良いホテルの条件


ダナンの魅力は気候・自然環境の良さ、生活コストの安さ、治安の良さ、日本人向きの食事、カフェやホテルの充実、空港から近いビーチです。他方で交通のカオスは問題だと思います。どこでも道路を渡れて便利だと呑気に構えていましたが、減速しない車が観光客をはねるのを目の前で見て考えが変わりました。クレジットカードを使える場所が限られ、薬局などで値段が適当なことも気になります。他方で停電などのインフラの不安定さは感じませんでした。多くのホテルが14時チェックイン、12時チェックアウトとしていることは、毎日もしくは2日ごとに宿を代える身には助かります。宿が変わり街区が変わるだけで新鮮な気分です。直前にホテルを予約したため、目当てのホテルの安いカテゴリーの部屋が売り切れていたことも宿泊を細切れにした理由です。同じホテルに戻るケースもあり、良いホテルは「おかえり」と暖かく迎えてくれます。

見るべきカフェと良いカフェ


今夜の深夜便で避粉先のダナンから帰国します。ダナンの初夏を先取りする気候は、血流を改善し、筋肉の緊張をゆるめ、副交感神経を優位にします。日照時間が長く、光量も強いためにセロトニンやビタミンDが合成されることも健康上のメリットです。もう一つの目的はカフェの視察で、ダナンに来る前にAIがピックアップした200ほどの店舗を見ましたが、いずれのデザインも洗練され、日本のチェーン店的な凡庸さとは無縁です。ダナンのカフェが洗練されるのはフランス由来のカフェ文化を基盤にしつつ、若者起業家の激しい競争とグローバルデザインの即時流入があると思います。日本でもカフェの生き残りは最難関ですが、ダナンでは数十メートルごとにカフェがある感覚です。しかし見るべきカフェと良いカフェは異なります。求めるものは旅の風情であり、客数の少ない落ち着く店に自然と足が向かいます。

楽しみ先送り社会


ダナンに来て2週間が経ち、日越どちらの生活満足度が高いかを考えます。モータリゼーションの観点から見ると、日本で言うなら車の黎明期が過ぎ人々が自動車を求め始めた1970年頃だと思います。ダナンでは至るところに屋台があり、スモールビジネス中心の一億総活躍社会で格差が存在するのに対して、日本はサラリーマンによる一億総中流社会でした。朝5時からはビーチでアップテンポな音楽が流れエアロビクスが始まり、夕方にはビーチバレーやサッカーが盛んです。三々五々砂浜に集まり、それぞれのペースで人々が楽しむ姿を見ていると、半世紀前の日本はモノへの憧れが強かった反面、楽しみを先送りして生活を充実させる余裕がなかったと思います。南国への憧れという単なる観光客のエキゾティシズムなのか、発展途中のエネルギーを発するダナンの生活が豊かに見えてしまうのは、隣の芝生だからかもしれません。

グレーなゲリラ戦

K20革命基地地区と呼ばれるベトコンの地下活動拠点跡に行きました。ベトコンの地下壕のあったマーブルマウンテンとともに、ダナンを代表する戦跡です。小さな村に20台ほどの観光バスが押し寄せ、小学生が見学に訪れていました。この村のハイライトは民家のステップを開けて入る地下トンネルです。内部は澄んだ井戸水で満たされますが、痩せた人でないと入れない小さな入り口です。マーブルマウンテンの周辺は今も石屋さんが多いのですが、この同業者ネットワークが夜間はベトコンとして活動をしたとされます。米軍最大級の補給基地と空軍基地までわずか数百メートルの村が革命拠点であったことは、意外です。昼は南ベトナム側に協力し、夜は解放戦線として働く二重構造は、住民を苦しめたと思います。ベトナムがフランス、アメリカ、中国のいずれも退けた強さは、このグレーなゲリラ戦にあった気がします。

歩行者の注意義務

ベトナムは車優先社会ですから日本では考えられない歩行者の注意義務が生じます。歩行者優先などないに等しいとは思っていましたが、昨日目の前で起きた事故を見て考えを改めました。観光客でごった返すダナン一の繁華街であるダナン大聖堂前の大通りから、小さな路地に左折をしようとした車がほぼ減速せずに突っ込み、私の目の前を歩いていたおそらく韓国人観光客と思われる女性を1メートルほどはじき飛ばしました。日本なら救急車を呼ぶレベルで大騒ぎになりますが、運転手は車がへこんだと騒ぎ、周りの人も運転手に同情的に見えました。女性は歩きスマホをしていましたが、仮にしていなくても事故に巻き込まれた可能性があったと思います。目に見える外傷でもない限り、この程度では事故とはみなされず、歩行者は周囲に対する相応の注意を払い、自分がそこにいることをドライバーに知らせながら行動することが前提のようです。

自然と身体感覚とコーヒー


ダナン最大の観光資産は長大なビーチだと思います。先日は中心部から8km南下してマーブルマウンテンまで歩き、昨日はソンチャ半島のトレイルを目指して5km北上しましたが、それでもどこまでも続く砂浜の一部です。波打ち際を裸足で歩いたのは、もう何年も昔のことです。ソンチャ半島のトレイルは途中で消えてしまいましたが、帰り道に見つけたカフェがとても洗練された落ち着く店で、ココナッツコーヒーを飲みました。ゆったりした音楽が心地よく、風がのどかに風鈴を鳴らし、自然と呼吸が穏やかになり、外界と切り離された身体が溶けていくような感覚です。日の出と日没前後に波によって掃き清められたビーチを歩き、昼間はカフェに入り何をするわけでもなく、無為な時間を過ごすだけで幸せです。波音や風により副交感神経が優位になり、裸足が身体感覚を回復させ、コーヒーがドーパミンを刺激している気がします。

必見の博物館


南北に国土が長いベトナムは、北部は中華文明、中部はインド文明(チャンパ)、南部はクメール文明という歴史的背景を持ちます。ダナン・チャム彫刻博物館は1919年に開館したベトナム最古の博物館で、5〜15世紀の世界最大のチャンパ彫刻コレクションを展示します。フレンチコロニアルとチャンパ寺院風装飾の建物自体も見る価値があります。世界遺産のミーソン遺跡はベトナム戦争により破壊されますが、フランス人が100年以上前に持ち出していたことから守られました。本国に持ち帰った英国と異なり、フランスは失われたチャンパ王国の遺産を現地で展示するのですが、その方法は異質です。古いものは5世紀頃の貴重な彫刻は、ガラスケースなどで厳重管理せず、手の届く場所に置かれます。石彫刻は絵画ほど繊細ではなく劣化しにくいとは言え、あまりの近さにレプリカを疑うほどで、この博物館の価値は世界的に見ても高く必見だと思います。

ベトナムは特別な場所


ダナン最大の観光名所と言えるマーブルマウンテン(五行山)は、中心部から8kmほど南にある巨大洞窟の仏教寺院です。普通の観光客はgrabで行きますが、美しいビーチがどこまでも続くダナンなら、往復とも砂浜を歩いた方が楽しいと思います。マーブルマウンテンをベトナム戦争の戦跡として見た場合、歩くことにメリットがあります。ダナンは米軍の世界最大級の補給基地があったことで知られますが、行く途中はまさにこの基地の跡を突っ切って歩きますので、その近さに驚かされます。基地の真横のこれほど近い高地に敵陣が迫ることは、米軍からすれば常に攻撃の恐怖を強いられたはずです。山の地底深くまで恐ろし気な口を開ける巨大な洞窟は、ベトコンの野戦病院などとして活用されていたようで、そうした背景を知ると、この洞窟の細部に戦争の痕跡を探すようになります。戦争をライブで見ていた世代にとって、ベトナムは特別な場所です。

危険過ぎて安全なベトナム


ホテルの前で事故を見ました。こちらに来て二度目です。人も車もバイクもあれだけアクロバティックな動きをしていますから事故は不可避でしょう。それでもこのベトナム式の交通のあり方を、ひどい交通渋滞で巨額の経済損失を出す日本は参考にすべきだと思います。交通量の激しい3車線以上の道を信号もラウンドアバウトもなしにさばける運転技術は曲芸の世界ですが、危険な状況を放置することによって、お互いが非常に高い集中力で相手の動きを見ます。事故が起きたのは交差点ではありませんので、交差点は双方が常に集中して相手を見るのでむしろ安全です。ベトナムでは歩行者も歩きスマホなどは恐ろしくてできません。常に判断が求められ、相手に関心を向けることで、バイクのわずかな傾きや速度から相手の意思を推測します。安全過ぎて危険な日本と、危険過ぎて安全なベトナムなら後者を選びます。

ロングステイ先の最右翼


ダナンは至るところに屋台があり安く食事を済ませることができます。前日にカフェで60kドン(360円)のバインミーを食べたので、比較のためにハン川沿いで15k(90円)の商品を買いました。真面目そうな青年が丁寧に調理し、楊枝やナプキンもくれます。目の前のハン川で小舟が漁をする風景を眺めながら食べる気持ち良さもあり、味には大きな違いがありません。この値段で販売すれば、食材原価は半分程かかるはずで、彼の乗ってきた先進国の工業製品であるホンダのバイクをどうすれば買えるのか不思議な気がします。食後は家の軒先のカフェでシャーベット状のココナッツコーヒー35k(210円)を飲みました。300円あれば軽い食事とコーヒーが楽しめる国は今の日本人にとって貴重です。仮に将来リタイアすることがあるなら、温暖な気候で、海が近く、緑が多くて生活コストの安いダナンはロングステイ先の最右翼です。

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