが、大きく重くなった車体の走破性は低下しているはずです。人気を誇るトヨタのランドクルーザーもその卓越した信頼性から、紛争地帯の極限の環境下で酷使される軍用車に転用されるほどのスパルタンさが魅力です。しかし、これらの車を買う人の大半はそのようなタフな使い方をすることはなく、ジャーナリストを集めてこれみよがしに誇示するオフロード性能も、見せかけほどにはたいしたことがありません。結局、人は使いもしない機能のためにお金を払い、イメージだけを消費しているのかもしれません。

調査旅行のパートナー


N-VANは昨年後半から月5千kmペースで距離を重ね、今年に入って1万km以上走りました。走行距離が伸びる理由は、石風呂のフィールド調査に中四国・九州方面に出かけるからです。かつて瀬戸内一帯にその数が数百とも数千とも言われる石風呂が存在しましたが、今やその大半は人知れず山中に埋もれています。これらの遺構を訪ねる旅は秘境への冒険旅行の趣があり、たどり着くための険しく狭い道は軽規格の車幅が有利に働きます。Googleマップはドライバーの運転傾向だけではなく、車の種類まで理解しているのか、時々小型のトラクターしか通れないような近道を案内します。また目的地付近に駐車スペースがない場合も多く、そんな時でも軽規格の外寸は他車の通行を妨げずに身を隠すことができます。他方で全高は車内で楽に着替えができるほど広く、仮眠や休憩にも最適で、調査旅行の最高のパートナーです。

旅のあり方


8年前の高校生の時、我が家に3カ月ホームステイをしていたオーストラリアからの留学生が一年ぶりにやってきました。2年に1度ほどのペースで来日する際の東京における定宿です。感心するのはスマホを駆使して日本人以上に行きたいところに行き、髪を切り、買い物をします。東京には4泊の滞在でしたが、クラス会を主催して東京にいる友人に会い、家にいるときはクッキーを焼いたりして暮らすように旅をします。日本語と中国語がほぼネイティブですから、世界中の大半の場所に出かけても不自由なく旅をするはずです。一般的な日本人にとっては、メディア推奨のお仕着せの宿に泊まりお仕着せの食事とアクティビティというステレオタイプの観光旅行が一般的ですが、デジタルネイティブが旅行市場の中心を占めるに従い、旅のあり方が大きく変わることを実感します。

知りたいこそすべて


石風呂を調べ始めると幸か不幸か文献は多くありません。有名なところでは瀬戸内沿岸でとくに石風呂が集中する、周防大島東和町に生まれた民俗学者の宮本常一氏の本で、ありがたいことにAmazonで昭和40年代に出版された書籍を入手できます。とくに手に入れたいのが慶應義塾大学医学部放射線科学教室初代教授の藤浪剛一氏の本で、氏は石風呂を医療面からとらえ、現地調査に基づく学術報告を戦前に行っています。氏の一部の本は国会図書館デジタルコレクションにおいて無料で読めますが、戦前に出版された本でもKindle版があるので読みやすさからこちらを購入しました。資料が少ないほど価値の希少性は増し、石風呂への関心を一層高めます。結局何を学ぶにせよ、旅行に出るにせよ、無性に何かを知りたいという欲求こそが人間を行動させる原動力のすべてだと思います。

健康は永続的トレンド


この数年のライフワークはサウナですが、その間にサウナ市場を取り巻く経営環境は変貌しました。刹那的なブームは去り、サウナ施設の売り物件が増え、数億を投じた都心の高級サウナなら撤退も容易ではありません。成長のS字曲線で考えると、導入期、成長期、成熟期に要する時間は同じで、急成長した分、衰退期は足早にやってきます。サウナには2つの魅力があって、一つは「調い」と呼ばれるデフォルトモードネットワークのエネルギー消費を抑制する脳疲労の解消であり、もう一つは深部体温を上げ皮脂腺から出る汗による解毒や体温上昇による免疫力向上です。昨今のブームは専ら「調い」に重点が置かれた結果、自分のようにアドレナリン分泌が減り中毒症状が解けてしまう人も増え、ブームが陰り始める一因になったと思います。他方で、後者の健康効果は永続的なトレンドであり、それを具現化する施設を模索する日々です。

復活させるべき健康法


昨年末からのマイブームは石風呂です。金にならないことは研究をしない主義ですから、営業施設としての可能性の探索が関心事です。一方で保存会のボランティアに依存する石風呂の存続は財政面で不安定です。石風呂が廃れた理由は焚くのに手間がかかり、燃料となる木材や薬草、海藻の減少、後継者難があります。商業施設として営業していた昭和40年頃で進化は止まり、利用者からみるとアメニティ水準が低く、その運営も含めて現代のスパのように料金を請求できる商品性はありません。過去の遺構であり商業利用を想定していないので、事業者にとっても消費者にとっても魅力のない事業になったと思います。しかしわれわれが見落としているのは、歴史に埋もれつつある長年の伝統のなかには現代に必要な祖先の知恵が含まれていて、石風呂こそ人体の自然回帰が叫ばれサウナブームの今復活させるべき健康法だと考えます。

様々な移動の楽しみ方


香川県の塚原から風呂への往復には東九フェリーを使いました。先週も徳島からの帰路、10年ぶりに乗りましたが、これほど優雅な交通機関もないと思います。豪華客船に乗らなくても船旅は贅沢な時間で、レストランもない物流主体のフェリーでも同じです。出航を待つ有明の東京港フェリーターミナルの、トレーラーが行き交う夕暮れの風景も非日常なら、乗船するなり展望浴室に行き、離岸風景と東京湾の夜景を眺めることも普段できない経験です。水平線から昇る日の出を眺めながら窓側席でコーヒーも飲むことも船旅ならではの楽しみで、徳島までの18時間は退屈することがなく、まとまった仕事を持参すればなおさらでしょう。妥当な料金も含めて西日本に車で行くなら、多少遠回りでもこのルートで旅の風情を味わいたいと思わせます。飛行機や列車との違いは、船内が広いことから様々な移動の楽しみ方があることだと思います。

奇跡のから風呂


塚原から風呂に3日通いましたが、体が急に変わるはずもなく、そこまでの期待もしていません。しかし居合わせた人に石風呂の効果を聞くと、異口同音に語るのは汗がさっぱりして体が冷えないことで、炭と塩の効果により汗の出る場所が違うと言う人もいます。炭に関しては、山口県の岸見や阿弥陀寺では熾火となった炭を囲炉裏に移しますが、塚原では火のついた熾火の上から濡らした筵を敷きさらに塩水をまき、入り口を塞ぎ1時間蒸らします。体への影響を聞くと概ね半数が具体的な治癒効果を教えてくれ、最終日に会った70代半ばとおぼしき女性は10年ほど週2回通ううちに、以前は35℃だった体温が36.5℃に上昇し、毎年肺炎など大病をしていたのに今は至って健康だそうです。石風呂が作られた経緯が治療目的ですから驚くべきことではありませんが、現代医学では説明が難しい人知を超えた奇跡が起きていることは確かのようです。

Translate »